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セキュリティ担当者が理解しておきたい「ゼロ知識証明」を解説

セキュリティ担当者が理解しておきたい「ゼロ知識証明」を解説

セキュリティ担当者が理解しておきたい「ゼロ知識証明」を解説

セキュリティの重要性が高まる現代において、さまざまな暗号化手法が検討されています。今回は、その中でも情報を漏らさずに検証が可能な技術として注目を集めている「ゼロ知識証明」について、基本概念や最新のトピックまでを詳しく解説します。

ゼロ知識証明とは?

ゼロ知識証明とは?

ゼロ知識証明とは、証明者が自身の持つ情報を相手に一切開示することなく、その情報が確かに正しいことを証明する手法です。具体的には、数学的および暗号学的な技術を用いて、相手に対して「知識を持っている」という事実だけを示すことができます。

具体例で理解するゼロ知識証明

このように聞くと、難しい概念に感じられるかもしれません。具体的なケースを想定した方が、ゼロ知識証明を理解しやすいでしょう。

たとえば、以下のようなやりとりがゼロ知識証明の具体例です。

  • 自分がパスワードを持っていることを、パスワード自体を示さずに伝える
  • 自身がある会社の社長であることを、名刺や社員証などなしで伝える
  • ある著作物の著者者が自分であることを、個人情報を明らかにせず証明する

本当にこのようなことが実現できるのでしょうか。実は、ゼロ知識証明自体は1980年代に学術的な証明がされており、すでに一定確立されている技術といえます。現在では、ブロックチェーン領域を中心に検証が進みつつ、他の領域での活用を目標にした応用的な研究が進んでいるところです。

ゼロ知識証明を利用するメリット

端的に言えば、秘密にしたい情報を他者に明かすことなく、その情報を持っていることを伝えられるという点がゼロ知識証明の利点です。たとえば、自身の住所を知られたくはないけれどもある一定の地域に住んでいることを伝えたい場合や、身分証を明らかにしたくないけれども成人であることを証明したい場合などが考えられます。

このように、プライバシーを確保しつつ、自身の正当性を証明できる点がゼロ知識証明を利用するメリットです。

ゼロ知識証明に関する近年のトピック

ゼロ知識証明に関する近年のトピック

近年、ゼロ知識証に関するさまざまな研究や実証実験が進んでいます。ここでは、そのうちいくつかを取り上げます。

東京大学による実証実験

2022年、東京大学では入学や進学、留学、就職などに関わる手続きの効率化を目指し、学修歴の電子的な証明にゼロ知識証明を活用できないか実証を行いました。

本実証実験では、大学から発行された学修歴を本人が企業に開示し、それを企業が検証するワークフローの実現や、個人が属性情報を開示せずに就職先とのマッチングを行うといった検証を実施しています。

NTTによる研究

NTTでは、ゼロ知識証明の実用化に向けた研究を進めており、最近では、ゼロ知識証明の中でも汎用的に利用できる「リセット可能統計的ゼロ知識アーギュメント」に関する発表を行いました。リセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントは「どのような主張も証明できるゼロ知識証明」であり、実用化されればさまざまなユースケースへの応用が実現します。

企業における活用ケース

企業における活用ケース

ゼロ知識証明は、具体的に企業においてどのような利用方法が可能なのでしょうか。ここではその一例をご紹介します。

ユースケース概要
暗号資産の取引・身元に関する情報を明らかにせず、暗号資産を取引する
プライバシー確保・一定の範囲の年収であることを証明することで、プライバシーを確保しつつローンや保険の与信を行えるようにする
決済への活用・自身の預金残高や取引価格を明らかにせずに、商品の購入を実現する
生成AIへの適用・生成AIの学習データに著作物が含まれていないことを実際のデータを開示せずに証明する
高度な認証の実現・生体認証とゼロ知識証明を組み合わせることで、高度な認証を実現する

プライバシーを確保した認証が実現できたり、生成AIの開発における著作権の問題を繰り返したりと、ゼロ知識証明が実用化されれば、幅広いユースケースでの活用が考えられます。

企業のセキュリティ担当者の方においては、認証方式の変化による社内規程類の見直しが必要となる可能性もあるでしょう。

今後の展望

今後の展望

ゼロ知識証明の実用化はまだ道半ばといえますが、実用化への道は着実に進んでいると考えられます。現時点ではブロックチェーン領域を中心として需要が高まっているゼロ知識証明ですが、今後2~3年程度で実用的なプロダクトが広まっていくとの予測もあることから、汎用的に利用できる手法が確立されれば爆発的に利用が広まっていく可能性もあります。

特に、セキュリティ担当者の方にとっては、従来利用してきた認証方式が大きく変化する可能性もあるため、今後の動向に注目しておくことをおすすめします。

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