システム運用保守の将来性とは?現場の課題解決に向けた戦略を解説
企業の情報システム部門を悩ませる慢性的な人材不足、増え続ける運用コスト、巧妙化するセキュリティ脅威などの課題を抱えている企業は少なくありません。
将来を見据えたシステム運用保守体制の構築は、企業の成長戦略においても喫緊の課題と言えるでしょう。
本記事では、情報システム部門が直面する課題を整理し、最新トレンドやアウトソーシング戦略など、具体的な解決策を解説します。
本記事が、システム運用保守戦略を見直すきっかけとなれば幸いです。
システム運用保守とは?
システム運用保守とは、企業のITシステムを安定稼働させ、ビジネスを支え続けるための重要な業務です。
システム運用は、日々のシステム監視や定期的なメンテナンスなど、システムを安定稼働させるための予防的な活動が中心です。
一方、システム保守は、障害発生時の復旧やシステム改修など、問題解決や改善のための活動がメインとなります。
しかし、システム運用保守の現場は、技術の進歩やビジネス環境の変化に伴い、そのあり方が大きく変わりつつあります。
次章からは、システム運用保守はどのような将来性を持ち、どのような課題に直面しているかについて解説します。
システム運用保守の具体的な仕事内容について知りたい方は、「【システム運用保守の仕事内容】監視から障害対応まで業務内容を紹介」をご覧ください。
システム運用保守の将来性
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、ITシステムはビジネスの根幹を支える重要な存在となっています。
そのため、システム運用保守の重要性は今後さらに高まり、その役割も大きく変化していくでしょう。
システム運用保守には、最新技術を活用し、システムの安定稼働を維持するだけでなく、ビジネスの成長を支える戦略的なシステム改善なども求められるようになってきています。
一方で、システム運用保守の現場は、人材不足やセキュリティリスクの増大など、多くの深刻な課題にも直面しています。
システム運用保守の現場が抱える課題
ここでは、システム運用保守の現場が直面する代表的な3つの課題について詳しく解説します。
人材とスキル不足
ITシステムの複雑化やクラウド化が加速する一方で、システム運用保守を担う人材の確保が難しい状況です。
特に、最新技術に対応できるスキルを持つ人材は慢性的に不足しており、経験豊富なベテラン社員への業務集中や若手社員の育成不足といった問題も顕在化しています。
人材不足は、システムの安定稼働を脅かすだけでなく、社員の負担増加やモチベーション低下にもつながりかねません。
運用コストの増大
システムの規模が拡大し、機能が高度化するにつれて、運用コストも増大の一途をたどっています。
24時間365日の監視体制や障害対応、セキュリティ対策など、人的リソースを必要とする部分のコスト負担は特に大きく、企業にとって大きな経営課題です。
また、老朽化したシステムの維持や新しい技術への対応も、運用コストを押し上げる要因となります。
限られた予算の中で、いかに効率的かつ効果的な運用保守体制を構築するかが、企業にとって重要な課題となっています。
セキュリティリスクの増大
サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進む中、セキュリティリスクは企業にとって深刻な脅威となっています。
特に、グループ企業であれば親会社から、下請け企業であれば取引先から、高度なセキュリティ対策を求められるケースが増えています。
しかし、セキュリティ人材の不足や対策コストの増大など、多くの企業がセキュリティ対策に苦慮しているのが現状です。
このような課題を克服し、将来のシステム運用保守を支えるには、新たな技術やアプローチが必要不可欠です。
次の章では、システム運用保守の未来を担う最新トレンドについて解説していきます。
システム運用保守の将来を担う最新トレンド
システム運用保守の現場が抱える課題を解決し、さらなる効率化・高度化を実現するために、様々な最新技術が注目されています。
ここでは、特に重要な3つのトレンドについて解説します。
AIOps(AI for IT Operations)
AIOpsは、AI(人工知能)の力を借りて、システム運用保守の様々な業務を自動化・効率化する技術です。
具体的には、システムの監視、障害の検知と予測、根本原因の分析などをAIが担うことで、運用担当者の負担を大幅に軽減し、より高度な業務へのシフトを可能にします。
これにより、人材不足やスキル不足といった課題を緩和し、膨大なデータを分析することでセキュリティリスクの早期発見にも貢献します。
また、運用業務の効率化はコスト削減にもつながり、まさにシステム運用保守の現場が抱える課題を解決する鍵となる技術と言えるでしょう。
自動監視
システムの安定稼働には、24時間365日の監視体制が欠かせません。しかし、この体制を維持することは、運用コストの増大や人材不足といった課題にも直結します。そこで注目を集めているのが、自動監視技術です。
自動監視ツールは、システムの稼働状況を常に監視し、異常を検知すると自動的にアラートを発信したり、事前に設定した対応策を実行したりします。
これにより、運用担当者の負担を大幅に軽減し、人的ミスによる障害発生リスクを低減することが可能です。
さらに、夜間や休日などの時間帯でもシステムを監視できるため、システムの安定稼働にも貢献します。
セキュリティ対策
サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しており、セキュリティリスクは増大の一途をたどっています。従来の境界型セキュリティ対策だけでは、企業の大切な情報資産を守り切れません。
そこで、何も信頼しない概念に基づくゼロトラストセキュリティや、膨大なログデータを分析し、従来は見逃されていたような微細な異常や兆候を検知するXDR(Extended Detection and Response)などの対策技術が注目されています。
このような高度なセキュリティ対策を実現するためには、セキュリティの専門知識だけでなく、システム全体を理解し、問題発生時には迅速かつ的確に対応できるスキルが求められます。
システム運用保守担当者に必要なスキル
システム運用保守の現場では、技術進歩やビジネス環境の変化に対応しながら、システムの安定稼働を維持し、企業成長を支えることが求められます。
ここでは特に重要な3つのスキルについて解説します。
システム全体を把握するスキル
システム運用保守担当者にとって、システム全体を把握するスキルは必要不可欠です。システムの構成要素、それぞれの役割、それらがどのように連携しているのかを理解することで、様々な場面で力を発揮します。
例えば、システム運用においては、特定の操作がシステム全体にどのような影響を与えるかを予測し、障害発生時には迅速に原因を特定して適切な対応を可能にします。
また、システム保守においても、変更やアップデートが他の部分に及ぼす影響を評価し、システム全体の安定稼働を維持する上で欠かせません。特に、大規模かつ複雑なシステムになればなるほど、このスキルは重要性を増します。
システム全体を俯瞰的に捉え、常に最適な状態を保つことが、運用保守担当者に求められる重要な役割と言えるでしょう。
プログラミングのスキル
システム運用保守の現場では、プログラミングスキルが作業効率化や問題解決に大きく貢献します。
システム運用においては、定型的な作業をスクリプトで自動化することで、人的ミスを減らし、運用効率を向上させることができます。また、ログ解析ツールなどをカスタマイズし、必要な情報を効率的に抽出することも可能です。
システム保守においては、プログラミングスキルはさらに重要性を増します。
例えば、新たな仕様を既存システムに組み込む際には、既存のソースコードを理解し、変更による影響範囲を正確に調査する必要があります。
さらに、障害発生時には、ログ解析やデバッグなど、問題の原因特定と解決にプログラミングスキルが不可欠です。
コミュニケーションスキル
システム運用保守は、社内の様々な部門や関係者と連携して行う業務です。円滑なコミュニケーションは、業務効率化だけでなく、チームワーク向上や信頼関係構築にもつながります。
システム運用では、利用者からの問い合わせ対応や障害発生時の状況説明など、技術的な内容を分かりやすく伝える能力が求められます。
また、システム保守においても、開発部門との連携やシステム変更の影響を受ける部門への周知など、的確な情報共有が欠かせません。
これらのコミュニケーションを円滑に進めるためには、相手の立場や状況を理解し、専門用語を使わずに分かりやすく説明するスキルが重要です。
システム運用保守のアウトソーシングのメリット
前章では、システム運用保守担当者に必要なスキルについて解説しました。しかし、クラウド技術やAI、セキュリティなど、IT環境の高度化・複雑化が進む中で、これらのスキルを社内の人材だけで確保し続けることは容易ではありません。
そこで、多くの企業が注目しているのが、システム運用保守のアウトソーシングです。専門知識や技術を持つプロフェッショナルに業務を委託することで、様々なメリットが得られます。
具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
人件費などのコストが削減できる
システム運用保守をアウトソーシングするメリットの一つは、コスト削減です。
自社で運用保守体制を構築する場合、人件費だけでなく、教育研修費、設備投資費、システム運用管理ソフトのライセンス費用など、様々なコストが発生します。
一方、アウトソーシングでは、これらのコストを大幅に削減できます。特に、24時間365日の監視体制や障害対応など、人的リソースを必要とする部分のコスト削減効果は非常に大きいです。
システムの安定稼働とセキュリティ強化を実現できる
アウトソーシングを活用すれば、専門性の高いプロフェッショナルチームにシステム運用保守を安心して任せられます。豊富な経験とノウハウ、そして最新の技術を駆使して、システムの監視、障害対応、セキュリティ対策などを24時間365日体制で実施します。
これにより、自社だけでは実現が難しい高度なセキュリティ対策や、システムの安定稼働を確保することが可能です。
特にセキュリティ面では、専門知識を持つプロフェッショナルが対応することで、サイバー攻撃などの脅威からシステムを守り、企業の大切な情報資産を保護します。
トラブル時の対応がスムーズになる
システムトラブルは、業務への影響が大きく、迅速な対応が求められます。アウトソーシングでは、専門性の高いエンジニアが24時間365日体制で監視を行い、アラート検知・一次対応、必要に応じて二次対応までをスムーズに実施します。
これにより、障害発生時の対応時間を短縮し、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。
また、豊富な経験とノウハウを持つ専門家チームが対応するため、原因究明と復旧作業も効率的に進めることができます。
自社で対応する場合に比べ、トラブル発生時の対応スピードと質が向上し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができるでしょう。
「JIG-SAW OPS」では、正社員のエンジニアが常駐し24時間365日体制で監視や障害対応、サービス復旧などを支援します。夜間帯など自社で迅速な対応が難しい場合でも、安心してシステム運用を任せることが出来ます。
システム運用保守のアウトソーシングのデメリット
アウトソーシングは多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。アウトソーシングを検討する際には、これらのデメリットも十分に理解し、対策を講じることが重要です。
ここでは、主な3つのデメリットについて解説します。
情報セキュリティのリスクが増える
システム運用保守を外部に委託することで、企業の機密情報や顧客情報など、重要な情報を外部に開示する必要が生じます。そのため、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まる可能性があります。
アウトソーシング先企業のセキュリティ体制をしっかりと確認し、機密情報へのアクセス管理やセキュリティ対策について、契約内容に明記するなど、対策を講じることが重要です。
社内にノウハウが蓄積されない
アウトソーシングに依存しすぎると、システム運用保守に関するノウハウが社内に蓄積されにくくなります。
将来的に内製化したい場合や、ベンダーを変更したい場合に、スムーズな移行が難しくなる可能性があります。
アウトソーシングを活用しながらも、自社内で一定レベルの知識やスキルを維持するための工夫が必要です。
特定のベンダーに縛られてしまう
アウトソーシング契約を締結すると、特定のベンダーに依存した体制になってしまう可能性があります。
サービス内容や料金体系に不満があっても、すぐに他のベンダーに乗り換えることは難しく、ベンダーロックインと呼ばれる状態に陥る可能性があります。
契約内容や条件などを事前にしっかりと確認し、柔軟に対応できるベンダーを選ぶことが重要です。
これらのデメリットを理解した上で、自社の状況に合わせてアウトソーシングを適切に活用することが重要です。
システム運用保守のアウトソーシング事例
ここからは、JIG-SAW OPSが実際にシステム運用保守を支援した企業の成功事例を紹介します。
各企業が抱えていた課題や、JIG-SAW OPS導入による具体的な効果を参考にして、アウトソーシング導入の検討を進めてみてください。
企業のITシステムの安定稼働と効率化を支援するフルマネージドサービスである「JIG-SAW OPS」について詳しく知りたい方は、「WHAT is JIG-SAW OPS ?」をご覧ください。
株式会社バンダイナムコオンライン
株式会社バンダイナムコオンラインは、バンダイナムコグループ傘下で、オンラインゲーム事業に特化し、開発・運営からパブリッシングまでを一貫して手掛ける企業です。
従来の国内クラウド環境では、運用コストの高さと拡張性の限界が課題となっていました。また、グローバル展開を見据え、より安定したサーバー環境と高精度な運用監視体制の構築が求められていました。
そこで、サーバー環境をGoogle Cloudに移行し、運用監視をJIG-SAWに委託しました。これにより、コスト削減と拡張性向上を実現すると同時に、24時間365日の有人監視と独自システム「puzzle」による自動監視を組み合わせた高精度な運用監視体制を確立しました。
その結果、サーバー移行後もサービス停止なく安定稼働を実現し、開発・運用効率も向上しました。JIG-SAWの迅速かつ的確な障害対応により、ユーザーへの影響を最小限に抑え、信頼性の高いゲームサービス提供を可能にしています。
関連記事:大ヒットロングセラーゲーム基盤をGoogle Cloud移行し、人気タイトルが安定稼働する環境の実現と障害発生時の原因究明、対策を実行できる体制を確立
損害保険ジャパン株式会社
損害保険ジャパン株式会社は、損害保険事業を中核とするSOMPOグループの中核企業であり、DX推進を掲げ、顧客への新たな価値提供を目指しています。
従来のオンプレミス環境からの脱却と運用コスト削減を図るため、AWSの導入を決定しましたが、AWS運用ノウハウの不足や最適な運用保守体制の構築が課題となりました。
この課題解決のため、JIG-SAWのフルマネジメントサービスである「JIG-SAW OPS」を導入し、AWS環境の運用保守を委託しました。
その後、マルチクラウド戦略に対応するため、包括的なパートナーシップ契約を締結。現在では、AWSだけでなく、Microsoft Azure、Google Cloudの運用保守もJIG-SAWに委託しています。
その結果、AWS導入と運用保守のアウトソーシングにより、コスト削減と運用効率化を実現しました。JIG-SAWの柔軟なサービス体系と高い技術力により、安定稼働とセキュリティ強化を達成し、DX推進を加速させています。
関連記事:デジタルシフトの基盤としてAWSを採用。SOMPOグループの3か年中期経営計画に向けたマルチクラウド戦略を実行し、顧客向けのコスト最適化や品質向上の価値提供を目指す体制を確立。
トヨタ自動車株式会社
世界的な自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社は、モビリティカンパニーへの変革を目指し、安全運転支援やエコ運転支援などのサービス開発を積極的に推進しています。
しかし、アジャイル開発によるPoC(概念実証)が増加するにつれ、AWS環境の運用監視業務も増大。開発業務への専念が難しくなり、運用監視の効率化が課題となっていました。
そこで、JIG-SAW OPSを導入し、AWS環境の運用監視を委託しました。24時間365日の有人監視と自動監視を組み合わせた体制により、アラート対応や障害対応の負荷を大幅に軽減することに成功しました。
その結果、開発メンバーは本来の開発業務に集中できるようになり、プロジェクトが加速。さらに、JIG-SAW OPSの迅速な対応により、システムの安定稼働を維持し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができました。
関連記事:サービス開発基盤となるAWSの運用監視をJIG-SAWに委託、 運用コストを削減し、開発業務に注力できる時間を確保
まとめ
本記事では、システム運用保守の課題、将来性、最新トレンド、アウトソーシングという選択肢について解説しました。
システム運用保守は、企業のIT戦略においてますます重要な役割を担っています。しかし、その一方で、人材不足やコスト増大、セキュリティリスクなど、多くの課題も抱えています。
これらの課題を解決し、システムの安定稼働とビジネスの成長を両立させるためには、最新技術の積極的な活用とアウトソーシングを含めた柔軟な体制構築が不可欠です。
JIG-SAWは、お客様のニーズに合わせて最適なソリューションを提供し、システム運用保守の課題解決を支援します。ぜひお気軽にご相談ください。