情報セキュリティ対策に必須!リスクアセスメントの基礎知識と実践方法
情報化が進む現代では、企業や組織にとってシステムの安定稼働は必要不可欠です。
しかし、システムにはさまざまなリスクが潜んでおり、そのリスクの中でも情報セキュリティに関するリスクのリスクアセスメントを行うことは現代社会においてとても重要です。
本記事では、情報セキュリティのリスクアセスメントについて解説し、具体的な対策事例なども紹介していきます。情報セキュリティ対策をすることで、システムの安全性を高め、企業や組織の大切な情報資産を守るために必要な知識を身につけていきましょう。
情報セキュリティのリスクアセスメントとは
情報セキュリティのリスクアセスメントとは、組織や企業が保有する情報資産(顧客データ、財務情報、技術情報など)に対して、どのようなリスク(情報漏えい、改ざん、破壊、紛失など)が存在し、そのリスクが現実化した場合にどの程度の被害が発生するかを分析・評価するプロセスのことです。
情報リスクアセスメントの目的
システムの安全性を向上させるためには、情報リスクアセスメントの実施が必要不可欠です。情報リスクアセスメントとは、システムが抱えるリスクを分析し、その影響度や発生確率を評価、対策を検討するプロセスです。
この評価に基づき、対策の優先順位や必要性、コストなどを判断することができます。情報リスクアセスメントの大きな目的は、企業が保有する情報資産への被害を最小限に抑えることにあります。
情報資産とは、企業にとって重要な情報であり、顧客情報や技術情報、個人情報などが含まれます。情報資産が漏洩したり破壊されたりした場合に、企業の信用を失われてしまい、賠償責任を負ったり、事業継続に支障をきたしたりなどする可能性があります。
情報リスクアセスメントを行うことで、情報資産に対するリスクを把握し、適切に対策を講じることができます。企業の情報セキュリティ対策において非常に重要な役割を果たすことができます。
情報リスクアセスメントの重要性
システムが企業活動に与える影響は、もはや計り知れないほど大きくなっています。かつては単なる業務効率化のツールと捉えられていたシステムは、今や企業の競争力を左右する重要な要素へと進化を遂げました。顧客との関係を築く上で、システムは欠かせない存在です。
ECサイトやオンラインサービスを通じて、顧客は企業と繋がり、商品やサービスを享受します。システムの使い勝手や安定性は、顧客満足度に直結し、企業のブランドイメージを大きく左右します。
社内業務においても、システムはあらゆるプロセスに深く関わっています。生産管理、在庫管理、販売管理、会計処理など、多岐にわたる業務がシステムによって効率化され、企業全体の生産性向上に貢献しています。
さらに、AIやIoT、ビッグデータ分析などの最新技術を活用したシステムは、新たなビジネスモデルの創出を可能にします。顧客一人ひとりに最適化されたサービスを提供したり、業務プロセスを自動化したりすることで、企業は競争優位性を築くことができます。
このように、システムは企業活動のあらゆる側面に影響を与え、その重要性は増すばかりです。しかし、システムへの依存度が高まる一方で、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクも増大しています。
企業は、システムの安定稼働を維持し、情報資産を守るために、情報セキュリティのリスクアセスメントを徹底的に行う必要があります。リスクアセスメントによって潜在的な脅威を洗い出し、適切な対策を講じることで、企業はシステムを安全に運用し、事業の継続性を確保することができます。
情報セキュリティのリスクアセスメントは、もはや企業にとって「選択」ではなく「必須」の取り組みと言えるでしょう。
リスクアセスメントとリスクマネジメントの違い
リスクアセスメントとリスクマネジメントは、どちらもリスクに対処するための重要な概念ですが、その範囲や目的が異なります。
リスクアセスメントはリスクを特定・分析・評価するプロセスです。
その一方で、リスクマネジメントはリスクアセスメントの結果に基づき、リスクに対応し、その後の監視や改善までを含む、より包括的な活動のことです。
表にまとめてみると以下のようになります。
リスクアセスメント | リスクマネジメント | |
---|---|---|
目的 | リスクの特定・分析・評価 | リスクへの対応、管理 |
範囲 | リスクの把握まで | リスク対応、監視、改善まで |
プロセス | 特定 → 分析 → 評価 | 特定 → 分析 → 評価 → 対応 → 監視 → 改善 |
例 | 健康診断 | 健康管理 |
リスクアセスメントはリスクマネジメントの一部と言えます。リスクアセスメントで潜在的リスクを把握した上で、リスクマネジメントによって適切な対応を行うことで、リスクを効果的に管理することができます。
情報リスクアセスメントの手法
情報リスクアセスメントは、情報セキュリティ対策の基礎となる重要なプロセスです。情報システムに潜むリスクを特定し、その影響度と発生確率を評価することで、はじめて効果的な対策を講じることができます。
様々な手法が存在しますが、大きく「定性的な手法」と「定量的な手法」に分けられます。それぞれの特徴を理解し、適切な手法を選択することが重要です。
定性的な手法
定性的な手法は、専門家の経験や知識、主観的な判断に基づいてリスクを評価する方法です。数値化が難しいリスクや、発生頻度が低いリスクを評価する際に有効です。
具体的な方法として以下の表にまとめました。
具体的な手法 | 内容 |
ブレーンストーミング | 関係者が集まり、「顧客情報が漏えいしたらどうなるか?」「システムが停止したらどうなるか?」など、自由に意見を出し合い、潜在的なリスクを洗い出します。 |
デルファイ法 | セキュリティ専門家にアンケート調査を行い、「ランサムウェア攻撃を受ける可能性はどれくらいか?」「標的型攻撃による被害額はどれくらいか?」といった質問への回答を集約し、リスクを評価します。 |
シナリオ分析 | 「従業員がフィッシングメールに引っかかり、ID・パスワードを盗まれる」というシナリオを作成し、その場合に発生する情報漏えいの規模や影響範囲を検討します。 |
SWOT分析 | 組織の強み・弱み・機会・脅威を分析します。例えば、「セキュリティ対策の専門家が不足している」という弱みを把握することで、人的リスクを認識することができます。 |
メリットとデメリットについて表でまとめました。
メリット | デメリット |
数値化が難しいリスクを評価できる | 主観的な判断に左右される可能性がある |
専門家の知見を活かせる | 評価結果にばらつきが生じやすい |
柔軟性が高い | 客観的な根拠を示しにくい |
定性的な手法は、数値化が難しいリスクや発生頻度が低いリスクを評価する際に特に有効です。
例えば、新型のサイバー攻撃によるリスクなどは、過去のデータや統計が少ないため、定量的な評価が難しい場合があります。このような場合、セキュリティ専門家の知見を活かした定性的な評価が重要となります。
ただし、評価者の主観に左右される可能性があるため、複数人で評価を行う、評価基準を明確にするなどの工夫が必要です。
定量的な手法
過去のデータや統計などを用いて、リスクを数値化し、客観的に評価する方法です。発生頻度が高いリスクや、金銭的な損失に繋がりやすいリスクを評価する際に有効です。
具体的な方法として以下の表にまとめました。
具体的な手法 | 内容 |
リスクマトリクス | リスクの発生確率を「高・中・低」の3段階、影響度を「大・中・小」の3段階で評価し、マトリクス上にプロットします。例えば、「発生確率:中、影響度:大」のリスクは優先的に対策を講じるべきだと判断できます。 |
定量的なリスク分析 | 過去に起きた情報漏えいインシデントのデータなどを分析し、「情報漏えい1件あたりの平均損失額は〇〇万円」といった数値を算出することで、リスクを定量的に評価します。 |
モンテカルロシミュレーション | 様々な変動要素を考慮しながら、リスクの影響度をシミュレーションします。例えば、「サイバー攻撃によるシステム停止期間」を確率的にシミュレーションすることで、想定される損失額を予測することができます。 |
メリットとデメリットについて表でまとめました。
メリット | デメリット |
客観的なデータに基づいた評価ができる | 必要なデータの収集が難しい場合がある |
リスクの大きさを比較しやすい | データの精度によって評価結果が左右される |
優先順位付けがしやすい | 複雑な計算が必要になる場合がある |
説得力のある資料を作成できる | 専門知識が必要になる場合がある |
定量的な手法は、発生頻度が高いリスクや、金銭的な損失に繋がりやすいリスクを評価する際に特に有効です。
例えば、過去の情報漏えいインシデント のデータから、情報漏えいが発生する確率や、1件あたりの平均損失額を算出することができます。これらの数値に基づいてリスクを評価することで、より客観的な判断が可能となります。
ただし、適切なデータが不足している場合は、正確な評価が難しいという側面もあります。
その他の手法
定性的な手法、定量的な手法以外にも、リスクアセスメントに活用できる手法は様々です。
具体的な方法として以下の表にまとめました。
具体的な方法 | 内容 |
チェックリスト | 情報セキュリティに関するチェックリストを用いて、自社のセキュリティ対策状況を精査し、リスクを洗い出します。 |
原因分析 | 過去の情報セキュリティインシデントの原因を分析することで、同様のインシデントの再発防止に繋げます。 |
ヒューマンエラー分析 | 人為的なミスによるリスクを分析し、操作ミスや誤設定などを防ぐための対策を検討します。 |
定性・定量的手法以外にも、様々な手法が存在します。
これらの手法を単独で用いるのではなく、複数の手法を組み合わせることで、より多角的な視点からリスクを評価することができます。
例えば、チェックリストでリスクを洗い出した後に、定量的な手法を用いてリスクの発生確率と影響度を評価する、といった方法が考えられます。
状況に応じて適切な手法を選択し、必要であれば複数の手法を組み合わせることで、より効果的なリスクアセスメントを実施することができます。
情報リスクアセスメントの事例紹介
情報リスクアセスメントは、情報資産に対する脅威と脆弱性を分析し、発生する可能性のあるリスクを評価するプロセスです。情報システムのリスクマネジメントにおいて非常に重要なステップであり、適切なリスク対応策を決定するためには不可欠です。
ここでは、あるECサイト運営会社を例に、情報リスクアセスメントの具体的な事例をご紹介します。
リスクの特定
ECサイト運営会社が抱える可能性のあるリスクを洗い出します。
リスクの種類 | 想定される状況 | 説明 |
外部からの不正アクセス | 標的型攻撃メールによるマルウェア感染Webサイトの脆弱性を突いたSQLインジェクション攻撃パスワードクラック攻撃による不正ログイン | インターネットを通じて、外部の攻撃者からシステムに侵入され、顧客情報が窃取されるリスク |
内部不正 | 従業員が顧客情報を不正に持ち出し、外部に売却権限のない従業員が顧客情報にアクセスし、閲覧・改ざん | 従業員による、故意または過失による顧客情報の不正利用や漏洩のリスク |
機器の故障 | サーバーのハードディスク故障によるデータ消失ネットワーク機器の故障によるシステム停止 | ハードウェアの故障や老朽化によって、システムが停止し、データが消失するリスク |
自然災害 | 地震によるデータセンターの倒壊火災によるサーバーの焼失水害によるシステム機器の水没 | 地震、火災、洪水などの自然災害によって、システムやデータが損害を受けるリスク |
ヒューマンエラー | 操作ミスによる顧客情報の誤削除設定ミスによるシステム障害バックアップデータの誤消去 | 従業員の操作ミスや設定ミスによって、システム障害やデータ消失などが発生するリスク |
リスクには上記に記載した内容以外にもあります。これらのリスクをまず特定することがとても重要になります。
リスクの分析
リスクの特定を行うことができたら、次はリスクの分析です。リスク分析とは、特定されたリスクについて、その発生確率と影響度を評価するプロセスです。
主な目的は以下の通りです。
- 各リスクの深刻度を把握し、優先順位をつける。
- リスクへの対応策を検討するための基礎資料を作成する。
リスク分析の具体例を以下の表にまとめました。
リスク | 発生確率 | 影響度 | 分析内容 |
地震によるデータセンターの損壊 | 低 | 大 | データセンターの耐震構造、過去の地震発生頻度、バックアップ体制などを考慮する |
サーバーのハードディスク故障 | 中 | 中 | サーバーの稼働年数、過去の故障率、保守契約の有無などを参考にする |
従業員による顧客情報持ち出し | 低 | 大 | 従業員のセキュリティ意識、アクセス権限管理、情報漏えい対策の状況などを考慮する |
システムの脆弱性を突いたサイバー攻撃 | 中 | 大 | 過去のサイバー攻撃の発生状況、システムのセキュリティ対策状況、脆弱性対策の頻度などを考慮する |
停電によるシステム停止 | 中 | 中 | 過去の停電発生頻度、自家発電設備の有無、UPS(無停電電源装置)の導入状況などを考慮する |
誤操作によるデータ削除 | 中 | 中 | 従業員のITスキルレベル、操作マニュアルの整備状況、データ復旧体制などを考慮する |
プログラムのバグによるシステム障害 | 高 | 中 | 開発プロセスにおけるテストの網羅性、バグ修正体制、システムの複雑さなどを考慮する |
不正なソフトウェアのインストール | 中 | 高 | 従業員へのセキュリティ教育、ソフトウェアインストールの制限、ウイルス対策ソフトの導入状況などを考慮する |
リスクには上記に記載したように分析をすることで次の評価に繋がります。
リスクの評価
リスクの分析を行うことができたら、次はリスクの評価です。リスク評価とは、リスク分析で得られた発生確率と影響度を基に、それぞれのリスクの重大性を判断するプロセスです。
リスク評価の具体例を以下の表にまとめました。
リスク | 発生確率 | 影響度 | 評価 |
地震によるデータセンターの損壊 | 低 | 大 | リスクは低いと判断 |
サーバーのハードディスク故障 | 中 | 中 | リスクは中程度と判断 |
従業員による顧客情報持ち出し | 低 | 大 | リスクは低いと判断 |
システムの脆弱性を突いたサイバー攻撃 | 中 | 大 | リスクは高いと判断 |
停電によるシステム停止 | 中 | 中 | リスクは中程度と判断 |
誤操作によるデータ削除 | 中 | 中 | リスクは中程度と判断 |
プログラムのバグによるシステム障害 | 高 | 中 | リスクは高いと判断 |
不正なソフトウェアのインストール | 中 | 高 | リスクは高いと判断 |
分析した結果を元に評価をすることでその後のリスク対応計画に大きな影響を与えます。
リスク対応の計画
リスク評価を行った後に行うのがリスク対応の計画です。リスク対応の計画とは、リスクアセスメントの結果に基づき、実際に対策を検討し、実行計画を策定するプロセスです。
リスクの対応の計について具体例を以下の表にまとめました。
リスク | 発生確率 | 影響度 | リスク評価 | 対応策 | 責任者 | 期限 | 資源 |
地震によるデータセンターの損壊 | 低 | 大 | 低い | 災害対策拠点の確保 | 施設管理担当 | 2025年3月末 | 予算5,000万円 |
サーバーのハードディスク故障 | 中 | 中 | 中程度 | 予備機の準備 | システム管理担当 | 2024年12月末 | 予算100万円 |
従業員による顧客情報持ち出し | 低 | 大 | 低い | アクセス権限の厳格化セキュリティ意識向上のための研修 | セキュリティ担当 | 運用開始前 | 人材育成 |
システムの脆弱性を突いたサイバー攻撃 | 中 | 大 | 高い | ファイアウォール、侵入検知システムの導入定期的なセキュリティ診断の実施 | セキュリティ担当 | 運用開始前 | 予算300万円セキュリティ人材 |
停電によるシステム停止 | 中 | 中 | 中程度 | 自家発電設備の導入UPS(無停電電源装置)の導入 | 施設管理担当 | 2025年6月末 | 予算1,000万円 |
誤操作によるデータ削除 | 中 | 中 | 中程度 | 操作手順書の作成・徹底データ復旧訓練の実施 | システム管理担当 | 2024年12月末 | 教育資料作成費用 |
プログラムのバグによるシステム障害 | 高 | 中 | 高い | テスト工程の強化コードレビューの徹底バグ管理システムの導入 | 開発担当 | 運用開始前 | テストツール導入費用 |
不正なソフトウェアのインストール | 中 | 高 | 高い | ソフトウェアインストールの制限ウイルス対策ソフトの導入セキュリティ教育の強化 | セキュリティ担当 | 運用開始前 | セキュリティソフト費用教育資料作成費用 |
情報システムのリスク対応計画は、情報セキュリティ対策の要であり、情報資産を保護し、事業の継続性を確保するために欠かせないものです。
リスク対応計画を策定し、実行することで、企業は情報セキュリティインシデントの発生を予防し、被害を最小限に抑え、事業の継続性を確保することができます。
リスク対応計画は、一度作成したら終わりではありません。定期的に見直しを行い、最新のリスク状況に合わせて更新していくことが重要です。
ISO27001(ISMS)と情報セキュリティリスクアセスメントの関係性
システムは、現代のビジネスにおいて欠かせない存在となっています。顧客管理、生産管理、販売管理、会計処理など、あらゆる業務プロセスがシステムに依存し、システムの停止は事業活動の停止に直結するケースも少なくありません。
しかし、システムへの依存度が高まる一方で、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクも増大しています。
このような状況下で、組織の情報資産を保護し、ビジネスの継続性を確保するために、情報セキュリティリスクを適切に管理する活動が重要となります。
ISO/IEC 27001(ISMS)は、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であり、情報セキュリティリスクを組織的に管理するためのフレームワークを提供しています。
ISMS認証を取得することで、組織の情報セキュリティが国際標準に則って適切に管理されていることを対外的に証明することができます。
では、ISO27001は具体的にどのようなことを求めているのかを次章以降で詳しく解説していきます。
ISO27001(ISMS)の概要
ISO27001では、組織の情報セキュリティを効果的に管理するために、 Plan-Do-Check-Act (PDCA) サイクルに基づいた情報セキュリティマネジメントシステムの構築を要求しています。
- Plan (計画):情報セキュリティに関する方針、目標、プロセスを策定する。
- Do (実施):策定した計画を実行する。
- Check (点検):計画の実施状況を監視し、評価する。
- Act (改善):点検結果に基づき、改善を行う。
そして、このPDCAサイクルを効果的に回すために、ISO27001ではリスクアセスメントをISMS構築の重要なプロセスとして位置付けています。
ISO27001(ISMS)で要求されるリスクアセスメントとは
ISO27001では、組織を取り巻く様々なリスクを特定し、評価することを求めています。これは、単にリスクを洗い出すだけでなく、組織の事業目標や情報資産の重要性を考慮し、組織にとって許容できないリスクを明確化することが重要です。
具体的には、以下のプロセスでリスクアセスメントを実施します。
No | プロセス | 内容 |
1 | リスクの特定 | 情報資産に対する脅威を特定し、脆弱性を分析することで、発生する可能性のあるリスクを洗い出す。 |
2 | リスクの分析 | 特定されたリスクについて、発生確率と影響度を評価する。 |
3 | リスクの評価 | リスク分析の結果を基に、リスクの重大性を評価する。 |
4 | リスク対応の計画 | リスク評価の結果に基づき、リスク対応策を検討し、実行計画を策定する。 |
ISO27001では、リスクアセスメントの結果に基づき、適切なリスク対応策を講じることが求められています。リスク対応には、以下の4つの選択肢があります。
選択肢 | 説明 | 具体例 |
リスク回避 | リスクの発生源を排除する | 使用中のOSに脆弱性が見つかったため、当該OSを搭載したサーバーの使用を停止するセキュリティリスクの高いアプリケーションの利用を禁止する情報漏えいリスクの高い外部サービスとの連携を停止する |
リスク軽減 | リスクの発生確率や影響度を低減する | ファイアウォールや侵入検知システムを導入し、サイバー攻撃のリスクを軽減するデータを暗号化し、情報漏えい時の被害を軽減するシステムを冗長化し、システム障害による影響を軽減する |
リスク転嫁 | リスクを保険などで第三者に転嫁する | サイバー保険に加入し、情報漏えいによる損害を保険会社に補償してもらうハードウェア保守契約を締結し、機器故障による修理費用をメーカーに負担してもらう |
リスク保有 | リスクを受け入れる | 発生確率や影響度が低いリスク(例:軽微なバグによるシステム停止)対応コストがリスク超過する場合(例:対策費用が想定される損害額を上回る) |
情報セキュリティリスクアセスメントは、ISO27001の基盤となる重要なプロセスです。適切なリスクアセスメントを実施することで、組織の情報セキュリティレベルを高め、ISO27001認証取得をスムーズに進めることができます。
まとめ
システムは、現代のビジネスにおいて欠かせないインフラストラクチャであり、企業活動のあらゆる側面を支えています。しかし、それと同時に、サイバー攻撃、情報漏えい、システム障害など、様々なリスクに晒されていることも事実です。
情報システムのリスクマネジメントは、これらのリスクを体系的に管理し、システムの安全性を確保するための重要な取り組みです。具体的には、リスクの特定、分析、評価、そして適切な対策の実施といったプロセスを通じて、情報資産を保護し、事業の継続性を確保します。
効果的な情報システムのリスクマネジメントを行うには、技術的な対策だけでなく、組織全体でリスクに対する意識を高め、適切なガバナンス体制を整備することが重要です。社員一人ひとりが情報セキュリティの重要性を理解し、リスク管理に積極的に参加することで、より強固なセキュリティ体制を構築することができます。
さらに、リスクは常に変化するということを忘れてはなりません。新たな脅威が出現したり、ビジネス環境が変化したりすることで、リスクの発生確率や影響度は常に変動します。そのため、定期的にリスクアセスメントを行い、必要に応じて対策を見直すことが重要です。
情報システムのリスクマネジメントを継続的に実施することで、情報システムの安全性を高め、企業や組織の大切な情報資産を守り、持続的な成長を支えることが可能となります。