地方企業DXには何が足りない?IDCの調査から考える文化刷新の重要性
企業のデジタル化は、サービスの拡充や働き方の変化に伴い、ここ数年で急速に進みつつあります。特に首都圏をはじめとした大都市圏においては、ドラスティックな変化が見られ、現在進行形で変革が進んでいます。
一方、地方企業におけるDXは、大都市圏のそれと比較すると、今ひとつ成果が出ていないという調査結果もあります。大都市圏の企業と地方企業の間には、どのような違いがあるのでしょうか。
日本のDXリーダーは大都市圏に集中
調査会社のIDC Japanは、2024年に発行したレポート「2024年国内IT市場SMB、地域別における第3のプラットフォーム市場、DX向けIT支出動向分析」の中で、日本のDXは大都市圏の企業が牽引している現状について紹介しています。
同調査で紹介されている第3プラットフォームとは、クラウドやAIといったDX推進の要となるサービスのことです。大都市圏ではこれらのサービスベンダーが集中しており、導入を速やかに進めやすいことなどから、他の地域に比べて同サービスへの支出が増えていることがわかりました。
大都市圏を除く地域においても、第3プラットフォームへの支出は以前に比べ増えており、プラス成長が続くとされています。しかしそのインパクトは東京都などに比べると小幅となり、DXの余地は以前として広く残されたままであると言えます。
地方でもDXは不可欠な取り組み
地方とは一言で言っても、蓋を開けてみるとDXへの取り組み状況はさまざまです。例えば東北や九州、北海道といった地域の都市部は、大手製造企業や開発組織の拠点誘致が進んでおり、その影響で第3プラットフォーム支出が今後伸びていくことが予想されています。
一方、上で紹介した地域に根差した企業、あるいは中国・四国地方の地方企業では、以前としてDXの動きが盛んにならない問題も抱えています。ハイテク企業ばかりが取り組んでいると思われやすいDXですが、実際には地方都市の企業こそ、その恩恵を大きく受けやすい取り組みであることも広く認知されるべきでしょう。
近年は地方の人材が大都市圏に集中し、全国的に人材流出が問題視されています。地域産業を支える人手不足を補えるほどの人口増加も望めないことから、地方企業は少ない人手で従来通りの、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮できる仕組みづくりが必要です。
その上で役に立つのが第3プラットフォームの導入を軸としたDXの推進で、現場のハイテクかを進めることにより、最小限の負担でこれまで通りに業務を進めることができます。高騰が続く人件費の削減にも貢献し、組織の持続可能性を高められる点にも注目です。
DXを阻む地方企業の文化・慣習とは?
DXの機会は大都市だけでなく、日本全国全ての企業に開かれているのが現状です。にもかかわらず地方企業でDXが進まないのは、デジタル人材を重用する文化がまだ根付いていなかったり、デジタル技術やデータを駆使した仕事の進め方への関心が低く、これまでの慣習的なやり方に固執したりしている状況が問題として挙げられます。
これまでITやIT人材は、縁の下の力持ちという側面のみが評価されてきたため、ビジネスの主軸になるという考え方が日本ではあまり根付いていません。また、経営者がITに詳しくない、関心がないことから、今までの業務のあり方や、IT人材の起用法におさまってしまっているわけです。
地方において企業がDXによる恩恵を受けるためには、まずこのような価値観から抜け出さなければなりません。経営者が、ITやDXがもたらすビジネスインパクトへの理解を深め、共感し、デジタルの活躍の場を無理矢理にでも広げていく必要があります。
地方における「第3のプラットフォーム支出」拡大に必要な要素
このように、地方におけるDX活性化は大都市圏のようなペースで実現することは難しく、超えるべきハードルも多いのが現状です。ただDXが不可能というわけでは決してなく、課題を整理の上一つずつ解消していくことで、高度なデジタル化を実現できます。
DX人材の獲得やそのための風土醸成、そしてリーダーシップの育成と、自社だけで取り組めることも数多くあります。また、地元金融機関との連携や、地方自治体との協力によって、地域全体で地方企業DXに向けたムーブメント作りにも注力し、魅力的な文化づくりを進めていくべきでしょう。DXの土壌が整えば、自然とクラウドやAI、RPAといった第3のプラットフォーム支出は増えていくものです。
時間をかけて取り組むことにより、いずれは地方企業も大都市の企業に劣らないDX組織へと生まれ変わることができるでしょう。