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Learn about AWS in 大阪「100以上の生成AI事例から学ぶビジネス価値生成の方程式」セッションレポート

Learn about AWS in 大阪「100以上の生成AI事例から学ぶビジネス価値生成の方程式」セッションレポート

2025年2月6日、グランフロント大阪にて「Learn about AWS in 大阪」が開催されました。本ブログでは、Learn about AWS in 大阪に実際に参加したOps Today編集部員から、イベントの様子や講演レポートをお届けします。

今回は、Generative AI Trackにて15時から開催されたセッション「100以上の生成AI事例から学ぶビジネス価値生成の方程式」をレポートします。

グランフロント大阪

Learn about AWS in 大阪とは?

Learn about AWS in 大阪は、ソニービズネットワークス株式会社主催、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社講演協力のもと、「AWS」 「生成AI」 「モダンインフラ」をキーワードとしたイベントです。幅広い技術レベルの人を対象としたセミナーセッションや、AI・AWSに関する各種展示・相談コーナーが設けられました。

今回Ops Today編集部では、大阪で開催されるAWSのイベントがあるという噂を聞きつけ参加しました。ソニービズネットワークス株式会社、講演協力のアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の取材協力のもと、イベントの内容について詳しくお届けします。

セッション概要

セッションタイトル100以上の生成AI事例から学ぶビジネス価値生成の方程式
概要生成AIを活用したい、でもどういう業務に活用できるのか、どのような成果を生み出すことができるのか、成果を生み出すために何をやらなければいけないのかわからない方も多いのではないでしょうか。 このセッションでは、多数のAWS生成AI導入事例を元にどのようなケースで生成AIを活用していくのが良いか・生成AIの社内利用に向けて何をしていくのが良いかを解説いたします
登壇者アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 パートナーセールスソリューション本部 パートナーセールスソリューションアーキテクト
谷宮 悠介
引用:Learn about AWS in 大阪公式サイト

それではセッションレポートの内容に入ります。

はじめに:2025年は生成AIが「試用」から実用へ

生成AIを活用する会社は今年飛躍的に増加することが予想されます。しかし、会社によって自社や顧客の状況は様々なので、生成AI活用の事例をそのまま踏襲することは極めて難しいです。今回のセッションでは多様な事例について紹介し、自社での生成AI活用の一助となることを目的としています。

AWSは生成AIをどう捉えているか

AWSのCEOであられるマット・ガーマン氏が『AWS re: Invent』 において提唱した生成AIのKey Messageがセッション内で取り上げられました。

1.生成AIの推論はアプリケーションに組み込まれる:

今までは生成AIアプリケーションと普通のアプリケーションを分けて語ることが多かったが、生成AIによる推論はこれからあらゆるアプリケーションの主要なビルディングブロックになっていくだろう

2.データと組み合わせることで生成AIの価値が生まれる:

生成AIアプリケーションの真の価値は、 エンタープライズデータを取り込み、賢いモデルと組み合わせることで生まれる。 そこで初めて、顧客にとって意味のある、 差別化された興味深い結果が得られる

IPA「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」 の結果をクロス集計
IPA「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」 の結果をクロス集計

また、企業の活用状況には組織的な傾向があることが挙げられています。過去に発生した大きな技術的進化である「クラウドネイティブ」を活用できている企業は生成AIも活用できている傾向にあり、反対に「クラウドネイティブ」をいまだに活用していない企業は生成AIも活用できていない傾向にあるそうです。

ハイインパクトな生成AIユースケース6選

ハイインパクトな生成AIユースケース6選

データ読み取り

生成AIは、請求書やコールセンターの音声記録などのデータ読み取りと記録を効率化できます。これによりPDFや音声、メールなど様々な媒体からのデータ抽出が可能で、40~90%もの効率化が実現しています。

株式会社ナウキャストでは、請求書や決算短信からのデータ抽出に生成AIを活用しています。従来、手作業で行われていたデータの読み取り作業は、多くの時間と労力を要していましたが、生成AIの導入により、これが大幅に効率化されました。具体的には、生成AIを用いることで、財務データの抽出精度が90%以上に達し、作業時間も最大90%短縮されました。  この取り組みにより、ナウキャストは業務の迅速化を実現し、データ処理の精度を向上させることができました。

参考:株式会社ナウキャスト様の AWS 生成 AI 事例:決算短信データ抽出業務における LLM 業務適用

対応スキル底上げ

生成AIは、コールセンターや営業等で顧客応対の際に、担当者の製品知識や業務知識を補助する役割ができます。これにより専門知識に基づく応対を50~90%もの精度で実現しています。

株式会社日本製鋼所では、営業応対における生成AIの活用が進められています。樹脂機械向けの消耗部品の受注に伴う顧客応対では、専門知識が必要な質問が多く、未熟練者の育成が課題でした。そこで、生成AIを導入することで、営業担当者が問い合わせ内容を転記し、検索・回答案を参照できるシステムを構築しました。このシステムにより、専門知識が必要な質問に対して80%以上の精度で回答が可能となり、熟練していない者でも高度な対応ができるようになりました。

参考:株式会社日本製鋼所様の AWS 生成 AI 事例「Amazon Bedrock と Amazon Kendra による樹脂機械向けの社内文章検索 & 要約システムを早期開発」のご紹介

営業支援

生成AIは、営業において販売状況や市況、商談内容から提案機会や商談の改善点を発見することができます。これにより、情報抽出や商談要約作業の30~70%削減が実現しています。

株式会社エフピコでは、営業日報の作成と分析に生成AIを導入しています。1日580件もの営業日報が作成され、それらの日報には最新情報が含まれており、会社経営や製品開発にとって重要な情報です。しかし、日報の解析には多大な時間がかかっていました。  そこで社内の若手社員4名が中心となり、AWSの開発支援プログラムを利用して、日報作成補助と分析のアプリケーションを開発しました。この取り組みにより、エフピコは日報分析にかかる時間を月700時間以上削減することに成功しました。

参考:「生成AIで職場改革、日報要約から流行分析 エフピコ活用」日本経済新聞

[AWS内製化支援推進] ANGEL Dojo 2023優勝チーム「株式会社エフピコ」発表動画

コンテンツ審査

生成AIは、品質管理や監査部門等で規定されたガイドラインに基づき、チェック作業を行うことができます。これにより、社内規定やガイドラインに基づく高品質なチェックの効率化が実現しています。

株式会社FleGrowthでは、社内規定に基づく監査の想定質問を生成AIを用いて作成することで、監査対応時間を90%削減しました。各事業部で年に一度行われるISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の維持審査では、100以上の社内規定を読み込む必要があります。従来は、万一回答できず指摘事項があった場合、対応策の立案と施行に膨大な時間がかかっていました。  生成AIを活用することで、監査における想定質問を自動生成し、事前に準備することが可能になりました。この結果、監査対応の効率が大幅に向上し、指摘事項への対応にかける時間も10分の1に削減されました。 

検索性向上

生成AIは、顧客が利用するメディアで、検索機能の拡張でニーズに応じた商品の提案を行うことができます。これにより、検索の柔軟性が生まれ、CTRの数倍~数十倍にわたる増加が実現しています。

株式会社オズビジョンでは、500万人が会員登録するハピタスで、より意図に沿った広告検索体験を実現するために生成AIを活用しています。生成AI未導入の状態からわずか3ヵ月で実装し、検証を通じてランニングコストの数十倍のROIを見込んでいます。

参考:株式会社オズビジョン様の AWS 生成 AI 事例 : Amazon Bedrock と Amazon Aurora によるポイント対象広告検索機能

商材作成

生成AIは、広告・マーケティング部門あるいは営業部門等で、商品を適切かつ効果的に伝えるための商材作成を行うことができます。これにより、商材作成コストの50%以上の効率化が実現できます。

GreenSnap株式会社では、ユーザーが庭の画像とスタイルを入力すると、植栽を植えた状態の画像を生成する機能を「garden AI」としてサービスリリースしました。この生成AIを活用することで、ユーザーは施工業者と発注者の間で完成イメージを共有することができ、受発注間のトラブルを防止することが可能になります。

GreenSnap株式会社「garden AI」

参考:ガーデニングの新時代 !Amazon Bedrock で理想の庭を実現してみた~GreenSnap株式会社による生成 AI 実装解説~

ユースケースにより蓄積されるデータが連鎖的に価値を創出する

ここまで紹介してきたようなユースケースが蓄積すると、そのデータ自体が価値を生み出します。

ユースケースにより蓄積されるデータが連鎖的に価値を創出する

読み取ったデータや作成したデータが蓄積することで、そのデータが新たな知識となり、それらが最適化されることでユースケースが深化していきます。生成AIを使えば使うほど、より高難易度なタスク対応や半自動化といった複雑な操作が可能となっていきます。

生成AIを活用できている企業の共通点

顧客起点文化

ほぼすべての会社が、顧客体験はもちろん社内の営業やカスタマーサポートの人たちの作業がどれだけ改善されたのか効果を定量的に計測しています。これは当たり前のようですが、データ利活用に取り組む企業の50%近くは成果を測定していないという調査結果がDX白書2023により示されています。

小規模なチーム

生成AIを導入するにあたって、2~4名のチームで最初は実施することが多いです。「営業支援」で紹介した株式会社エフピコの事例では、若手4名でチームを組成し1か月で開発を終えています。この取り組みにより、会社全体で月700時間以上の削減を果たすができました。

頻繁な実験

ほぼすべての会社が1~3ヵ月で本番稼働に乗り出しています。「コンテンツ審査」で紹介した株式会社FleGrowthでもプロトタイプは3ヵ月で仕上げております。

企業が生成AIを活用するためには

AWSは多様な企業の事例を分析し、企業が生成AIを活用するにはテクノロジー技術の進展よりも

  • 新技術を積極的に採用する文化や人材が備わっている
  • 小規模なチームで頻繁な改善を行うプロセスが整っている

この2つの点が重要であると示しています。

AWSが行う生成AI活用の支援内容

ここでは、生成AIの活用を推進するためのAWSのプログラムやワークショップが紹介されました。

ML Enablement Workshop

こちらは生成 AIを含めたAI/ML 技術を、プロダクトの成長に繋げられるチームを組成するためのワークショップです。特徴は3つあります。

  1. Amazon のプロダクト開発プロセスを実践:Working Backwards, 顧客の最終的な体験から逆算して発案することで顧客に必要とされない機能を作らない。
  2. 組織の壁を越えた連携を実践:プロダクトマネージャー、開発者、データサイエンティストなど異なる職種が連携し1~3カ月で成果を得る計画を立てる。
  3. ワークショップ後の自走を実践:組成したチーム自身による会議体運営をワークショップ内で実践し、自走のイメージを獲得する。

AI/MLのお試しから継続的成長を図ることができるワークショップ内容となっています。

AWSの生成AI活用支援

こちらはAmazon の顧客志向に基づき、お客様が生成AIを活用する際の課題を柔軟かつ徹底的に解決するものです。主な課題と解決方法は以下になります。

①有効なユースケースを特定できない生成AIを活用し効果を出している企業の事例セッションを開催。 事例で活用されたユースケースから、自社の課題に基づき最もインパクトの高いユースケースを選択して実行に繋げていく 「ユースケース創出ワークショップ」を実施。
②実装能力・経験に不安があるユースケースに特化した動かせるデモプログラムを提供。 効果を試せるだけでなく、自社用途に合わせてカスタマイズする方法を学ぶ Prototyping Camp を提供。
③検証中のコストに不安がある3ヵ月以内の本番稼働を条件にAWS のクレジットを提供。

AWSではこれらの他にも、お客様の課題に合わせた様々な支援プログラムを提供しています。
②で紹介した、ユースケースに特化した動かせるデモプログラムについては以下よりオープンソースで公開されており、誰でも試用が可能です。

生成AIのユースケースに特化した動かせるデモプログラム
https://github.com/aws-samples/generative-ai-use-cases-jp

さいごに

生成AIは、どんな人でも手軽に使うことが出来るものです。その特性を生かし、組織変革を起こすことも大いに可能です。今後もまだまだ続くであろう破壊的な技術進化に備え、まずは生成AIを存分に活用していきましょう。

今回の記事では、「100以上の生成AI事例から学ぶビジネス価値生成の方程式」というセッションの内容をレポートしました。実際の活用事例を見ることで、具体的な自社の課題と照らし合わせることが可能となる内容でした。個人的には、生成AIを想像よりも多くの企業がすでに活用していることに驚きましたが、それぞれのユースケースを見ることで検討の道筋がわかり、とても学びになりました。

この記事が皆様の生成AI活用の第一歩につながると嬉しく思います。

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