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【2025年版】ゼロトラストを実現するID管理プラットフォーム徹底比較!Okta・Azure AD・Ping Identity

【2025年版】ゼロトラストを実現するID管理プラットフォーム徹底比較!Okta・Azure AD・Ping Identity

クラウドサービスの普及やリモートワークの常態化により、従来の「境界型防御」モデルでは組織の情報資産を守りきることが困難になりました。このような状況で、インフラエンジニアやSREが直面する課題を解決する鍵が、「SecOps」と「ゼロトラスト」です。

本記事では、ゼロトラスト実現の中核となるID管理プラットフォームに焦点を当て、代表的なソリューションであるOktaAzure Active Directory (Azure AD)Ping Identityの3つを比較し、それぞれの特徴やAI活用の実態について解説します。

SecOpsとゼロトラスト、基本概念の整理

セキュリティ運用を成功させるためには、まずSecOpsとゼロトラストの考え方を理解することが不可欠です。ここでは、簡単にご説明します。

SecOpsとは

SecOps(セキュリティオペレーション)は、セキュリティチームとIT運用チームが連携し、組織のサイバーセキュリティ耐性を向上させるためのアプローチです。

従来、これらのチームは分離されがちでしたが、SecOpsでは両者が協力することで、脅威の検知から対応までの時間を大幅に短縮し、より能動的な防御体制を築くことを目指します。脅威ハンティングやインシデント対応といった活動が、この連携によってさらに効率化されます。

ゼロトラストとは

ゼロトラストは、「決して信頼せず、必ず検証する」という原則に基づいたセキュリティモデルです。ネットワークの内外を問わず、リソースへのすべてのアクセス要求を信頼できないものとみなし、その都度ユーザーのアイデンティティやデバイスの健全性を検証します。

このアプローチは、内部からの脅威や、一度侵入された後の水平移動(ラテラルムーブメント)のリスクを大幅に低減させるために極めて有効です。

ゼロトラストの中核!ID管理プラットフォーム3社比較

ゼロトラスト・アーキテクチャを実現するには、強力なID管理とアクセス制御が欠かせません。ここでは、市場をリードする3つの代表的なID管理プラットフォーム(IDaaS)の特徴を比較します。

1. Okta(独立系リーダーの強みと豊富な連携先)

クラウド専業の独立系ベンダーとして、特定のエコシステムに依存しない中立的な立場が最大の強みです。

7,000を超えるアプリケーションとの事前統合コネクタ(OIN: Okta Integration Network)を提供しており、多種多様なSaaSを利用する環境でも迅速にSSO環境を構築できます。使いやすいUIと管理画面にも定評があり、管理者・ユーザー双方にとっての利便性が高く評価されています。

強み

  • 圧倒的な数の連携アプリケーション
  • ベンダーロックインのリスクが低い中立性
  • 直感的で使いやすいインターフェース

2. Azure AD(Microsoftエコシステムとの最強の親和性)

Azure Active DirectoryことAzure ADは、Microsoft 365やAzureを利用している企業にとって、第一の選択肢となるサービスです。

これらのサービスと深く統合されており、追加設定なしで多くの機能を利用できます。Windows Hello for Businessによる生体認証や、Microsoft Defender for Cloud Appsといった同社のセキュリティ製品群と連携し、IDからデバイス、アプリケーションまで一貫したセキュリティポリシーを適用できるのが魅力です。

強み

  • Microsoft 365/Azureとのシームレスな統合
  • Microsoftのセキュリティ製品群との連携による包括的な保護
  • 既存のライセンスに含まれることが多く、コストを抑えやすい

3. Ping Identity(オンプレにも強いハイブリッド環境のエキスパート)

クラウドだけでなく、オンプレミス環境のID管理にも豊富な実績を持つのがPing Identityです。レガシーなシステムや複雑な要件を持つ大企業において、クラウドとオンプレミスをまたいだハイブリッドなID管理基盤を構築する際に強みを発揮します。

標準規格への準拠を重視しており、柔軟なカスタマイズが可能です。

強み

  • ハイブリッド/マルチクラウド環境への高い対応力
  • 大規模で複雑なエンタープライズ要件に応える柔軟性
  • APIセキュリティや顧客ID管理(CIAM)など幅広いソリューション

機能とAI活用で比較するID管理プラットフォーム

各プラットフォームは、SSOやMFAといった基本機能に加え、AIを活用してセキュリティをさらに強化しています。それぞれの特徴を比較してみましょう。

機能/比較軸Okta (Okta Identity Engine, Okta AI)Azure Active Directory (Entra ID)Ping Identity (PingOne, PingIntelligence for APIs)
シングルサインオン(SSO)非常に豊富な連携先(7,000+)。設定が容易。Microsoft製品とは最高レベルの親和性。他SaaS連携も可能。オンプレミスアプリも含め柔軟な連携が可能。
多要素認証(MFA)プッシュ通知、生体認証など多彩な要素を提供。適応型MFAに強み。Microsoft Authenticatorとの連携が強力。FIDO2にも対応。多様な認証方式をサポートし、カスタマイズ性が高い
AIによる異常検知振る舞い検知(Risk-Based Authentication)でリスクを評価し、アクセスを制御。Okta AIとして統合。Identity Protection機能でリアルタイムにリスクを検知・評価し、自動修復ポリシーを実行。APIへの攻撃をAIで検知・ブロックするAPIインテリジェンスに強みを持つ。ユーザーの振る舞い検知も提供。
ライフサイクル管理人事システムとの連携で入退社・異動に伴うアカウント管理を自動化。Azure AD ConnectでオンプレADと同期。SCIMにも対応。オンプレミスAD/LDAPとの高度な連携・同期機能に定評あり。
適した環境ベストオブブリードで多様なSaaSを導入している企業。Microsoft中心のIT環境を持つ企業。ハイブリッド環境や複雑な要件を持つ大企業。

ユースケース別、推奨サービス

1. 多様なSaaSを組み合わせて使うクラウド中心の企業

業務にMicrosoft 365、Google Workspace、Slack、Salesforce、Zoomなど、部署ごとに様々なSaaS(ベストオブブリード)を導入している。サービスごとにID/パスワードが乱立し、入退社のたびにアカウント管理が煩雑になっている。

推奨ソリューション: Okta

Oktaの最大の強みである7,000以上のアプリケーションとの連携(Okta Integration Network)がこの課題に直結します。

管理者は簡単な設定で多くのSaaSへのシングルサインオン(SSO)を実現でき、ユーザーは一つのIDとパスワードで全てのサービスにアクセスできます。ベンダー中立なため、将来的に利用するSaaSが変わっても柔軟に対応できるのが魅力です。

2. Microsoft製品中心でIT環境を構築している企業

業務の基盤がMicrosoft 365とAzureで、従業員のPCもWindows。これらの環境とシームレスに連携し、セキュリティを最大限に高めたい。

推奨ソリューション: Azure Active Directory (Entra ID)

 言うまでもなく、Microsoftエコシステムとの親和性は抜群です。Azure ADはMicrosoft 365のライセンスに既に含まれていることも多く、追加コストを抑えつつ導入できます。

Windows Helloの生体認証を使ったパスワードレスサインインや、Intuneによるデバイス管理、Defenderによる脅威検知と連携させることで、IDからデバイス、データまで一気通貫したゼロトラストセキュリティを実現できます。

3. オンプレミス環境とクラウドが混在するハイブリッドな大企業

長年運用してきたオンプレミスの人事システムや業務アプリケーションが多数存在する一方、DX推進のためにクラウドサービスの利用も拡大している。新旧両方のシステムでID情報を同期させ、一貫したアクセスポリシーを適用したい。

推奨ソリューション: Ping Identity

Ping Identityは、もともとオンプレミス環境のID管理に強みを持ち、複雑なハイブリッド環境やマルチクラウド環境への対応力で高く評価されています。

オンプレミスのActive DirectoryやLDAPサーバーとの高度な同期機能、レガシーアプリへのアクセス制御など、クラウド移行過渡期にある大企業特有の課題を解決するための機能が豊富です。

4. 急成長中で、IT管理者が少ないスタートアップ

事業の急成長に伴い、従業員の入社が相次ぎ、利用するSaaSもどんどん増えている。しかし、IT管理者は少数精鋭。できるだけ手間をかけずに、セキュアなID管理基盤を迅速に構築・運用したい。

推奨ソリューション: Okta

管理画面の使いやすさと導入の速さが、リソースが限られるスタートアップに最適です。豊富なアプリ連携により、新しいツールを導入してもすぐにSSOを設定できます。また、人事システム(HRaaS)と連携すれば、入社手続きと同時に各種SaaSのアカウントを自動発行するなど、オンボーディングのプロセスを大幅に効率化できます。

5. 顧客向けWeb/モバイルアプリのID基盤を構築したい

自社で開発・提供するBtoCのECサイトや会員向けアプリで、数百万〜数千万規模のユーザーIDを管理する必要がある。SNSアカウントでのログインや、スムーズな会員登録フロー、そして高度なセキュリティが求められる。

推奨ソリューション: Ping Identity または Okta

これはCIAM(Customer IAM)と呼ばれる領域で、両社とも強力なソリューションを提供しています。特にPing Identityは、大規模で複雑な要件に対応する柔軟性と、決済などに関わるAPIのセキュリティを固める機能に定評があります。

一方、Oktaは開発者向けのドキュメントやSDKが豊富で、スピーディなサービス立ち上げを重視する場合に強みを発揮します。

6. 開発者のサーバーアクセスを厳密に管理したい

開発者が本番環境のサーバー(AWS, GCPなど)にSSH/RDPでアクセスする際のセキュリティを強化したい。「いつ、誰が、どのサーバーにアクセスしたか」を正確に記録し、SSHキーの使い回しといったリスクを根絶したい。

推奨ソリューション: Azure AD (Privileged Identity Management) または Okta (Advanced Server Access)

利用しているクラウド基盤によって最適な選択が変わります。開発環境がAzure中心であれば、Azure ADのPIM(Privileged Identity Management)が第一候補です。必要な時だけ特権ロールを付与する「Just-in-Timeアクセス」により、恒久的な管理者権限をなくし、リスクを低減します。

一方、AWSなどマルチクラウド環境を利用している場合は、OktaのASA(Advanced Server Access)が強力です。従来のSSHキーに代わり、アクセスごとに短命なクライアント証明書を発行することで、よりセキュアで管理しやすい特権アクセス管理を実現します。

まとめ

本記事では、SecOpsとゼロトラストの概念、そしてそれを支える代表的なID管理プラットフォームとしてOkta、Azure AD、Ping Identityを比較解説しました。

「信頼せず、必ず検証する」というゼロトラストの原則を実現するためには、自社のIT環境やセキュリティ要件に最も適したID基盤の選定が不可欠です。

まずは自社のID管理における課題を洗い出し、各ソリューションがどのように貢献できるか、それぞれの製品ドキュメントを比較検討することから始めてみてはいかがでしょうか。

24時間365日のシステム運用監視サービス「JIG-SAW OPS」を提供する、JIG-SAW株式会社のOps Today編集部です。 サーバー運用監視実績50,000台の実績をもとに、システム運用監視に役立つ情報をお届けします!

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