AWS保守に活用したいサービスを一挙紹介!特徴や選び方のポイントも解説
AWS上で構築したシステムを安定稼働させ、ビジネスの成長を支えるためには、適切な保守サービスの選択が欠かせません。しかし、AWS公式のサポートプランから多様な外部委託サービスまで、選択肢は数多く存在し、どれを選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AWSの保守に関連するサービスを網羅的に解説し、選ぶ際のポイントをお伝えします。
実はこんなにある! AWS関連サービスの種類と特徴
AWS(Amazon Web Services)は、クラウドコンピューティングサービスの代表格として、多種多様なニーズに応える豊富なサービスを提供しています。EC2(Elastic Compute Cloud)やS3(Simple Storage Service)といった基盤となるサービスに加え、データベース、機械学習、IoT、セキュリティなど、特定の用途に特化したサービスも充実しています。
ネイティブAWSサービス
ネイティブAWSサービスとは、AWSが独自に開発・提供している、AWSプラットフォームに最適化されたクラウドサービスのことを指します。
【代表的なネイティブAWSサービスの例】
- Amazon EC2
- Amazon S3
- Amazon RDS
- AWS Lambda
- Amazon DynamoDB
- Amazon CloudWatch
- AWS CloudFormation
クラウドの基盤となるネイティブサービスの多くは、マネージドサービスとして提供されており、AWSが運用管理の一部または全部を代行しています。これによりユーザーはインフラの管理から解放され、アプリケーション開発やビジネスへ注力できます。
AWSパートナーネットワーク
またAWSパートナーネットワーク(APN)に参加する企業が提供するパートナーサービスも充実しています。APNパートナーは、AWSに関する専門知識と技術力を持ち、AWS環境の設計・構築から運用・保守、さらには特定の課題解決まで、幅広いサポートを提供します。
【APNがサポートする業務の例】
- コンサルティング
- システム構築・移行
- AWSインフラの運用・保守、監視、セキュリティ管理などの代行
- アプリケーション開発
- AWSの技術習得のためのトレーニング研修
- AWSのセキュリティ支援
- AWSのコスト最適化や、パフォーマンスチューニング
- AWS利用料金の請求代行
- その他 技術的な問い合わせ対応やトラブルシューティング
AWS公式サポートプラン
さらに、AWS公式のサポートプランも用意されています。こちらは基本的なサポートから、24時間365日の技術サポートや障害対応、アカウントマネージャーによる支援など、企業のニーズに合わせて複数のプランから選ぶことができます。
サードパーティ製のサービス
選択肢はこれだけではありません。AWS MarketplaceではAWS以外の企業がさまざまなサービスを開発・提供しています。用途は、セキュリティ対策ソフト、監視ツール、バックアップソリューションなどさまざまです。AWSの機能を補完・拡張するこれらサードパーティ製サービスを必要に応じて併用するのも良いでしょう。
【業務別】AWS保守に活用できるサービス一覧
運用・保守代行業務
【運用・保守代行サービス例】
- AWS Managed Services: AWSが提供するサービスの運用代行
- AWSサポートプラン: AWSが公式に提供するサポートサービス
- AWS プロフェッショナルサービス: AWSの専門家による技術支援サービス
- AWS パートナーネットワーク (APN): AWSのパートナー企業が提供するサービス
- その他の企業が提供する運用代行サービス
運用・保守代行サービスは、AWSリソースの運用保守業務をベンダー側に包括的に委託するものです。運用に係るさまざまな作業を専門家集団に任せられるメリットが大きいと言えます。具体的には、OSやミドルウェアのパッチ適用、定期バックアップ、監視・ログ監視、障害対応、セキュリティ対策といった一連の運用タスクが代行対象になります。Amazon RDSやAmazon ElastiCacheなどのマネージドサービスを利用すれば、そのインフラリソース自体の保守運用をAWSにお任せできます。自社でスキルと体制を構築する必要がなく、格段に手間が省けるでしょう。
また、AWS公式のサポートプランに加入することで、AWSの専門家集団から優先的な技術支援を受けられます。エンタープライズサポートであればAWSプレミアムサポートエンジニアの専任者や、AWSソリューションアーキテクトによる包括的なアドバイスが得られ、本格的な運用体制が構築できます。重大インシデントへの即応対応なども期待できます。
AWSの認定パートナー企業への運用委託も選択肢の一つです。MSP(マネージドサービスプロバイダー)などの高い技術力と実績を持つベンダーなら、AWSリソースの設計から構築、運用、障害対応までを一気通貫でサポートしてくれます。
監視業務
【監視サービス例】
- AWS SystemManager: リソースのグループ化、可視化、自動化などを実行
- AWS Config: リソースの設定履歴を記録し、変更管理を支援
- AWS CloudTrail: APIコールの履歴を記録し、セキュリティ分析などを支援
- Amazon CloudWatch: リソースやアプリケーションのメトリクスを監視し、アラート通知などを実行
- AWS Health: セキュリティの脅威を可視化し、対応を支援
- AWS Health Dashboard : AWS全体のサービスの健全性に関する情報を提供
- AWS Personal Health Dashboard: ユーザー自身のAWSリソースの健全性に関する情報を提供
AWS環境において適切な監視体制を構築することは、安定運用を実現する上で極めて重要な要素です。AWSでは多岐にわたる監視サービスを提供しており、目的や対象に応じて効果的に組み合わせる必要があります。
まずはCloudWatchが中核的な役割を担います。CPUやメモリ使用率からネットワーク帯域、ディスク使用率に至るまで、さまざまなメトリクスを収集・可視化できます。アプリケーションログも併せて監視でき、カスタムメトリクスやアラート機能も充実しています。システムや業務の実状に合わせた監視項目を設定しましょう。
一方でCloudTrailを使えば、AWS APIコールの履歴や資源の変更ログをシームレスに取得できます。不正アクセスやリソースへの不正な変更を監視するのに役立ちます。さらにAWS Configでリソース設定の変更管理も可能で、システム全体の設定ドリフトを検知・対処できるでしょう。
AWSでは、クラウドネイティブなリソース監視はもとより、セキュリティや設定変更の監視にも優れたサービスが用意されています。システム全体のリソース消費状況を俯瞰しつつ、個別のリソース状態や設定変更、不正アクセスなども見逃さずに監視できる体制を整えましょう。
障害対応業務
【障害対応サービス例】
- AWS Health Dashboard : 障害発生時に迅速な状況把握を支援
- AWS Personal Health Dashboard: ユーザーのAWSリソースに特化した障害情報の提供と具体的な対応策の提示
- AWS Resilience Hub:特定のサービスで障害が発生した場合に、システム全体への影響を最小限に抑えるためのアーキテクチャ設計を支援
- AWS Fault Injection Simulator:本番環境に近い形で障害を意図的に発生させるテストツール
障害発生時の対応力は、システムの可用性を左右します。AWS上のリソースでインシデントが起きた際、いかに迅速かつ適切に原因特定と復旧作業を行えるかが問われます。
そこでAWSが提供する障害対応サービスが大きな助けとなります。AWS Health Dashboardでは、発生している障害の全体状況を把握できます。個別のユーザーアカウントに関する詳細情報はPersonal Health Dashboardから入手可能で、具体的な解決手順も提示されます。自社だけの情報源では不十分な事態でも、迅速な対応が可能になるでしょう。
特にミッションクリティカルなシステムでは、AWSのリソースを効果的に監視しつつ、発生し得るさまざまな障害に備えたレジリエント設計が求められます。例えば、本番サイトがAWS固有のサービス障害に見舞われた場合でも、システム全体の可用性を確保できるような対策が必要です。AWS Resilience Hubではそうした分散設計に関する診断と設計支援を行っており、システムのフォールトトレランスを強化できます。
また障害対応プロセス自体を定期的に検証するのも重要な取り組みです。AWS Fault Injection Simulatorなら本番環境に近い形で障害を意図的に発生させ、事前に障害対応のリハーサルができます。
セキュリティ業務
【セキュリティサービス例】
- Amazon GuardDuty : 不正なアクティビティや脅威を自動的に検出
- AWS IAM Access Analyzer : IAMポリシーを分析し、セキュリティ上のリスクを特定
- AWS Health :AWS全体のサービスのセキュリティに関する情報を提供
- AWS Config :セキュリティグループの設定変更を検知し、不正な変更を通知
- Amazon Inspector :EC2インスタンスやコンテナイメージの脆弱性を自動的にスキャンし、セキュリティリスクを評価
- AWS Trusted Advisor :パフォーマンス向上、セキュリティ強化など、AWS環境の改善点を提案
- AWS Audit Manager :AWS利用状況の監査を自動化し、コンプライアンスや規制への準拠を支援
クラウド環境におけるセキュリティ対策は決して軽視できない重要課題です。AWSでは多様なセキュリティサービスを提供しており、トータルでシステムの防御力を高める必要があります。
まずは基本中の基本として、IAMのアクセス制御機能を適切に運用しましょう。IAM Access Analyzerを活用すれば、IAMポリシーの検証と最小特権アクセス原則の実現に役立ちます。リソースへの不正アクセスを事前に防止できます。
Amazon GuardDutyではアカウント内の不審なアクティビティを常時監視し、不正なアクセス試行や悪意のあるトラフィック、マルウェア感染などを検知します。AWSネイティブのセキュリティ監視サービスとして大いに活用できるでしょう。
セキュリティ対策はこれらの個別施策を組み合わせつつ、AWS Trusted Advisorによる定期的な診断を行い、リスク箇所の特定と改善サイクルを回すことが肝要です。さらにはAWS Audit Managerによる法令順守や規制への準拠評価を実施するのも有益な取り組みと言えるでしょう。
コスト最適化業務
【コスト最適化サービス例】
- AWS Trusted Advisor: コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンスなど、様々な観点からAWS環境を評価
- AWS Cost Explorer: AWS利用料金を分析し、可視化
- AWS Budgets: AWS利用料金の上限を設定し、超過を通知
- AWS Compute Optimizer: ワークロードに最適なEC2インスタンスタイプを推奨
AWSを活用するビジネスにとって、適正なコスト管理は非常に重要な課題です。リソース無駄遣いを排除し、コストを最小限に抑えつつ、十分なパフォーマンスを発揮できる環境を実現する必要があります。
そこでAWSが提供するコスト最適化サービスが、大きな助けとなります。まずはTrusted Advisorの利用から始めるとよいでしょう。このサービスではコスト面からの診断のほか、セキュリティやパフォーマンス観点での評価や改善提案も含まれています。包括的なアドバイスに基づいて継続的な改善サイクルを回せます。
実際のコスト分析にはCost Explorerが有用です。AWSリソース別の利用実績を詳細に可視化でき、無駄な支出の見つけ出しや、適正なリソースプランの選定に役立ちます。例えばIDLE状態のEC2インスタンスに気づき、Compute Optimizerの指示に基づいてインスタンスサイズをダウンサイズする、といった具体的な対応が可能になります。
また、Budgetsを利用すればコスト上限を設定し、予算超過をリアルタイムに検知できます。無駄な支出を事前に防ぐこともできるでしょう。キャンペーンやイベント時の一時的な過剰使用にも警戒できます。
【業務別】AWS保守に活用できるサービス一覧
AWS環境の保守は、ビジネスの継続性と成長に不可欠です。しかし、初めて保守を担当する方にとっては、適切なサービスの選択が難しく感じられるかもしれません。AWS保守サービスを選ぶ際の重要なポイントを、実務経験に乏しい方にも感覚的に理解しやすいように解説します。
1. 自社のニーズを正確に把握する
まず重要なのは、自社のシステム規模や運用体制、ビジネス要件を正確に理解することです。例えば、以下のような質問に答えてみましょう:
- システムの重要度は?(ミッションクリティカルか否か)
- 必要な稼働時間は?(24時間365日/7か、業務時間内のみか)
- 社内のAWS専門知識のレベルは?
- 予算の制約は?
これらの質問に答えることで、必要なサポートレベルが明確になってきます。
2. 自社に合ったAWSの公式サポートプランを選ぶ
AWSは複数の公式サポートプランを提供しています。各プランの特徴と価格帯を把握し、自社のニーズに合うものを検討しましょう。例えば、小規模な開発環境であればDeveloper Supportで十分かもしれません。一方、大規模な本番環境では、Business SupportやEnterprise Supportが適している場合が多いです。
3. サードパーティの保守サービスも視野に入れる
AWSの公式サポート以外にも、多くのサードパーティ企業がAWS環境の保守サービスを提供しています。これらのサービスは、より柔軟な対応や、AWSに特化した専門知識を提供してくれる場合があります。
サードパーティサービスを検討する際は、以下の点に注目しましょう。
- AWS認定資格保有者の数
- 24時間365日の対応が可能か
- 日本語でのサポートが可能か
- 過去の実績や顧客評価
4. コストと効果のバランスを考える
保守サービスにかかるコストは決して安くありません。しかし、システム障害やセキュリティインシデントによる損失を考えると、適切な投資と言えます。
コストを検討する際は、単純な金額比較だけでなく、以下のような潜在的な利益も考慮しましょう。
- ダウンタイムの削減による機会損失の回避
セキュリティ強化によるリスク低減
運用効率化による人的リソースの節約
5. 成長に合わせて柔軟に見直す
ビジネスの成長に伴い、システムの規模や複雑さも変化していきます。そのため、定期的に保守サービスの内容を見直し、必要に応じて変更することが重要です。
例えば、事業拡大に伴ってグローバル展開を始める場合、24時間365日の多言語対応が必要になるかもしれません。また、新しいAWSサービスを導入する際には、それに対応したサポートが受けられるかどうかを確認する必要があります。
6. 社内の技術力向上も並行して進める
外部の保守サービスに頼りきりになるのではなく、社内のAWS技術力向上も同時に進めることが大切です。これにより、外部サービスへの依存度を下げ、より効率的な運用が可能になります。
具体的には以下のような取り組みが考えられます。
- AWS認定資格の取得支援
- 社内勉強会の実施
- AWSのハンズオントレーニングへの参加
まとめ
AWS環境の安定稼働とセキュリティ確保、そしてコスト最適化は、ビジネスの成長に欠かせません。AWSは、これらの課題解決を支援する多様な保守サービスを提供しています。
AWS公式サポートプラン、APNパートナーによるサービス、AWS Marketplaceで提供されるサードパーティ製サービスなど、選択肢は豊富です。自社のニーズや課題、予算に合わせて最適なサービスを選び、効果的に組み合わせることで、AWS環境を効率的かつ安全に運用できます。特にAWSマネージドサービスは、インフラ管理の負担を軽減し、ビジネスのコア業務に集中できるため、導入を検討する価値があるでしょう。
AWSは常に進化し続けています。最新情報を常にチェックし、自社のニーズに合わせて最適なサービスを選択しましょう。