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企業のAWSのセキュリティ対策は万全?主要な10サービスや責任共有モデルを解説

企業のAWSのセキュリティ対策は万全?主要な10サービスや責任共有モデルを解説

AWSは、多くの企業が利用するクラウドサービスですが、セキュリティ対策は万全なのでしょうか?AWSは高度なセキュリティサービスを提供し、クラウド利用におけるリスクを軽減しますが、利用者側の責任も重要です。

この記事では、AWSの主要な10のセキュリティサービスや、AWSが採用している「責任共有モデル」を解説し、AWS環境でのセキュリティ対策方法を紹介します。

AWSのセキュリティ対策は万全なのか?

AWSのセキュリティ対策は万全なのか?

AWSのセキュリティ対策は、非常に高度で多層的な体制が構築されており、大手クラウドサービスの中でも高い水準にあると言えます。

AWSでは、セキュリティの責任をAWSとユーザーで分担する「責任共有モデル」を採用しています。AWSはクラウドインフラのセキュリティを担当し、ユーザーは自らのリソースのセキュリティを担当します。そのため、OSのアップデートやサーバーにアップロードするデータの保護に関しては、ユーザーが責任を負う場面もあります。

また、DDoS攻撃の対策や不正アクセス制御など高度なセキュリティ機能を備えていますが、AWSのセキュリティ対策が万全というわけではありません。人の作業ミスによる情報漏洩や未知の脅威によるサイバー攻撃による被害を受ける可能性もあります。そこでAWSでは、未知の脅威に対抗するべく、セキュリティ対策に対して継続的に多額の投資も行っています。

AWSが提供する具体的なセキュリティ機能や対策がどのようにして高いセキュリティを実現しているのか、詳細に説明していきます。

情報セキュリティの3要素(CIA)

情報セキュリティの3要素(CIA)

情報セキュリティの基本要素は以下の3つです。

  • 機密性(Confidentiality)
  • 完全性(Integrity)
  • 可用性(Availability)

これらの要素は、データやシステムを保護するために欠かせない重要な指標として、セキュリティ対策の基盤を形成しています。

機密性(Confidentiality)

機密性は、データが許可された者以外にアクセスされないようにすることを指します。具体的には、暗号化やアクセス制御などの技術が用いられ、機密情報や個人データが外部の悪意ある攻撃者や不正なユーザーに漏れないように保護します。また、ユーザー認証や多要素認証も機密性を高める重要な要素です。

完全性(Integrity)

完全性とは、データが不正な変更や破損から保護され、正確さと一貫性が保たれることを意味します。完全性を確保するためには、改ざん検出技術やデジタル署名の導入が有効です。これにより、データが保存される際や転送される過程で意図せぬ変更が行われていないことが確認でき、信頼性が維持されます。 

可用性(Availability)

 可用性は、必要なときにシステムやデータにアクセスできる状態を保つことを意味します。可用性を確保するために、バックアップの実施や障害耐性の高いインフラ設計が重要です。これにより、システムのダウンタイムを最小限に抑え、サービスの継続性を確保します。また、分散型システムやロードバランシングも可用性の向上に寄与します。

3要素を元にしたAWSのセキュリティ対策

AWSでは、情報セキュリティの3要素(CIA)を基にした包括的なセキュリティ対策が実施されています。まず、機密性の確保には、データの暗号化やIAM(Identity and Access Management)によるきめ細かいアクセス制御が使用されています。

完全性に関しては、AWSではデータの整合性を保つための監査ログやバージョン管理機能を提供しており、データの改ざんを検出するツールも備えています。

可用性については、AWSのグローバルインフラを活用し、サービスを複数のリージョンやアベイラビリティゾーンに分散させることで、災害時や障害時にも高い可用性を維持します。これらの要素により、AWS上でのセキュリティは多層的に強化されています。

オンプレミスとAWSのセキュリティ対策の違い

オンプレミスとAWSのセキュリティ対策の違い

 オンプレミス環境では、企業が全てのセキュリティ対策を自社で管理・実行しますが、AWSではクラウド事業者が一部の責任を担います。具体的には、AWSはインフラ層のセキュリティを管理し、利用者はアプリケーションやデータのセキュリティを管理します。

責任範囲の明確化

オンプレミスでは、システム全体のセキュリティ対策、物理的なセキュリティ対策、ソフトウェアのアップデート、パッチの適用など、ほぼすべての責任を企業側が負います。

一方で、AWSでは責任共有モデルを採用しているためセキュリティ対策の大半はAWSが担当します。例えば、クラウドインフラのセキュリティ、データセンターの物理的なセキュリティ、サービスの継続的なアップデートなどはAWS側の責任です。そして、ネットワークアクセス制御、データの暗号化、アカウント設定など、自社で利用するサービスのセキュリティ設定が主な責任範囲です。

セキュリティ対策に特化した人材の有無

従来のオンプレミスでは、セキュリティ専門の人材を自社で雇用するか、外部の専門企業に委託する必要がありました。これらの人材の確保や育成には多額のコストがかかります。

そしてAWSでは、セキュリティ専門のエンジニアが多数在籍しており、常に最新の脅威に対応するための研究開発が行われています。企業は、AWSのセキュリティ機能を活用することで、専門知識がなくても高度なセキュリティを実現できます。

AWSのセキュリティサービスを活用することで、セキュリティの専門知識を持った人材を採用したり、外部に委託するコストの削減が可能です。

アップデート・インシデント時の対応の違い

オンプレミス環境では、セキュリティアップデートやインシデント対応はすべて自社の責任で行います。システムやアプリケーションのパッチ適用、障害発生時の対応まで、専任のスタッフが必要です。

これに対し、AWSではインフラ部分のセキュリティアップデートはAWSが自動的に行います。ユーザー側は、利用するリソースやアプリケーションに対するアップデートやインシデント対応を行いますが、AWSのサービスを活用することでリアルタイムの通知や迅速な対応が可能です。

また、AWSのグローバルネットワークを活用することで、災害時やインシデント発生時でも迅速に復旧を行える利点があります。 

物理的なセキュリティ対策の有無

オンプレミス環境では、データセンターの物理的なセキュリティは全て企業が管理します。施設へのアクセス制御、防犯カメラ、バイオメトリクス認証などの物理的対策を独自に実施する必要があります。

一方、AWSでは、クラウドインフラがデータセンターに配置されており、データセンターの物理的なセキュリティはAWSが管理します。AWSのデータセンターは厳格なアクセス制御がされており、第三者が簡単に侵入できないように設計されています。また、定期的な監査を行い、国際的なセキュリティ基準を満たしています。

AWSのセキュリティ対策の基礎的な考え方である責任共有モデル

AWSのセキュリティ対策の基礎的な考え方である責任共有モデル

AWSのセキュリティ対策を考えるうえで、責任共有モデルを理解することが非常に重要です。ここからは、責任共有モデルとはなにか、どのように活用すれば良いのかを解説します。

責任共有モデルとは

責任共有モデルとは、AWSと利用者がそれぞれのセキュリティ責任を分担する考え方です。AWSはクラウドインフラの物理的なセキュリティやネットワーク保護を担い、利用者はその上で動作するリソース、データ、アプリケーションのセキュリティを担当します。

このモデルにより、AWSが提供するセキュリティ機能を活用しつつ、利用者自身もクラウド上でのセキュリティ強化を図ることができます。両者の責任が明確になることで、より安全な環境が提供されます。

AWS側がセキュリティ対策を行う範囲

 AWS側のセキュリティ対策範囲は、主にインフラのセキュリティに関する部分です。これには、データセンターの物理的な保護、ハードウェアの管理、ネットワークの防御が含まれます。データセンターではアクセス制限や監視システム、災害対策が施されており、高い物理的セキュリティが確保されています。

また、ハードウェアやネットワークは常に監視・保護され、アップデートや脅威対策が自動的に行われます。これにより、利用者はインフラのセキュリティをAWSに委ね、アプリケーションやデータ保護に集中できます。

利用者がセキュリティ対策を行う範囲

 利用者のセキュリティ対策範囲は、主にAWS上に構築されたリソースやアプリケーション、データに関するものです。例えば、アクセス制御の設定、IAMユーザーやロールの管理、ネットワーク設定(セキュリティグループやNACL)、データの暗号化、バックアップの実施などが含まれます。

また、アプリケーションに対して脆弱性がないかを確認し、適切なセキュリティパッチを適用することも利用者の責任です。このため、AWSを安全に活用するためには、利用者が自分の領域でのセキュリティ強化に積極的に取り組む必要があります。

AWSが提供するセキュリティサービス10選

AWSが提供するセキュリティサービス10選

以下に、10個のAWSセキュリティサービスがどのようにセキュリティ対策に役立つかを簡潔に解説します。

AWSのセキュリティに関するサービスはこちらで詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

1.AWS Identity and Access Management (IAM)

IAMは、AWSリソースへのアクセスを制御するためのサービスです。ユーザーやグループに許可するアクションを細かく設定することで、権限の最小化を実現し、セキュリティリスクを低減します。

一時的なアクセスにはロールを使用したり、MFAを活用することでセキュリティ強化が可能になります。また、必要以上の権限を付与しないよう、定期的な見直しが必要です。

2.Amazon GuardDuty

GuardDutyは、機械学習を活用してAWSアカウント内の脅威を検出するサービスです。不正なアクティビティや異常な振る舞いを検知し、セキュリティチームにアラートを送信します。

3.Amazon Inspector

Inspectorは、EC2インスタンスのセキュリティ評価を行い、脆弱性や不適切な設定を検出するサービスです。定期的な自動脆弱性スキャンにより、潜在的なリスクを早期に発見し、システムの安全性を向上させます。

4.AWS WAF (Web Application Firewall)

AWS WAFは、ウェブアプリケーションを保護するファイアウォールです。SQLインジェクションやXSSなどの攻撃をブロックし、アプリケーション層でのセキュリティを強化します。これにより、ウェブサイトやAPIを保護します。

5.Amazon Macie

Macieは、S3バケット内の機密データを自動的に検出し、不正なアクセスやデータ漏洩のリスクを管理します。データガバナンスやコンプライアンスに役立ち、機密情報の保護を可能にします。

6.AWS CloudTrail

CloudTrailは、AWSリソースに対するすべてのアクティビティを記録し、監査やセキュリティ分析に利用できます。ログを保存し、不正な操作やアクセスの追跡が可能です。

7.AWS Key Management Service (AWS KMS)

KMSは、データ暗号化に必要な鍵の生成や管理を安全に行うサービスです。暗号化キーの管理を容易にし、データの機密性を保つことで、重要な情報を保護します。

8.セキュリティグループ

セキュリティグループは、EC2インスタンスのネットワークトラフィックを制御するファイアウォールとして機能し、許可されたトラフィックのみを通過させます。これにより、外部からの攻撃を防ぎ、リソースのセキュリティを強化します。

9.アクセスコントロールリスト (ACL) 

ネットワークACLは、VPC内のサブネットに対するトラフィックの制御を行うリストです。セキュリティグループと同様に、インバウンドとアウトバウンドの通信を制御し、ネットワークの安全性を高めます。

10. AWS Secrets Manager

Secrets Managerは、APIキーやパスワードなどの機密情報を安全に保存、管理するサービスです。自動的なシークレットのローテーションもサポートし、不正アクセスのリスクを減少させます。

AWSセキュリティ対策を考える際に意識するべきこと

AWSセキュリティ対策を考える際に意識するべきこと

AWS環境を安全に保つためには、適切なセキュリティ対策を継続的に実施することが重要です。ここでは、AWS環境のセキュリティ対策を考える上で特に意識するべき4つの項目について解説します。

ルートユーザーに対するアクセスキーを作成しない

AWSアカウントには、全ての権限を持つルートユーザーが存在します。このルートユーザーのアクセスキーは、極めて強力なため、一度漏洩するとアカウント全体が乗っ取られるリスクが非常に高まります。AWSはルートユーザーのアクセスキー作成を推奨しておらず、ルートアカウントの利用は可能な限り避け、必要な場合のみ使用するのが理想です。

  • AWSアカウントの解約
  • AWSサポートプランの変更
  • AWS導入時のIAMユーザーの作成
  • アカウント情報やメールアドレスの変更時

上記のような作業については、ルートユーザーが行うタスクです。詳細はAWS公式ページをご確認ください。上記以外のタスクについては、管理者権限を持つIAMユーザーを作成し、日常の操作を行うようにしましょう。

最小権限の原則に則ったアクセス制御を行う

AWSのセキュリティにおいて最小権限の原則は非常に重要です。ユーザーやリソースに必要最低限のアクセス権限のみを付与することで、不正アクセスや誤操作のリスクを最小限に抑えます。

IAMを活用して、ユーザーごとに異なるアクセス権を設定し、ロールやポリシーを適切に定義します。また、不要なアクセス権は随時見直し、削除することでセキュリティをさらに強化できます。

セキュリティ対策は可能な限り自動化する

AWSでは多くのセキュリティ対策を自動化できます。例えば、CloudTrailを使って操作ログを自動的に記録したり、GuardDutyで脅威検出を自動化することが可能です。

セキュリティ対策を自動化することで、人為的なミスを減らし、リアルタイムでの脅威検出や対応が容易になります。また、AWS Configを使用すれば、リソースの設定がセキュリティポリシーに違反していないかを常時監視することも可能です。

定期的にセキュリティ対策状況を見直す

AWS環境では、セキュリティ対策を定期的に見直し、改善を続けることが重要です。AWSのサービスや機能は進化し続けており、最新のセキュリティ対策に対応する必要があります。

定期的なセキュリティ監査や、AWS Well-Architectedフレームワークを活用したレビューを行うことで、潜在的な脆弱性を発見し、迅速に対応できます。

システム移行前にAWS CAFでセキュリティチェック

システムをAWSへ移行する前に、AWS Cloud Adoption Framework(CAF)を活用したセキュリティチェックを行うことが重要です。AWS CAFは、クラウド移行におけるベストプラクティスを提供し、ビジネスや技術要件に基づいた計画を策定するためのフレームワークです。特にセキュリティに関しては、IAMの適切な設定や暗号化、監査ログの有効化などを事前に確認することで、移行後のリスクを最小化できます。

CAFを用いたセキュリティチェックにより、セキュリティ基準を満たしつつ、安全なクラウド移行を実現することが可能です。

まとめ

AWSは強力なセキュリティサービスを提供しており、GuardDutyやIAMなどのツールを通じて、脅威の検出やアクセス制御が可能です。

しかし、AWSにおけるセキュリティ対策は、AWSと利用者の双方が責任を負う「責任共有モデル」に基づいています。AWSがインフラを保護する一方、利用者はデータや設定を適切に管理する必要があります。これにより、堅牢なセキュリティ環境を維持することが可能です。

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