キーワードで検索

今日を知り、明日を変えるシステム運用メディア

Azure AI Foundryのオブザーバビリティ入門!AIの監視・最適化・スケールを加速

Azure AI Foundryのオブザーバビリティ入門!AIの監視・最適化・スケールを加速

AI、特に生成AIアプリケーションの運用が本格化する中で、その挙動の監視や信頼性の確保は、インフラエンジニアやSREにとって新たな課題となっています。

この課題を解決する鍵となるのが「Azure AI Foundry」です。

Azure AI Foundryは、AIアプリケーションの構築、デプロイ、管理を統合的に行うためのプラットフォームであり、その「オブザーバビリティ(可観測性)」機能群がAI運用の課題解決に大きく貢献します。

この記事では、Azure Monitorとシームレスに連携するオブザーバビリティ機能を理解し、AIアプリケーションの品質、パフォーマンス、コストを体系的に管理し、自信を持って本番環境で運用するための方法を解説します。

Azure AI Foundryのオブザーバビリティ機能群

Azure AI Foundryとは、AIアプリケーションの構築、デプロイ、管理を統合的に行うための統合プラットフォームです。

Azure AI Foundryのオブザーバビリティは、単なる監視ツールではありません。AIアプリケーションのライフサイクル全体にわたり、その信頼性とパフォーマンスを維持・向上させるための統合ソリューションです。 

 以下に、その中核となる機能を紹介します。

機能説明
統合ダッシュボード品質、安全性、コスト、パフォーマンスといった複数のメトリックを単一のビューで視覚的に追跡します。

これにより、「AIエージェントの全体的な健全性を一目で把握」できます。 
評価とトレーシング開発段階から本番環境まで、AIの出力品質や安全性を評価するためのSDKが提供されます。
詳細なトレース機能により、「問題が発生した際の根本原因の特定が容易」になります。  
継続的な監視Azure Monitor Application Insightsとの緊密な統合により、デプロイされたAIアプリケーションのパフォーマンスを継続的に監視します。

これにより、「予期せぬ挙動やパフォーマンスの低下を早期に検知」できます。 
GenAIOpsライフサイクル管理モデルの選定から、CI/CDワークフローへの評価の組み込み、本番環境での監視まで、「AIアプリケーションのライフサイクル全体を支援する信頼性の高いプロセスを確立」します。  
カスタムクエリとアラートKQL(Kusto Query Language)を用いて、「収集したテレメトリデータに対して柔軟なカスタムクエリを実行」できます。

また、特定のメトリックが閾値を下回った場合に、「メールなどで通知するアラートを設定」することも可能です。 

監視・最適化・スケールを実現する、4つのシナリオ

Azure AI Foundryのオブザーバビリティ機能は、概念的なものではなく、日々の運用業務に直接活かせる実践的なツールです。

ここでは、4つのシナリオを通して、これらの機能をどのように活用し、AIアプリケーションの価値を最大化できるかを見ていきましょう。

【シナリオ1】AIチャットボットの応答品質低下をプロアクティブに検知

これまで、AIの応答品質の低下は、ユーザーからの指摘で初めて発覚するケースが多く、後手後手の対応になりがちでした。Azure AI Foundryを使えば、このような状況を大きく改善できます。

解決方法

まず、Azure AI Studioの統合ダッシュボードで「関連性 (Relevance)」や「流暢性 (Fluency)」といった品質メトリックをリアルタイムで可視化します。そして、Azure Monitorのアラート機能と連携させることで、これらの品質スコアが事前に定義した閾値を下回った瞬間に、運用チームのチャットツールへ自動で通知を送信できます。

通知を受け取ったエンジニアは、ダッシュボードからドリルダウンし、問題のある対話ログやトレース情報を直接確認することで、迅速な原因究明と修正対応に着手できます。

これにより、ユーザー体験の悪化を未然に防ぐ、プロアクティブな品質管理が実現します。

【シナリオ2】プロンプト変更によるコストと性能への影響を定量的に評価

AIの運用において、プロンプトの改善は応答品質とコスト効率を左右する重要な作業です。しかし、「どの変更が本当に効果的だったのか」を客観的に判断するのは困難でした。

AI Foundryの評価SDKを活用すれば、この課題をデータドリブンに解決できます。

解決方法

例えば、既存のプロンプトと新しいプロンプトの性能を比較するためのA/Bテスト環境を構築します。

同一の評価データセットを用いて両者の応答を生成させ、品質メトリック(例: Groundedness)と合わせて、処理時間や消費トークン数といったパフォーマンスメトリックを自動で計測・比較します。

この結果を見れば、「新しいプロンプトは、応答品質を維持したまま、トークン消費量を15%削減できた」といった具体的な効果を定量的に把握でき、自信を持って変更を本番環境に適用できます。

【シナリオ3】外部API連携時のパフォーマンスボトルネックを特定・解消

現代のAIアプリケーションは、単一のモデルだけでなく、複数の外部サービスやデータベースと連携して動作することが一般的です。ユーザー数の増加に伴い応答遅延が発生した際、その原因がAIモデルの処理にあるのか、それとも連携先の外部APIにあるのかを切り分けるのは複雑な作業です。

ここで役立つのが、Application Insightsの「アプリケーションマップ」機能です。

解決方法

この機能は、AIアプリケーション、それを呼び出すFunction、さらにその先にある外部APIといった、システム全体の依存関係と各コンポーネント間の通信状況を視覚的に描き出します。

マップ上で特定のAPI呼び出しの平均応答時間が著しく長くなっていれば、そこがボトルネックであると一目で特定できます。

これにより、見当違いのチューニングに時間を費やすことなく、APIのキャッシュ戦略を見直すなど、的確な対策を迅速に講じることが可能になります。

【シナリオ4】予期せぬユーザー入力に対する安全性と堅牢性を確保

AIを公開環境で運用する上では、悪意のあるプロンプトインジェクション攻撃や、意図しない入力による不適切な応答(ハルシネーション)といったリスクへの対策が不可欠です。

解決方法

Azure AI Foundryでは、Azure AI Content Safetyとの連携により、入力プロンプトとモデルの応答に含まれる不適切なコンテンツを自動で検出し、フィルタリングする仕組みを容易に組み込めます。

さらに、開発・評価段階から「Jailbreak(脱獄)」のしやすさや「Groundedness(根拠性)」といった安全性・信頼性に関するメトリックを継続的に測定します。

これらのメトリックを本番環境のダッシュボードでも監視し、異常な値が検出された際にはアラートを発報する体制を整えることで、AIアプリケーションの安全性を維持し、企業のレピュテーションリスクを効果的に低減させます。

まとめ

Azure AI Foundryのオブザーバビリティ機能は、AIアプリケーションを本番環境で自信を持って運用するための、強力な武器となります。

統合されたダッシュボード、評価・トレース機能、そしてAzure Monitorとの連携は、AIの「監視」「最適化」「スケール」という運用ライフサイクル全体を網羅的にサポートします。 

これにより、私たちはAIの信頼性を高め、そのビジネスインパクトを最大化するという本来の目的に集中できるようになるのです。まずは、お使いのAzure AI Foundryプロジェクトで監視機能を有効にし、どのようなデータが収集できるかを確認してみてはいかがでしょうか。

24時間365日のシステム運用監視サービス「JIG-SAW OPS」を提供する、JIG-SAW株式会社のOps Today編集部です。 サーバー運用監視実績50,000台の実績をもとに、システム運用監視に役立つ情報をお届けします!

最新情報をお届けします!

最新のITトレンドやセキュリティ対策の情報を、メルマガでいち早く受け取りませんか?ぜひご登録ください

メルマガ登録

最新情報をお届けします!

最新のITトレンドやセキュリティ対策の情報を、メルマガでいち早く受け取りませんか?ぜひご登録ください

メルマガ登録