AWS保守にかかる費用を徹底解説!具体的な費用相場やコスト削減策を紹介
AWSなどのクラウドサービスは、従来のオンプレミス環境と比べて初期費用を抑え、柔軟なシステム構築を可能にするというメリットがあります。しかし、その柔軟性とスケーラビリティゆえに、運用保守の重要性もますます高まっています。適切な保守を行わなければ、予期せぬコスト増加やセキュリティリスクに繋がってしまう可能性があります。
この記事では、AWS保守で発生する費用を様々な角度から詳しく解説し、費用を抑えるための具体的な施策を紹介します。
AWS保守で発生する費用一覧
AWS保守では、多岐にわたる費用が発生します。まずは、具体的な費用項目を把握することが、コスト最適化への第一歩です。
AWS保守で発生する費用は、以下の5つに分類されます。
- AWSサービス利用料
- AWS関連サポート料金
- 外部サービス利用料
- 社内リソース関連費用
- その他の費用
順番に解説していきます。
AWSサービス利用料
EC2インスタンスやS3ストレージ、RDSデータベースなど、AWSの様々なサービスを利用した際に発生する料金のことです。
AWSサービス利用料は、基本的に「従量課金制」を採用しており、実際に利用したサービスのリソース量や時間に比例して料金が変動します。例えば、EC2インスタンスであれば、インスタンスの種類や稼働時間によって料金が変わりますし、S3であれば、保存したデータ量やデータ転送量によって料金が変わります。
従量課金制の最大のメリットは、必要な時に必要な分だけリソースを利用し、その分だけを支払えばよいという点でしょう。なお、AWSサービスの中には、リザーブドインスタンスやSavings Plansのような前払いオプションを利用すると、長期的な利用を約束する代わりに大幅な割引を受けられるものもあります。
AWSサービスの利用料金を計算する際は、AWS Pricing Calculatorが便利です。このツールを使用すると、利用予定のサービスや設定を入力することで、月額の概算費用を算出できます。また、実際の利用状況に基づいた詳細な分析には、AWS Cost Explorerが役立ちます。
AWS関連サポート料金
AWSでは、お客様のニーズに合わせて様々なサポートプランを提供しています。これらのプランは、AWS利用における技術的な問題解決、ベストプラクティスのガイダンス、緊急時の対応など、様々なサービスを提供することで、お客様のAWS環境の安定稼働と効率的な運用を支援します。
AWSサポートプランの料金は、主に以下の2つの要素に基づいて決定されます。
月額固定料金
各プランには、基本的なサービスに対する月額固定料金が設定されています。プランのレベルが上がるにつれて、この固定料金も高くなります。
AWS利用料金に対する割合
一部のプランでは、月額のAWS利用料金に対する一定の割合が課金されます。この割合は、プランによって異なり、一般的には利用料金が高くなるほど割合は低くなります。
プラン名 | 月額料金 | サービス内容 |
デベロッパー | $29または 月額AWS利用料の3% | ・一般的なガイダンス: 24 時間以内対応 ・システム障害: 12 時間以内対応 ・営業時間内でのWeb問い合わせ |
ビジネス | $100 または 月額AWS利用料の10%($100,000以上は使用料に応じ変動) | ・本番システムの障害: 4時間以内対応 ・本番システムのダウン: 1時間以内対応 ・デベロッパープランのサービス ・クラウドサポートエンジニアへの年中無休の電話、ウェブでの問い合わせ、チャット利用 |
Enterprise On-Ramp | $5,500 または 月額AWS利用料の10% | ・本番システムの障害: 4時間以内 ・本番システムのダウン: 1時間以内 ・ビジネス/ミッションクリティカルなシステムのダウン: 30分以内 ・ビジネスプランのサービス ・事前対応型のガイダンス提供など |
エンタープライズ | $15,000 または 月額AWS利用料の10%($150,000以上は使用料に応じ変動) | ・本番システムの障害: 4時間以内 ・本番システムのダウン: 1時間以内 ・ビジネス/ミッションクリティカルなシステムのダウン: 15分以内 ・ビジネスプランのサービス・テクニカルアカウントマネージャー (TAM) によるサポートなど |
外部サービス利用料
外部サービス利用料は、AWS自身のサービスではなく、外部ベンダーが提供するサービスを利用する場合に発生する費用のことです。
例えば以下の料金が含まれます。
- 外部の運用保守サービス利用料
- 監視ツール・サービスの利用料
- 運用自動化ツールの利用料
AWSの運用は、必ずしも自社で行う必要はなく、外部の専門知識やサービスを活用することで、より効率的に、そして場合によってはコストを抑えながら行うことも可能です。
例えば、システムの安定稼働がビジネスに不可欠な場合、24時間365日の監視や障害対応、セキュリティ対策、パフォーマンスチューニングなど、高度な運用保守体制が必要となります。しかし、自社で専門チームを構築するには、多大なコストと時間がかかるのが現実です。AWS運用を専門とする外部ベンダーに委託すれば、スピーディーに、かつ効率的に、必要な運用体制を確保できるでしょう。
監視ツールや運用自動化ツールの導入も、長期的には大きなメリットをもたらします。例えば、DatadogやNew Relicなどの高度な監視ツールを使用することで、パフォーマンスの問題を早期に発見し、対応することができます。
外部サービスの選択や導入を検討する際は、AWS Marketplace を活用しましょう。AWS Marketplace は、AWSと連携する多様な外部サービスを比較検討できるオンラインストアです。セキュリティ対策ソフト、監視ツール、運用自動化ツールなど、AWSの運用保守を効率化するための様々なサービスが提供されています。
AWS Marketplace の大きな利点の一つは、AWSの請求と統合できる点です。外部サービスの利用料金もAWSの請求書にまとめて表示されるため、コスト管理が容易になります。
社内リソース関連費用
AWSの運用保守を内製化する際には、社内エンジニアの人件費やトレーニング費用といった費用が発生します。一見するとコスト増に思えるこれらの費用ですが、実はAWS保守を効率化し、長期的なコスト削減を実現するための重要な投資と言えるでしょう。
AWSエンジニアの人件費は、そのスキルや経験、勤務地などによって大きく変動します。特に、AWSの運用経験が豊富なエンジニアは市場価値が高く、獲得競争も激しいため、相応の人件費が必要となります。例えば、AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナルレベルの資格を持つエンジニアの平均年収は、東京都内では1,000万円を超えることも珍しくありません。
しかし、経験豊富なエンジニアは、その知識とスキルを活かして、効率的なシステム設計や運用を行い、障害発生時の迅速な対応を可能にします。結果として、システムのダウンタイムを最小限に抑え、ビジネスへの影響を軽減できるため、長期的な視点で見れば、コスト削減に繋がる可能性があります。
その他の費用
AWSのシステムを更新したりアップグレードするための費用や、コンサルティング費用などが含まれます。例えば、新しいEC2インスタンスタイプへの移行や、Amazon Auroraなどの新しいデータベースサービスへの移行を検討する際には、移行作業自体のコストだけでなく、新しいサービスの利用料金も考慮する必要があるでしょう。
AWS環境の構築や運用は、専門的な知識や経験が求められるため、AWSに精通したコンサルタントに依頼することも選択肢の一つです。ただし、コンサルティング費用は、コンサルタントのスキルや経験、作業範囲などによって大きく異なります。小規模なシステム構築であれば、数十万円程度で済むこともありますが、大規模なシステム構築や複雑な要件に対応する場合は、数百万円から数千万円規模の費用が必要となるケースもあります。
AWS保守費用の計算方法
上記より、AWS保守の費用を算出する基本的な計算式は以下になります。
基本計算式
AWS保守の総費用 = AWSサービス利用料 + AWS関連サポート料金 + 外部サービス利用料 + 社内リソース関連費用 + その他の費用
AWS保守の費用を左右する3つの要素
AWS保守費用は、決して一律ではなく、様々な要素が複雑に絡み合って決まります。ここでは、特に影響の大きい3つの要素について詳しく解説します。
1. システム規模と利用状況
これは、AWSに限らず、あらゆるシステムに当てはまる原則と言えるでしょう。利用するAWSサービスの種類や量、稼働状況、データ量などによって、費用は大きく変動します。例えば、EC2インスタンスは、インスタンスサイズや稼働時間、リージョンによって料金が異なりますし、S3も、ストレージクラスやデータ転送量によって費用が変わってきます。システム規模が大きく、利用頻度が高いほど、費用は増加する傾向にあるため、定期的な見直しと最適化が不可欠です。
2. 運用体制
社内エンジニアによる内製運用か、外部への委託か、あるいはその組み合わせかによって、人件費や外部サービス利用料が大きく変動します。内製運用は、外部委託に比べて費用を抑えられる場合が多いですが、AWSに関する専門知識や経験を持ったエンジニアの確保と育成が課題となります。一方、外部委託は、専門性の高い運用保守サービスを享受できるメリットがある一方で、費用が高額になりがちです。最適な運用体制は、システムの規模や重要度、社内の技術力などを考慮して、慎重に判断する必要があります。
また、運用体制の整備状況によって、障害対応時間やセキュリティリスクが変わり、結果として費用に影響を与える可能性があります。例えば、監視体制が整っていない場合は、障害の検知が遅れ、復旧に時間がかかってしまい、ビジネスインパクトが大きくなる可能性があります。
3. セキュリティ対策
セキュリティ対策は、いわば「保険」のようなものです。万が一の事態が発生した場合の損失を最小限に抑えるために、必要なコストをかけるという意識が重要です。セキュリティ対策のレベルを高めるためには、より高度なセキュリティサービスの利用や、専門性の高いエンジニアの配置が必要となり、費用が増加する傾向にあります。しかし、セキュリティ対策を怠ったことによる損失は、金銭的なものだけでなく、企業の信頼を失墜させるなど、計り知れないものになる可能性があります。
AWS保守の費用を削減する施策
AWS保守費用は、適切な施策を実施することで、効果的に削減することができます。ここでは、すぐにでも実践できる具体的な方法を3つの観点からご紹介します。
リソース最適化
リソースの最適化は、AWSコスト削減の基本中の基本と言えるでしょう。無駄なリソースを洗い出し、適切な設定に見直すことで、コスト削減に大きく貢献します。
使用していないリソースの停止・削除
AWS Management ConsoleやAWS CLIを使用して、AWSリソースの使用状況を定期的に確認し、不要なリソースは積極的に停止または削除しましょう。特に、開発環境やテスト環境で使用しているリソースは、放置されがちなので注意が必要です。EC2インスタンスであれば、夜間や休日は停止するスケジュール設定を行うことも効果的です。
リソースのサイズ・タイプの最適化
EC2インスタンスやEBSボリュームなど、サイズやタイプが選択できるリソースは、実際の負荷状況に合わせて、定期的に見直しを行いましょう。AWSが提供するCloudWatchなどの監視サービスを利用すれば、CPU使用率やメモリ使用率などのパフォーマンスメトリクスを収集し、可視化することができるため、リソースの適切なサイジングに役立ちます。
AWSの割引プログラム活用
AWSは、様々な割引プログラムを提供しており、賢く活用することで、コスト削減に繋げることができます。例えば、Savings Plansは、EC2、Fargate、Lambdaなどのコンピューティングサービスの利用料金を、1年または3年といった期間で割引くことができるサービスです。Reserved Instanceは、EC2インスタンスを割引価格で利用できるサービスです。事前に利用量をコミットする代わりに、大幅な割引を受けることができます。
保守業務の効率化
保守業務を効率化することで、人件費や人的ミスによるコスト増加を抑制することができます。
運用を自動化する
繰り返し行う運用作業は、スクリプト化や運用自動化ツールを活用することで、自動化することができます。例えば、EC2インスタンスの起動・停止、スナップショットの作成、ログファイルのローテーションなど、定型化された作業は、自動化の対象となります。運用自動化によって、人為的なミスを減らし、作業時間を短縮できるだけでなく、運用手順の標準化にも繋がり、より安定した運用体制を構築することができます。
監視体制を強化する
AWS環境の健全性を常に把握し、問題発生時には迅速に対応するためにも、適切な監視体制を構築することが重要です。CloudWatchなどの監視サービスや外部の監視ツールを導入し、システムのメトリクス、ログ、イベントなどを監視しましょう。適切な監視体制があれば、障害の早期発見、迅速な対応を可能にすることで、損失を最小限に抑えることができます。
AWSのマネージドサービス活用する
AWSは、データベース、セキュリティ、機械学習など、様々な分野のマネージドサービスを提供しています。マネージドサービスを活用することで、インフラストラクチャの運用管理をAWSに任せることができ、運用負荷を軽減することができます。例えば、RDSを利用すれば、データベースのインストール、パッチ適用、バックアップなどの運用作業をAWSに任せることができます。
コスト管理の徹底
コスト管理は、日々の積み重ねが重要です。AWSのサービスは、従量課金制が基本であるため、気がついたら高額な料金が発生していたという事態も起こりえます。
コスト分析ツールを活用する
AWS Cost Explorerは、AWSの利用料金を分析するための強力なツールです。サービス別、アカウント別、タグ別など、様々な切り口でコストを分析することができます。費用発生源を可視化し、分析することで、無駄なコストを特定し、削減につなげることが可能になります。
予算を設定する
AWS Budgetsは、AWSアカウントの利用料金に対して、予算を設定し、予算超過のリスクをアラートで通知してくれるサービスです。予算を設定することで、コスト意識の向上や予期せぬコスト増加の防止に繋がります。
定期的なコスト見直し
AWSの利用状況やシステム要件は、時間の経過とともに変化していく可能性があります。定期的にコストを見直し、最適化を図るようにしましょう。例えば、需要の変化に応じて、EC2インスタンスのサイズを変更したり、新しいAWSサービスの導入を検討したりする必要があるかもしれません。
まとめ
AWS保守費用は、システム規模、運用体制、セキュリティ対策によって大きく変動します。費用を効果的に管理・削減するためには、リソースの最適化、運用効率化、コスト管理の徹底といった多角的な施策が必要です。
本記事で紹介した内容を参考に、自社の状況に合ったAWS保守体制を構築し、安定稼働とコスト削減の両立を目指しましょう。