
AWSの主要なCI/CDサービスと、Checkovの統合・連携方法を解説
近年、アプリケーション開発において、効率的かつ迅速なデリバリーを可能にするCI/CDパイプラインは欠かせない存在です。この仕組みにより、コードの変更を継続的にテスト、統合し、品質を保ちながら短いサイクルでリリースすることができます。
本記事では、AWSの主要なCI/CDサービスについて説明し、セキュリティチェックツール「Checkov」をどのように連携させるかを解説します。
CI/CDパイプラインとは

現代のアプリケーション開発では、品質を保ちながら迅速にリリースを繰り返すことが求められます。この課題を解決する仕組みとして、CI/CDパイプラインが注目されています。
CI(継続的インテグレーション)は、コード変更を自動的に統合してビルドやテストを行う工程、CD(継続的デリバリーまたはデプロイメント)は、テスト済みのコードを本番環境に展開するプロセスを指します。
この自動化された一連の流れにより、開発チームはエラーを迅速に検出し、効率的に修正できます。
CI/CDパイプラインの仕組み
CI/CDパイプラインは、アプリケーション開発におけるコードのビルド、テスト、デプロイのプロセスを自動化する仕組みです。従来、コードのリリースには手動での確認や環境設定が必要で、多くの手間と時間を要していました。
しかし、CI/CDパイプラインを導入することで、これらのプロセスを迅速かつ正確に進めることが可能になります。具体的には、開発者がコードをリポジトリにプッシュすると、パイプラインが自動的にトリガーされ、次のような工程が進行します。
CI(継続的インテグレーション) | コードの変更を統合し、ビルドや単体テストを実行。問題が早期に検出され、修正が迅速化。 |
CD(継続的デリバリー/デプロイメント) | 構成の検証後、テスト済みコードを本番またはステージング環境に展開。 |
この仕組みは、リリースサイクルの短縮や品質向上に大きく貢献します。また、エラーを早い段階で検出できるため、開発効率を大幅に向上させることができるでしょう。
AWSでCI/CDを構築する利点
AWSは、CI/CDパイプラインの構築に最適な環境を提供します。その利点は以下の通りです。
豊富なサービスの統合性
AWS CodeCommit、CodeBuild、CodeDeploy、CodePipelineなど、CI/CDに特化したサービスが利用可能です。
スケーラビリティと柔軟性
AWSは、クラウドベースのインフラストラクチャを活用し、プロジェクト規模に応じたリソースを自動的に調整します。
セキュリティとコンプライアンスの強化
IAMやCloudTrailを活用して、CI/CDプロセス全体のセキュリティを確保ます。また、必要に応じて、Checkovのようなサードパーティツールを統合し、さらにセキュリティを高めることも可能です。
AWSを活用することで、エンドツーエンドのCI/CDプロセスを効率的に自動化し、迅速かつ安全なリリースを実現できます。
AWSの主要CI/CDサービス

AWSは、CI/CDパイプラインを構築するための包括的なサービス群を提供しています。それぞれのサービスは、ソースコード管理、ビルド、テスト、デプロイ、ワークフロー管理といった異なる役割を担い、連携することで効率的な自動化を実現します。
ここでは、AWS CodeCommit、CodePipeline、CodeBuild、CodeDeploy、の4つの主要サービスについて詳しく解説します。
AWS CodeCommit(プライベートGitリポジトリでのコードの保存)
AWS CodeCommitは、Git互換のソースコード管理サービスです。ソースコード、バイナリファイル、構成ファイルなどを安全に保存できる環境を提供します。オンプレミスのリポジトリと比較してスケーラビリティが高く、AWSのエコシステムとの親和性が特徴です。また、以下の特徴もあります。
- セキュリティ:AWS IAMと統合し、きめ細かなアクセス制御が可能
- 可用性:高い信頼性を持つAWSのインフラを利用可能
- コスト効率:リポジトリ数や利用量に応じた柔軟な料金体系
連携方法は、AWS CodePipelineのソースステージとしてCodeCommitを設定することで、コード変更が自動的にCI/CDパイプラインをトリガーします。また、プルリクエストを活用して開発チーム間のレビューを効率化できます。
AWS CodePipeline(パイプラインの継続的デリバリーを自動化)
AWS CodePipelineは、CI/CDパイプライン全体を管理するサービスです。ソース取得、ビルド、テスト、デプロイといった一連のプロセスを自動化し、効率的なデリバリーフローを実現します。リアルタイムでの変更反映が可能で、迅速なリリースを支援します。
AWS CodePipelineはAWSの他サービス(CodeCommit、CodeBuild、CodeDeployなど)と簡単に統合できるため、個別の作業を一つのパイプラインにまとめることができます。また、Lambdaをステージに追加することで、カスタムロジックやセキュリティチェック(例:Checkovの実行)を組み込むことも可能です。
AWS CodeBuild(継続的スケーリングによるコードのビルドとテスト)
AWS CodeBuildは、ソースコードのビルドやテストを自動化するサービスです。事前に設定したビルド環境でコンパイルや単体テストを実行し、その結果をパイプラインにフィードバックします。ローカルマシンやサードパーティツールを必要とせず、完全にAWS上で完結する点が特徴です。
サポートされるプログラミング言語はJava、Python、Ruby、Go、Node.js、.NETなどで、幅広い開発ニーズに対応します。
また、AWS CodeBuildはCodePipelineのビルドステージとして統合されることが多く、Checkovを含むセキュリティチェックも組み込めます。以下のようにカスタマイズ性も高い事が特徴です。
- Dockerを利用してカスタムビルド環境を作成
- buildspec.yml」ファイルを使用して、ビルドプロセスを細かく設定
AWS CodeDeploy(コードデプロイを自動化、アプリのアップタイムを管理)
AWS CodeDeployは、アプリケーションを自動でデプロイするサービスです。
オンプレミスやクラウド環境に関わらず、AWSリソースやカスタムサーバーへのデプロイをサポートします。手動デプロイに比べ、設定ミスや人的エラーを大幅に削減できる点が利点です。
CodeDeployはBlue/Greenデプロイに対応しており、トラフィックを新しい環境に段階的に切り替えることで、本番環境への影響を最小限に抑えます。この手法により、万が一のエラー発生時には迅速なロールバックが可能になります。
CodeDeployは、CodePipelineのデプロイステージとして利用されることが一般的で、継続的デプロイメントプロセスを効率化します。
CheckovとCI/CDパイプラインの統合

Checkovの概要と特徴
Checkovは、IaCファイルのセキュリティリスクやコンプライアンス違反を早期に発見するためのオープンソースツールです。主にTerraformやCloudFormationに対応しており、AWS、Azure、Google Cloudといったクラウド環境向けのポリシーチェックを実行します。
Checkovの特徴は以下の通りです。
自動化されたスキャン | セキュリティリスクやベストプラクティス違反を検出する。 |
ポリシーのカスタマイズ | プロジェクト要件に合わせて独自のポリシーを設定可能。 |
詳細なレポート | 問題箇所や修正方法をわかりやすく提示。 |
Checkovは、TerraformやCloudFormationファイルを静的解析し、セキュリティグループやIAMポリシーなどの設定ミスをチェックします。特に、AWSリソースの設定が適切かを確認する場面で有効です。
Checkovの概要は、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
CheckovとAWSサービスの連携
Checkovは、TerraformやCloudFormationなどのIaC(Infrastructure as Code)ファイルのセキュリティチェックを自動化するツールです。AWSのCI/CDサービスであるCodePipelineやCodeBuildと統合することで、IaCファイルがデプロイされる前にセキュリティリスクを検出できます。
ここでは、CodePipelineとCodeBuildを使用してCheckovを組み込む具体的な方法を簡単に解説します。
CodePipelineでCheckovスキャンを実行する方法
AWS CodePipelineにCheckovを統合することで、IaCファイルのセキュリティチェックをパイプラインの中で自動的に実行できます。以下はその概要と実装例です。
概要
CodePipelineのステージとしてCheckovを設定し、IaCファイルをデプロイする前にスキャンを実行します。スキャン結果にもとづき、問題が検出された場合はパイプラインを停止します。
※AWS Lambdaを利用する方法もありますが、CheckovのようにCLIツールを実行する場合は、CodeBuildを利用するのが一般的です。
実装例
- ソースステージ
CodeCommitやGitHubからIaCファイルを取得する。 - Checkovスキャンステージ
CodeBuildを活用して、IaCファイルのスキャンを実行する。
- デプロイステージ
セキュリティスキャンを通過したコードのみがCodeDeployに渡される。
Checkovを組み込んだCodePipelineの例
– Name: CheckovScanStage Actions: – Name: RunCheckov ActionTypeId: Category: Build Owner: AWS Provider: CodeBuild Configuration: ProjectName: CheckovBuildProject RunOrder: 1 |
CodePipelineの統合により、継続的なセキュリティチェックが可能になります。
CodeBuildでのスキャンを実行する方法
CodePipeline全体でのCheckovスキャンを説明しましたが、CodeBuild単体の動作にも焦点をあてましょう。
AWS CodeBuildでCheckovを実行することで、IaCファイルの詳細なセキュリティチェックが可能です。CodeBuildのビルドプロセスにCheckovを統合し、スキャン結果にもとづいて次のステージへの進行可否を決定します。
概要
CodeBuildは、ソースコードのビルドやテストを実行するサービスですが、Checkovのスクリプトを組み込むことで、IaCファイルのセキュリティポリシーチェックを自動化できます。
実装手順
- CodeBuildプロジェクトの作成
CodeBuildでCheckovを実行するためのプロジェクトを作成します。 - buildspec.ymlの設定
buildspec.ymlファイルを用意します。
version: 0.2 phases: install: commands: – pip install checkov # Checkovをインストール build: commands: – checkov -d . # IaCファイルをスキャン |
- スキャン結果の確認
CodeBuildがスキャンを実行し、セキュリティ基準を満たさない場合はパイプラインを停止します。スキャン結果はCodeBuildのログに記録され、詳細を確認可能です。
CodeBuildのビルドステージを活用することで、効率的なセキュリティチェックが実現します。
【ハンズオン】Checkovを実装する手順
CheckovをCI/CDパイプラインに組み込む具体的な手順については、別記事「CheckovをCI/CDパイプラインに実装する方法」で解説しています。この記事では、GitHub Actionsを活用し、より詳しくCheckovによるセキュリティチェックを実現する方法をハンズオン形式で説明しています。
主な内容
・GitHubの基本操作のおさらい
・GitHub Actionsでのコード記述
・カスタムポリシー
・プルリクエスト時のCheckovによるセキュリティチェック
まとめ
本記事では、AWSの主要なCI/CDサービス(CodeCommit、CodePipeline、CodeBuild、CodeDeploy)を紹介し、Checkovとの統合によるセキュリティ強化の方法を解説しました。Checkovを活用することで、IaCファイルの設定ミスやセキュリティリスクをデプロイ前に検出し、安全なクラウド環境を構築できます。
紹介したアクションを通じて、効率的かつ安全なCI/CDパイプラインを構築し、迅速なリリースと高い品質を実現してください。