急成長するサイバー保険市場 活用方法は?
サイバー攻撃の脅威がますます高まる中、企業や個人を守るためのサイバー保険市場が急速に成長しています。複雑化するサイバーリスクに対して、どのように備え、どのように保険を活用すればよいのでしょうか。今回は、サイバー保険に関する最新の動向と具体的な活用方法を解説します。
高まるサイバー攻撃のリスク
近年、サイバー攻撃のリスクが急速に増加しています。たとえば、令和5年の情報通信白書※1によれば、2015年では632億パケットであったサイバー攻撃関連の通信量は、2022年には5226億パケットと約10倍に増加しておりサイバー攻撃関連の通信は年々増加傾向にあります。
また、とあるセキュリティ企業はランサムウェア攻撃の被害額は2022年に1045億円と推定しており、これらのデータからサイバー攻撃が経済や社会に深刻な影響を与えていることがうかがえます。
※1出典:総務省「令和5年度版情報通信白書」図表4-10-2-1より
サイバー保険とは?
年々サイバー攻撃リスクが高まっているといったようなこのような背景もあり、サイバー保険に対する注目度も高まっています。
サイバー保険とは、企業や個人がサイバー攻撃やデータ漏洩などのサイバーリスクに対処するための保険であり、ハッキング、ランサムウェア攻撃、データ侵害などによって発生する財務損失や対応費用をカバーします。サイバー攻撃のリスクが増大する中、サイバー保険は重要なリスク管理ツールとなっています。
サイバー保険を提供している企業の例としては、以下が挙げられます。
会社名 | 概要 | サービスページ |
東京海上日動火災保険 | 幅広いサイバー保険商品、企業のニーズに応じたカスタマイズ | サイバーリスク保険 |
三井住友海上火災保険 | サイバー攻撃に対する包括的な保険プラン、リスク分析サービス | サイバープロテクター |
エーオンジャパン株式会社 | グローバルな視点でのリスク管理とサイバー保険 | サイバーリスクへのソリューション |
アメリカの大手保険会社であるマーシュ・アンド・マクレナンが2024年9月に発表したホワイトペーパー※3によると、サイバー保険市場は近年著しい成長を遂げており、2027年には総保険料が280億ドルを超え、2023年の2倍以上になると予想されています。
※3参考:Marsh McLennan、Zurich「Closing the cyber risk protection gap」
サイバー保険の注意点と活用方法
一方で、サイバー保険の利用には注意点もあります。上述したマーシュ・アンド・マクレナンのレポートによれば、サイバー攻撃による保険金の支払額と経済的損失の間には、約9000億ドルのリスク保護のギャップが存在するとされています。多くの企業は、サイバー保険の掛け金に対して十分な補償が受けられていない状況です。
サイバー保険をうまく活用するためには、以下のような観点を押さえておくべきでしょう。
リスク評価の定期的な見直し
企業は自社のサイバーリスクを正確に評価し、それに応じた保険を選ぶべきです。特にサイバー攻撃に関する状況は日々大きく変化しますので、定期的な見直しをフローとして業務に組み込むことが重要でしょう。
保険会社との密なコミュニケーション
上記見直しの取り組みには、保険会社との密なコミュニケーションが重要です。具体的なリスクやニーズを共有することで、最適な保険内容を設計してもらうべきです。また、インシデント発生時にも迅速に対応してもらうため、日頃からの良好な関係構築が重要です。
包括的なセキュリティ対策と併用
サイバー保険はあくまで補助的なものです。根本的にはサイバー攻撃の被害を受けないことが何より重要です。基本的なセキュリティ対策やインシデント対応計画をしっかりと整備することを第一に取り組みます。
サイバー保険はあくまで補助的なものとして活用すべき
サイバー保険の掛け金と補償額のギャップを踏まえると「サイバー保険に入っていれば安心」という考え方は危険です。サイバー攻撃への対策を十分に行ったうえで、補助的な対策としてサイバー保険を活用するというスタンスが求められます。
ただし、サイバーセキュリティに関する脅威が今後も拡大していくことも踏まえると、サイバー保険に関する動向も大きく変化していくことが予想されます。保険会社間の競争強化が進むことで、よりよい補償プランが提供されることも考えられるでしょう。