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Google Cloud コスト削減を助けるサービスとは?

Google Cloud コスト削減を助けるサービスとは?

皆さんはクラウドサービスを利用するにあたり、できるだけ少ないコスト、最適なコストでの運用を望まれるのではないでしょうか?

本記事には、Google Cloud(GCP)におけるコスト削減の助けになるサービスの仕様や利用方法を記載します。

直接的なコスト削減の方法として、確約利用割引などの割引サービスとSpot VMなどの低料金サービスをご紹介。また、新規事業の立ち上げや学習の際のコスト削減の方法として、無料枠やクレジットについても記載します。

また、それらのサービスを利用する判断材料となる分析の方法についても記載します。

※掲載されている情報は2025年2月時点のものです。

コストを分析する

コストを分析する

コスト削減を検討するにあたり、大きなインパクトのある要素、もしくは同じ傾向のある複数の要素に焦点を当てることで、検討にかかる労力を少なくすることが出来ます。

この章には、人の手によってコストの発生傾向を調べることに優位性のあるCloud Billingコンソール、機械的にコスト削減の可能性を確認できるFinOpsハブ、コスト最適化についてステークホルダーとの画一的な情報共有を助けるLooker Studioを用いる方法について記載します。

Cloud Billingコンソールを確認する

Cloud Billingコンソールのレポート画面では、プロジェクト、サービス、SKU、リージョン、ラベルなどの切り口別にコストを集計できます。

これによって、改善効果の大きいコスト種別を把握したり、想定外のコストの発生を発見できます。

グループ条件で指定できる項目ごとにフィルタリングすることも可能なため、分析対象の絞り込みにも役立ちます。

cloud billingレポート

Google Cloudには、Compute Engineなどのワークロードリソースを管理する最小単位のグループであるプロジェクトや、プロジェクトをまとめる組織という単位があります。

複数のプロジェクトを横断して組織単位でレポートを確認する場合、請求先アカウント閲覧者などの権限を、単一のプロジェクトに限定した確認で構わない場合はプロジェクト閲覧者などの権限を持ったユーザーが操作を行う必要があります。

FinOpsハブを活用する

Cloud Billingコンソールでは、コスト集計の条件を変えることにより、好みの尺度でコスト発生源を把握できますが、FinOpsハブでは、それよりも自動的に改善効果のあるコスト種別を把握できます。

Optimization summaryの項目では、FinOpsハブが推奨するコスト削減案の数や削減見込み額が表示され、Top recommendations(上位の推奨事項)の項目では、並び替え可能なコスト削減案のリストを確認できます。

FinOpsハブ
Google Cloud公式:Google Cloudブログ

FinOpsハブの推奨事項ダッシュボードという画面では、適正スペック、使用されていないリソース、確約利用割引(CUD)によるコスト削減など、コスト最適化のカテゴリー別に提案を確認できます。

FinOpsハブの推奨事項ダッシュボード
Google Cloud公式:Cloud Billingガイド

FinOpsハブを利用するためには、請求先アカウント閲覧者などの権限が必要になり、推奨事項の詳細を確認するためには、各プロジェクトの閲覧者権限が必要になります。

Looker Studioを活用する

Looker Studioとは、Googleが提供するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールです。

Looker Studioを使用したコスト分析は、FinOpsハブよりもFinOpsの考え方に近いと言えます。

Cloud Billingコンソールからも好みの条件に従ったコスト集計が可能ですが、Looker Studioを使用する方法の場合、集計条件や表示デザインを固定できるため、定期的なレポート作成や関係者への報告に向いていると言えます。

Looker Studioを使用すると、以下のようにコストレポートを作成できます。

Looker Studio を使用して費用を可視化する
Google Cloud公式:Cloud Billingガイド

このようなレポートを作成するためには、おおまかに

  1. 課金データのBigQueryへのエクスポートを有効にする
  2. Looker Studioにてダッシュボードを作成する
    Cloud Shellを用いて、Google Cloudが用意しているprofessional-servicesというGitHubリポジトリにあるスクリプトを実行すると、Google Cloudが用意するテンプレートによるダッシュボードの作成やBigQueryとの接続を自動的に行えます。
  3. 数日後に作成したダッシュボードを確認し、コストデータが反映されていることを確認する

という手順を実施します。

Google Cloudが提供するテンプレートのダッシュボードには、サービス単位の集計、プロジェクト単位の集計、Compute EngineのSKU別の集計、ネットワーク、ストレージ、サーバレスサービスにおける集計など、多くのレポートパターンが用意されているため、レポートの項目やデザインの検討にかかる時間の節約が期待できます。また、テンプレートに用意されたコスト集計に関する切り口や評価項目は、分析者にとって参考になるでしょう。

まずは、Google Cloudが用意するテンプレートを利用し、必要に応じてカスタマイズすることで、コストの分析において盲点となっていた要素を知ることと、もともと注目していた要素を確認することの両方を満たすことができると言えます。

割引を受ける

割引を受ける

他のクラウドサービスにも同様の仕組みがありますが、Google Cloudにおいても利用予定量または利用量に応じた割引のサービスが存在します。

利用予定量に応じた割引を受けるには確約利用割引(CUD)を、利用量に応じた割引を受けるには継続利用割引(SUD)を活用できます。

確約利用割引(CUD)を受ける

確約利用割引(Committed Use Discounts)とは、事前に利用料金の支払いを確約する代わりに、通常の利用料よりも安価にサービスを受けられる仕組みです。

確約利用割引には、大きく、費用ベースのコミットメントとリソースベースのコミットメントの2種類の仕組みがあります。

費用ベースのコミットメントとは、1時間あたりの利用量を費用ベースで確約し、その対象期間や利用サービスに応じて割引を受けられるものです。

費用ベースのコミットメントは、さらに2種類に分類でき、Compute Engine、Google Kubernetes Engine、Cloud Runといったコンピューティング系サービスに適用されるコミットメント(コンピューティングフレキシブルコミットメント)と、それ以外のサービス固有のコミットメントがあります。

前者は、確約した費用に対して、サービスの範囲を超えて適用でき、後者はサービス単位でしか適用できません。

費用ベースのコミットメントは、以下のような画面から購入します。

例えば、コンピューティングのフレキシブル確約利用割引を選択し、1年間の期間で1時間あたりのオンデマンド コミットメントを$300と指定して購入すると、28%の割引を受けられ、1年間に渡って1時間あたり$300(ひと月あたり$216,000)分のコンピューティング系サービスの利用権利と$216(ひと月あたり$162,000)の費用を支払い義務が実際の利用量に関係なく発生します。

費用ベースのコミットメントの購入画面

リソースベースのコミットメントとは、Compute EngineのvCPUやメモリ、ローカルSSDディスクなどのリソースの使用を確約するものです。

リソースベースのコミットメントの購入時には、Compute Engineのマシンタイプとメモリなどのリソース量を指定します。購入したコミットメントに該当するマシンタイプのリソースが存在する場合、該当のリソースに対して自動的に割引が適用されます。

リソースベースのコミットメントは、費用ベースのコミットメントに比べて柔軟性が低い分、割引率は高くなっているようです。

確約利用割引の要素をまとめると以下のようになります。

コミットメントの種類特徴
費用ベースのコミットメントコンピューティングフレキシブルコミットメント
  • 1時間あたりの利用量を費用ベースで確約する
  • コンピューティング系サービスに適用される
  • サービスの範囲を超えて適用可能
サービス固有のコミットメント
  • 1時間あたりの利用量を費用ベースで確約する
  • コンピューティング系サービス以外に適用される
  • サービスの範囲を超えた適用はされない
リソースベースのコミットメント
  • vCPUやメモリなどのリソースの利用量を確約する
  • Compute Engineのみのサービス提供
  • 費用ベースのコミットメントより割引率は高い

確約利用割引は、購入分のリソースを使用しなくても費用が発生し、なおかつキャンセルはできないため、購入量は慎重に検討する必要があると考えます。

継続利用割引(SUD)を受ける

継続利用割引(Sustained use discounts)とは、Compute Engineのリソースを継続的に使用した場合に適用される割引です。

割引が適用されるマシンタイプに限りがあり、他の割引が適用されていないリソースであることなどの制約があります。

確約利用割引が結果に関係なく費用と割引が発生するのに対し、継続利用割引は結果に応じて割引額が決まることから、これらには逆の性質があると言えます。

継続利用割引に関しては、コスト削減というよりも、システム運用において発生するコストを試算する際の要素として捉えられることが多いかもしれません。

なお、継続利用割引については、現時点(2025年2月時点)ではCompute Engineにしか対応されていない点には注意が必要です。

一時的なVMを利用する

Compute Engineの利用に限りますが、特定の性質をもったシステムや検証環境においては、一時的なVMの利用はコスト削減の面で有効なアプローチとなり得ます。

以前は、最大の継続稼働時間が24時間に限定されていたプリエンプティブルVMがその特徴を持ったサービスとして存在していましたが、現在は新しい仕組みであるSpot VMというサービスが一時的なVMの主要なサービスとして打ち出されています。

どちらのサービスもSLAがありませんが、その代わりに通常のCompute EngineのVM(仮想マシン)よりも少ない費用で、VMを利用できます。

Spot VMを利用する

Spot VMとは、Google Cloud上のCompute Engineの利用状況に応じて停止される代わりに、割引が適用されるというCompute Engineの利用形態を指します。

通常のVMに比べて、大きく割引が適用されるようですが、Spot VMにはSLAが適用されないため、混雑時はVMを起動できないなどの弊害の発生も考えられます。

以下の図の例では、月額予測が$10.78と表示されていますが、VMプロビジョニングモデルとして標準を選択した場合は、$25.46と表示されていました。

Spot VM

Spot VMを指定したインスタンステンプレートをインスタンスグループに設定することで、VMの停止後に新たなSpot VMを起動させることができます。

フォールトトレラントなワークロードに最適との推奨があるように、検証環境としての利用やSLAのない自動処理用のワークロードとして活用できそうです。

プリエンプティブルVMを利用する

プリエンプティブルVMは、Spot VMの旧世代のサービスであり、Google Cloudのドキュメントでは、プリエンプティブルVMよりもSpot VMを利用することが推奨されています。

Spot VMには、継続起動時間の上限はありませんが、プリエンプティブルVMは起動の24時間後に必ず停止するという仕様があります。

プリエンプティブルVMの利用方法としては、例えばgcloudコマンドを用いる場合、以下のように実行することになるようです。

gcloud compute instances create [VM_NAME] --preemptible

無料枠やクレジットを利用する

無料枠やクレジットを利用する

無料枠やクレジットは、主にトライアルの目的で提供されるサービスであるため、既に運用しているシステムにかかるコストを削減することにはつながりませんが、新規事業の立ち上げや、学習の際に少ないコストでサービスを利用できます。

無料枠やクレジットについては、Google Cloudの利用期間に関係なく適用される無料枠と、新規利用者や学習者向けに提供される無料クレジットのサービスがあります。

無料枠を利用する

他のクラウドサービスと同様に、Google Cloudにもサービス利用における無料枠が存在します。

無料枠はCompute EngineやCloud Runなどのサービスごとに、無料枠の上限が定められています。

また、無料枠が適用されるリージョンや、Compute Engineの場合、適用されるマシンタイプに制約があり、該当しないリージョンなどを使用すると無料枠は適用されません。

無料枠プロダクト

システム構成を無料枠の範囲に収めようとするのは無理が発生しますが、利用経験の少ないGoogle Cloudサービスの利用を検討する際に、料金発生を気にせず検証を開始できることは、コスト削減であると言えなくもありません。

無料クレジットを利用する

Google Cloudのアカウント作成時に、$300のクレジットが付与されます。

このクレジットは、Google Cloudの各サービスの無料枠の利用時には消費されません。

クレジットが付与されてから90日経過すると、使用できなくなります。以前は、無料クレジットの有効期間は1年だったようです。

このクレジットはトライアルの目的で付与されるものであるため、複数アカウントを作成してクレジットを多く受け取ることはできません。

アカウント作成時の無料クレジット以外にも、サービスの利用拡大を目的として、特定のサービスにのみ使用できるクレジットも存在するようです。

無料クレジット

教育用クレジットを利用する

教育用クレジットとは、教育の目的でGoogle Cloudを使用する際に申請できるクレジットです。

日本の場合、大学や大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校で教育を行う場合がサービスの対象とされています。

申請時に指定した学生にメールが送られ、リンクを開くとクレジットが学生のアカウントに付与されるようになっています。

教育用クレジットも無料クレジットと同様に、Google Cloudの各サービスの無料枠の利用時には、クレジットは消費されません。

まとめ

本記事には、Google Cloudにおけるコスト削減の助けになるサービスとして、分析、計画、選択、活用の観点にまとめて、それらの仕様や利用方法を記載しました。

Google Cloudにおける、コスト削減や最適化に関する検討の助けとなれば幸いです。

エンジニアとしてインフラの運用保守やアプリ開発を行っている。趣味は自転車とサウナ。

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