Gemini in Cloud Operations有効化ガイド|AIで運用を効率化!
システム運用に携わるインフラエンジニアやSREの皆様、お疲れさまです。皆さんは、Cloud Logging、Cloud Monitoring、そしてGKEといった日々の運用に欠かせないツールに、強力なAIアシスタントが統合されているのをご存じでしょうか?
このAIツール「Gemini in Cloud Operations」の進化は目覚ましく、2025年8月にはGKEクラスタのコスト最適化に関する質問に直接回答できる機能が、2025年10月にはJiraなどの外部ツールと連携して対話できる機能が追加されるなど、運用現場の課題に寄り添い、進化を続けています。
これだけの強力な機能ですが、実はデフォルトでは有効になっていません。しかし、簡単なステップで有効化できるため、まだこのAIの力を活用していない方はぜひ有効化をおすすめします。
この記事では、そんなあなたのための「Gemini in Cloud Operations導入ガイド」として、具体的な活用例から有効化の手順まで、分かりやすくご紹介します。
Gemini in Cloud Operationsとは?
Gemini for Google Cloudは、Google Cloudの各サービスに統合された生成AI機能群の総称です。本記事で紹介する「Gemini in Cloud Operations」は、その中でも特にCloud Logging、Cloud Monitoring、GKEといった運用スイートにおけるAI支援機能を指します。
Gemini in Cloud Operationsは、これまで専門的なクエリ言語や深い知識が必要だった運用タスクを、自然言語での対話を通じて実行できるようにします。
Gemini in Cloud Operationsができること
Gemini in Cloud Operationsを上手く活用すると、システム運用は以下のようなことが実現できるようになります。
| できること | 詳細 |
|---|---|
| トイル(手作業)の大幅な削減 | ログの検索、クエリの作成、レポートの生成といった反復作業を自動化し、エンジニアの負担を軽減します。 |
| 障害解決時間の短縮(MTTRの改善) | AIによる迅速な原因分析と解決策の提示により、障害からの復旧時間を大幅に短縮します。 |
| 専門知識へのアクセシビリティ向上 | MQLや複雑なシステム挙動に関する専門知識がなくても、自然言語で高度な運用タスクを実行できます。 |
| プロアクティブな問題検知 | システムの異常な兆候を早期に検知し、問題が発生する前に対策を講じることを支援します。 |
| 創造的・戦略的業務への集中 | 運用エンジニアを日々のルーチンワークから解放し、システムの信頼性向上や将来のアーキテクチャ設計といった、より価値の高い業務に集中させます。 |
「Cloud Logging」における、Gemini活用
Cloud Loggingには、Geminiを直接組み込める機能が存在します。
しかし、この機能は初めから使えるわけではなく、利用を開始するにはいくつかの準備が必要です。この機能を有効化することで、従来のログビューアが、まるで専門家と対話できる分析ツールへと大きく進化します。
Geminiの追加でできること
| できること | 詳細 |
|---|---|
| ログのワンクリック分析 | 調査したいログの詳細画面で「Explain this log entry」ボタンをクリックするだけで、Geminiが自動で内容を分析します。 |
| 平易な日本語での解説 | 分析結果として、そのログが「なぜ記録されたか」「考えられる原因は何か」「次に何をすべきか」を、専門用語を避けた分かりやすい日本語で提示します。 |
| 調査時間の大幅な短縮 | これまで数十分かかっていた難解なエラーログの解読作業が数秒で完了し、専門外の領域でも迅速な初動対応が可能になります。 |
Geminiを有効化する手順
Geminiの強力な機能を利用するには、管理者による事前のセットアップが不可欠です。この準備は、主に3つのステップで構成されます。
1. APIの有効化
はじめに、利用したいGoogle Cloudプロジェクトで、Geminiが動作するためのAPIを有効化する必要があります。
まず、Google Cloudコンソールにログイン。画面左上のナビゲーションメニューから「APIとサービス」を探し、「ライブラリ」を選択します。APIライブラリのページが開いたら、上部にある検索ボックスに「Cloud AI Companion API」と入力して検索し、選択してください。
そして、次の画面で「有効にする」ボタンをクリックする。これだけで、あなたのプロジェクトでGeminiが動作するための基本的な準備が整います。この操作は数分で完了します。
2. 料金プランの確認
次に、Google Cloudコンソールの「料金」セクションから、自社の請求先アカウントがGeminiの利用契約を結んでいるのか、またはどの料金プランに該当するのかを確認します。
本稿執筆時点(2025年10月22日)において、Geminiの高度な運用支援機能(ログの分析、アラートの要約など)を本格的に利用するには、基本としてGoogle Cloudプロジェクトが「Gemini Enterprise」のエディションを契約している必要があります。
ただし、「Gemini Enterprise」を契約していない場合でも、プロジェクトごとに設定された一定の無料枠(例: 毎月の無料呼び出し回数など)の範囲内で、ログの要約といった一部の機能を試すことが可能です。機能の評価や、限定的な試用を目的とする場合に適しています。
3. 権限設定
最後に、実際にGeminiの機能を利用するユーザーに対して、適切な権限(IAMロール)を付与します。
再びGoogle Cloudコンソールにログイン。ナビゲーションメニューの「IAMと管理」セクションの中にある「IAM」を選択します。IAMの管理ページが表示されたら、「アクセス権を付与」または既存のユーザーの編集ボタンをクリックします。
権限を付与したいユーザーのメールアドレスを指定し、「ロールを割り当てる」のドロップダウンメニューをクリックします。検索フィルターに「Gemini for Google Cloud User」と入力して、表示されたロールを選択、保存したら設定完了です。
(※IAMロール名は変更される可能性があるため、表示されない場合、公式ドキュメントで最新のロール名をご確認ください。)
「Cloud Monitoring」における、Gemini活用例
Cloud Monitoringにも、Geminiを直接組み込める機能が存在します。
この機能を有効化することで、従来は専門的なクエリ言語(MQL)の知識が必要だったメトリクス分析が、自然言語での対話を通じて実行できるようになります。
Geminiの追加でできること
| できること | 詳細 |
|---|---|
| 自然言語でのグラフ作成 | Metrics Explorerで「GKEクラスタのCPU使用率をノードプールごとに表示して」のように具体的なリソースや条件を指定して日本語で指示すると、GeminiがMQL(Monitoring Query Language)案を生成します。 単純な指示では意図通りに動作しない場合もありますが、MQLの知識がなくても、対話を通じて高度なメトリクス分析の足がかりを得ることが可能です。 |
| アラート内容のインテリジェントな要約 | アラートが発生した際、関連する複数のメトリクスやログの情報をGeminiが横断的に分析し、問題の根本原因を示唆する簡潔なサマリーを自動で作成します。 |
| 障害対応の迅速化 | アラートの要約機能により、状況把握にかかる時間が劇的に短縮され、エンジニアは即座に具体的な復旧作業に着手できます。 |
Geminiを有効化する手順
Cloud MonitoringでGeminiを利用するための有効化手順は、先に解説した「Cloud Loggingにおける、Gemini活用例」で説明した手順と全く同じです。
同手順で、Cloud LoggingだけでなくCloud Monitoring上でもGeminiの機能が利用可能になります。
GKEにおける、Gemini活用例
Google Kubernetes Engine (GKE) にも、Geminiを直接組み込める機能が存在します。この機能を有効化することで、GKEの複雑なトラブルシューティングが、専門家との対話形式で実行できるようになります。
Geminiの追加でできること
| できること | 詳細 |
|---|---|
| 対話形式でのトラブルシューティング | 例えば、Podが起動しない(CrashLoopBackOff)などの問題が発生した際、GKEコンソールのチャット画面で「このPodがCrashLoopBackOffになっている原因は?」と具体的な状況を添えて質問すると、Geminiが関連するログやイベントを基に調査を開始します。 Geminiは考えられる原因とアクションの候補を提案します。ただし、提示された情報が常に正確とは限らないため、最終的な判断は運用者が行う必要があります。 |
| 原因の自動分析と特定 | GeminiがPodのログ、イベント、リソース設定などを自動で分析し、「メモリ不足(Out of Memory)が原因です」といったように、問題の核心を特定します。 |
| 具体的な解決策の提示 | 原因を特定するだけでなく、「コンテナのメモリリミットを引き上げてください」のように、次に取るべき具体的なアクションを提案し、迅速な問題解決を支援します。 |
Geminiを有効化する手順
GKEでGeminiを利用するための有効化手順も、先に解説した「Cloud Loggingにおける、Gemini活用例」で説明した手順と全く同じです。
同手順で、Cloud LoggingだけでなくGKE上でもGeminiの機能が利用可能になります。
まとめ
今回は、Google Cloudの運用スイートにAIアシスタントを組み込む「Gemini in Cloud Operations」の紹介と、有効化の方法を解説しました。
Cloud Loggingでのログ自動解説や、Cloud Monitoringでの自然言語によるグラフ作成、GKEでの対話形式のトラブルシューティング。これらはすべて、これまで専門的な知識と多くの時間を要した作業です。
Geminiは、これらの「トイル」を劇的に削減し、エンジニアがより創造的で価値の高い仕事に集中できる環境を実現します。非常に簡単な手順で有効化できるので、ぜひお試しください!