Azure運用サービス完全ガイド|運用保守の基本と代行サービスのメリットについて解説!
Azureを安定稼働させるには、システムの運用保守が必須です。しかし、クラウドに関わる知識・ノウハウの蓄積やセキュリティリスクへの課題もあり、運用保守に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、Azureにおける運用保守の基本と実施項目、運用代行サービスの内容について解説します。運用代行サービスを利用するメリットや選び方についても解説しているので、Azureの運用保守にお困りの方はぜひ参考にしてください。
Azureにおける運用保守とは?
Azureの運用保守とは、Azureを安定的かつ効率的に運用維持するために、システムの管理業務を行うことです。具体的には、定期メンテナンスや監視業務、セキュリティ対策、障害対応などがあり、事前に詳細を決めることで適切な手順で行えます。
クラウドの運用保守で注意したいのが「責任共有モデル」という考え方です。責任共有モデルとは、クラウドサービス事業者とユーザーの間で、どちらに責任の所在があるのかを示したモデルのことで、IaaS、PaaS、SaaSによって責任範囲が異なります。Azureの運用保守では、責任共有モデルを意識した上での運用保守が必要です。
Azureの運用保守で実施すべきこと
Azureの運用保守は構成によって異なりますが、主に以下の7つが実施すべき業務です。
- 運用設計
- 監視
- ログ収集
- バックアップ
- セキュリティ対策
- 定期メンテナンス
- 障害対応
運用設計
運用設計とは、システムを安定的に運用するため、利用目的や運用保守にまつわるルール、業務内容、役割分担などをあらかじめ決めておくことです。オンプレミス・クラウドを問わず、システムの運用には必ず監視や定期メンテナンスを伴います。事前に業務を整理し標準化することで、抜け漏れのない運用が可能です。
また、運用設計では定期的な評価及び見直しも必要です。実際の運用で問題が生じた部分を改善していけば、より効率的な運用体制が整えられます。
監視
監視とは、Azure環境を構成する仮想サーバーやOS、ミドルウェア、アプリケーションなどに問題が生じていないかを定期的に確認することです。具体的には、サーバーの死活監視やメモリ・ディスクの使用率、パフォーマンスの測定などが挙げられます。監視の際はツールを用いた方法が一般的で、問題が検知されるとアラートによって通知されます。
監視の注意点としては、監視対象をあらかじめ正確に把握することです。上で述べたようにクラウドは「責任共有モデル」を意識する必要がありますが、オンプレミスと共存した環境になると監視範囲がその分広がります。
ログ収集
ログ収集は、Azure環境の状態を知るための重要な業務です。ログにはリソース状況や操作ログ、サービスログといったあらゆる情報が記録され、これをモニタリングすることで障害やセキュリティインシデントを未然に防げます。さらに、集めたログを分析することで似通ったパターンが把握でき、エラーの傾向を見つける手がかりになります。
また、取得したログはトリガーとしても利用可能です。指定した条件によって通知やアクションを実行でき、問題に対して速やかに対処できます。
バックアップ
バックアップは、予期せぬ障害やデータ損失への備えとして必要な業務です。Azure環境の場合だと、仮想サーバーやファイル、フォルダ、システム状態のバックアップを取得することで素早くシステムを復旧できます。バックアップはAzureストレージ内に保管・管理でき、自社内で保持するよりも高いセキュリティレベルが保てます。
また、バックアップはBCPの観点から見ても重要です。自然災害やテロ攻撃、パンデミックといった脅威は予測ができず、場合によってはシステムを停止せざるを得ない状況もあります。バックアップを取得することであらゆるトラブルに備えられ、事業の継続性を保持できます。
セキュリティ対策
Azureは強固なセキュリティ基盤を持つクラウドサービスですが、利用者側でも一定のセキュリティ対策が必要です。情報漏洩や不正アクセス、サイバー攻撃といった脅威から自社の情報資産を守るには、適切なセキュリティ対策が求められます。
クラウドのセキュリティ対策として、まず取り組みたいのが多要素認証の活用です。端末を限定する「クライアント証明書」や、スマートフォンを利用する「ワンタイムパスワード」などを活用すれば、ログイン時の認証を強固にできます。また、アカウント管理と共に適切なアクセス制限を設けることで、より高いセキュリティ環境が保てます。
定期メンテナンス
定期メンテナンスとは、Azureの運用維持に必要な作業を計画的に行うことです。具体的には、OS・ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用、各種設定変更などがあり、定期的な実施によってシステムの安定化が図れます。
システムメンテナンスのメリットはトラブルの予測ができることです。実施の際は、CPUやメモリの使用率、通信トラフィック、アプリケーションやミドルウェアの状態確認も行います。これにより、Azure環境内に問題の兆候がないかを早期に把握できます。
障害対応
障害対応も保守運用で行うべき業務の一つです。障害は事前に想定できない事象ですが、事前に手順を準備することで素早く問題に対処できます。そのため、いくつもの障害パターンをあらかじめ想定し、障害レベルに応じた手順を用意する必要があります。
具体的なフローとしては、影響範囲の確認、アナウンスの実施、原因調査、復旧方法の策定、復旧作業を実施するといった流れが一般的です。システム復旧後は同じ障害を回避するため、再発防止策も検討しなくてはいけません。また、軽微な障害に対処できるよう、自動復旧させる仕組みも必要です。
Azure運用代行サービスとは?
Azure運用代行サービスとは、Azure運用における監視やセキュリティ対策、障害対応などをまとめて委託できるサービスです。委託できる範囲は代行会社によって異なりますが、なかには24時間365日の監視や導入支援、システム改善、技術相談、内製化支援が受けられるサービスもあります。
また、運用代行サービスの多くでは、マルチクラウドやオンプレミスを含めて対応可能です。ハイブリッドを前提に運用設計の段階から支援が受けられるため、スピーディにAzureの運用を始められます。
Azure運用代行サービスの内容
Azure運用代行サービスは、日々の運用保守だけでなく、Azureの導入やシステムの構築、運用整理まで幅広くサポートしています。以下、具体的なサービス内容を確認しましょう。
- Azureの導入・システム構築支援
- 24時間365日体制での有人監視
- 障害発生時の調査及び復旧対応
- セキュリティ対策
- メンテナンス作業のサポート
- 運用整理・ドキュメント作成
Azureの導入・システム構築支援
Azureの導入にあたり、はじめの課題となるのが専門知識やノウハウの不足です。Azureにはクラウド特有の概念があり、それを理解した上でのシステム設計・構築が求められます。そのため、社内の知識・スキルが乏しい場合、Azureの導入自体ができない可能性があります。
しかし、運用代行サービスでは、Azureの導入やシステム構築の支援が可能です。Azureを効率的に運用するためのノウハウ・経験が蓄積されているため、最適な要件定義や設計を提案してもらえます。これにより、社内の人材が不足している場合でもスピーディなAzure運用が可能です。
24時間365日体制での有人監視
システム監視はAzure環境の安定性を保つ上で最も重要な業務です。検知・アラートは監視ツールで自動化できますが、それを判断するには専門のエンジニアでなければいけません。そのため、24時間365日稼働し続けるような運用だと、シフトに合わせた人員を配置する必要があります。
その解決手段として有効なのが運用代行サービスです。運用代行サービスでは、専門スタッフが24時間365日常駐し、仮想サーバーやバックグラウンドシステム、データベースの稼働状態などをリアルタイムで監視します。これにより、自社の監視業務が不要となり、少人数でもAzureの運用ができます。
障害発生時の調査及び復旧対応
サービスに影響する障害が発生した際は、迅速な対応が必要です。しかし、Azureに詳しい担当者が居なければ原因調査に時間がかかり、復旧までに多くの時間を要します。また、システムの規模に応じて影響範囲も広がるため、復旧が遅れるほど大きな損失になります。
しかし、運用代行サービスであればその課題を解決できます。障害が発生した際は、設定したルールに従って専門スタッフが速やかに対処してくれます。また、影響範囲の調査や原因特定、復旧作業も含めてすべて対応できるため、運用負荷を大幅に削減可能です。
セキュリティ対策
Azureでは、セキュリティの概念としてゼロトラストモデルが提唱されています。ゼロトラストとは、「すべてのアクセスを信頼しない」というコンセプトに基づいたセキュリティ対策の手法です。ゼロトラストでは複数のセキュリティを統合的に実施する必要がありますが、これを実現するには専門的な知識が求められます。
運用代行サービスでは、クラウドセキュリティに精通した専門家によって、ゼロトラストに準じたセキュリティ対策が可能です。Azure製品に関わる知識や実績が豊富なため、強固なセキュリティ基盤が構築できます。
メンテナンス作業のサポート
定期メンテナンスは、Azureを安定して運用維持するための重要な業務です。しかし、メンテナンスでは事前の調査や準備に手間がかかる上、週次や月次、年次を合わせると多くの時間と人員コストを要します。そのため、アウトソースを利用する方が、かえって経費節減につながる可能性があります。
運用代行サービスでは、OS・ソフトウェアのアップデートや各種設定変更だけでなく、要望に応じてパフォーマンスチューニングの設定も可能です。また、自社でメンテンナンスを実施する場合でも、24時間365日の問い合わせ窓口が利用できます。
運用整理・ドキュメント作成
適切な運用保守を実現するには、運用整理とドキュメントの作成が欠かせません。ドキュメント化によって関係者全員と共有でき、抜け漏れのない運用体制が整えられます。また、詳細な手順を整理することで、緊急時のスピード化が図れます。
運用代行サービスの多くでは、運用設計やドキュメント作成の依頼が可能です。要望に応じて、システム構成や各種設定情報、保守情報、監視仕様書、障害対応マニュアルまで幅広く対応しています。システムや運用のブラックボックス化を防ぐという点においても大きなメリットと言えるでしょう。
Azure運用代行サービスを利用するメリット
Azure運用代行サービスの利用は、運用保守の効率化やコスト削減といった多くのメリットが得られます。以下、具体的なメリットについて4つ解説します。
- 運用保守の効率化につながる
- 運用保守にかかるコストを削減できる
- 経験豊富なプロに委託できる
- Azureをより安定的かつ効率的に運用できる
運用保守の効率化につながる
Azure運用代行サービスを利用する最大のメリットと言えるのが運用保守の効率化です。
運用保守は監視やバックアップ、セキュリティ対策、障害対策、メンテナンスといったように業務範囲が広く、多くのリソースを必要とします。そのため、社内リソースのほとんどがAzureの運用保守に奪われるといったケースも少なくありません。また、他社のクラウドサービスやオンプレミスとの併用ではツールの使い分けが必要な場合もあり、運用保守がより複雑になります。運用代行サービスを利用することで、これらの課題をすべて解決できます。
運用保守にかかるコストを削減できる
運用保守は手間や時間がかかるだけでなく、コスト面も大きな課題です。24時間365日稼働が必要なシステムにおいては、シフトに合わせたエンジニアを揃え、監視体制を整えなければいけません。また、専門知識を持つ人材の育成も必要なため、総合的に見ると多くの人的コストが発生します。
しかし、運用代行サービスなら、社内の担当者が少数でも運用可能です。手間のかかる業務や深夜対応はすべて代行会社に依頼できるため、交替制のシフトも不要になります。さらに、Azureに精通した専門家のアドバイスによって、運用担当者のスキル向上も可能です。
経験豊富なプロに委託できる
Azureでは「Azure Monitor」や「Log Analytics」など、運用保守に役立つさまざまなサービスが提供されています。しかし、これらを適切に運用するには、ある程度の知識や経験が求められます。仮に、設定や運用方法を理解しないまま利用すると、サーバー異常を検知できない可能性があります。
しかし、運用代行サービスでは、Azureの運用機能を活用した運用代行が可能です。代行会社では経験豊富なプロが在籍しており、自社のシステム構成に合わせた最適な方法で運用してくれます。これによりトラブルの予兆をすばやく検知し、障害の被害を最小限に抑えられます。
Azureをより安定的かつ効率的に運用できる
Azureを安定的かつ効率的に運用するには、Azureのベストプラクティスに沿った運用設計が必要です。ベストプラクティスとは「最善の技法」を意味し、Azureの場合だと、信頼性、セキュリティ、コストの最適化、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンス効率で構成される「Microsoft Azure Well-Architected Framework」が示されています。
運用代行サービスでは、これらの原則を加味した運用設計が可能です。自社のシステム構成に合わせて、最適な監視体制やセキュリティ対策、リソース・パフォーマンスの提案をしてくれます。これにより、Azureの可用性、完全性、機密性が担保され、より安定的かつ効率的な運用が実現できます。
Azure運用代行サービスのデメリット
Azure運用代行サービスはメリットが多い一方で、いくつかのデメリットもあります。以下、2つの点に注意しましょう。
● 自社内でAzureに関するノウハウが蓄積されにくくなる
● 委託内容によってはコストがかかる
自社内でAzureに関するノウハウが蓄積されにくくなる
運用代行サービスは、社内に専門知識を持つ人材を抱える必要がない反面、Azureに関するノウハウが蓄積されにくい点が課題です。長期的な視点で見ると、社内のリソースが成長する機会を失い、外部依存が強まる可能性があります。
これを避けるには、すべての運用保守を任せるのではなく、自社で運用する業務と委託する業務を切り分けておくことがポイントです。いずれ内製化を考えているのであれば、代行会社にその意向を伝え、徐々にシフトするという方法もあります。
委託内容によってはコストがかかる
運用代行サービスを利用する際は、必ず初期費用や月額費用が発生します。設定金額は代行会社によって異なりますが、インスタンス数や保守の内容に応じた料金設定です。また、導入時のシステム構築や運用設計、カスタマイズは別途見積りとなるため、導入時は一定のコストがかかることを理解しておかなければいけません。
しかし、運用代行サービスは運用保守の手間を減らせるだけでなく、運用保守や人材育成にかかる人件費も削減可能です。そのため、外部委託の方がかえってコストが割安になる可能性があります。また、専門家による技術的支援も受けられるため、総合的にみると費用対効果の高いサービスと言えます。
Azure運用代行サービスの選び方
Azure運用代行サービスは、委託できる範囲やサポート内容が異なります。より最適なサービスを選ぶためにも、以下4つのポイントを押さえましょう。
- 運用保守の内容が自社に合っているか
- 運用設計のサポートが受けられるか
- Azureのベストプラクティスに沿った監視ができるか
運用保守の内容が自社に合っているか
運用代行サービスを選択する際、重視したいのが運用保守の内容です。委託できる範囲は24時間365日の監視やアラート発行、障害対応、原因解析、セキュリティ対策、メンテナンス、脆弱性診断などがありますが、代行会社によっては対応できない業務もあります。他社のクラウドサービスやオンプレミス、ハイブリッドに対応できるかも合わせて確認しましょう。
運用設計のサポートが受けられるか
はじめてクラウド環境を利用する企業にとって、運用設計の支援は大きな選定ポイントの一つです。運用設計は、基本方針やスケジュール、運用体制、監視方法、障害対応手順、セキュリティ対策といったように決めるべき項目が多く、ドキュメント化するのに手間がかかります。ある程度の知識がなければさらに時間を要し、導入時期も大幅に遅れてしまうでしょう。その状況を避けるためにも、運用設計からサポート可能な代行会社がおすすめです。
Azureのベストプラクティスに沿った監視ができるか
上で述べたように、Azureではベストプラクティスに従った運用設計が基本です。そのため、監視においても、この原則に沿った設計戦略が求められます。
具体的な監視方法として、どのような障害が起こりうるかを分析する「障害モード分析」の実施や、自動スケーリング、自動保存、自動復旧などの実装が推奨されています。運用代行サービスでは、Azuleに精通したエンジニアが複数在籍するため、これらの原則に沿った監視設計が可能です。
まとめ
Azureを安定的に運用するには、システムの運用保守が必須です。しかし、運用保守は、運用設計から監視、ログ収集、セキュリティ対策、障害対応まで多くの業務に対応しなければならず、運用コストや人的コストの問題が発生します。その解決策としておすすめなのが、Azure運用代行サービスです。
Azure運用代行サービスでは、運用保守の業務だけでなく、システム構築や技術相談のサポートも可能です。業務をアウトソースすることで社内の運用負荷が軽減され、Azureを効率的に運用できます。