
エンジニアの三大美徳は「怠惰・短気・傲慢」!?
システム運用の現場で、「またこの作業か…」「どうしてこんなに時間がかかるんだ…」と感じたことはありませんか?そんな日々の業務に追われるエンジニアの皆さんなら、一度は耳にしたことがあるかもしれない、有名な言葉があります。
「エンジニアの三大美徳は、怠惰・短気・傲慢だ」――。
これは、プログラミング言語Perlの作者であるラリー・ウォールが提唱した「プログラマーの三大美徳」です。 一見するとネガティブな印象を受ける「怠惰・短気・傲慢」という3つの言葉。
しかし、これらは実は、優れたエンジニアが持つべきポジティブな資質を表す、いわば褒め言葉なのです。 元エンジニアである筆者の上司もよくこの言葉を口にしており、筆者自身も非常に共感でき、好きな言葉でもあります!
本日のコラムは、この「三大美徳」について、現代のシステム運用、特にクラウドの文脈を交えながらご紹介します。
怠惰(Laziness):自動化を追求する力
一つ目の美徳は「怠惰」です。これは、全体の労力を減らすためなら、多大な努力を惜しまない性質を指します。
毎日のように繰り返される定型作業や、手作業によるミスの修正は誰だって面倒なもの。その「面倒くさい」という気持ちこそが、作業を自動化し、効率化するための強力な原動力となるのです。

皆さんご存じの通り、現代のクラウド環境では、この「怠惰」の精神をサポートするサービスが数多く提供されていますよね。
クラウド | 自動化サービス例 | 概要 |
---|---|---|
AWS | AWS Systems Manager, AWS CloudFormation, AWS OpsWorks | サーバーのパッチ適用、インフラのコード化、構成管理などを自動化し、運用タスクを簡素化します。 |
Azure | Azure Automation | PowerShellやPythonスクリプト(Runbook)を用いて、インフラ管理や定型作業を自動実行できます。 |
Google Cloud | Cloud Deployment Manager | テンプレートを用いて、Google Cloudリソースの定義、デプロイ、管理を自動化します。 |
これらのサービスを活用することで、面倒な手作業から解放され、より創造的な業務に集中できるようになります。
短気(Impatience):迅速に対応する力
二つ目の美徳は「短気」です。これは、コンピュータが期待通りに動かないことに対して感じる苛立ちであり、問題に対して即座に対処し、改善しようとする姿勢につながります。

システムに障害が発生した際、「後でやろう」と先延ばしにするのではなく、「今すぐ解決しなければ!」と感じるその気持ちが、システムの信頼性を高める上で非常に重要です。
この「短気」なエンジニアを支えるのが、クラウド各社が提供する監視・アラート機能です。
AWSのAmazon CloudWatch、AzureのAzure Monitor、そしてGoogle CloudのCloud Monitoringといったサービスは、システムの状態をリアルタイムで可視化し、異常を検知すると即座に通知してくれます。 これらのツールを駆使することで、問題の兆候を早期に捉え、迅速な対応を取ることが可能になります。
傲慢(Hubris):高品質を追求するプライド
最後の美徳は「傲慢」です。これは、他者から「この仕事は素晴らしい」と評価されたい、文句のつけようがない高品質なものを作りたい、というプロフェッショナルとしてのプライドを意味します。

自分が作ったシステムが安定稼働し、多くの人に価値を提供しているという自負が、より堅牢で信頼性の高いシステムを構築するモチベーションになります。
この「傲慢」さを満たすための指針となるのが、各クラウドプラットフォームが提供する「Well-Architected Framework」です。 これは、クラウド上でシステムを設計・運用するためのベストプラクティス集であり、信頼性、セキュリティ、パフォーマンス効率、コスト最適化といった観点から、高品質なアーキテクチャの実現を支援します。
このフレームワークに沿ってシステムを構築・改善していくことは、まさに「傲慢」なまでに品質を追求する行為と言えるでしょう。
まとめ
「怠惰」は自動化による効率化を、「短気」は迅速な問題解決を、「傲慢」は高品質なシステムへのこだわりを、それぞれ生み出します。これらは、日々の運用業務をこなしながら、より良いシステムを目指す全てのエンジニアにとって、強力な武器となり得る資質です。
もしあなたが、繰り返しの作業にうんざりしたり、システムの遅さにイライラしたり、自分の仕事に絶対の自信を持ちたいと感じたりすることがあるなら、それは優れたエンジニアになるための才能の表れなのかもしれません。