
過剰な監視アラートはオオカミ少年?『警告疲れ』をスッキリ解消するヒント
「またこのアラートか…」
システムの監視画面を眺めながら、つい溜め息。そんな経験、エンジニアなら一度や二度はありますよね。
イソップ寓話の「オオカミ少年」のように、重要でない警告が多いと、本当に危険な警告までもが無視されがちになります。これは「警告疲れ(アラート疲れ)」として知られる現象で、システムの安定運用を脅かす深刻な課題です。

鳴りやまぬアラート、犯人は誰だ?
警告疲れは、日々の運用業務の中でじわじわと進行します。
その主な原因は、設定が不適切な監視ツールや、重要度の低いアラートが大量に発生することにあります。例えば、開発環境の一時的な高負荷や、本来は情報レベルでよいはずの通知が、緊急アラートとして扱われてしまうケースです。
こうした「ノイズ」が多い環境では、エンジニアはアラートの集中砲火を浴びることになります。結果、本当に対応すべき重大なインシデントのサインを見逃してしまう…なんてことになりかねません。

セキュリティ大手のCybereason社が行った2024年の調査によると、SOCの専門家の16%が、毎週自社のアラートパイプラインの50~59%しか処理していないことを認めています。(参考記事はこちら)これは、セキュリティ担当者が毎週対応できるアラートの数には限りがあり、多くの警告が未処理のまま放置されている実態を示します。
アラートの質を高める、各社のサービス
幸いなことに、AWS、Azure、Google Cloudといった主要なクラウドプラットフォームは、警告疲れを減らすための、便利な機能を提供してくれています。これらの機能を活用することで、アラートの「質」を高め、警告疲れを軽減することが可能です。
プラットフォーム | 主な機能・サービス | 概要 |
---|---|---|
AWS | Amazon CloudWatch Alarms | ベストプラクティスに基づいたアラーム設定が推奨されており、CPU使用率など特定のメトリクスにしきい値を設定し、不要なノイズを削減できます。 |
Azure | Azure Monitor アラートルール | アクションルールを設定することで、計画メンテナンス中など、特定条件下でアラート通知を一時的に抑制できます。 また、多様なアラート種類により、状況に応じた柔軟な監視が可能です。 |
Google Cloud | Cloud Monitoring アラートポリシー | アライメント期間や再テストウィンドウを調整し、一時的なスパイクによる誤検知を減らすことができます。 これにより、より意味のあるインシデントのみを通知させることが可能です。 |
CloudWatchにおける推奨設定は、こちらの記事にまとめています。ぜひご参考ください!
参考:AWS環境の監視、ベストプラクティスな考え方とは?CloudWatchの推奨設定を解説
今日からできる! 脱・オオカミ少年計画
ツールの力を借りるのも大事ですが、私たち自身でできることもあります。
そう、分かっていてもつい後回しにしてしまう…
アラートの精査です。
まずは、今どんなアラートがあるのか棚卸しして、優先順位を見直してみましょう。当たり前ですが、全てのアラートを同じレベルで扱うのではなく、「緊急」「警告」「情報」のように重要度を階層化し、通知のレベルを分けるだけでも、心に平穏が訪れます。
皆さん既にご存じかとは思いますが、緊急アラートは電話、それ以外はチャットツールに、というように通知先を分けるのも鉄板テクニックですよね。
また、アラートに具体的なコンテキスト情報を含めることも、迅速な判断を助けます。「サーバAでCPU使用率が90%超」という通知より、「サーバAで過去1時間の平均CPU使用率が90%を超過。バッチ処理の遅延が原因の可能性」といった情報が加わるだけで、初動スピードが変わる場合があります。
まとめ
ひっきりなしに鳴る警告音は、時として私たちを悩ませます。しかし、適切に管理・最適化されたアラートは、システムの健全性を守るための強力な味方です。
「アラートの精査、分かってはいても、なかなか対応できなくて…」とお悩みの皆さん。
これをキッカケに、腰の重かった身の回りのアラート設定を一度見直してみてはいかがでしょうか? 来週は、もっと静かな一週間が待っているかもしれません。