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【Google Cloud Next Tokyo'25】Google Kubernetes Engine(GKE)10周年!GKE と Cloud Run の最新機能紹介とプラット フォーム戦略 :講演レポート

【Google Cloud Next Tokyo’25】Google Kubernetes Engine(GKE)10周年!GKE と Cloud Run の最新機能紹介とプラット フォーム戦略 :講演レポート

Google Cloud Next Tokyo’25とは?

Google Cloud Next は、Google Cloud が主催する大規模なオンサイトイベントです。2025年8月5(火)と6日(水)の2日間、東京ビッグサイトで開催され、オンラインでのライブ配信も行われました。

本イベントでは、最新のクラウド技術や生成 AI ソリューションが紹介され、業界リーダーによるセッション、革新的なデモ、ネットワーキングの機会を通じて、Google Cloud が実現する未来を体験可能です。

セッション情報

セッション名Google Kubernetes Engine(GKE)10周年!GKE と Cloud Run の最新機能紹介とプラット フォーム戦略
セッション概要祝 Google Kubernetes Engine(GKE)10 周年!AI 時代のビジネスとクラウド ネイティブ アプリケーションのデプロイを加速するコンテナ プラットフォーム、GKE と Cloud Run の最新情報を凝縮してお届けします。

GKE はクラスタ管理の簡素化や推論基盤の最適化、Cloud Run は GPU 対応や開発効率化など、両サービスの注目アップデートを解説します!
登壇者頼兼 孝幸氏(Google Cloud / アプリケーションモダナイゼーションスペシャリスト)
関本 信太郎氏(Google Cloud / アプリケーションモダナイゼーションスペシャリスト)

GKEとCloud Run: 最新アップデートとプラットフォーム選択の勘所

Google Cloud Next Tokyoで開催されたセッション「Google Kubernetes Engine(GKE)10周年!GKEとCloud Runの最新機能紹介とプラットフォーム戦略」の模様をお届けします。

本セッションでは、Google Cloudを代表するコンテナ実行環境であるGKEとCloud Runの最新アップデートが多数発表されました。本記事では、発表された新機能の詳細と、自社の状況に合わせて最適なプラットフォームを選択するための勘所を解説します。

GKE: パフォーマンス、運用性、スケーラビリティの進化

今年で10周年を迎えたGKEは、今なお進化を続けています。セッションでは「パフォーマンスとスケーラビリティ」「運用とアップグレード」「マルチクラスター」という3つのテーマに沿って、数々のアップデートが発表されました。

パフォーマンスとスケーラビリティの向上

大規模なワークロードを支えるための性能強化に関する発表です。

機能名概要ステータス
ハイパフォーマンスHPAプロファイルHPAの計算が3倍高速になり、より迅速なスケーリングを実現します。1000ものオブジェクトをサポートし、高解像度のメトリクスによるスケジューリング改善が可能です。GA
Container Optimized ComputePodのスケジュール速度が7倍以上高速化され、トラフィックの急増に対応する能力が向上しました。Autopilotでは既にデフォルトで有効化されています。GA
65,000ノードのサポート1つのクラスタでサポートされるノード数が15,000から65,000へと大幅に増加しました。これにより、これまで以上に巨大なAIモデルの分散学習などに対応可能です。GA

運用とアップグレードの簡素化

日々の運用負荷を軽減するための重要なアップデートです。

一つ目は、Public Previewとして発表された「In-Place Pod Resizing (IPPR)」です。これは、Podとコンテナを再起動することなく、稼働中のPodに割り当てられたCPUやメモリといったリソース量を動的に変更できる画期的な機能です。

従来、リソース量を変更するにはPodの停止と再作成が必要で、アプリケーションのダウンタイムが発生していましたが、IPPRはこの課題を解決します。

二つ目は、GAとなった「アップグレードGUI」です。この新しいUIでは、複数のクラスタのアップグレード状況、現在のバージョン、ターゲットバージョン、さらには標準サポートや延長サポートの期間といった情報を一覧で確認できます。

これにより、計画的なアップグレード管理がこれまで以上に容易になります。

マルチクラスター機能の強化

複数のクラスタを連携させるための機能も進化しています。Public Previewとして「Multi-Cluster Orchestrator」が発表されました。これは、複数のKubernetesクラスタにまたがるワークロードのスケジューリングと配置を自動化するツールです。

例えば、特定のリージョンでGPUリソースが枯渇した場合に、別リージョンのクラスタへ自動的にワークロードを配置するといった高度なオーケストレーションを、Argo CDとの連携によって実現します。

Cloud Run: AIからバッチ処理まで、あらゆるワークロードへの対応強化

サーバーレスのコンテナ実行環境であるCloud Runも、その進化が止まりません。AIアプリケーションへの対応、サポートするワークロードの多様化、そして開発者体験の向上という方向で、多くの機能が発表されました。

GPU提供の拡大とサイドカー対応

AI/MLユースケースへの対応を加速させるアップデートです。Cloud RunサービスでのL4 GPUの提供がGAとなり、約5秒という高速な起動時間とゼロスケーリングのメリットを享受しながらGPUを利用できます。

さらに、Cloud RunジョブでもGPUの提供がPublic Previewとして開始され、最大1時間の実行時間でバッチ処理などにGPUを活用できるようになりました。

また、Cloud Runジョブのサイドカー対応がGAになりました。これにより、メインのアプリケーションコンテナに加えて、メトリクス収集や認証プロキシといった補助的なコンテナを同じインスタンス内で実行できます。

新たなワークロードへの挑戦:ワーカープール

特に注目すべき新機能として、Public Previewで提供が開始された「Cloud Run ワーカープール」があります。これは、HTTPリクエストを伴わない、常時稼働型のワークロード向けに設計された新しい実行モードです。

キューからタスクを取得して処理するようなプル型のアプリケーションに最適で、サービスやジョブと比較して約40%低いコストで利用できるのが大きな特徴です。

統合と改善による開発者体験の向上

開発者の生産性を高めるための改善も多数発表されました。

機能名概要ステータス
Cloud Functionsとの統合Cloud FunctionsがCloud Run functionsにリブランドされ、Cloud RunのGPUやDirect VPC Egressといった高度な機能を関数から利用できるようになりました。GA
ベースイメージの自動更新Google CloudのBuildpackベースイメージがサポートされ、OSのセキュリティパッチなどが自動で適用されるようになりました。これにより、手動でのリビルドや再デプロイの手間が不要になります。GA
Direct VPC Egressの改善予約が必要なIPアドレス数が、従来の「インスタンス数の4倍」から「2倍」に削減され、IPアドレスの消費が緩和されました。Improvement
IAPの統合これまでロードバランサが必要だったIdentity-Aware ProxyがCloud Runに直接統合され、サービスへのアクセス制御がよりシンプルに実現できます。Public Preview
Threat Detection対応Security Command Centerと連携し、実行中のCloud Runリソースの脅威を検出・通知できるようになりました。Public Preview
Vertex AI StudioからのデプロイVertex AI Studioのコンソールから、直接Cloud RunへAIアプリケーションをデプロイする機能が統合されました。Integration

運用者目線で見る、注目の2大アップデート

今回の発表の中でも、特にシステム運用担当者の視点から注目したいのが「In-Place Pod Resizing (IPPR)」と「ベースイメージの自動更新機能」です。

IPPRは、一言で言えば「無停止でのPodリソース変更機能」です。これまでリソース不足が懸念される場合、余裕を持ったサイジングにするか、計画的なダウンタイムを設けてPodを再作成する必要がありましたが、この機能はサービスを止めることなく動的にリソースを調整する、という新しい選択肢を提供します。これにより、インフラの柔軟性と可用性が飛躍的に向上します。

一方、Cloud Runのベースイメージ自動更新機能は、「脆弱性対応の自動化」と言えます。OSレイヤーの脆弱性が発見された際、これまでは迅速なパッチ適用と再デプロイが運用チームの大きな負担となっていました。この機能は、そのプロセスをGoogle Cloud側で自動的に行うため、運用負荷を大幅に削減し、開発者が本来のアプリケーション開発に集中できる環境を実現します。

まとめ:自社に最適なプラットフォームを見極める

今回のセッションでは、GKEとCloud Runがそれぞれ異なる強みを持ちながら進化を続けていることが示されました。

GKEは、究極の柔軟性を持ち、組織独自のルールやエコシステムを組み込んだオーダーメイドのプラットフォームを構築したい場合に最適です。一方、Cloud Runは、インフラ管理をGoogleに任せ、シンプルさと開発速度を最優先したい場合にその真価を発揮します。

今回の発表内容を参考に、ぜひご自身の環境に最適なプラットフォームはどちらか、そしてどの新機能が日々の運用を楽にするかを検討してみてはいかがでしょうか。特に、Public Previewとして公開されたGKEのIn-Place Pod ResizingやCloud Runのワーカープールは、これまでの常識を変える可能性を秘めた注目の機能です。まずはこれらの新機能を試し、その効果を実感してみることをお勧めします。

2024 Japan AWS All Certifications Engineers 受賞 / 2025 Japan AWS All Certifications Engineers 受賞

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