【システム運用保守の仕事内容】監視から障害対応まで業務内容を紹介
システムが止まると業務が停止し、企業活動に大きな影響を与えます。24時間365日体制でシステムを見守り、障害発生時には迅速に対応し、安定稼働を支えるのがシステム運用保守の仕事です。
本記事では、システム運用保守の具体的な仕事内容から、必要なスキル、企業が抱える課題と解決策まで、詳しく解説します。
将来性はあるのかなど、システム運用保守の仕事に興味がある方はぜひ参考にしてください。
システム運用保守の全体像
現代社会において、企業活動はITシステムに大きく依存しています。システムが止まれば業務が滞り、顧客満足度の低下や企業の信用問題に直結することも。
だからこそ、システムの安定稼働を支えるシステム運用保守は、企業にとって必要不可欠な存在です。
システム運用保守の全体像を理解するために、「運用」と「保守」の違い、システム運用保守が担う重要な役割について解説していきます。
システム運用とシステム保守の違いとは?
システム運用とシステム保守はどちらもシステムの安定稼働に欠かせないものですが、その役割は異なります。
システム運用は、システムが日々円滑に動くよう、監視や定期的なメンテナンスを行う予防的な業務です。一方、システム保守は、システム改善や障害発生時のトラブル対応など、システムを復旧させる治療的な業務と言えるでしょう。
どちらも専門知識が必要ですが、運用は日々のルーティンワーク、保守は突発的な対応が多い点が特徴です。企業の円滑な活動を支えるため、両者が連携し、システムの安定稼働を実現しています。
システム運用保守が担う重要な役割
システム運用保守は、企業のITインフラを安定稼働させ、ビジネスの継続性を支える重要な役割を担っています。
具体的には、システムの監視、障害対応、定期的なメンテナンスなどを通して、システムが常に最適な状態で稼働できるよう努めます。
また、障害発生時には迅速な対応を行い、業務への影響を最小限に抑えます。
システム運用保守は、企業の円滑なビジネス活動を支える縁の下の力持ちと言えるでしょう。
システム運用保守の仕事内容
システム運用保守の仕事内容は、大きく以下の5つに分けられます。
24時間365日体制のシステム監視業務
システム監視は、システムの安定稼働を支える重要な業務です。24時間365日体制で、サーバーやネットワーク機器などの稼働状況を監視し、異常をいち早く検知します。
具体的な業務内容は、CPU使用率やメモリ使用率などのリソース状況、ログの監視、セキュリティ状況の確認などです。
異常を検知した場合は、迅速に原因を特定し、対応マニュアルに沿って復旧作業を行います。必要に応じて、開発チームやベンダーへのエスカレーション、関係部署への報告なども行います。
システムの安定稼働を支える保守業務
システムの安定稼働を支える保守業務は、システムが常に最適なパフォーマンスを発揮できるようにするための予防医療のようなものです。
具体的には、ハードウェアやソフトウェアの定期的なメンテナンス(アップデート、パッチ適用など)、システム負荷の監視とボトルネックの解消、セキュリティ対策の実施などが含まれます。
これらの作業を通して、システムの安定稼働を維持し、障害発生のリスクを低減します。また、パフォーマンスの最適化により、システムの処理速度向上やユーザー体験の向上にも貢献します。
障害発生時の迅速な対応
システム障害は企業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、システム運用保守では迅速かつ的確な対応が求められます。
具体的には、障害発生を検知したら、状況を素早く把握し原因を特定します。ログ解析やシステムの状態確認など、様々な情報を収集・分析し、障害を切り分けます。
原因特定後、速やかに復旧作業に着手。状況に応じて、バックアップからの復旧、設定変更、プログラム修正などを行います。復旧後は再発防止策を検討し、システムの安定稼働に貢献します。
障害対応は、迅速な判断と行動、幅広い技術知識が必要とされる、システム運用保守の重要な業務の一つです。
トラブル発生要因の究明・対策
トラブル発生要因の究明・対策は、システムの安定稼働を長期的に維持するための重要な業務です。障害が発生した際、根本原因を深く掘り下げて分析し、再発防止策を立案・実行します。
具体的には、ログ解析やシステム構成の調査、関連部署へのヒアリングなどを通して、障害の発生原因を特定。ハードウェアの交換、ソフトウェアの修正、設定変更など、具体的な対策を実施します。
これらの業務はシステムの信頼性向上や運用効率化に繋がり、企業のビジネスを支える重要な役割を果たします。
その他の付随業務
システム運用保守の業務は、監視・保守・障害対応だけにとどまりません。他にも様々な付随業務があります。
例えば、システム構成図や運用手順書の作成・更新といったドキュメント管理業務は、システムの全体像を把握し、円滑な運用を行う上で欠かせません。
ハードウェアやソフトウェアのベンダーとの連携・調整も重要な業務の一つです。障害発生時の対応依頼やバージョンアップ情報など、ベンダーとの円滑なコミュニケーションが求められます。
さらに、ユーザーからの問い合わせ対応は、システム操作に関する質問や障害発生時の状況説明など、丁寧かつ分かりやすい説明が求められます。
これらの付随業務は、システム運用保守をスムーズに進める上で重要な役割を果たしています。
システム運用における運用方法
システム運用保守の仕事内容を理解したところで、次はシステム運用における具体的な「運用方法」を見ていきましょう。
システムの運用方法は、大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つに分けられます。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合った運用方法を選択することが、効率的かつ安定したシステム運用を実現するポイントです。
それぞれの運用方法について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社内にサーバーやネットワーク機器などのITインフラを構築し、システムを運用する方法です。
自社で全てを管理するため、セキュリティ面での安心感や、システムのカスタマイズ性の高さがメリットと言えるでしょう。
一方で、初期費用が高額になりやすく、運用・保守には専門知識を持った人材が必要となります。また、システムの拡張や変更にも手間と時間がかかるため、柔軟性に欠ける点がデメリットです。
機密性の高い情報を扱う企業や、独自性の高いシステムを運用する企業にとっては、オンプレミス型が適している場合があります。
クラウド型
クラウド型は、Amazon Web Services (AWS) や Microsoft Azure などのクラウドサービスプロバイダーが提供するインフラを利用してシステムを運用する方法です。
初期費用を抑えられ、必要な時にリソースを柔軟に増減できるため、ビジネスの変化に迅速に対応できる点が大きなメリットです。
一方、データを外部に預けることになるため、セキュリティ対策が重要となります。また、クラウドサービスプロバイダーのサービス内容に依存するため、カスタマイズ性が制限される場合もあります。
ここまで、オンプレミス型とクラウド型、それぞれの運用方法の特徴を見てきました。どちらを選択するかは、企業のニーズや状況によって異なりますが、いずれの場合も、システムを安定稼働させるためには、専門的なスキルを持った人材が不可欠です。
システム運用保守に必要なスキル
システム運用保守の仕事には、大きく分けて、技術スキルとソフトスキルの2つが求められます。
技術スキルは、システムの仕組みや運用に関する専門知識、ソフトスキルは、業務を円滑に進めるために必要なコミュニケーション能力などを指します。
これらのスキルをバランス良く身につけることで、システム運用保守のプロフェッショナルとして活躍できます。
技術スキル
システム運用保守では、以下のような技術スキルが求められます。
OSに関する知識
OSに関する知識は、システム運用保守の基盤となるスキルです。LinuxやWindows ServerといったサーバーOSの基礎知識、コマンド操作、ファイルシステム管理、プロセス管理、ユーザー管理など、幅広い知識が求められます。
特にLinuxは、オープンソースであり、多くのサーバーで採用されているため、習得しておくべき重要なOSの一つです。コマンド操作や設定ファイルの編集など、深い理解が必要になります。
OSの知識は、システムの監視、障害対応、保守など、あらゆる業務で必要とされます。OSの仕組みを理解することで、問題発生時の原因特定や解決策の検討をスムーズに行うことが可能です。
ネットワークに関する知識
ネットワークに関する知識は、システムの通信を支える重要なスキルです。TCP/IP、ルーティング、スイッチングといったネットワークの基礎知識に加え、ネットワーク機器の設定・管理、トラブルシューティング能力も必要とされます。
具体的には、ネットワーク構成の把握、通信経路の確認、ネットワーク機器のログ解析などを行い、問題発生時には迅速に原因を特定し、対応します。また、セキュリティ対策として、ファイアウォールやVPNなどの設定・管理も行います。
ミドルウェアに関する知識
ミドルウェアに関する知識は、システムの安定稼働を支える上で欠かせません。
Webサーバー(Apache、Nginxなど)、アプリケーションサーバー(Tomcat、JBossなど)、データベースサーバー(MySQL、Oracleなど)といった様々なミドルウェアの基礎知識、設定・管理、トラブルシューティング能力が必要です。
具体的には、ミドルウェアのインストール、設定変更、ログ解析、パフォーマンスチューニングなどを行います。また、障害発生時には、迅速に原因を特定し、適切な対応を行います。
ミドルウェアは、アプリケーションとOSの橋渡し役として重要な役割を果たすため、深い知識と経験が求められる分野です。
データベースに関する知識
データベースに関する知識は、システムのデータを安全かつ効率的に管理するために必要不可欠です。
MySQL、Oracle、PostgreSQLといった主要なデータベースの基礎知識、SQLによるデータ操作、バックアップ・リカバリ、パフォーマンスチューニングなどのスキルが求められます。
具体的には、データベースのインストール、設定変更、データの抽出・更新・削除、バックアップ取得、パフォーマンス監視などを行います。
データベースは、企業の重要な情報を扱うため、高い信頼性とセキュリティが求められる分野です。
プログラミングに関する知識
システム保守においては、既存システムの改修や機能追加が発生するため、プログラミングに関する知識も重要です。
特に、JavaScript、Java、C#、VB.NETといった、システム開発で広く利用されているプログラミング言語の知識があると、保守作業を効率的に進めることができます。
具体的には、プログラムの修正、バグの修正、機能追加などを行います。また、システムの動作を監視するためのスクリプトを作成したり、ログ解析ツールを開発することもあります。
プログラミングスキルは、システムの改善や効率化に繋がり、運用保守業務の質を高める上で役立ちます。
ソフトスキル
技術スキルに加えて、以下のソフトスキルも重要です。
コミュニケーション能力
システム運用保守では、技術スキルに加えてコミュニケーション能力も非常に重要です。
障害発生時には、状況を正確に把握し、関係部署やベンダーに的確に伝えなければなりません。また、ユーザーからの問い合わせに対しては、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明する能力も求められます。
さらに、チーム内での情報共有や連携をすることで、チーム全体の効率を高め、システムの安定稼働に貢献します。
コミュニケーション能力は、技術スキルと同様に、システム運用保守業務を成功させるための重要な要素です。
問題解決能力
システム運用保守では、予期せぬトラブルや障害が発生することがあるため、問題解決能力は重要なスキルです。
具体的には、問題の原因を特定し、論理的に分析する能力、状況に応じて適切な解決策を迅速に判断し、実行する能力が求められます。
また、問題解決の過程で、情報収集能力やコミュニケーション能力も必要となります。関連部署やベンダーと連携しながら、問題解決に向けて主体的に行動できる能力が重要です。
論理的思考力
システム運用保守では、論理的思考力が欠かせません。障害発生時に原因を特定し、最適な解決策を導き出すためには、情報を整理し論理的に分析する能力が求められます。
例えば、複数のエラーログから関連性を分析したり、システム構成を把握して問題箇所を特定したりする際に、論理的思考力が役立ちます。
また、再発防止策の検討や、システム改善提案においても、論理的な説明が重要です。
状況判断能力
システム運用保守では、刻々と変化する状況下で、迅速かつ的確な判断が求められます。障害発生時には、規模や影響範囲を素早く見極め、適切な対応を選択することが重要です。
例えば、システム全体を停止させるべきか、部分的な対応で済むのか、あるいは関係部署への連絡が必要かなど、状況に応じて最適な判断を下すことが求められます。
また、優先順位の判断やエスカレーションのタイミングなど、的確な状況判断能力は、システムの安定稼働と業務への影響を最小限に抑えるために不可欠です。
ストレス耐性
システム運用保守の仕事では、予期せぬトラブルや障害への対応、厳しい納期への対応など、ストレスを感じる場面が多くあるため、高いストレス耐性が求められます。
特に、障害発生時には、迅速かつ的確な対応が求められるため、大きなプレッシャーを感じることがあります。
また、夜間や休日の呼び出し対応など、不規則な勤務体制もストレスの原因となることもあるでしょう。
これらのストレスに適切に対処し、冷静さを保ちながら業務を遂行できる能力が、システム運用保守の現場では重要視されています。
しかし、システム運用保守の仕事できついと感じるのは、ストレス耐性が必要な場面だけではありません。
より詳しく知りたい方は、「システム運用保守はきついのか?実態や解消方法・将来のキャリアパスについて解説」の記事もご覧ください。
システム運用保守のよくある課題と解決策
システム運用保守は、企業のITインフラを支える重要な役割を担いますが、運用保守業務には様々な課題がつきものです。
ここでは、よくある課題を3つ取り上げ、それぞれの解決策を解説します。
人材不足・スキル不足
システム運用保守は専門知識が必要な業務ですが、慢性的な人材不足やスキル不足が課題となるケースが多く見られます。特に、最新技術やセキュリティに関する知識を常にアップデートしていくことは容易ではありません。
人材不足は、業務の属人化や担当者の負担増加に繋がり、システム障害発生時の対応遅延など、企業活動に大きな影響を与える可能性があります。
また、スキル不足は、セキュリティリスクの増大やシステムの安定稼働の妨げになることも懸念されます。
このような課題を抱える企業にとって、専門知識と経験を持つ外部パートナーへのアウトソーシングは、有効な解決策の一つと言えるでしょう。
属人化
システム運用保守において属人化は、特定の担当者に業務が集中し、その人しか対応できない状態のことです。
属人化は、担当者の負担増加、業務の引き継ぎの難しさ、担当者不在時の対応遅延など、様々な問題を引き起こします。
属人化の原因としては、業務マニュアルや手順書が整備されていないこと、情報共有が不十分であること、特定の担当者にしか分からないシステム構成になっていることなどが挙げられます。
属人化を解消するためには、業務の標準化、ナレッジの共有、システム構成の見える化などが有効です。
コミュニケーション不足
システム運用保守では、開発チーム、ベンダー、利用者など、多くの関係者との連携が欠かせません。
しかし、コミュニケーション不足は、情報共有の遅れや誤解を生み、業務効率の低下やトラブルに繋がることがあります。
例えば、障害発生時の対応状況の共有が不十分だと、対応の遅れや混乱を招く可能性があります。また、システム変更に関する情報共有が不足すると、予期せぬトラブルが発生することもあります。
円滑なコミュニケーションは、システム運用保守の質を高める上で非常に重要です。コミュニケーション不足を解消し、チームワークを高めることで、システムの安定稼働を実現できます。
このような課題を乗り越え、システム運用保守の質を高めていくことは、企業の成長を支えるだけでなく、担当者自身のキャリアアップにも繋がります。
システム運用保守の将来性
企業のIT化が加速する現代において、システム運用保守の重要性はますます高まっています。
社会インフラから日常生活まで、あらゆる場面でシステムが活用される中、安定稼働を支えるシステム運用保守の需要は、今後も拡大していくと予想されます。
特に、クラウド化やAI、IoTなどの最新技術の導入が進むことで、システムはますます複雑化・高度化しています。それに伴い、システム運用保守の専門性も求められるようになり、高度なスキルを持つエンジニアの価値はさらに高まるでしょう。
システム運用保守は、安定した需要と将来性が見込まれる魅力的な分野です。
システム運用保守の将来性について、さらに詳しく知りたい方は、「システム運用保守の将来性とは?現場の課題解決に向けた戦略を解説」の記事もぜひご覧ください。
まとめ
本記事では、システム運用保守の仕事内容、必要なスキル、企業が抱える課題と解決策について解説しました。
システム運用保守は、企業のITインフラを支える重要な役割を担っており、専門的な知識とスキルが求められる仕事です。
しかし、人材不足や属人化、コミュニケーション不足といった課題も抱えています。これらの課題を解決し、システムの安定稼働を実現するためには、専門知識を持った人材の確保や、業務の標準化、コミュニケーションツールの活用などが重要となります。
システム運用保守は、企業の成長を支えるだけでなく、担当者自身のキャリアアップにも繋がる魅力的な仕事です。
本記事が、システム運用保守の仕事に興味を持つ方々の一助となれば幸いです。