キーワードで検索

今日を知り、明日を変えるシステム運用メディア

AIでゼロデイ攻撃を防ぐ!SentinelOneのSecOpsチューニング術

AIでゼロデイ攻撃を防ぐ!SentinelOneのSecOpsチューニング術

サイバー攻撃は年々高度化し、特に未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃は、従来のシグネチャベースの対策では防ぎきることが困難です。 こうした状況下で、セキュリティチームは膨大なアラートの中から真の脅威を見つけ出すという、困難な作業に追われています。

SentinelOneは、このような現代の脅威に対抗するために設計された、AIを中核とする自律型サイバーセキュリティプラットフォームです。

この記事では、今日のSecOps(セキュリティオペレーション)が直面する最も困難な課題の一つである「ゼロデイ攻撃」に対し、AIを活用したセキュリティプラットフォーム「SentinelOne」がいかにして有効な対抗策となり得るのかを、具体的な検証結果と共にご紹介します。

この記事を読み終える頃には、AIがもたらす検知精度の向上と、多くの現場を悩ませる誤検知をいかに削減していくか、その具体的なイメージを掴んでいただけるはずです。

ゼロデイ攻撃とは何か?なぜ従来の対策では不十分なのか

ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの脆弱性が開発者によって発見・修正される前に、その弱点を悪用して行われるサイバー攻撃を指します。 修正パッチが存在しない「ゼロ日」を狙うため、対策が非常に難しいのが特徴です。

従来のアンチウイルス製品の多くは、既知のマルウェアの特徴を記録した「パターンファイル(シグネチャ)」と照合して脅威を検知する方式を採用しています。 この方式は既知の脅威には有効ですが、パターンが存在しない未知の攻撃や、ファイルとして実体を持たないファイルレス攻撃の前では無力に近いという課題がありました。

実際、多くの企業が膨大な数のセキュリティツールを導入しているにもかかわらず、その運用が複雑化し、かえってセキュリティリスクを高めているという指摘もあります。 SecOpsチームは、日々発生する無数のアラート、その多くが誤検知である可能性に忙殺され、本当に危険なインシデントを見逃すリスクに常に晒されているのです。

SentinelOneのAIはゼロデイ攻撃をどう検知するのか

SentinelOneは、こうした課題を克服するため、静的AIと動的AI(振る舞い検知)という2つのAIエンジンを駆使します。

静的AIによるファイル分析ファイルが実行される前に、AIがその構造を解析し、悪意のある特徴を持っていないかを判断します。
動的AIによる振る舞い検知プログラムの実行中の挙動をリアルタイムで監視し、マルウェア特有の不審な動き(例えば、異常なファイルの暗号化や外部サーバーへの不正な通信など)を検知します。
この「振る舞い」に着目することで、シグネチャが存在しない未知の脅威やゼロデイ攻撃であっても、その悪意ある意図を捉えることが可能になります。

SentinelOneの核心技術である「Storyline」は、エンドポイントで発生するすべてのアクティビティの関連性を自動で文脈化し、攻撃の一連の流れを可視化します。 これにより、単一の不審なイベントだけでなく、攻撃キャンペーン全体の把握が容易になり、SecOps担当者は迅速かつ正確に状況を判断できます。

【検証】SentinelOneの検知能力と実際の効果

SentinelOneの性能は、机上の理論だけでなく、現実の脅威を模倣した第三者機関による厳格なテストによって客観的に証明されています。特に、サイバーセキュリティ製品の評価におけるゴールドスタンダードとされる「MITRE Engenuity ATT&CK® Evaluations」や、実環境での攻撃耐性を評価する「SE Labs」のテスト結果は、その能力を明確に示しています。

これらの評価では、SentinelOneが単にマルウェアを検知するだけでなく、攻撃の兆候をいかに迅速に捉え、遅延なく対応し、そして誤検知を最小限に抑えるかが検証されています。

以下に、代表的な評価機関による検証結果の概要をまとめます。

MITRE Engenuity ATT&CK® Evaluations (2023, 2024)

脅威シナリオ例ロシアを拠点とするAPT(持続的標的型攻撃)グループ「Turla」や、ランサムウェアと破壊活動を行う「Wizard Spider」「Sandworm」などの攻撃手法を模倣。  
主要な結果(検知・保護)4年連続で100%の保護と100%の検知を達成。   評価された全ベンダーの中央値と比較して88%少ないアラート数を記録し、リアルタイムでの対応(遅延ゼロ)を実現。 
誤検知に関する結果テスト中に誤検知につながるような設定変更(Configuration Change)は一切行われず、実環境での信頼性の高さを示した。  

SE Labs (2020 – 2025)

脅威シナリオ例金融機関を狙う「FIN7」やカジノ・資源会社を標的とする「FIN10」などの攻撃グループが用いる、スピアフィッシングやファイルレス攻撃を再現。 
主要な結果(検知・保護)複数のテストにおいて、Total Accuracy Rating(総合精度評価)で100%を達成。   すべての攻撃を検知し、完全に保護したことが確認された。
誤検知に関する結果正当なアプリケーションを誤ってブロックするなどの誤検知(False Positive)はゼロであったと報告されている。 

検証結果が意味するもの

これらの結果がSecOpsチームにとって意味することは、大きく分けて二つあります。

第一に、「100%の検知・保護」という結果は、ゼロデイ攻撃を含む未知の脅威を見逃さない能力の高さを裏付けています。 SentinelOneは、攻撃の初期段階で脅威をブロックし、万が一侵入を許した場合でも、その後の活動を完全に可視化して封じ込めることが可能です。

第二に、「誤検知ゼロ」や「アラート数の少なさ」は、日々の運用負荷を大幅に削減することを意味します。  SecOps担当者は、大量の誤ったアラートに振り回されることなく、本当に注意を払うべき重大なインシデントに集中できるようになり、限られたリソースで最大限の効果を発揮するための鍵となります。

このように、SentinelOneは信頼性の高い第三者機関のテストを通じて、その卓越した検知能力と運用効率の高さを証明しており、SecOpsチームにとって強力な武器となり得るのです。

誤検知を削減する、チューニング方法

高い検知能力はセキュリティ製品の必須条件ですが、その一方で、正当な業務プロセスを誤って脅威と判断してしまう「誤検知」は、SecOpsチームの運用負荷を増大させる最大の要因の一つです。SentinelOneは、この課題に対処するため、環境に合わせて柔軟に検知ロジックを調整できる、洗練されたチューニング機能を提供します。

ここでは、誤検知を削減し、アラートの質を向上させるための具体的なアプローチを3つのステップで詳しく解説します。

基本のアプローチ:例外設定(Exclusions)の的確な活用

誤検知対応の第一歩は、信頼できると分かっているオブジェクトを検知対象から除外する「例外設定」です。これにより、開発ツールや業務アプリケーションなど、環境に固有の正当なアクティビティがアラートとして報告されるのを防ぎます。

SentinelOneでは、非常に多岐にわたる条件で例外を指定できます。代表的な例外タイプと、その効果的な使い方を以下に示します。

例外タイプ主な用途とチューニングのポイント
ファイルパス (Path)特定のディレクトリやファイルを除外します。開発環境のビルド用フォルダや、特定のアプリケーションの作業フォルダなど、範囲をできるだけ限定して指定するのがベストプラクティスです。
ファイルハッシュ (Hash)ファイルのハッシュ値(SHA-1など)に基づいて除外します。自社開発のツールなど、ファイルが不変であることが保証されている場合に最も安全で確実な方法です。
署名者ID (Signer Identity)ファイルのデジタル署名(証明書)に基づいて除外します。MicrosoftやAdobeなど、信頼できるベンダーのソフトウェアをまとめて除外したい場合に非常に有効です。
ファイルタイプ (File Type)特定の拡張子を持つファイル(例: .log, .tmp)に対する操作を除外します。広範囲に影響するため、乱用は避け、特定の脅威検知(静的AIなど)に対してのみ適用を検討します。
ブラウザタイプ (Browser Type)特定のブラウザ(Chrome, Edgeなど)からの脅威検知を除外します。特定の社内Webアプリケーションとの互換性問題などで利用します。

例外設定は強力ですが、設定を誤るとセキュリティホールになりかねません。基本原則は「最小権限」。つまり、除外範囲は必要最小限に留めることが重要です。

高度な制御:STARによるカスタムルールの作成

単純な例外設定では対応しきれない、より複雑な誤検知シナリオも存在します。「特定のユーザーが、特定のアプリケーションから、特定のサーバーに対して行う、この一連の操作」といった文脈を持つ良性の活動です。このようなケースで活躍するのが、STAR (Storyline Active Response) です。

STARは、エンドポイントの活動データをSQLに似たクエリで検索し、独自の検知ルールを作成できる強力な機能です。誤検知削減においては、特定の良性アクティビティのパターンに合致した場合に、アラートを自動的に抑制(Suppress)または解決(Resolve)するルールを定義できます。

項目具体的な活用シナリオ
目的業務上必要だが、セキュリティ的には不審と見なされがちな一連の振る舞いを、アラート対象から安全に除外する。
シナリオ例システム管理者がPowerShellを使い、リモートで複数のサーバーにパッチを適用する定常業務が、「悪意のある横展開活動」として誤検知されてしまう。
STARルールのロジックもし プロセス名powershell.exe
かつ 実行ユーザー特定の管理者アカウント
かつ 接続先IPアドレス管理対象サーバー群である
場合 この検知を脅威ではない(Benign)として自動的に解決する

このようにSTARを活用することで、「誰が」「何を」「どこに対して」といった文脈を理解した上で、きめ細やかなアラートのチューニングが可能となり、SecOpsチームはノイズに惑わされず、真の脅威に集中できます。

プロアクティブな運用:脅威ハンティングによるベースラインの理解

最高のチューニングは、自分たちの環境を深く理解することから始まります。SentinelOneの「Deep Visibility」機能を使った脅威ハンティングは、そのための最も効果的な手段です。

脅威ハンティングは、インシデント発生後に脅威を探すだけでなく、平常時のシステムの振る舞い、つまり「ベースライン」を把握するためにも活用します。

例えば、ある開発者のPCから頻繁にネットワークスキャンに似たアラートが上がる場合、Deep Visibilityでその挙動を調査します。すると、それが特定のデバッグツールの正常な動作であることが判明するかもしれません。この知見に基づき、「このツールからの通信に限っては例外とする」という的確なチューニング(例外設定やSTARルール)を施すことができます。

この「調査→理解→チューニング」というサイクルを回すことで、環境は継続的に最適化され、誤検知は減少し、アラートの信頼性は向上していきます。これは、受動的なアラート対応から、能動的なセキュリティ運用へと進化する上で不可欠なプロセスです。

まとめ

本記事では、AIを活用したSentinelOneが、いかにしてゼロデイ攻撃という現代の脅威に対抗し、同時にSecOpsチームを悩ませる誤検知の問題を解決するのかを、具体的な検証データとチューニング手法を交えて解説しました。

振る舞いを基にしたAIによる自律的な検知・防御能力は、MITREやSE Labsといった第三者機関のテストでも証明されており、その信頼性は非常に高いと言えます。しかし、その力を最大限に引き出す鍵は、導入後の「運用」にあります。環境に合わせた的確なチューニングこそが、アラートのノイズを減らし、チームが真の脅威に集中できる環境を実現します。

もしあなたが日々の大量のアラートに追われているなら、次の一歩として、まずは最も頻繁に発生している誤検知を一つ特定してみてはいかがでしょうか。それが特定のアプリケーションからであれば「例外設定」で、特定の管理業務に起因するのであれば「STAR」によるカスタムルールで対応できないか、本記事を参考に検討してみてください!

24時間365日のシステム運用監視サービス「JIG-SAW OPS」を提供する、JIG-SAW株式会社のOps Today編集部です。 サーバー運用監視実績50,000台の実績をもとに、システム運用監視に役立つ情報をお届けします!

最新情報をお届けします!

最新のITトレンドやセキュリティ対策の情報を、メルマガでいち早く受け取りませんか?ぜひご登録ください

メルマガ登録

最新情報をお届けします!

最新のITトレンドやセキュリティ対策の情報を、メルマガでいち早く受け取りませんか?ぜひご登録ください

メルマガ登録