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Azure運用とは?最適なクラウド管理と保守方法

この記事は約13分で読めます。

Microsoft社が提供するクラウドサービスMicrosoft Azureの導入にあたり、最初の課題となるのがAzureの管理方法です。これまで利用してきたオンプレミスとの違いやクラウド特有の管理方法がわからず、Azureの導入に躊躇している企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、クラウド管理の基本とAzureに必要な運用保守の項目について解説します。運用管理に役立つツールや最適化の手法についても解説しているので、Azure運用にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

クラウド管理の基本


Azureを安定的に運用するには、クラウドの特性を知ることが重要です。ここではクラウド管理の基本について、3つ解説します。

  • 責任共有モデルを意識した管理
  • クラウドサービスが示すベストプラクティス
  • 運用保守の最適化

責任共有モデルを意識した運用管理

クラウドでは、責任共有モデルを意識した運用管理が求められます。責任共有モデルとは、クラウドサービスベンダー(事業者)とユーザーの間で、どちらに責任の所在があるのかを示すモデルのことです。

たとえば、アプリケーションを提供するSaaSでは、ほとんどの区分がサービス提供事業者の責任範疇ですが、AzureのようなIaaSだと、OSやコンテナ管理機能、ミドルウェア、ランタイムは利用者が責任を負わなければいけません。そのため、クラウドにおいては、自社の管理すべき項目を明確にした上での対策が求められます。

出典:内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター:クラウドを利用したシステム運用に関するガイダンス

クラウドサービスが示すベストプラクティス

「ベストプラクティス」は、これまでクラウド経験のない企業にとって聞きなじみのない言葉ですが、簡単に言うと運用管理における「最善の方法」を意味する言葉です。大手クラウドベンダーではそれぞれ独自のベストプラクティス(Well-Architected Framework)が提供されており、これに従うことでクラウド環境を最適な状態に維持できます。具体的には、以下のような内容になります。

AWSGCPAzure
構成要素①運用上の優秀性
②セキュリティ
③信頼性
④パフォーマンス効率
⑤コスト最適化
⑥サステナビリティ
①システム設計
②オペレーショナル エクセレンス
③セキュリティ
④信頼性
⑤費用の最適化
⑥パフォーマンスの最適化
①信頼性
②セキュリティ
③コストの最適化
④オペレーショナルエクセレンス
⑤パフォーマンス効率
目的ベストプラクティスを活用したシステムの構築ソリューションの設計/運用の最適化高品質なソリューションの設計/継続的な改善

運用保守の最適化

安定したクラウド環境の実現に向け、取り組みたいのが運用保守の最適化です。監視やメンテナンスなど、それぞれの保守業務を最適に行うことで、可用性やセキュリティ性に優れた自社サービスを維持できます。

その実現に向けて活用できるのが、ベストプラクティスです。ベストプラクティスでは、信頼性、セキュリティ、コスト、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンスの観点で、具体的にどのような手法が実施できるのかを示してくれます。Azureの場合だと、後述のAzure Advisorサービスを活用することで効率的に最適化を進められます。

Azureの運用保守で実施すべきこと

Azureを安定的に運用するには、クラウドの特性に応じた運用保守が必要です。ここで、主な実施項目として7つ解説します。

  • 運用設計
  • 監視
  • ログ収集
  • バックアップ
  • セキュリティ対策
  • 定期メンテナンス
  • 障害対応

運用設計

Azure運用の成功に欠かせない重要な要素となるのが運用設計です。運用設計では、システムの安定化に向け、全体スケジュールや保守内容、ルール、手順などをあらかじめ策定します。障害を想定した連絡手順や復旧方法まで細かく決定することで、抜け漏れのない運用保守を実施できます。

また、運用設計のクオリティを高めるには、定期的な評価や見直しも必要です。実際の運用で問題が生じないか確認し、改善を繰り返すことでより効率的な運用体制が整えられます。

監視

監視は、クラウドやオンプレミスを問わずシステム運用に必須の業務です。Azure環境の場合だと、サーバーの死活監視やメモリ・ディスクの使用率、パフォーマンスの測定などが挙げられます。障害に対して素早く対処するには、分析機能やアラート通知を活用し、監視体制の効率化を図ることがポイントです。

ログ収集

ログ収集は、Azure環境の状態を把握する上で重要な要素です。取得できるログにはリソースやイベント情報、ネットワークログ、セキュリティログなどがあり、これらを収集・モニタリングすることで障害の予兆を素早く察知できます。保存期間は最大2年間を指定でき、集めたログを分析すればパターンやエラーの傾向を把握できます。また、あらかじめログに条件を指定すれば、通知・アクションのトリガーとしても利用可能です。

バックアップ

バックアップは、BCP(事業継続計画)の観点から見て重要な業務です。災害や予期せぬ障害に備えるため、データの重要度に合わせて定期バックアップを行う必要があります。Azureにおいては、仮想サーバーやファイル、フォルダ、システム状態をバックアップすることで素早く元の環境に復旧できます。

なお、Azureが提供するAzure Backupサービスでは、日次・週次・月次・年次の頻度で取得が可能です。さらに拡張機能を利用すれば、4時間単位のバックアップにも対応できます。

セキュリティ対策

Azureにおけるセキュリティ対策の基本として押さえておきたいのが、ゼロトラストモデルの実装です。ゼロトラストとは社内や社外の境界にとらわれず、あらゆるリスクを想定した上での対策を指します。たとえば、多要素認証や端末を限定するクライアント証明書などを活用すれば、ログイン認証を強固にできます。さらに、アカウント管理・アクセス制限を徹底することで、より強固なセキュリティ環境の実現が可能です。

定期メンテナンス

システムの安定稼働に欠かせないのが定期メンテナンスです。定期メンテナンスで実施すべき範囲は広く、OS・ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用、各種設定変更などが挙げられます。同時に、CPUやメモリの使用率、通信トラフィック、アプリケーションやミドルウェアの状態を把握し、問題の兆候がないかも確認が必要です。手間のかかる業務の一つではありますが、これらを定期的に実施することでAzure環境の安定化が図れます。

障害対応

障害対応は、いかに素早く対処できるかが重要です。サーバーダウンやセキュリティインシデントといった重大な問題に備えるためにも、役割や実施項目を含めた対応フローを準備する必要があります。

対応フローのポイントとしては、障害レベルに合わせた手順の策定です。たとえば、軽微な問題は社内に通知するだけで対処できますが、重大な障害だと、影響範囲の特定や社外へのアナウンスも含める必要があります。あらゆる障害を想定した手順を準備しておけば、予期せぬ障害が起きてもスムーズに対処できます。

Microsoftが提供するAzure運用機能


Microsoftが提供する運用機能を活用すれば、運用保守を効率的に実施できます。ここでは代表的な機能についていくつか紹介します。

  • 監視機能
  • ログ収集/分析機能
  • バックアップ/リストア機能
  • セキュリティ機能
  • その他の機能

監視機能

Azureの監視に役立つのが「Azure Monitor」です。Azure Monitorは対象サーバーにインストールすれば利用でき、マルチクラウドやオンプレミスの環境の統合監視が行えます。仮想サーバーの状態やリソースの使用率、パフォーマンスなどのログを収集し、可視化や分析、アクションの自動実行も可能です。また、Microsoft製品との親和性も高く、さまざまなシステムやOfficeソフトと連携することもできます。

ログ収集/分析機能

「Log Analytics」は、ログデータの分析・管理ができるサービスです。Azure Monitorと同様、エージェントをインストールすればクラウド、オンプレミス環境を問わず利用でき、さまざまなOSやAzureサービスからログを収集します。

Log Analyticsの特徴は、クエリと呼ばれる検索機能によって高度な分析が行えることです。クエリには、用途別のテンプレートが用意されており、そのまま実行もしくはカスタマイズを加えて利用もできます。クエリ結果はダッシュボードによって可視化され、パターンや傾向の把握が可能です。

バックアップ/リストア機能

データの自動バックアップやリストアに役立つのが「Azure Backup」です。Azure Backupは、仮想マシンやファイル、フォルダ、システム状態のバックアップが可能で、オプションを選ぶことで取得頻度や期間も指定できます。また、取得履歴は最大9,999回まで保持でき、世代管理をしながら長期保存といった運用も可能です。

セキュリティ機能

Azure環境のセキュリティ強化に役立つのが「Microsoft Sentinel」です。

Microsoft Sentinelは、あらゆるデータ源からログファイルやイベントデータを収集し、ダッシュボードによって一元管理が行えます。取得したデータはMicrosoftの機械学習アルゴリズムや脅威インテリジェンスルールに従って分析され、問題のあるログを素早く検出可能です。また、インシデントが発生した際は素早く重要度を特定し、ウィルス拡散の抑止や端末隔離も自動で対処できます。

その他の機能

Azureは上記4つに加え、最適化に役立つ機能も数多く提供されています。具体的には以下のようになり、これらを活用すればベストプラクティスに沿った運用が可能です。

機能名内容
Azure Load Balancerトラフィックの負荷を分散できる機能
Azure Key Vault認証や暗号化に使われる文字列(鍵)を統合管理できる機能
Microsoft Entra IDIDを認証、管理する機能
Microsoft Intuneモバイルデバイスのアクセス管理を行う機能
Azure Cost ManagementAzure費用がしきい値を超えた場合にアラート通知する機能

運用保守の最適化に向けた3つの戦略

運用保守の最適化には、Microsoftのツールや外部サービスの利用がおすすめです。ここでは、最適化に向けた3つの方法を紹介します。

  • Azure Advisorを利用する
  • Azureを有効活用できる人材を育成する
  • Azure運用代行サービスを活用する

Azure Adviserを利用する

Azure Advisorとは、Azure環境が抱える問題を素早く分析し、最適な活用法(推奨事項)を提案してくれるサービスです。推奨事項はベストプラクティスの観点から提示され、信頼性、セキュリティ、コストの最適化、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンス効率のカテゴリごとに確認できます。ダッシュボードによってひと目で状況が把握できるため、

経験の少ない担当者でも適切な対処が可能です。

また、Azure Advisorでは、メイン機能である推奨事項の提示以外にも、以下のような機能が搭載されています。これらをフル活用すれば最適化にかかる時間も短縮され、より効率的な運用保守が実現できます。

機能名内容
Advisorスコア最適化の達成度合いを数値として表す機能。総合スコアが100%に近いほど達成度が高いことを意味する。
Azure Quick Fix推奨事項を一括実行する機能(簡易的な範囲に限られる)。
Azure Advisorアラート条件に該当する推奨事項が見つかった際にアラート通知する機能。

Azureを有効活用できる人材を育成する

Azureを有効活用するには、クラウドやAzureに関わる知識が求められます。Azureの仕組みを理解しないまま運用に乗せると、サーバー障害やセキュリティのトラブルが起きたとしても適切な対処ができません。安定的なAzure運用を目指すためにも、自社内での人材育成は必須と言えます。

人材育成を効率的に進めるには、Azure認定資格の活用がおすすめです。資格試験は初級レベル(Fundamentals)、中級レベル(Associate)、上級レベル(Expert)の3つに分けられ、そこからさらにロールと呼ばれる役割に分類されます。ロールは管理者や開発者、ネットワークエンジニア、データベース管理者などの専門分野で区分けされるため、個人が目指す職種に応じた選択が可能です。

また、Azure認定資格は単なる人材育成だけでなく、対外的なアピール材料としても利用できます。とくにシステム開発を請け負う企業などは、ハイレベルな有資格者が在籍することで新たな顧客も獲得できるでしょう。Azure認定資格では実践的なスキルも習得できるため、取引先との信頼関係を築く上でも有効です。

Azure運用代行サービスを活用する

運用保守の効率化を考えるなら、Azure運用代行サービスの利用がおすすめです。Azure運用代行サービスは、運用保守に必要な監視やセキュリティ対策、定期メンテナンスなどをまとめて請け負ってもらえ、自社のリソースを使うことなくAzureを運用できます。代行会社によっては導入支援や運用設計のサポートも可能なため、はじめてのクラウド利用でも大きな安心感を得られるでしょう。さらにマルチクラウドやオンプレミス、ハイブリッド環境にも対応するサービスであれば、自社の運用負担を大幅に削減できます。

また、代行会社の利用は、専門家によるサポートが受けられる点もメリットです。代行会社に在籍するエンジニアはさまざまな運用に携わった経験から、豊富な知識を得ています。監視で得られた情報もプロの目線から分析を行い、障害が起きる前の予兆を素早くキャッチできます。さらに、Microsoftが示すベストプラクティスにも精通しているため、安定的且つ最適なAzure環境の維持が可能です。

最適なAzure運用に向けた運用代行サービスの選び方

Azureを最適に運用するには、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。以下、運用代行サービスの選び方を3つ紹介します。

  • 24時間365日の監視が行えるか
  • 導入支援や運用設計のサポートが受けられるか
  • Azureの運用実績は豊富か

24時間365日の監視が行えるか?

運用代行サービスの選定で重視したいのが、監視のサポート範囲です。監視は、Azureの稼働時間に応じた人員配置が必要なため、自社で実施するには大きな負担を伴います。特に、24時間365日のビジネス展開においては、シフトやエンジニアの数も整備しなければいけません。その点、24時間365日の監視に対応した代行会社であれば、自社のリソースを割くことなく運用できます。さらに、エンジニアが常駐する有人監視なら、障害が起きたとしても素早く対処してもらえます。

導入支援や運用設計のサポートが受けられるか?

運用設計は、Azureを安定稼働させる上で重要なステップです。決めるべき範囲は広く、基本方針からスケジュール、運用体制、監視方法、障害対応手順、セキュリティ対策まで、適切な対処法を決めなければいけません。また、運用設計にはある程度の知識も求められるため、クラウド経験のない企業にとっては課題と言えるでしょう。

しかし、導入支援や運用設計をサポートしてくれる代行会社であれば、これらの課題を解決できます。事前に専任の担当者によるヒアリングが受けられ、最適なシステム構築、運用方法を提案してもらえます。さらに、運用設計に必要なドキュメント作成も依頼できるため、導入から運用までがスムーズに進みます。

Azureの運用実績は豊富か?


運用代行サービスを選定する際は、Azureの運用実績も大切なポイントです。代行会社によっては「クラウドサービス全般に対応」とされていても、実際は運用実績が少ないサービスも存在します。実績がなければ積み重ねた知識・経験も少なく、問題に対してスムーズに対処できない可能性があります。

運用実績を確認するには、各代行会社のサービスサイトの利用がおすすめです。導入事例にはさまざまな業種の事例が掲載されており、自社のビジネスと重ねてイメージできます。

まとめ

Azureの安定化を図るには、クラウド特有の責任共有モデルやベストプラクティスを意識した運用保守が必要です。クラウドベンダーが示すベストプラクティスでは、信頼性、セキュリティ、コスト、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンスについて具体的な手法が示されており、これらを実施することで最適なAzure環境を実現できます。

ただし、運用保守の業務は幅広く、自社で実施するには多くのリソースを伴います。その解決法としておすすめなのが、Azure運用代行サービスの活用です。代行会社ではAzureの知識・スキルを持つ専門家が常駐しているため、導入からシステム構築、運用まで幅広くサポートしてもらえます。

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