仮想マシンの安定稼働:Azure Monitorで仮想マシンのシステム監視について解説
仮想マシンの安定稼働には、システム状態を把握するための監視が欠かせません。Azure Monitor を使用すれば、仮想マシンの CPU、メモリ、ディスクなどのリソース使用率や、システムイベント、プロセスなどの状態をリアルタイムに監視できます。
本記事では、Azure Monitor を使用した仮想マシンのシステム監視について詳しく解説します。また、VM Insightsについても紹介をします。
仮想マシンのシステム監視に不安のある方や、Azure Monitor の活用方法を知りたい方は、ぜひ本記事をご一読ください。
仮想マシンに必要な監視とは
仮想マシンを運用する上で、正常に動作しているかを確認するための監視は不可欠です。監視には様々な種類があり、それぞれ異なる目的で利用されます。
次章以降では、以下の内容について解説をしていきます
- システム監視の種類
- 仮想マシンを監視するベストプラクティス
システム監視の種類
システム監視は、コンピュータシステムのパフォーマンスと可用性を監視するプロセスです。 これには、CPU使用率、メモリ使用量、ディスク空き容量などのリソースの使用状況の監視、およびサービスやプロセスの動作状況の監視などが含まれます。
システム監視には、さまざまな種類があります。 次の表は、一般的なシステム監視の種類とその説明を示しています。
監視の種類 | 説明 |
パフォーマンス監視 | パフォーマンス監視は、システムリソースの使用状況を監視するプロセスです。 これには、CPU使用率、メモリ使用量、ディスク空き容量などの監視が含まれます。 |
可用性監視 | 可用性監視は、サービスやプロセスが実行中であるかどうかを監視するプロセスです。 これには、Webサーバーやデータベースサーバーの監視が含まれます。 |
ログ監視 | ログ監視は、システムログを監視するプロセスです。 これには、アプリケーションログ、システムログ、セキュリティログなどの監視が含まれます。 |
ネットワーク監視 | ネットワーク監視は、ネットワークデバイスのパフォーマンスと可用性を監視するプロセスです。 これには、ルーターやスイッチの監視が含まれます。 |
システム監視の種類を理解することは、理想的な監視設定をするのに役立ちます。ベストプラクティスの監視設定をするためにもまずはどのような監視が存在するのか理解を深めましょう。
仮想マシンを監視するベストプラクティス
仮想マシンを正常に稼働させるためには、正常性を維持し、問題が発生した場合にも問題を早期発見し、迅速に解決策を講じる必要があります。そのためにも適切な監視が必要不可欠です。
以下では、具体例を交えて監視設定や対策についてのベストプラクティスを紹介します。
監視項目 | 課題 | 現在の状況 | 監視対策 |
CPU使用率 | Webサーバーが予期せず応答速度が遅くなり、ユーザーからのクレームが増加 | ・仮想マシンのCPU使用率が常に80%以上で推移しており、ピーク時には90%を超える。 ・CPUリソースが不足しているため、Webサーバーの処理能力が限界に達し、応答時間が増加。 | ・仮想マシンのCPU使用率に対する監視アラートを設定し、使用率が80%を超えた場合に通知が届くように設定。 ・週次でCPU使用率の履歴をレポートとして生成し、トレンド分析を実施。 ・必要に応じて仮想マシンに自動スケーリング機能を使いCPUリソースを割り当てを実施。 |
メモリ使用率 | データベースサーバーのパフォーマンスが低下し、データクエリの処理が遅延。 | ・仮想マシンのメモリ使用率がほぼ100%に達しており、頻繁にスワップが発生。この事象がパフォーマンス低下の原因となる。 | ・メモリ使用率とスワップ使用量の監視を強化し、メモリ使用率が85%を超えた時点でアラートが発生するように設定。 ・スワップの発生頻度をモニタリングし、一定量を超えた場合にアラートを送信。 |
ディスクI/O | 仮想マシンで稼働しているアプリケーションが断続的に遅延し、ユーザー体験が悪化。 | ・仮想マシンのディスクI/O待機時間が増加しており、特にピーク時にはI/Oリクエストがディスクで待たされている状態。 ・ディスクがボトルネックとなり、アプリケーションのパフォーマンスが低価して悪影響となる。 | ・ディスクI/Oの待機時間とスループットを監視し、I/O待機時間が一定の閾値を超えた場合にアラートを設定。 ・ディスクのキャッシュ設定を見直し、I/Oパフォーマンスの向上を図る。 ・必要に応じて、高速なSSDディスクへの移行やディスクI/Oの負荷分散を実施。 |
ネットワークI/O | 仮想マシンでホストされているWebサービスのレスポンスが遅く、ユーザーからの苦情が増加。 | ・仮想マシンのネットワーク帯域幅がピーク時に限界に達しており、ネットワーク遅延やパケットロスが発生。 | ・ネットワークI/Oのスループット、遅延、パケットロス率を監視し、特定の閾値を超えた場合にアラートが送信されるように設定。 ・ネットワーク帯域幅の使用状況をトラッキングし、必要に応じて帯域幅の増加。 ・負荷分散の導入を検討。 ・ネットワークインフラの最適化も行い、遅延やパケットロスを最小限に抑止。 |
上記に記載したのは現在稼働中の仮想マシンに対する課題とその監視対策の具体例となります。仮想マシンはリソース監視を実施することが多いのでこの内容を踏まえて自身が監視する仮想マシンのベストプラクティスを考えてみてください。
Azure Monitorを使った仮想マシンのシステム監視
Azure Monitor は、仮想マシンのパフォーマンスと正常性を監視するためのツールを提供しています。これらのツールには、VM Insights も含まれており、仮想マシンの詳細な分析とトラブルシューティングに役立つデータを収集および分析します。
VM Insights を使用することで、仮想マシンのオペレーティングシステム、アプリケーション、および依存関係に関するさまざまな指標とログを監視できます。
次章以降ではVM Insightsについて詳しく解説をしていきます。
VM Insights とは
VM Insightsは、Azure 仮想マシン(VM)に対する包括的な監視機能を提供するソリューションです。オペレーティング システム、アプリケーション、ネットワークの動作状態に関する詳細な情報を取得し、パフォーマンスの低下や潜在的な問題を早期に検出して解決するのに役立ちます。
特に、VM Insightsはエージェントベースとエージェントレスの両方の監視機能を備えており、柔軟性の高い導入と運用を可能にします。
VM Insightsは以下のような機能で仮想マシンの状態の監視と分析をサポートします
- システム監視:CPU、メモリ、ディスク、ネットワークの使用率やエラーなどの監視。
- イベント分析:アプリケーションログ、Windowsイベントログ、Azure診断ログの分析。
- 変更分析:VM構成や設定の変更の追跡と分析。
- インサイトレポート:VMの状態やパフォーマンスに関する傾向分析と可視化。
VM Insightsは、仮想マシンの運用効率を向上させ、問題を迅速に解決するのに役立つツールです。
VM insights を使ったシステム監視
VM insightsはAzure Monitorの機能であり、仮想マシンの詳細なパフォーマンスデータ、容量、およびオペレーティングシステムのメトリックなどを監視することができます。
また、VM insightsを使用すると、仮想マシンのパフォーマンスデータを可視化し、パフォーマンスの問題を特定、トラブルシューティング、リソース使用に関するパターンを分析など、仮想マシンの維持に関する監視を行うことが可能です。
また、対応するOSとしてLinuxとWindowsの両方をサポートしています。
このようなことから、VM insightsはAzure Monitorの主要機能であり、仮想マシンのシステム監視を強化するに役立ちます。
VM insights を使ったデータ分析
VM insightsを使用すると、仮想マシンのパフォーマンスと正常性を監視および分析できます。これによって、OS、アプリケーション、Azure のサービスなどのさまざまなソースからデータが収集され、統合されたビューで表示されます。
このデータを使用して、問題をトラブルシューティングし、パフォーマンスを最適化し、潜在的な問題を特定することができます。
また、VM insightsには、リソースの健全性、パフォーマンス、および容量に関する分析情報など、さまざまな情報を取得できることから、カスタムアラートやダッシュボードを作成して、重要な指標を追跡することも可能です。
VM insightsを使用してデータを分析するメリットを以下に示します。
- 問題の特定とトラブルシューティング: VM insights を使用すると、パフォーマンスの問題やエラーを迅速に特定できます。詳細なデータを使用して、問題の根本原因を特定し、解決策を特定できます。
- パフォーマンスの最適化: VM insights を使用すると、仮想マシンのパフォーマンスを監視し、潜在的な問題を特定できます。この情報は、リソースの割り当てを最適化し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させるために使用できます。
- 潜在的な問題の特定: VM insights を使用すると、問題が発生する前に潜在的な問題を特定できます。この情報は、問題が発生する前に解決策を講じるために使用できます。
このようなことから、VM insightsは仮想マシンのパフォーマンスと正常性を監視および分析するための強力なツールです。このツールを使用して、問題を解決し、パフォーマンスを最適化し、潜在的な問題を特定に役立ちます。
VM insights を使った変更分析
VM insightsは、仮想マシンの構成やソフトウェアの変更を詳細に分析することができます。これにより、予期しない変更やセキュリティ上の問題を早期に発見し、適切な対応をとることができます。
変更分析は、仮想マシンにインストールされたエージェントによって収集されたデータを分析します。このデータには、オペレーティングシステム、アプリケーション、設定ファイル、レジストリキーなどの変更が含まれます。
VM insightsを使用して、以下の変更を分析することができます。
- アプリケーションのインストールとアンインストール
- 設定ファイルの変更
- レジストリキーの変更
- セキュリティ関連の変更
変更分析機能は、以下のメリットがあります。
- 変更の追跡と分析を自動化できる
- 予期しない変更やセキュリティ上の問題を早期に発見できる
- 問題の根本原因を特定できる
- セキュリティ対策を強化できる
このようなことから、変更分析機能を活用することで仮想マシンの構成やソフトウェアの変更を詳細に分析し、セキュリティ上の問題を早期に発見することができます。
これにより、仮想マシンのセキュリティを強化し、安定した運用を実現することができます。
Azure Monitorデータソースの活用
データドリブンな監視を実現し、クラウドやオンプレミスのあらゆるリソースから貴重なインサイトを提供するAzure Monitorデータソースをご紹介します。
Azure Monitorデータソースを利用すれば、アプリケーション、仮想マシン、コンテナ、ネットワークのパフォーマンスと正常性を、包括的な視点で把握することができます。
データ収集ルールの設定を通じて、必要な情報を効率的に収集し、可視化、分析、アラート設定によって問題を迅速に検出・対処することが可能です。
次章以降ではAzure Monitorデータについて詳しく解説をしていきます。
Azure Monitorデータプラットフォーム
Azure Monitorは、クラウドおよびオンプレミスの環境におけるアプリケーションとインフラストラクチャを監視するための包括的なソリューションを提供するデータプラットフォームです。
監視データを収集、分析、視覚化することで、パフォーマンスの問題や潜在的な問題を特定するのに役立ちます。また、データはさまざまなソースから収集され、Azure Monitorログ、Azure Monitorメトリック、Azure Application Insightsなどのさまざまなサービスに格納されます。
収集されたデータは、監視、アラート、分析、その他のタスクに利用できます。
主なメリットとして、以下が挙げられます。
- 統合されたデータ収集は、Azure MonitorエージェントやAzure診断設定など、さまざまな方法でデータを収集することができます。
- 柔軟な格納オプションとして、データはさまざまな方法で格納でき、ニーズに合わせてコストとパフォーマンスのバランスを調整することができます。
- 強力な分析機能として、Log AnalyticsやApplication Insightsなどのツールを使用することでデータを分析し、パターンや異常を検出することができます。
- データを視覚化したり、アラートを設定して問題を早期に検出したりすることができます。
Azure Monitorデータプラットフォームは、クラウドおよびオンプレミスの環境におけるアプリケーションとインフラストラクチャを監視するための便利なツールです。データの収集、分析、視覚化に役立ち、パフォーマンスの問題や潜在的な問題を特定するのに役立ちます。
データ収集ルールの設定
仮想マシンのシステム監視をするためには、Azure Monitorでデータ収集ルールを設定する必要があります。これは、どのデータポイントを収集し、どのくらいの頻度で収集するかを指定するものです。
データ収集ルールの設定は、以下の手順で行います。
1.収集するデータポイントを選択。
Azure Monitorで収集できるデータポイントは非常に多岐にわたります。仮想マシンの場合は、CPU使用率、メモリ使用量、ディスク使用量、ネットワークトラフィックなど、システムの健全性を監視するために重要なデータポイントを収集する必要があります。
2.収集頻度を指定。
収集頻度は、データポイントごとに指定することができます。たとえば、CPU使用率は1分ごとに収集する必要があるかもしれませんが、メモリ使用量は5分ごとに収集しても十分な場合があります。
3.収集方法を選択。
データ収集方法は、Azure MonitorエージェントまたはAzureの診断設定の2つの方法があります。Azure Monitorエージェントは、仮想マシンにインストールする必要があり、より詳細なデータを収集することができます。一方、Azureの診断設定は、仮想マシンにエージェントをインストールする必要がないため、より簡単に設定することができます。
4.データの送信先を指定。
収集したデータは、Azure Monitorのログまたはメトリックに送信することができます。ログは、イベントやエラーメッセージなどの詳細な情報を記録するために使用されます。メトリックは、CPU使用率やメモリ使用量などの数値データを記録するために使用されます。
5.ルールを保存。
データ収集ルールの設定が完了したら、保存する必要があります。保存されたルールは自動的に実行され、設定したデータポイントが収集されます。
データ収集ルールを設定することで、Azure Monitorで仮想マシンのシステムを効果的に監視することができます。収集されたデータは、問題を早期に検出したり、仮想マシンのパフォーマンスを最適化したりするのに使用することができます。
データの収集方法
Azure Monitor は、さまざまな方法でデータを収集できます。
最も一般的な方法は以下の通りです。
- Azure Monitorエージェンを活用したデータ収集
- Azure診断設定を活用したデータ収集
次章以降ではそれぞれのデータ収集の方法について解説します。
Azure Monitorエージェントの活用
Azure Monitorエージェントは、仮想マシンからパフォーマンスデータやイベントログ、システムヘルス情報などを収集するための重要なツールです。
エージェントは、仮想マシンにインストールすることで、さまざまなデータソースから情報を収集してAzure Monitorに送信することができます。
Azure Monitorエージェントを使用したデータ収集には、以下の利点があります。
- 豊富なデータ収集機能
- リアルタイムデータ収集
- 柔軟な構成
- クロスプラットフォーム対応
Azure Monitorエージェントを使用したデータ収集は、仮想マシンのシステム監視に欠かせない機能です。エージェントをインストールすることで、仮想マシンの状態をリアルタイムに把握し、問題を早期に検知することができます。
Azureの診断設定の活用
仮想マシンを監視するために必要なデータは、さまざまな方法で収集することができます。その中で、Azure Monitor エージェントを使用しない場合は、Azure の診断設定を使用することで、データポイントを収集することができます。
診断設定は、Azure Monitorにデータをストリーミングするもしくは、Azure Storageアカウントにアーカイブするように構成できます。
診断設定を使用することで、パフォーマンスカウンター、イベントログ、システムの状態、仮想マシンのデータ(CPU、ディスク容量など)、カスタムログなど、さまざまな種類のデータを収集できます。
これらのデータは、Azure Monitorで使用して、仮想マシンの状態を監視したり、問題をトラブルシューティングしたりすることができます。
また、データを Log Analytics ワークスペースにエクスポートして、詳細な分析を実行することもできます。
Azure Monitor の診断設定を使用することで、仮想マシンから包括的なデータを収集できます。このデータは、仮想マシンの状態を監視し、問題をトラブルシューティングするために使用できます。
データの視覚化
Azure Monitorを用いた仮想マシンのシステム監視において、データの視覚化は、システムの状態を理解し、問題を迅速に特定するために非常に重要です。
Azure Monitor では、さまざまな方法でデータを視覚化することができます。
方法 | 説明 |
メトリックチャット | メトリック値をグラフとして表示します。複数のメトリックを重ねて表示することも可能です。 |
ログクエリチャート | ログクエリ結果をグラフとして表示します。特定のイベントの傾向を分析するために使用できます。 |
Azure Monitorワークブック | メトリックチャット、ログクエリチャート、テキスト、画像などを組み合わせて、カスタムダッシュボードを作成できます。 |
Power BI | Azure Monitor データを Power BI にエクスポートして、より詳細な分析を行うことができます。 |
データの視覚化の重要性な理由として、システムの状態をより直感的に理解し、問題を迅速に特定するができるからです。また、データの視覚化を積極的に活用することで、システムの安定運用に貢献できます。
このようなことから、Azure Monitorを用いたデータの視覚化が非常に重要です。Azure Monitorには、メトリックチャット、ログクエリチャート、ワークブックなど、さまざまなデータの視覚化にする方法が用意されています。これらの方法を適切に活用することで、システムの状態をより直感的に理解し、問題を迅速に特定することができます。
まとめ
仮想マシンのシステム監視は、安定した運用とトラブルシューティングに欠かせません。Azure Monitorは、システム監視に役立つツールであり、VM Insights を使用することで、仮想マシンのパフォーマンス、正常性、およびリソース使用量を効果的に監視できます。
また、Azure Monitorデータソースを活用すれば、仮想マシンの詳細な情報を収集し、分析することも可能です。これらの情報を活用することで、仮想マシンの問題を早期に発見し、迅速に解決することができます。
Azure Monitorは、仮想マシンのシステム監視を行うための重要なツールです。ぜひ活用して、仮想マシンの安定運用を実現しましょう。