
Minikubeで始めるKubernetes入門:ローカル環境で実践するための事前準備とコマンドを解説
Kubernetesを学びたいけれど、何から始めたらいいか分からない…。そんな方にオススメなのが「Minikube」です。
この記事では、ローカル環境でKubernetesを実践的に学ぶための基礎知識と、Minikubeの導入・活用方法を分かりやすく解説します。初心者でも簡単に始められる手順を一緒に見ていきましょう!
Kubernetesとは

Kubernetes(クバネティス)は、Googleが開発し、現在はオープンソースとして提供されているコンテナオーケストレーションツールです。
アプリケーションを構成するコンテナを自動的にデプロイ、スケール、管理する役割を担います。
例えば、複数のコンテナを効率よく動作させるためのリソース配分、障害発生時の自己修復、トラフィック量に応じたスケール調整などを自動化します。これにより、複雑なアプリケーションの運用管理が容易になります。特に、クラウドネイティブアプリケーションやマイクロサービスの導入で広く利用されています。
Kubernetesのコンポーネント
Kubernetesは、コントロールプレーンとワーカーノードという2つの主要なコンポーネント群で構成されており、これらが連携してクラスターを管理・運用します。それぞれの役割を簡潔に解説します。
コントロールプレーン
コントロールプレーンは、Kubernetesクラスター全体を管理・制御する役割を担います。
kube-apiserver | クラスター全体の「窓口」として、ユーザーやツールからのリクエストを受け取り、各コンポーネントに指示を出します。 |
etcd | Kubernetesの状態情報(PodやServiceの設定、クラスターデータなど)を保存する分散型キー・バリューストアです。 |
kube-scheduler | 新しいPodを最適なノードに配置する役割を担い、リソース状況や設定ポリシーに基づいてスケジューリングを行います。 |
kube-controller-manager | クラスターの状態が望ましい状態と一致するよう、さまざまなコントローラー(レプリカ数の維持など)を統括します |
cloud-controller-manager | クラウドプロバイダー(AWS、GCPなど)と連携し、ロードバランサーやストレージの管理を行います。 |
ワーカーノード
ワーカーノードは、実際にアプリケーションのコンテナを動かす役割を担います。
kubelet | 各ノードでPodを管理し、コンテナの起動・停止などの実行指示を行います。 |
kube-proxy | クラスター内のネットワーク通信を管理し、各Podへのトラフィックをルーティングします。 |
コンテナランタイム | Dockerやcontainerdなど、コンテナの実行環境として機能するソフトウェアです。 |
Minikubeとは

Minikubeは、Kubernetesクラスターをローカル環境で簡単にセットアップして試すことができるツールです。本番環境で使用されるKubernetesとは異なり、Minikubeはローカル環境でしか動作せず、単一ノードクラスターとして動作します。
そのため、実際の分散型クラスターを再現することはできませんが、Kubernetesの基本的な仕組みを学ぶためには最適です。手軽にコンテナのデプロイやPodの管理を体験できるため、学習用途やテスト環境で幅広く利用されています。
Minikubeを使うための事前準備
Minikubeを使うためには、以下の3つのツールが必要です。ここでは、それぞれのツールの役割とインストール方法を解説します。必要なツールは以下の通りです。
- Docker
- kubectl
- Minikube
Docker
Dockerは、Minikubeが使用するコンテナランタイムであり、コンテナを実行するための基盤となります。
動作要件の確認
Docker Desktopは、WindowsとMacでDockerを簡単に利用できるようにする公式ツールです。WindowsとMacそれぞれのインストール手順を詳しく説明しますが、まずは事前に以下の要件を確認してください。
- Windows: Windows 10(Pro、Enterprise、Education)の64ビット版、またはWindows 11。Homeエディションの場合はWSL 2が必須。
- Mac: macOS 10.15(Catalina)以降の64ビット版。Apple Silicon(M1/M2)やIntel Macの両方に対応。
次に、こちらの公式サイトからDocker Desktopをダウンロードします。

Docker Desktopのインストール手順(Windows)
- インストーラーの実行
ダウンロードしたインストーラー(例: Docker Desktop Installer.exe)をダブルクリックして実行します。 - オプションを確認
WSL 2 を使用するか(推奨): Windows Subsystem for Linux (WSL 2) を使用すると、より軽量で高速な仮想化が可能です。WSL 2のインストールが未完了の場合、以下の公式ガイドを参考にセットアップしてください。
WSL 2 のインストール手順(Microsoft公式) - インストール完了
インストールが終了したら、「Docker Desktop」を起動します。 - 初回設定
Docker IDでログイン(無料で作成可能)します。ログインせずに使いたい場合、「Skip for now」を選択できます。
初回起動時にWSL 2やHyper-Vの有効化を促される場合があります。画面の指示に従い、適切に設定してください。 - 動作確認
ターミナルまたはコマンドプロンプトで以下のコマンドを入力して、Dockerが正しくインストールされているか確認します。
docker –version |
Docker Desktopのインストール手順(Mac)
- インストーラーの実行
ダウンロードしたインストーラー(例: Docker.dmg)をダブルクリックして開きます。 - アプリケーションのインストール
インストーラーが表示されたら、「Docker.app」をアプリケーションフォルダにドラッグ&ドロップします。 - Docker Desktopを起動
アプリケーションフォルダから「Docker」をダブルクリックして起動します。初回起動時にパスワードを要求される場合があるので入力してください。 - 初回設定
Docker IDでログインします(未登録の場合は無料で作成可能)
Apple Silicon(M1/M2)を使用している場合は、Docker Desktopが自動的に対応するバージョンを選択します。 - 動作確認
ターミナルを開き、以下のコマンドでインストール確認

docker –version |
kubectl
kubectlは、Kubernetesクラスターを操作するためのCLIツールです。Minikubeでもクラスターやリソースの管理に使用します。WindowsとMacそれぞれのインストール手順を説明します。
kubectlのインストール方法(Windows)
方法1:choco(Chocolatey)を使用
Chocolateyを利用してインストールする場合、以下のコマンドを実行します。
choco install kubernetes-cli |
方法2:scoopを使用
Scoopを使ってインストールする場合は以下を実行します。
scoop install kubectl |
方法3:公式バイナリを使用
最新バージョンのkubectlをkubectl公式リリースページからダウンロードする方法です。
詳細は下記公式ページよりご確認ください。
https://kubernetes.io/ja/docs/tasks/tools/install-kubectl-windows/
kubectlのインストール方法(macOS)
方法1:Homebrewを使用
Homebrewがインストールされている場合、以下のコマンドで簡単にインストールできます。
brew install kubectl |
方法2:公式バイナリを使用
- 最新バージョンのkubectlをダウンロード
curl -LO “https://dl.k8s.io/release/$(curl -L -s https://dl.k8s.io/release/stable.txt)/bin/darwin/amd64/kubectl” |
- ダウンロードしたバイナリに実行権限を付与
chmod +x kubectl |
- 実行可能なディレクトリに移動
sudo mv kubectl /usr/local/bin/ |
- 動作確認
kubectl version –client –output=yaml |
Minikube
Minikubeは、ローカルKubernetesクラスターを構築するためのツールです。WindowsとMacそれぞれのインストール手順を説明します。
動作要件の確認
Minikubeをインストールする前に、以下の動作要件を確認してください。
- 仮想化サポート
- Minikubeは仮想マシンまたはコンテナランタイムを使用します。Hyper-V、VirtualBox、Docker、またはKVMが必要です。
- Minikubeは仮想マシンまたはコンテナランタイムを使用します。Hyper-V、VirtualBox、Docker、またはKVMが必要です。
- 事前準備ツール
- Docker(または他の仮想化ツール)
- kubectl(クラスター操作に必要)
Minikubeのインストール方法(Windows)
方法1:Chocolateyを使用
Chocolateyがインストールされている場合、以下のコマンドでMinikubeを簡単にインストールできます。
choco install minikube |
方法2:公式バイナリを使用する方法
Minikubeの公式サイト(Minikube公式ページ)から、Windows用のバイナリをダウンロードします。
ダウンロードしたファイル(例: minikube.exe)を適切なディレクトリ(例: C:\Program Files\Minikube)に配置し、システム環境変数PATHに追加します。
※WSL 2 を有効化する(Windows 10 Home の場合)
Windows 10 Home では仮想化にWSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)を使用する必要があります。こちらの「WSL 2 のインストール手順(Microsoft公式)」を参考に設定してください。
コマンドプロンプトまたはPowerShellで以下を実行します。
minikube version |
Minikubeのインストール方法(macOS)
方法1:Homebrewを使用したインストール
brew install minikube |
方法2:公式バイナリを使用したインストール
Homebrewが使えない場合、以下の手順でインストールできます。
- 最新バージョンをダウンロード
curl -LO https://storage.googleapis.com/minikube/releases/latest/minikube-darwin-amd64 |
- 実行権限を付与
chmod +x minikube-darwin-amd64 |
- パスに移動
sudo mv minikube-darwin-amd64 /usr/local/bin/minikube |
以下のコマンドでバージョン確認を実行し、動作確認を行ってください。
minikube version |
Minikubeを利用するうえで覚えておくべきコマンド

Minikubeを使い始める際、基本的な操作を覚えておくとスムーズにKubernetesを学べます。ここでは、クラスターの作成・管理から、簡単なアプリケーションのデプロイまで、覚えておきたい主要なコマンドを解説します。
クラスターの作成
MinikubeでローカルKubernetesクラスターを起動するための基本コマンドです。
minikube start |
例: メモリやCPUリソースを指定して起動する場合
minikube start –memory=4096 –cpus=2 |
クラスターのステータス確認
Minikubeクラスターの現在の状態を確認するコマンドです。クラスターが正常に動作している場合、各コンポーネントの状態が表示されます。
minikube status |
クラスターの停止
使用しないときにクラスターを停止し、リソースを節約するコマンドです。
minikube stop |
クラスターの削除
クラスターを完全に削除する場合に使用します。
minikube delete |
nginxアプリケーションのデプロイ
以下のコマンドで、Kubernetesクラスターにnginx(軽量なWebサーバー)をデプロイします。
kubectl create deployment nginx –image=nginx |
- kubectl create deployment: Deploymentリソースを作成します。
- –image=nginx: デプロイに使用するDockerイメージを指定します。
nginxの公開(Serviceの作成)
デプロイしたnginxアプリケーションをクラスター外部からアクセス可能にするため、Serviceを作成します。
kubectl expose deployment nginx –type=NodePort –port=80 |
- –type=NodePort: クラスターのノード(Minikubeの場合はローカルホスト)の特定ポートを公開します。
- –port=80: nginxがリクエストを受け付けるポートを指定します。
アクセス確認
作成したnginxサービスにブラウザでアクセスする場合、以下のコマンドでURLを取得します。
minikube service nginx |
コマンド実行後、表示されたURLをブラウザで開くと、nginxのデフォルトページが表示されます。
リソースの確認
Kubernetesのリソースの状態を確認する際によく使うコマンドです。
Podの一覧を表示
作成したPodの名前や状態(Running、Pendingなど)が確認できます。
kubectl get pods |
Serviceの一覧を表示
作成されたServiceの名前や公開ポート、クラスタ内IPなどが確認できます。
kubectl get services |
Deploymentの詳細情報を確認
kubectl describe deployment nginx |
ログの確認
アプリケーションのトラブルシューティング時にPodのログを確認するコマンドです。
kubectl logs <pod名> |
ダッシュボードの起動(オプション)
MinikubeにはKubernetesのリソースをGUIで管理できるダッシュボードが含まれています。
minikube dashboard |
実行後、ブラウザでKubernetesダッシュボードが開き、リソースを視覚的に管理できます。
コマンド集
操作内容 | コマンド例 |
クラスターの作成 | minikube start |
クラスターのステータス確認 | minikube status |
クラスターの停止 | minikube stop |
クラスターの削除 | minikube delete |
nginxのデプロイ | kubectl create deployment nginx –image=nginx |
nginxの公開 | kubectl expose deployment nginx –type=NodePort –port=80 |
アクセス確認 | minikube service nginx |
Pod一覧の確認 | kubectl get pods |
Service一覧の確認 | kubectl get services |
ダッシュボードの起動 | minikube dashboard |
まとめ
Minikubeは、Kubernetesをローカル環境で手軽に学ぶための最適なツールです。
本記事では、Kubernetesの基本やMinikubeのインストール、基本的なコマンドを解説しました。これらを活用することで、Kubernetesの仕組みを理解し、実際の操作を体験できます。
別記事ではMinikubeを使って実際にノードやPodを動かす手順も解説しているので、ぜひご覧ください。