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Azure環境における運用設計とは?検討すべき項目や注意点について解説

Azure環境における運用設計とは?検討すべき項目や注意点について解説

Azure環境における運用設計とは?検討すべき項目や注意点について解説

Azure環境を構築する際、まず必要となるのが運用設計です。あらかじめ運用プロセスや役割分担を決めることで、安定的かつ効率的なシステム運用が実現できます。また、自社の要件に沿った運用設計を行えば、運用担当者の負荷軽減も可能です。

本記事では、Azureの運用設計で検討すべき項目や運用設計のポイント、Azureが提供する運用機能について解説します。運用設計を行う際の注意点についても解説しているので、Azure運用設計にお困りの方はぜひ参考にしてください。

Azureの運用設計とは?

Azureの運用設計とは?

Azureの運用設計とは、Azure環境に構築したシステムの安定稼働を目指し、運用方法やルール、障害時の対応などを事前に決めることです。具体的には、日々の運用スケジュールや管理対象の範囲、監視方法、不測の事態が発生した際の連絡手順などを策定し、システム運用のスムーズ化を図ります。

Azureの運用設計は、ビジネスの継続性を確保する上で重要です。クラウド環境はオンプレミスとは異なる性質を持つため、従来の方法のまま運用すると予期せぬトラブルを招く可能性があります。また、法令順守という観点においても、個人情報保護法や規制を考慮したセキュリティ対策が求められます。

Azureの運用設計を行うメリット

Azureの運用設計を行うメリット

Azureの運用は、事前に運用設計を行うことで多くのメリットが得られます。ここでは主なメリットについて4つ紹介します。

  • 効率的なシステム運用ができる
  • 障害やトラブルに備えられる
  • 高いセキュリティ環境が実現できる
  • 運用整備によって属人化を防げる

効率的なシステム運用ができる

運用設計では運用プロセスが標準化されるため、安定的な運用体制の構築が可能です。日々の業務を細かくルール化し役割と責任を明確化することで、障害発生に対して迅速に対処できます。また、運用要件を整理すれば最適な運用ツールが選定でき、業務の自動化及び省力化につながります。さらに、運用設計を継続的に見直すことで自社の運用レベルが向上し、サービス品質の向上も期待できます。

障害やトラブルに備えられる

運用設計において最も大きな位置づけとも言えるのが、障害やトラブルへの備えです。Azure環境で自社サービスを展開する場合、システムダウンやパフォーマンス低下は大きな損失を招く可能性があります。そのような事態を避けるためにも、事前に監視設計を行い、抜け漏れのない監視体制の構築が必要です。また、障害発生時は誰がどのような手順で原因調査や復旧作業を行うのかを明確にしておけば、予期せぬトラブルにも迅速に対処できます。

高いセキュリティ環境が実現できる

Azureは運用設計を行うことで、包括的なリスク管理が可能です。事前に情報セキュリティ管理規定や関連する法令・規則に則った運用方針を策定することで、システム全体の安全性が向上します。また、運用方針に沿った監視方法やアクセス管理、脆弱性管理、障害対応手順などを定義すれば、抜け漏れのないセキュリティ対策が実施できます。さらに、定期的なセキュリティ対策の実施や教育・トレーニングによって、高いセキュリティ環境の維持が可能です。

運用整備によって属人化を防げる

運用設計ではプロセスが明確化・標準化されるため、業務の属人化を防げます。システム運用はとくに複雑な業務が多いことから、個人に依存しない体制づくりが重要です。運用要件を定義し業務手順のマニュアルを準備すれば、運用担当者が交代しても品質の高い運用管理を保てます。また、業務の透明性が増すことで障害発生に対する組織全体のパフォーマンスが向上し、スムーズに原因特定及び復旧対処が可能です。

Azure運用設計で検討すべき項目

Azure運用設計で検討すべき項目

Azureの運用設計を行う際、検討すべき項目は主に8つです。ここでは具体的な設計項目について見ていきましょう。

基本方針の策定

基本方針の策定は、システム運用の目的や利用用途といった運用設計全体の方向性を定義することです。ここで決定した内容をもとに、以下に続く運用体制や監視方法、セキュリティ対策、保守計画などを決めていくため、運用設計において重要な役割を担います。

また、基本方針は開発設計を考慮した上で進めるのが基本です。システム開発には顧客に提供する機能だけでなく、目に見えない可用性や性能、保守性、セキュリティといった非機能要件も含まれます。そのため、基本方針と開発設計に矛盾が生じないよう、同じタイミングで検討する必要があります。

運用スケジュール

システムを安定稼働させるためのポイントとなるのが運用スケジュールです。たとえば、システムの稼働時間やバッチ処理、ログ確認、バックアップ処理、システムアップデートなどは日次・月次ごとに管理する必要があります。不定期や年次の作業についても詳細を決め、対応漏れを発生させないことが重要です。

また、同時に検討したいのが役割分担の明確化です。誰がどのタイミングで何を行うのかを事前に決めておけば、運用のスムーズ化が図れます。それぞれの責任を明確にすることで、メンテナンス時間の短縮や効率化につながります。

運用体制

システム運用の成功に欠かせない要素の一つが運用体制です。Azureの運用では統括責任者や運用責任者、システム管理者、ネットワークエンジニアなどを配置し、それぞれの役割を明確にする必要があります。24時間365日のシフトを組む企業においては、シフトに合わせたエンジニアの確保も必要です。

また、運用体制で忘れてはならないのが評価と見直しです。運用体制は一度構築して終わりというものではなく、定期的に評価及び改善を図る必要があります。監査やフィードバックを活用し、効率的な運用体制を整えましょう。

システム運用の対象項目

システム運用の安定化において、対象項目の洗い出しは重要です。管理すべき範囲が明確化されていないと監視やセキュリティ対象から漏れる可能性があります。OSやミドルウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワークといった基本項目だけでなく、ログデータやアカウント管理、ファイアウォール、設定情報に至るまで細かくピックアップを進めましょう。同時にそれぞれの利用目的を定義し、運用手順や管理方法についても検討する必要があります。

セキュリティ対策

システム運用では不正アクセスや情報漏洩、データの改ざんといったさまざまなセキュリティリスクを伴います。これらのリスクを回避するには、セキュリティリスクを洗い出し、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。ファイアウォールやセキュリティ対策ソフトなどを検討し、あらゆる脅威に備えましょう。

また、システムの安全性を確保するには内部リスク対策も重要です。セキュリティ事故は、従業員による過失や不正操作、不正持ち出しといった内部要因からも発生します。そのため、社内教育や秘密保持誓約などでセキュリティリテラシーを向上させる必要があります。

バックアップ/復旧

バックアップ/復旧に関わる運用設計は、BCP(事業継続計画)の観点から見ても重要です。定期的にバックアップを取得しておけば、障害やデータ損失、自然災害といったあらゆる脅威に備えられます。システムの可用性・安定性を高めるためにも、データの重要度に応じて日次、週次、月次のバックアップスケジュールを策定しましょう。

また、同時に検討したいのが作業手順と保管方法です。バックアップは取得・保管だけでなく、復旧作業に活かせてこそ意味があります。決められた手順に沿って復旧テストを行い、問題がないか検証しましょう。

監視設計

監視設計は、Azure運用において非常に重要な要素です。対象項目や監視方法、監視基準を定義することで、漏れのない監視体制が整えられます。監視内容はシステムの特性によって異なりますが、代表的なものとして死活監視や性能監視、セキュリティ監視などが挙げられます。

また、システム監視では対象にそれぞれ閾値を設け、危険域に達した際は素早く検知する仕組みが必要です。そのため、監視ツールのログ収集やアラート機能を活用し、原因分析や状況把握を行うためのレポート活用も検討する必要があります。

障害対策

障害対策とは、障害や災害などのトラブルに備え、事前にシステムの復旧手順を決めることです。たとえば、障害レベルごとに役割分担や連絡先、復旧方法、復旧に要する時間、対応終了条件などを定義しておけば、不測の事態が起きたとしても速やかに対処できます。

注意点として、障害対応はマニュアル化し、関係者間での情報共有が必要です。実際にロールプレイを行い、運用に支障が出ないことも検証しなければいけません。機密情報の取り扱いについても注意し、適切なアクセス管理を行いましょう。

クラウド環境における運用設計のポイント

クラウド環境における運用設計のポイント

クラウド環境では、従来の方法に加えクラウド特有の運用設計が必要です。以下、クラウド運用設計における2つのポイントについて見ていきましょう。

  • 責任共有モデルを意識する
  • Azureのベストプラクティスに沿って運用設計を行う

責任共有モデルを意識する

責任共有モデルとは、クラウドサービス事業者とユーザーの間で、どちらに責任の所在があるのかを示したモデルのことです。

クラウドサービスは大きく分けるとIaaS、PaaS、SaaSに分類され、ユーザーの管理責任の範囲が異なります。たとえば、SaaSではほとんどの区分がサービス提供事業者の範疇となりますが、IaaSだとOSやコンテナ管理機能、ミドルウェア、ランタイムといったように、ユーザーの責任範囲が広くなります。そのため、運用設計においては責任共有モデルを意識した上で運用体制や監視設計、障害対応を検討する必要があります。

責任共有モデルを意識する

引用:内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター:クラウドを利用したシステム運用に関するガイダンス

Azureのベストプラクティスに沿って運用設計を行う

運用設計にあたり、事前に押さえておきたいのがAzureのベストプラクティスです。ベストプラクティスとは「最善の技法」を意味し、AzureやAWS、GCPなどのクラウドサービスでは、それぞれ運用設計のベストプラクティスが示されています。

Azureの場合だと「Microsoft Azure Well-Architected Framework」が推奨されており、以下のような5つの柱が存在します。Azureを安定的かつ効率的に運用するには、これらの柱に沿った運用設計が求められます。

①信頼性

すべてのレベルで障害を予測できる仕組みを設計し、迅速にシステムを復旧すること

②セキュリティ

アプリケーションのライフサイクル全体を通して、あらゆる脅威から保護するためのセキュリティ対策を実装すること

③コストの最適化

ビジネス目標と予算のバランスを考慮し、コスト効率の高い環境を設計すること

④オペレーショナルエクセレンス

自動化によって運用コストとリスクを削減し、サービス品質の向上を目指すこと

⑤パフォーマンス効率

容量やリソースの最適化を図り、最良のパフォーマンスを実現すること

Azureが提供する運用機能

Azureが提供する運用機能

Azureにはシステムを安定稼働させるためのさまざまな機能が搭載されています。ここでは主な4つの機能について解説します。

監視機能

Azureが監視ソリューションとして提供しているのが「Azure Monitor」です。

Azure Monitorは、クラウド環境だけでなくオンプレミス環境も合わせて監視・分析が可能です。対象サーバーにエージェントをインストールするだけで監視データを収集し、仮想サーバーの死活やリソース状況、パフォーマンスをリアルタイムで可視化できます。異常を検出した際は自動でアラートが発行され、SMSやメール等で運用担当者に通知されます。

ログ収集/分析機能

ログデータの収集や分析、可視化を一元的に管理できるのが「Log Analytics」です。

Log Analyticsはクラウドやオンプレミス環境を問わず利用できて、さまざまなOSに対応しています。用途別にいくつものテンプレートが用意されており、手間をかけずに収集データの検索、フィルタリング、分析が可能です。また、ダッシュボードを利用すれば分析結果を一覧表示でき、傾向やパターンの把握に役立ちます。さらに、条件を指定することで、通知やアクションを自動的にトリガーするといった利用方法もできます。

バックアップ/リストア機能

「Azure Backup」は、データの自動バックアップ及びリストアができるサービスです。クラウド・オンプレミスを問わず利用できるため、社内に設置したサーバーも合わせて管理できます。

Azure Backupの対象範囲は広く、仮想マシンやファイル、フォルダ、システム状態に至るまでバックアップが可能です。保存方法についてもさまざまなオプションが用意されており、世代管理をしながら長期間保持できます。また、バックアップ方式では初回は完全バックアップ、2回目以降は増分バックアップが採用されているため、ネットワーク帯域や記憶領域を効率的に使えるのが特徴です。

セキュリティ機能

Azure環境のセキュリティを包括的に管理できるのが「Microsoft Sentinel」です。

Microsoft Sentinelはクラウド・オンプレミスからデータを収集し、クエリや機械学習によって素早くセキュリティ脅威を検出できます。検出された脅威はAIによって分析され、タイムラインや影響範囲の特定、詳細分析が可能です。また、インシデントが発生した際は、端末の隔離やトラフィックのブロックを自動で実行処理できるため、あらゆる脅威に素早く対処できます。

Azure運用設計を行う際の注意点

Azure運用設計を行う際の注意点

Azureの運用設計を効率よく進めるには、いくつか注意すべきポイントがあります。以下、2つの注意点について解説します。

  • 専門知識の習得及び人材確保を行う
  • 運用のアウトソースを検討する

専門知識の習得及び人材確保を行う

Azureの運用は一定以上の専門知識・利用スキルが求められるため、これまでオンプレミスを利用していた企業では、教育やトレーニング、人材確保に関わる計画が必要です。Azure製品の知識だけでなく、クラウド特有の概念やサービスについても理解を深めなければいけません。また、Azureは日々アップデートも行われており、定期的に新しい知識の反映も必要です。

運用のアウトソースを検討する

クラウド環境の運用設計において、考慮しなければならないのが運用コストです。クラウドは、オンプレミスや他者のクラウドと平行して利用されることが多く、管理対象の数に応じて覚えるべき手順が増えます。そのため、運用手順や監視、分析、障害対応などはできる限り統合し、運用負荷を下げる必要があります。

その解決手段として有効なのが「運用代行サービス」です。運用代行サービスでは、Azureの導入から環境構築、データ移行、各種設定までさまざまな支援が受けられます。オンプレミスを含めた統合サービスも展開されており、場合によっては自社の運用よりも低コストに抑えられる可能性があります。

まとめ

Azureを安定的かつ効率的に運用するには、運用プロセスや役割分担を定めた運用設計が必要です。運用設計を行うことで抜け漏れのない運用体制が構築でき、予期せぬトラブルにも迅速に対処できます。加えて、セキュリティ対策や監視方法、障害対策などが標準化され、運用効率や品質の向上につながります。

また、運用設計は継続的な評価と見直しも必要です。実際の運用に問題がないかを検証し、フィードバックと改善を繰り返さなければいけません。運用コストについても定期的に評価し、運用代行サービスの利用も視野にいれるべきです。

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