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AWS運用の基礎と仕事内容!必要なスキルや監視業務との違いを解説

AWSとは、Amazonが提供するクラウドのプラットフォームです。開発面で見ると、サーバーがすぐに用意できたり、画面操作のみでネットワークが構築できたりといった多くのメリットがあります。しかし、運用という観点でみると設定や管理が大変です。

本記事では、AWS運用を行うエンジニアが日々どのような業務を行っているのか解説します。また、AWS運用と監視業務の違いにも触れ、効率的な運用を実現するためのポイントを紹介します。これからAWS運用業務を行う人、AWSエンジニアを目指す人はぜひ参考にしてください。

AWS業務の全体像

AWS業務の全体像

AWS運用エンジニアの仕事内容の前に、まずはAWS業務全体の流れを解説します。基本的には以下の6つのフェーズに分けられます。

  1. 要件定義
  2. 概要設計・詳細設計
  3. 構築
  4. テスト
  5. 運用
  6. 監視

それぞれ1つずつ詳しく解説します。

要件定義

要件定義は、AWS業務の中でも非常に重要とされています。システムやサービスを開発する前に、「このようなものを作る」といった方針を固めるためのものが要件定義です。具体的には、要件に基づき、EC2、S3、RDSなど、どのAWSサービスが最適かを検討します。

業務フローのヒアリングや現行システムの分析を行います。これにより、システムの目的や性能要件を明確にします。顧客と密に連携し、最適なAWSサービスの選定と利用計画を立てます。要件定義の段階での詳細な定義が、プロジェクトの成功に直結するため非常に重要と言われています。

設計

設定フェーズでは、要件に合わせてシステム全体の構成図を作成します。全体像が決まったら、詳細な設計書も作成します。

この段階で、ネットワーク構成やセキュリティ設計、各コンポーネントの関係などを明確にして次の構築フェーズへと進みます。設計を担当するエンジニアは、AWSの各サービスがどのような機能を持っているのかなど、広く専門的な知識が必要です。

構築

構築フェーズでは、設計書に基づいてAWS環境を具体的に構築します。EC2インスタンスの立ち上げやRDSの設定、S3バケットの作成を行います。

一般的には、本番環境、検証環境、開発環境の3つの環境が用意され、段階に合わせて使い分けられます。

  • 開発環境:AWSの環境構築、システムの開発、コーディングを行う場所。
  • 検証環境:開発したプログラムが想定通りに動作するかをテストする場所。
  • 本番環境:ユーザーが実際に利用するシステムが稼働する場所。

効率的かつ再現性の高い構築ができるように、インフラのコード化(IaC)の活用が主流です。これにより、手動作業を最小限にし、エラーを防止します。テスト環境を構築し、システムの動作確認を行います。

テスト

AWS環境内で構築されたシステムやツールが、想定通りに動作するかテストするフェーズです。設計・構築段階でテスト項目が作成されるため、その項目を1つ1つチェックします。テストフェーズの中でも、単体テストから全体テストまで以下の順番で行っていきます。

  1. 単体テスト:各モジュールの機能が正しく動作するかを検証。
  2. 結合テスト:複数のモジュールを組み合わせたときに、正常に動作するかを検証。
  3. システムテスト:システム全体の動作確認。
  4. 負荷テスト:システムが想定される負荷に耐えられるかを確認。

テストでエラーや不備がないか確認し、万が一、エラーが発生した場合は設計もしくは構築フェーズに戻りシステムを修正します。

運用保守

運用保守フェーズでは、AWS環境の安定稼働を確保することが主な仕事内容です。

  • 定期的なバックアップ
  • ソフトウェアの更新
  • セキュリティパッチの適用
  • 異常発生時の対応

上記作業を行いながらシステムの信頼性を維持します。運用中のトラブル対応や性能改善も重要な業務です。定期的なレビューと改善を行い、運用体制の最適化を図ります。

監視

監視フェーズは、AWSの各サービスの状態をリアルタイムで監視する仕事内容です。CloudWatchやCloudTrailを活用し、パフォーマンスのモニタリングやセキュリティイベントの追跡を行います。

異常を早期発見するために、常にモニタリングを行う必要があり、夜勤が発生するケースも多いです。基本的には、モニターを監視する業務ですが、異常発生時はマニュアルに沿った復旧作業も行います。

AWSにおける運用と監視の違いについて

AWSにおける運用と監視の違いについて

AWSにおける運用と監視は、システムの安定性と信頼性を確保するための重要な役割を担っています。「運用監視」とセットで扱われることもありますが、両者には明確な違いがあります。

運用監視
日常の仕事内容最適な運用方法を考え、実施するシステムログ等の確認
異常時の仕事内容マニュアル外の対策も行うマニュアル通りに対応

監視業務の通常業務は、システムのログを文字通り監視することです。そして、ログを確認し異常があった場合はマニュアルに沿って対応する仕事です。マニュアル通りにコマンドを入力したり、サーバーを再起動しても改善しない場合は、フローに沿って担当者に連絡します。このように監視業務は、マニュアルに従って正確に対応する能力が求められる仕事です。

一方、運用担当のエンジニアは、システムの安定稼働を維持するための予防策や対策を行います。異常が発生しないようにシステムを最適化し、必要に応じてアップデートやパッチ適用を行います。異常発生時は監視担当者からの連絡を受け継ぎ、迅速に対応し、システムの復旧を図ります。運用業務では、改善のための問題解決能力が求められます。

AWS運用の主な仕事内容

AWS運用の主な仕事内容は、システムの安定稼働を確保するためにOSやミドルウェアのアップデート、災害時のバックアップデータの復元、システムや環境の最適化を行うことです。それぞれ具体的にどのような作業を行うのか詳しく解説します。

OS・ミドルウェアのアップデート

AWS運用の主な仕事の1つであるOSやミドルウェアのアップデートは、システムの安定性とセキュリティを維持するために不可欠な作業です。

  • OS:コンピュータのハードウェアを管理し、ソフトウェアが円滑に動作するための基盤となるシステムソフトウェア
  • ミドルウェア:OSとアプリケーションの間に入り、両者の機能を補完するソフトウェア。OSだけでは実現できない、高度な機能を提供する

OSやミドルウェアで新しいバージョンがリリースされた時、計画的にバージョンアップを行います。また、OSやミドルウェアに脆弱性が見つかった場合は、バッチを適用してセキュリティリスクを減らす業務も行います。

そして、人的ミスを減らすために、アップデートやバッチ適用を可能な限り自動化できるような仕組みを考えることも運用の仕事です。

災害時にバックアップデータを復元

災害時に備えて定期的なバックアップを行い、災害発生時に迅速に復旧を行うこともAWS運用の仕事内容の一つです。バックアップ計画の策定時には、以下の2つの指標が用いられます。

  • RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)

復旧時にどれだけ古いデータまで許容できるかを数値化した指標

  • RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)

システムを復旧させるまでの目標時間を示す指標

RPOとRTOを考慮しながら、どのデータをどの頻度でバックアップするか、バックアップ先をどこにするかなど、詳細なバックアップ計画を策定し、実行・管理を行います。万が一に備えて、バックアップデータ復元の手順やフローを用意することもAWS運用エンジニアの仕事です。

システムや環境の最適化

以下のように、AWSで運用しているシステムが最適な構成になっているか、常に考え最適化していくことも仕事内容の一つです。

  • 性能が低すぎる(もしくは高すぎる)インスタンスを使用していないか
  • 不要なリソースはないか
  • システムの負荷分散はできているか

リソースの利用状況をモニタリングし、不要なリソースを削減することでコストの最適化が可能です。さらに、AWS運用エンジニアは、アプリケーションのパフォーマンスチューニングを実施し、応答時間の短縮を図るなど、定期的なレビューと改善も行っています。

AWS運用の仕事を行う上で考えるべきこと

AWS運用の仕事を行う上で考えるべきこと

主な仕事内容で解説した通り、AWS運用の仕事内容は幅広いです。そして、運用エンジニアが考えなければならないことも多いです。AWS運用エンジニアが考えるべき4つのことについて解説します。

コストが最適か

AWSを利用する際のコスト管理は、非常に重要です。そのため、運用エンジニアは常にコストの最適化を目指す必要があります。

具体的には、リソースの利用状況を定期的にモニタリングし、不要なリソースを削除したり、使用頻度の低いインスタンスを停止したりすることが求められます。

さらに、Reserved InstancesやSavings Plansなどの割引オプションを活用するなど、長期目線でコスト削減を図るスキルも求められます。AWSでは、コスト分析を行うサービスが充実しているため積極的に活用しましょう。

セキュリティは問題ないか

AWSのようなクラウドサービスは、メリットが多くあります。しかし、セキュリティ対策が不十分だと、データの漏洩や不正アクセスなどのリスクが高まります。

運用時には、最小権限の原則に基づいたアクセス制御ができているか、ネットワーク設定は問題ないか、データの暗号化はできているかを、常に考えることが重要です。セキュリティ事故が発生した場合の対策や運用フローを考えることも運用エンジニアの業務の一つです。

コンプライアンスに準拠しているか

AWSを利用する際には、社内ルールや業界標準、法規制に準拠することが求められます。特に、金融、医療、公共機関などの業界では、厳しいコンプライアンス要件があります。

AWS Artifactを利用してコンプライアンス文書を管理し、監査や規制当局からの要求に対応できる体制を整えておくことも対策の一つです。データの保存場所やデータの送受信方法が、コンプライアンス違反を犯していないかなどは、AWS ConfigやAWS Security Hubを利用すると、継続的に監視できます。

障害時の対応方針が整備されているか

AWS運用においては、障害が発生した際の対応方針を明確に整備しておくことが重要です。障害対応の迅速さと正確さが、システムのダウンタイムを最小限に抑える鍵となります。

障害発生時の対応マニュアル作成や対応フローを文書化し、すべての関係者が共有できるようにしましょう。具体的には、障害の検知方法、初期対応手順、影響範囲の特定、エスカレーション手順、そして復旧作業のステップを明確に定義します。

定期的に、エスカレーション先や復旧作業の確認を行い、いつ障害が起きても対応できる準備をしておきましょう。

AWS運用の仕事に求められるスキルとは?

AWS運用の仕事に求められるスキルとは?

AWS運用の仕事内容を解説してきましたが、ここからは、仕事をするうえでどのような知識が求められるかを紹介します。

AWSの主要サービスの知識

AWS運用の基礎として、AWSの主要サービスについての深い知識が不可欠です。具体的には、以下のようなサービスについて理解し、効果的に利用する能力が求められます。

  • EC2:仮想サーバーのプロビジョニングと管理を行うサービス。
  • S3:オブジェクトストレージサービス。Webホスティングサービスとしても利用します。バケットの設定やアクセス管理、ライフサイクルポリシーの設定が可能。
  • RDS:データベースの管理サービス。バックアップ、リカバリ、リードレプリカの設定等のスキルが必要
  • Lambda:サーバーレスコンピューティングサービス。
  • VPC:仮想ネットワークの設計と管理が可能なサービス。サブネット、ルートテーブル、セキュリティグループの設定が可能。

これらのサービスを理解し、適切に組み合わせて使用することで、AWS環境を効率的に運用できます。

インフラの知識

AWS環境を最適に運用するためには、従来のインフラストラクチャに関する知識も欠かせません。以下のような知識が求められます。

  • ネットワーク:TCP/IP、DNS、VPN、ロードバランサーなどの最低限のネットワーク関連の知識。
  • サーバー:EC2インスタンスの最適化やOSの管理(Linux、Windows)の知識。
  • ストレージ:パフォーマンス最適化やコスト最適化を行うためのストレージの基本的な知識。

インフラの知識は、AWS環境を構築し運用する上での基盤となります。これにより、システム全体のパフォーマンスを最適化し、コスト効率を高めることができます。

ミドルウェアの知識

AWS環境では、ミドルウェアの管理も重要なスキルです。ミドルウェアはアプリケーションと基盤をつなぐソフトウェアのことを指します。

  • データベース管理サーバー:MySQLやDynamoDBといったデータベースの設定や運用方法、データのバックアップを管理するサーバー。
  • Webサーバー:インターネットからのリクエストを受け取り、ウェブページを表示するためのソフトウェア。代表的なWebサーバーはApacheやNginx。
  • アプリケーションサーバー:ウェブアプリケーションを動かすためのサーバー。Javaのアプリケーションを動かすためのTomcatや、より大規模なアプリケーション向けのWebLogicなど。

これらのミドルウェアの知識があると、アプリケーションが正しく動作する環境を構築・運用できるようになります。初心者の方は、まずは一つずつ基本的な設定や操作方法を学び、徐々に理解を深めていくと良いでしょう。

AWS運用の仕事に向いている人

AWS運用の仕事に向いている人

AWS運用に向いている人は、以下のような特徴を持っていることが多いです。

臨機応変な対応ができる人

AWS運用の仕事には、予期せぬトラブルや緊急事態に迅速かつ柔軟に対応できるスキルが求められます。システムの障害発生時やパフォーマンスの問題が起きた際に、冷静に状況を分析し、適切な対策を講じることが重要です。変化の多いクラウド環境において、臨機応変な対応力は大きな強みとなります。

コミュニケーションスキルが高い人

AWS運用では、チームメンバーや他部署との連携が求められます。技術的な問題を共有し、協力して解決策を見つけるためには、高いコミュニケーションスキルが不可欠です。迅速で的確な情報伝達や、相手の意見を尊重しながら議論を進める能力が、プロジェクトの成功に繋がります。

最新の情報収集が得意な人

AWSは常に新しいサービスや機能をリリースしているため、最新の情報をキャッチアップすることが重要です。新技術やトレンドに敏感で、自主的に学び続ける姿勢を持つ人が向いています。ブログや公式ドキュメント、コミュニティフォーラムを活用して情報を収集し、実践に活かせるスキルが求められます。

AWS運用エンジニアのキャリアパス

AWS運用エンジニアのキャリアパス

AWS運用の業務は、サービス面、セキュリティ面、コスト面の幅広い能力が求められます。そのため、1度経験すると実勢となり、さまざまなキャリアパスを描けます。AWS運用エンジニアの具体的なキャリアパスについて詳しく説明します。

AWSの上流工程の業務

AWS運用エンジニアとして経験を積むと、AWSの上流工程の業務に携わる機会が増えます。上流工程とは、システムの設計や要件定義、環境構築など、プロジェクトの初期段階で行われる重要な作業です。

上流工程の業務に携わることで、技術的な知識だけでなく、プロジェクト全体を俯瞰する視点や、顧客とのコミュニケーションスキルも磨かれます。上流工程に進むためには、AWSの各種サービスやベストプラクティスについて深い理解が必要です。

インフラエンジニア

AWS運用エンジニアとしての経験を生かして、インフラエンジニアに転身することも可能です。インフラエンジニアは、主にクラウド環境ではなく、オンプレミスのサーバーやネットワーク、ストレージなどの物理的なインフラストラクチャの設計、構築、運用を担当します。

インフラエンジニアでは、広範なインフラ知識と高度な技術力が求められるため、運用担当者として幅広い業務を行った実績が活かせます。

まとめ

AWS運用は、クラウド環境でのシステム管理と保守を担う重要な役割です。この記事では、AWS運用の基礎知識から日常業務、必要なスキル、監視業務との違いを詳しく解説しました。

運用業務には、柔軟な対応力や高度なコミュニケーションスキル、最新の技術情報を収集する能力が求められます。これらのスキルを身につけることで、効率的なシステム運用とトラブルの迅速な解決が可能となります。AWS運用を学び、実践することで、クラウド技術者としてのキャリアを確実に向上させましょう。

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