今日を知り、明日を変えるシステム運用メディア

今さら聞けない!クラウドでビッグデータを活用するメリット

企業の成長戦略において、ビッグデータは大きな役割を果たします。しかし、そのメリットを最大化させるためには、クラウド技術の導入が不可欠です。

本記事では、ビッグデータの基本とクラウド環境で活用するメリット、主要なビッグデータサービス、活用に向けた4つのポイントを解説します。ビッグデータの運用を考えるシステム管理者のかたはぜひ参考にしてください。

ビッグデータとは何か

ビッグデータとは何か

ビッグデータとは、従来の管理ツールでは扱うことが難しいほど、大規模で複雑なデータ群のことです。ソーシャルメディアやウェブサイト、マルチメディア、位置情報といったさまざまなソースからデータが集められ、多種多様な形式で保存されています。これらは、Volume(量)、Velocity(速度)、Variet(多様性)、Veracity(真実性)、Value(価値)といった「5つのV」と称される特徴を持ち、従来のデータとは異なる方法で収集や解析が行われます。

ビッグデータの重要性

ビッグデータは、ビジネスの競争力を高めるための重要な手段です。企業がこれを活用することで、有益な情報を素早く発見し、自社のビジネス戦略に活用できます。

たとえば、ECサイトを運営する企業では、購買履歴や閲覧履歴を分析することで、戦略的なマーケティングが可能です。個々の行動パターンに合わせたプロモーションを行い、顧客の購買意欲に働きかけることができます。また、市場のトレンドや消費者のニーズを把握することで迅速な意思決定が可能となり、新たなビジネスモデルの確立に役立ちます。

クラウド環境でビッグデータを活用するメリット

クラウド環境でビッグデータを活用するメリット

クラウド環境のビッグデータ活用は、データ分析の有効性を大幅に向上させます。以下、具体的なメリットを4つ紹介します。

● スケーラビリティの高さ
● コスト効率と支払モデル
● 高可用性とデータ冗長性
● グローバルアクセスと分散処理

スケーラビリティの高さ

クラウド環境を利用する最大のメリットがスケーラビリティの高さです。

たとえば、ストリーミングサービスを展開する企業がビッグデータを活用する場合、ユーザーの行動パターンの把握が何よりも重要です。膨大な過去データから得られた結果を素早くコンテンツ提案に反映させるには、拡張性の高いリソース環境が求められます。クラウド環境は、リソースの拡張や縮小を瞬時に行うことで、これらの変換に素早く対応し、ビッグデータの有効性を最大限に引き出せます。

コスト効率と支払いモデル

コスト効率の高さと支払いモデルの柔軟さもクラウド環境のメリットです。

従来のオンプレミス環境は、初期投資が高額な上、維持管理にも多大なコストがかかります。万が一、データ量が想定を超えた場合は追加投資が必要になるため、ビッグデータを運用する企業にとっては大きなリスクです。

しかし、クラウドサービスは、必要なときに必要なリソースのみを追加して、効率的なリソース運用が可能です。自動スケーリングによって、ピーク時は自動でリソースを追加し、アイドルタイムになると自動で削除や縮小を実施することができます。また、料金体系には従量課金制やサブスクリプションモデルが準備されており、企業は予算に合わせた最適なプランから選択できます。

高可用性とデータ冗長性

ビッグデータを運用する際、注意しなければならないのがシステム障害やダウンタイムです。特に、ストリーミングや金融、医療サービスなどの分野は、リアルタイム性が重視されるため、一度問題が起きてしまうと大きな影響を及ぼす可能性があります。

しかし、クラウドサービスは、優れた可用性とデータ冗長性が提供されており、リスクを最小限に抑えた運用が可能です。自動フェイルオーバー機能を活用することで、サーバー障害が起きたとしても素早く別のサーバーに切り替えられます。また、ストレージサービスでは、データの複数コピーを異なるリージョンで管理する機能も提供されており、データ損失のリスクを低減することができます。

分散処理による高速なデータ分析

分散処理技術の活用も、クラウド環境の大きなメリットです。

分散処理は、データを複数のノードに分けて並列処理を行う方法で、処理速度を飛躍的に高速化させることができます。データ量が急激に増加した場合でも、自動で処理能力をスケールアウトし、パフォーマンスの低下を防ぎます。また、企業が分散処理を活用することで、リアルタイムでのデータストリーミングや解析が可能となり、迅速な意思決定に役立ちます。

主要なクラウドプロバイダーとそのビッグデータサービス

主要なクラウドプロバイダーとそのビッグデータサービス

三大クラウドと称されるAWS、Azure、Google Cloudは、それぞれ独自のビッグデータサービスを展開しています。ここでは、各プロバイダーの主要機能について解説します。

Amazon Web Services (AWS)

Amazon Redshift

Amazon Redshiftは、ペタバイト規模のデータが扱えるデータウェアハウスサービスです。複数のプロセッサを用いたMPP(超並列処理)が採用されており、高速なデータ処理が実現されています。また、列ごとに読み取り・書き込みを行う列指向ストレージであるため、ディスクI/Oへの負担も最小化できます。

Amazon EMR

Amazon EMRは、ビッグデータの運用を効率的に行うためのプラットフォームです。Apache Hadoop、Apache Spark、Spark MLlib、Apache Flinkといったオープンソースフレームワークのセットアップが可能で、分散処理から機械学習、リアルタイムデータストリーミングに至るまで、広範な用途に対応しています。また、スケーラビリティに優れる点も特徴の一つで、負荷やデータ処理量に応じてクラスタのスケールアップ、スケールダウンが可能です。

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)は、データ容量が無制限で格納できるオブジェクトストレージサービスです。テキスト、画像、ビデオ、ログ、センサーデータなどのさまざまなデータ様式に対応でき、アクセス頻度に応じて複数のストレージクラス(種類)から選択できます。また、複数のデータセンターに分散して保存することで、高い安全性と信頼性が確保されており、99.999999999%の耐久性と99.99%の可用性が保証されています。

Microsoft Azure

Azure Synapse Analytics

Azure Synapse Analyticsは、データの取り込みから分析までをワンストップで行える統合型プラットフォームです。SQLデータベースやデータレイク、データウェアハウスなどの異なるデータベースをまとめて管理でき、SQLクエリやビッグデータ分析を同時に実行することができます。また、AIと連携しやすい点も特徴の一つで、自然言語処理や画像認識などを含めた分析が可能です。

Azure HDInsight

Azure HDInsightは、Hadoop、Spark、Hiveなどのオープンソースフレームワークをクラウド上で利用するためのプラットフォームです。リアルタイムでのデータ処理に強みがあり、Apache Kafkaを用いたストリーミング処理や、Apache Sparkを活用したデータ分析を高速に行えます。また、業界標準のコンプライアンス要件に準拠しているため、セキュリティの高い環境で運用が可能です。

Azure Data Lake Storage

Azure Data Lake Storageは、大規模データを効率的に管理するためのデータレイクソリューションです。構造化データ、非構造化データ、半構造化データなどのあらゆるデータ形式に対応でき、収集から加工、分析までを一貫して行えます。また、データをディレクトリやサブディレクトリの階層構造で保管する機能があり、ストレージコストを最小化して運用が可能です。

Google Cloud (GCP)

BigQuery

BigQueryは、大規模データを高速に処理できるデータウェアハウスサービスです。一般的なRDBMSが行単位でデータを扱うのに対し、BigQueryは列単位のカラム型データストアの仕組みが採用されており、アクセスする際のトラフィックを最小化させることができます。また、データのパーティショニングとクラスタリングが自動化されるため、SQL実行時のパフォーマンス向上も期待できます。

Google Cloud Dataflow

Google Cloud Dataflowは、大量データのバッチ処理とストリーミング処理を効率的に行うためのサービスです。オープンソースとして提供されるApache Beamの実行環境として利用でき、データの読込から前処理、集計、保存までのパイプライン処理を効率的に行えます。また、Google Cloud(GCP)が提供する各種サービスとの連携性にも優れ、Google Cloud Storage、BigQuery、Cloud Pub/Sub、Cloud Spannerの活用が可能です。

Google Cloud Storage

Google Cloud Storageは、容量無制限で利用できるオブジェクトストレージサービスです。データを複数のリージョンに分散することで、99.999999999%(イレブンナイン)の耐久性が保証されており、データの損失リスクを最小限に留められます。また、Googleの最新のセキュリティによるデータの暗号化やアクセス制御が可能なため、さまざまな分野でのデータセキュリティ要件を満たせます。

ビッグデータの活用に向けた4つのポイント

ビッグデータを有効活用するためには、効率的なデータ収集や管理方法が求められます。ここでは、押さえておきたい4つのポイントについて解説します。

● クラウドでのデータ収集と取り込み
● データストレージの管理
● データ処理と分析
● 可視化とダッシュボードの作成

クラウドでのデータ収集と取り込み

ビッグデータの運用にあたり、はじめに行うのがクラウドでのデータ収集と取り込みです。収集方法には、リアルタイムストリーミングとバッチ処理の2通りがあり、これらは目的に応じて使い分けられます。

リアルタイムストリーミングとは、データが生成されると同時に収集し、瞬時に処理する方法です。リアルタイム性が求められるデータの解析に利用され、企業は迅速に自社のビジネスに活かせられます。一方、バッチ処理は、特定の間隔でデータを一括収集し、まとめて前処理や変換を行う方法です。データ形式が分析しやすい形に整えられるため、運用時のコスト効率が向上します。

データストレージと管理

ビッグデータは、扱うデータの種類によって選択するストレージが異なります。たとえば、構造化されたデータは、一貫性が保たれるリレーショナルデータベースが適しますが、画像やセンサーデータのような非構造化データの場合は、NoSQLデータベースやオブジェクトストレージの利用が一般的です。また、データの処理速度や容量、セキュリティ、データライフサイクルとアーカイブなども考慮し、自社の要件に合わせた選択が求められます。

データ処理と分析

ビッグデータの処理と分析において、処理速度や効率性は重視すべき要素です。大量のデータから素早く有益な情報を引き出すためには、分散処理技術やビッグデータ解析ツールが役立ちます。

たとえば、分散処理フレームワークの一つであるApache Sparkは、データをノードに分散させ、メモリ内での処理(インメモリ処理)が可能です。インメモリ処理は、ディスクI/Oに比べてデータの読み書きが圧倒的に高速なため、リアルタイムで大量のデータを処理できます。これに、解析ツールを組み合わせることで、統計解析や機械学習、パターン認識が可能となり、ビッグデータの活用効果が最大化されます。

ダッシュボードによる可視化

ビッグデータの運用において、ダッシュボードは重要な役割を果たします。データを視覚化することで直感的な理解が促進され、有益な情報を容易に導き出すことができます。

たとえば、売上推移や顧客の行動変化などは、グラフで示すことでデータの傾向やパターンの把握が可能です。これらが容易にできるダッシュボードを活用することで、トレンドの発見や未来予測がしやすくなり、データに基づいた戦略的な判断が行えます。また、使用するツールによっては、特定のデータにフォーカスしたフィルタリングやドリルダウン機能も搭載されており、より詳細な情報を得ることができます。

クラウドビッグデータの課題と解決策

クラウドビッグデータの課題と解決策

ビッグデータの活用はメリットが多い一方で、いくつかの課題もあります。ここでは、具体的な課題とその解決策について解説します。

● データ移行の課題とその解決方法
● コスト管理のポイントと最適化
● パフォーマンスのボトルネック解消方法

データ移行の課題とその解決方法

ビッグデータを移行する際に、よく問題とされるのがデータの整合性です。

ビッグデータは、さまざまなソースからデータが収集され、一貫性を持たない集合体であることが通常です。そのため、異なるシステム間での移行は、欠損や重複、不整合が発生しやすく、正しい分析結果が得られないケースがあります。

これに対処するためには、ELTと呼ばれるデータ統合ツールの活用が有効です。ELTは、データの誤りや欠落、重複などを検出し、修正及び削除することができます。また、データ移行に必要な、抽出 (Extract)、変換 (Transform)、格納(Load)のプロセスがすべて自動化されるため、データ品質の向上と効率化を同時に実現できます。

コスト管理のポイントと最適化

ビッグデータの運用において、コスト管理も重要な課題の一つです。

ビッグデータは、収集したデータをストレージに保存しなければならず、それに伴う費用が発生します。データ転送の際も、ネットワーク通信料が加算されるため、特に大規模なデータセットは注意が必要です。また、高度な解析・分析を行うためには性能の高いサーバーリソースが必要となり、これらを含めたコストの試算が求められます。

コスト管理の問題を解決するには、効率的なリソース管理と最適化が重要です。たとえば、使用頻度の低いデータを圧縮したり、冗長性を排除したりなどの工夫で、保存コストを削減できます。また、データの収集や処理、保存を自動化することで、人的コストの削減と業務効率化も図れます。

パフォーマンスのボトルネック解消方法

ビッグデータを運用する上で、パフォーマンスの低下も大きな課題の一つです。

ビッグデータは、膨大なデータを素早く処理する必要があり、スペックの高いリソース環境が必須です。十分なリソースが確保されていない場合は、負荷に耐えられず、処理速度が低下する可能性があります。また、ネットワーク帯域幅の不足は、データ転送の遅延を招き、システム全体のパフォーマンスに悪影響を与えることもあります。

これに対処するためには、リソースの最適化と負荷分散技術の導入が有効です。たとえば、自動スケーリング機能は、システムの負荷やリソース利用状況に応じて、自動的にリソースを増減させることができます。また、負荷分散機能では、データ処理を複数のサーバーに分散し、パフォーマンスのボトルネックを解消してくれます。

まとめ

まとめ

企業がビッグデータを有効活用するためには、クラウド技術の導入が不可欠です。クラウドは、オンプレミスに比べてスケーラビリティに優れており、データ量や処理量の変化に素早く対応できます。また、分散処理技術を用いることで並列処理も可能となり、大量且つ複雑なデータ群をリアルタイムで分析処理することができます。

その際、運用の効率化に役立つのが、各クラウドプロバイダーが提供するビッグデータサービスです。統合プラットフォームは、データの収集から取り込み、処理、分析までを一つの環境で管理でき、作業効率の向上が期待できます。また、リソース管理やパフォーマンス改善を定期的に実施することで、運用の最適化を実現でき、ビッグデータの有効性が高まります。

現役データベースエンジニア。好きなものは夏と野球。

人気の記事

最新情報をお届けします!

最新のITトレンドやセキュリティ対策の情報を、メルマガでいち早く受け取りませんか?ぜひご登録ください

メルマガ登録