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もう迷わない!AIOpsプラットフォームの選び方|目的別おすすめ比較

もう迷わない!AIOpsプラットフォームの選び方|目的別おすすめ比較

AIOpsプラットフォームは、複雑化するIT運用を効率化する切り札として注目されています。しかし、AIOps市場にはZero Incident Framework(以下、ZIF) 、Datadog、Dynatrace、Splunkといった多くのAIOpsプラットフォームが存在し、どれを選定すれば良いか分からない方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、ZIFを含む主要なAIOpsプラットフォームがそれぞれどのような思想で設計され、どのような強みを持つのかを比較・解説します。

この記事を読めば、各ツールの違いが明確になり、自社の課題解決に最も適したプラットフォーム選定の第一歩を踏み出せるはずです。

関連ページ:「アラート疲れ」よ、さようなら。AIOps主要プラットフォーム別、異常検知チューニング実践ガイド

比較に必要な観点

AIOpsプラットフォームは、IT運用の未来を担う重要なテクノロジーですが、決して安価な投資ではありません。また、一度導入すると運用プロセスに深く根付くため、安易な選択は将来の技術的負債につながりかねません。

「観測可能性(Observability)の強化が目的なのか」「インシデント対応の自動化が最優先か」といった自社の目的を明確にし、各プラットフォームの特性と照らし合わせることが、導入を成功させる鍵となります。高機能なプラットフォームが、必ずしも自社にとって最適とは限らないのです。

主要AIOpsプラットフォームの特徴

市場には多くのAIOpsプラットフォームが存在しますが、ここでは特に知名度と実績のある代表的な製品を取り上げ、その特徴を比較します。 それぞれがどのような思想で開発され、どのような課題解決を得意としているかに注目してください。

名称主な特徴・強み最適なユースケース・思想
ZIF「ゼロインシデント」を目標に掲げ、予測分析とプロアクティブな自動修復に特化。根本原因の特定から解決までのワークフローを重視。インシデントの撲滅と、障害発生前の予防的アプローチを最優先したい企業向け。
Datadog開発者、運用者、セキュリティ担当者が利用する統合観測可能性プラットフォーム。インフラ、APM、ログを単一画面で提供し、チーム間のコラボレーションを促進。クラウドネイティブ環境での包括的な可視性を確保し、DevOps文化を推進したい企業向け。
DynatraceAIエンジン「Davis」による全自動のフルスタック監視と根本原因分析が強力。 依存関係をリアルタイムでマッピングし、複雑な環境でも正確な答えを提供。導入の手間を最小限に抑え、大規模で動的なマルチクラウド環境のパフォーマンス問題を自動で特定・解決したい企業向け。
Splunk (ITSI)強力な検索・分析言語(SPL)を持つ、マシンデータ分析のパイオニア。 IT Service Intelligence (ITSI) は、ビジネスサービス視点での監視と予測分析を提供。大量のログデータを活用した詳細な調査、セキュリティ分析(SIEM)、ビジネスKPIと連携した高度なITサービス監視を行いたい大企業向け。
Moogsoft大量のアラートノイズを削減し、関連イベントをインシデントとして自動でグルーピングすることに長けている。チーム間の連携を促すChatOps機能も充実。複数の監視ツールから発生するアラートの洪水に悩まされており、インシデント対応の初動を迅速化・効率化したいチーム向け。
BigPandaMoogsoftと同様にイベント相関とノイズ削減に強みを持ち、AIを活用したインシデント管理に特化。状況認識を高め、迅速な調査と修復を支援する。IT運用チームの生産性向上と、コストのかかるエスカレーションの削減を目指す企業向け。

各プラットフォーム、思想の違い

各プラットフォームは、AIOpsという大きな枠組みの中にありながら、その思想や得意領域は異なります。

観測可能性 (Observability) の追求

DatadogDynatraceはこちらの思想が強いと言えます。 彼らは、システム内部の状態をどれだけ詳しく、多角的に把握できるかを重視します。メトリクス、トレース、ログという3つの柱を統合し、問題が発生した際に「なぜ」それが起きたのかを深く掘り下げられる能力を提供します。

イベント管理とノイズ削減

MoogsoftBigPandaはこの領域のスペシャリストです。 複雑なIT環境では、些細なものから重大なものまで、日々膨大な数のイベントが発生します。

これらのプラットフォームは、AIを使って無関係なアラート(ノイズ)をフィルタリングし、関連性の高いアラートを相関させて一つのインシデントにまとめることで、運用チームが本当に重要な問題に集中できるよう支援します。

プロアクティブなインシデント予防

ZIFは、この思想を最も明確に打ち出しています。観測や事後対応だけでなく、過去のデータから将来の問題を予測し、それが現実の障害となる前に自動で修復アクションを実行することを目指します。

これは、運用を「受動的」から「能動的」に変えるアプローチです。

データプラットフォームとしてのサービスインテリジェンス

Splunk (ITSI) はこのアプローチを代表します。 この思想の根底には、まずあらゆるソースから生成されるマシンデータ(ログ、メトリクス、構成情報など)を収集し、一元的なプラットフォームで分析可能にすることがあります。

強力な検索・分析言語(SPL)を駆使して、IT運用担当者やセキュリティアナリストが自ら深い洞察を引き出すことを可能にし、ITSIがその分析能力をITサービスの健全性監視やビジネスKPIと結びつけます。これは、単なる監視だけでなく、セキュリティ(SIEM)やビジネス分析までも見据えた、より広範なデータ活用戦略の一環としてAIOpsを位置づけるアプローチです。

ユースケース別、推奨サービス

AIOpsプラットフォームは多岐にわたるため、自社の運用課題や目指すゴールによって最適な選択肢は異なります。ここでは、具体的なユースケースを想定し、それぞれの状況に合った推奨サービスをご紹介します。

ユースケース1:複雑なクラウドネイティブ環境のパフォーマンス監視と根本原因分析を自動化したい

推奨サービス:Dynatrace, Datadog

マイクロサービスやコンテナといった動的な環境では、パフォーマンスのボトルネック特定が困難を極めます。この課題には、観測可能性(Observability)に優れたプラットフォームが最適です。

Dynatraceは、AIエンジン「Davis」が依存関係のマッピングから根本原因の特定までを全自動で行うため、導入後すぐに高度な分析の恩恵を受けられます。一方、Datadogはインフラ、APM、ログを単一のプラットフォームで提供し、開発者と運用者が同じコンテキストで協力しながら問題を解決していくDevOps文化の醸成に貢献します。

ユースケース2:多数の監視ツールから発生する「アラートの洪水」を削減し、インシデント対応を効率化したい

推奨サービス:Moogsoft, BigPanda

複数の監視ツールがそれぞれ発する大量のアラートに埋もれ、本当に重要な問題を見逃していませんか。この「アラート疲労」の問題には、イベント管理に特化したプラットフォームが効果を発揮します。

MoogsoftとBigPandaは、AIを活用して無関係なアラートをノイズとして削減し、関連性の高いイベントを自動でインシデントとしてグルーピングします。これにより、運用チームは対応すべき問題に集中でき、ChatOps連携などを通じてインシデント解決までの時間を大幅に短縮することが可能です。

ユースケース3:ログデータを深く分析し、セキュリティ監視やビジネスサービス監視に活用したい

推奨サービス:Splunk (ITSI)

企業のIT環境で生成される膨大なマシンデータ(ログ)は、運用のヒントだけでなく、セキュリティやビジネスのインサイトの宝庫です。このデータを最大限に活用したい場合、強力な分析基盤を持つSplunkが第一候補となるでしょう。

特にそのアドオンであるIT Service Intelligence (ITSI)は、ログ分析能力をITサービス監視に応用し、ビジネスKPIとシステムの健全性を紐づけて可視化します。セキュリティインシデントの調査(SIEM)からビジネス貢献度の把握まで、ログ起点の高度な分析を実現します。

ユースケース4:インシデントを未然に防ぎ、「ゼロインシデント」を目指すプロアクティブな運用を実現したい

推奨サービス:ZIF (Zero Incident Framework)

障害が発生してから対応する「事後対応」の運用から脱却し、障害そのものをなくしたい。この野心的な目標を掲げる企業にとって、ZIFは最もフィットする選択肢です。ZIFは、その名の通り「ゼロインシデント」の実現をミッションとしており、予測分析と自動修復の機能に特化しています。

過去のインシデントデータや稼働状況を機械学習し、将来の問題の兆候を検知すると、それがサービス影響を及ぼす前に自動修復ボットが介入します。これにより、運用を「リアクティブ」から真の「プロアクティブ」へと変革させます。

自社にとっての「最高のAIOps」を見つけよう!

ここまで見てきたように、「最高のAIOpsプラットフォーム」というものは存在しません。それぞれの製品には独自の強みと思想があり、企業の課題や成熟度によって最適な選択は異なります。

  • DatadogDynatraceは、クラウドネイティブなアプリケーションのパフォーマンスを深く理解したい場合に強力な選択肢となるでしょう。
  • Splunkは、セキュリティインシデントの調査やコンプライアンス要件など、ログ分析が中心的な役割を果たす環境でその真価を発揮します。
  • MoogsoftBigPandaは、既存の多数の監視ツールが出力するアラートの管理に限界を感じている場合に、即効性の高い解決策となり得ます。
  • そしてZIFは、インシデント対応の効率化から一歩進んで、インシデントそのものを未然に防ぐ「ゼロインシデント」という野心的な目標を掲げる企業にとって、非常に魅力的な選択肢です。

この記事が、あなたの会社にとって最適なAIOpsプラットフォームを選定するための一助となれば幸いです。

24時間365日のシステム運用監視サービス「JIG-SAW OPS」を提供する、JIG-SAW株式会社のOps Today編集部です。 サーバー運用監視実績50,000台の実績をもとに、システム運用監視に役立つ情報をお届けします!

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