【2024年版】AWSコスト計算ツール「AWS Pricing Calculator」の見積もり方法や使用時の注意点を解説
AWSの利用コストを正確に見積もることは、企業にとって重要な課題です。AWS Pricing Calculatorは、サービスやリソースのコストを簡単にシミュレーションできる強力なツールです。
本記事では、この計算ツールの使い方や、見積もり時に注意すべきポイントを詳しく解説します。AWSの導入や最適化を検討している方にとって、コスト管理の鍵となる情報が満載です。
AWSのコスト計算ツールとは
AWSのコスト計算ツールは、AWSの幅広いサービスやリソースを利用する際に、事前にコストを予測し、適切な予算管理を行うために設計されたツールです。
AWSでは膨大な数のサービスやリソースが提供されており、それぞれの料金体系は非常に複雑です。これらを正確に把握するためには、詳細な見積もりが不可欠となります。AWSのコスト計算ツールは、こうした課題を解決するために活用でき、企業のクラウド利用を最適化する大きな助けとなります。
AWS Pricing Calculatorとは
AWS Pricing Calculatorは、AWSが公式に提供しているコスト見積もりツールです。ユーザーは、特定のAWSサービスやリソースを選択し、必要な量や期間を入力することで、そのサービスの利用にかかるコストを簡単に算出することができます。特徴的なのは、単なる金額表示だけでなく、さまざまなオプションを選択してシナリオ別にコストを比較できる点です。また、料金は地域やサービスの種類によって変動するため、AWS Pricing Calculatorを使うことで、地域に応じた正確な料金を知ることが可能です。特に、これからAWSの利用を開始する企業や、既存のAWS環境を最適化したいと考えている企業にとっては、必須のツールと言えるでしょう。
ざっくりAWS
「ざっくりAWS」は、日本語で利用できるAWSのコスト計算ツールの一つで、AWSの公式ツールではないものの、日本のエンジニアコミュニティにより提供されている有用なツールです。このツールの特徴は、その名の通り、「ざっくり」とした見積もりを素早く計算できる点にあります。複雑な設定や詳細なサービス選択をせずに、基本的なリソースのコストを簡単に把握したい場合に便利です。例えば、EC2やS3、RDSなどの基本的なAWSサービスのコストを素早く見積もることができ、初心者にとって使いやすいツールとなっています。しかし、詳細なコスト分析や複雑なシナリオの比較には向かないため、あくまでざっくりとした見積もりを得たい場合に利用するとよいでしょう。
AWS簡易見積りツールは廃止されている
以前、AWSでは「簡易見積りツール」という名称のコスト見積もりツールが提供されていましたが、2023年3月31日にこのツールは廃止されました。簡易見積りツールは、AWSのサービスを利用する際の基本的なコストを簡単に見積もるためのものでしたが、より詳細で正確な見積もりを行うために、現在はAWS Pricing Calculatorに統合されています。簡易見積りツールが廃止された背景には、AWSのサービスの多様化や料金体系の複雑化があり、より精度の高い見積もりが必要とされるようになったためです。そのため、現在ではAWS Pricing Calculatorを使って、包括的なコスト見積もりを行うことが推奨されています。
AWSコスト計算ツールの主な機能
AWSのコスト計算ツールであるAWS Pricing Calculatorは、コストの予測や管理に役立つ多彩な機能を備えています。これにより、AWSサービスの利用コストを詳細に把握し、予算管理や最適な構成の選定が容易になります。以下に、主な機能について詳しく解説します。
サービスごとの料金を表示
AWS Pricing Calculatorの最も基本的な機能の一つは、AWSが提供する各サービスごとの料金を個別に表示できる点です。ユーザーはEC2、S3、RDSなど、利用予定のサービスを選択し、それぞれのサービスに関してインスタンスのタイプ、ストレージの容量、トラフィック量などの条件を入力することで、詳細な料金を確認できます。これにより、サービスごとのコスト構成を理解し、どの部分がコストを押し上げているかを把握することができます。また、オプションを調整しながら、複数のシナリオでコストの比較が可能です。
全体の合計料金を表示
個別のサービスの料金だけでなく、AWS Pricing Calculatorはすべてのサービスの料金を合算し、全体のコストを一括で表示します。これにより、AWSのインフラ全体にかかるトータルコストを把握しやすくなり、予算管理やコスト削減のための分析が可能になります。たとえば、EC2インスタンスやS3ストレージ、データ転送コストなど、複数のサービスを利用する場合でも、全体の見積もりを一目で確認できるため、コスト全体のバランスを考慮した計画が立てやすくなります。
アーキテクチャに合わせて階層型の見積もりが可能
AWS Pricing Calculatorでは、単一のサービスごとに見積もるだけでなく、より複雑なシステムアーキテクチャに基づいた階層型の見積もりが可能です。これは、クラウド環境を利用した大規模なシステムや、複数のサービスが連携する構成を持つプロジェクトにとって非常に有用です。たとえば、Webアプリケーションのフロントエンド、バックエンド、データベース、キャッシュなど、各レイヤーのサービスを個別に設定し、それぞれの階層ごとにコストを積み上げて、全体の構成に基づいた見積もりを作成できます。これにより、システム全体のコストを精密に把握し、構成変更によるコスト影響を可視化できます。
見積もりの保存
AWS Pricing Calculatorでは、作成した見積もりを保存する機能があります。これは、複数のシナリオを検討したり、プロジェクトの進捗に合わせて見積もりを更新したりする際に非常に便利です。保存した見積もりはいつでも再編集が可能であり、クラウドの利用計画に基づいて将来的なコストを定期的に見直すことができます。また、複数の見積もりを保存し、異なる構成間のコスト比較も簡単に行えます。
見積もりのエクスポート
作成した見積もりは、エクスポート機能を使って外部ファイルとして保存できます。この機能は、見積もり結果をチームメンバーや顧客に共有したい場合や、プロジェクトの予算策定に使用する資料として提出する際に便利です。エクスポートは、通常PDFやCSV形式で行われ、PDF形式では見積もり内容をそのまま視覚的に確認でき、CSV形式ではデータをさらに加工して分析が可能です。この機能を活用すれば、見積もりの結果をドキュメントとして保管したり、会議やプレゼンテーションで活用することができます。
AWSコスト計算ツールを使用する際の流れ
AWS Pricing Calculatorを効果的に使用するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。これにより、必要なサービスやリソースの正確な見積もりを行い、予算や計画に役立てることができます。以下では、具体的な手順について説明します。
使用するAWSサービスをリストアップ
最初に行うべきは、プロジェクトで使用する予定のAWSサービスをリストアップすることです。AWSは膨大な数のサービスを提供しており、その中から必要なものを選定する作業は、コスト見積もりの基盤となります。たとえば、Webアプリケーションを運用する場合、EC2(仮想サーバ)、S3(ストレージ)、RDS(データベース)、CloudFront(コンテンツ配信)などが必要になるでしょう。使用するサービスが明確でないと、正確な見積もりが困難になるため、あらかじめシステムアーキテクチャや用途に基づいて必要なサービスを把握しておくことが重要です。
それぞれのサービスの利用量を考える
次に、リストアップしたサービスに対して、それぞれの利用量を見積もる必要があります。AWSの料金は基本的に使用量に応じた従量課金制のため、リソースの使用量や規模を正確に設定することで、より現実に即した見積もりが可能となります。たとえば、EC2インスタンスのサイズや稼働時間、S3のデータ保存量、RDSのデータベースインスタンスの種類と使用時間などが重要な要素です。これらの要件は、現在のトラフィックやデータ量、予測される成長をもとに考慮します。プロジェクトの初期段階では、これらの数値は概算になるかもしれませんが、実際の利用に基づいて調整していくことができます。
AWS Pricing Calculatorで実際に見積もりを行う
リストアップしたサービスと利用量が揃ったら、AWS Pricing Calculatorを使って実際に見積もりを行います。
まず、AWS Pricing Calculatorのインターフェースにアクセスし、必要なサービスを一つずつ選択します。それぞれのサービスに対して、インスタンスの種類、ストレージのサイズ、転送量などの詳細な条件を設定し、利用シナリオに応じた見積もりを作成します。
ツール内では複数のシナリオを作成できるため、例えば異なるリソース構成を比較したり、コスト削減の方法を検討したりすることが可能です。
見積もりが完成したら、その結果をもとにコストの全体像を確認します。また、見積もりは保存やエクスポートが可能なので、チーム内で共有しながら、最適なリソース構成と予算を検討することができます。見積もりを定期的に見直し、プロジェクトの進行や使用量に応じて更新していくことが推奨されます。
【実践】AWS Pricing CalculatorでEC2の見積もり
AWS Pricing Calculatorを使用して、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)のコスト見積もりを行うプロセスは、クラウドインフラの予算計画において非常に重要です。EC2はAWSの中でも特に人気のあるサービスで、さまざまな構成が可能なため、コストを正確に見積もるためには詳細な設定が必要となります。ここでは、AWS Pricing Calculatorを使ってEC2のコストを見積もるための具体的な手順を説明します。
リージョンを選択
最初に行うステップは、AWSのどのリージョンでEC2を利用するかを選択することです。AWSは世界中にデータセンターを持っており、リージョンによって提供されるサービスの料金が異なります。
たとえば、東京リージョン、オレゴンリージョン、フランクフルトリージョンなどがあります。選んだリージョンにより、EC2のインスタンス料金やデータ転送コストが変わるため、プロジェクトやアプリケーションが主にどの地域で利用されるかを考慮し、適切なリージョンを選択しましょう。
サービス群からEC2を探す
次に、AWS Pricing Calculatorの「サービス」セクションでEC2を選択します。AWSには多種多様なサービスが用意されていますが、その中でもEC2は「コンピューティング」カテゴリに分類されています。サービス一覧からEC2を探し出して選択すると、EC2に関連するさまざまな構成オプションが表示されます。
必要な情報を入力
EC2の見積もりを作成する際には、具体的なインスタンスの設定を細かく入力する必要があります。以下に、主な設定項目について詳しく説明します。
テナンシー
テナンシーとは、EC2インスタンスが他のユーザーとハードウェアを共有するかどうかを決定するオプションです。デフォルトでは「共有テナンシー」が選択されており、これは複数のユーザーが同じ物理サーバー上でインスタンスを共有する設定です。より高いセキュリティやパフォーマンスが必要な場合は、「専用テナンシー」を選択することも可能です。専用テナンシーを選ぶとコストは上がりますが、他のユーザーと物理サーバーを共有しないため、完全に専有された環境でインスタンスを稼働させることができます。
OS
次に、EC2インスタンスで使用するオペレーティングシステムを選択します。AWSは、Linux、Windows、または特定のディストリビューションのLinux(例: Amazon Linux、Ubuntu、Red Hatなど)をサポートしています。選択するOSによって、インスタンスの料金が異なります。たとえば、Windowsのライセンスは追加のコストがかかるため、Linuxよりも高くなる傾向があります。使用するアプリケーションやシステム要件に応じて、最適なOSを選択することが重要です。
インスタンス数
インスタンス数は、見積もりに含めるEC2インスタンスの数を設定する項目です。単一のインスタンスで稼働する場合もあれば、負荷分散や可用性を確保するために複数のインスタンスを利用するケースもあります。この設定では、実際に必要なインスタンス数を入力し、それに基づいたコストを計算します。インスタンス数が増えるほどコストも比例して上がるため、必要なインスタンスの数を慎重に検討することが求められます。
インスタンスタイプ
インスタンスタイプは、EC2インスタンスの計算能力やメモリ、ストレージ性能を決定する最も重要な設定項目です。AWSでは、用途に応じてさまざまなタイプのインスタンスを提供しており、一般的なt3.microや高パフォーマンスなm5.large、GPU搭載のp4dなど、多種多様な選択肢があります。選択するインスタンスタイプに応じてコストが大きく変わるため、アプリケーションの負荷や使用シナリオに合わせた最適なインスタンスを選ぶことが重要です。CPUやメモリの要求に応じて、適切なサイズのインスタンスを選択し、コストとパフォーマンスのバランスを取ります。
支払いオプション
支払いオプションは、EC2のコストに大きく影響を与える要素です。主に以下の3つのオプションがあります。
- オンデマンド: 必要なときにのみ使用し、使った分だけ料金を支払う方法です。初期コストがかからず柔軟ですが、長期間の使用には割高になります。
- リザーブドインスタンス: 1年または3年の長期間契約を結ぶことで、割引を受けることができる支払いオプションです。長期の安定したワークロードが見込まれる場合にコスト削減につながります。
- スポットインスタンス: AWSの未使用リソースを割引価格で利用できるオプションです。コストが非常に安い反面、需要に応じてインスタンスが突然停止する可能性があるため、柔軟性が必要なワークロードに適しています。
これらの支払いオプションを選択する際には、ワークロードの性質と予算に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
AWSのコスト計算ツール使用時の注意事項
AWS Pricing Calculatorは、AWSの利用コストを予測・管理するための便利なツールですが、正確な予算管理を行うためには、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。ここでは、AWSのコスト計算ツールを使用する際に留意すべきポイントを解説します。
見積もりツールで計算できないサービスも存在する
AWS Pricing Calculatorは、AWSの多くの主要サービスに対応していますが、すべてのサービスが見積もりツールで計算できるわけではありません。一部のサービスや機能は、その料金体系が非常に複雑であるため、標準的な見積もりツールで計算することが難しい場合があります。たとえば、AWS Marketplaceから購入したソフトウェアや、カスタムメイドのサポート契約、特定のマネージドサービスなどは、見積もりの範囲外となることが多いです。このため、見積もりを行う際には、対応外のサービスが含まれていないか確認し、それらのサービスの料金は別途調査する必要があります。計算できないサービスに関しては、公式ドキュメントやサポートに問い合わせて正確なコスト情報を入手しましょう。
見積もり結果は定期的に更新をかける
AWSの料金体系は、サービスの改訂や価格の変動に伴い、頻繁に更新されることがあります。これにより、以前作成した見積もりが最新の料金体系に基づいていない可能性があるため、定期的に見積もりを更新することが重要です。特に長期にわたるプロジェクトやシステム運用を計画している場合、料金の変動が予算に与える影響を考慮する必要があります。また、新しい料金プランやサービスの割引が適用される場合もあるため、AWS Pricing Calculatorを使って定期的に見積もりを確認し、最新の情報に基づいたコスト管理を行うことが推奨されます。
無料利用枠を確認する
AWSには、新規ユーザー向けに提供される「無料利用枠」があります。これにより、一定期間や利用量に限って無料でサービスを利用できるため、見積もりを行う際にはこの無料利用枠を考慮することが重要です。特に、初期段階のプロジェクトや検証環境では、無料利用枠を活用することで大幅にコストを削減できる可能性があります。AWS Pricing Calculatorでは、無料利用枠を自動的に適用して計算する機能はないため、無料枠を手動で確認し、どのサービスが無料で利用できるかを把握した上で見積もりを作成する必要があります。無料利用枠の条件はサービスごとに異なるため、公式サイトで最新情報を確認し、コスト見積もりに反映させるようにしましょう。
各サービスの詳細料金はAWS公式ページで確認
AWS Pricing Calculatorは便利なツールですが、最終的な料金を正確に把握するためには、各サービスの詳細料金を必ずAWS公式ページで確認することが重要です。公式ページでは、常に最新の料金情報や新しいサービス、オプションの追加が反映されており、見積もりツールでは反映されない最新情報を取得できます。また、特定の地域や使用状況に応じて料金が異なる場合も多いため、公式サイトでの確認が必須です。正確なコスト計画を立てるためには、公式ページを参照しながら、ツールの見積もりと併用することが推奨されます。
まとめ
AWS Pricing Calculatorは、AWSの利用コストを見積もる上で非常に便利なツールですが、正確な料金把握のためには公式ページで詳細を確認することが重要です。また、料金の変動や無料利用枠の適用、未対応サービスの確認など、定期的な更新と追加調査も欠かせません。本記事で解説した手順や注意点を参考に、効果的なコスト管理を行い、AWSの運用を最適化しましょう。