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【Azureコスト完全解説】効果的なコスト削減方法と最適化のコツ

【Azureコスト完全解説】効果的なコスト削減方法と最適化のコツ

Azureは企業の成長を支えるクラウド基盤ですが、価格改定による値上げなどもあり、適切なコスト管理による最適化が欠かせません。リソースの無駄な利用や最適化不足が発生すると、予期せぬ高額な請求につながる可能性もあるため、効果的なコスト削減方法を知ることが大切です。

本記事では、Azureの料金体系やリソースごとのコスト計算の考え方、予約インスタンスの活用など、具体的なコスト削減のテクニックを詳しく解説します。

Azureコストの最適化に取り組みたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。

Azureの価格改定に伴うコスト削減の重要性

Azureの価格改定に伴うコスト削減の重要性

日本国内でもクラウド志向のビジネス形態が一般的になりつつあり、クラウドの利用拡大に伴って、リソースの使用量やスケールが増加しやすい状況にあります。クラウド運用が拡大すればするほど、課金されるサービスは多岐にわたるため、予想外のコストが発生しやすくなります。

Azureは、多機能で柔軟性が高いというメリットを持つ一方で、適切なコスト管理を行わなければ、不要な支出が増えるリスクがあります。効率的なコスト管理を行うことで、予算内でクラウドの効果を最大化し、長期的な運用の安定を確保することが可能です。

加えて、Azureは2024年4月1日から、価格改定によって約20%の値上げを実施しました。そのため、企業におけるクラウドコストの増加がIT予算に与える影響は大きく、コスト削減がますます重要な課題のひとつとなっています。

Azureの料金体系とコストの仕組み

Azureにおける料金体系は、従量課金制と予約インスタンスの主に2種類を採用しています。ここでは、2種類の料金体系とコストの仕組みを詳しく解説します。

従量課金制とは

クラウドサービスにおける従量課金制は、利用したリソースに応じて料金が発生する仕組みを差します。Azureでは、計算処理、ストレージ、ネットワークなどの使用量に基づいて課金され、使用量が多ければ多いほどコストが増加します。

従量課金制のメリットとして、初期投資が不要で、企業は必要なリソースを必要なだけ利用できる点が挙げられます。

一方で、リソースの使用状況を適切に管理しなければ、思わぬコストが発生する可能性があります。効率的な運用には、使用状況の監視や適切なスケーリング、不要なリソースの停止などが不可欠です。

予約インスタンスとは

予約インスタンスは、特定の期間にわたって事前に仮想マシンの利用を約束することで、従量課金制よりも安価にリソースを利用できる仕組みです。

Azureでは、1年または3年単位で予約インスタンスを利用できますが、3年の方が割引率は高くなります。

長期間にわたる安定した運用を予定している企業にとって、予約インスタンスの利用は大きなコスト削減効果が期待できます。

ただし、必要なリソース量の見積もりを誤ると無駄なコストが発生するリスクがあるため、事前に入念な試算を行い、計画的に導入する必要があります。

サービス別:Azureの料金設定

サービス別:Azureの料金設定

Azureにはさまざまなサービスが用意されており、サービスタイプによって料金設定は異なります。ここでは、VM、ストレージ、ネットワークの3つのサービスについて、基本的な料金設定の考え方を紹介します。

VM

Azureの仮想マシン(VM)の料金設定は、選択したインスタンスタイプや使用する時間に応じて変動します。

VMのコストは、主にCPU、メモリ、ストレージの容量、リージョンによって決まります。オンデマンド料金では、使用した時間の分だけ課金されるため、予期せぬ使用時間の増加によるコスト増加に注意が必要です。

前述のように、長期的な運用が見込まれる場合は予約インスタンスを利用すると、割引を適用できるため、コストを抑えられます。

選択するインスタンスのサイズやスケーリングの方法次第でコストが大きく変わるため、自社の要件を明確にして、最適な構成を選択することが大切です。

ストレージ

Azureのストレージ料金は、使用するストレージ容量、冗長性のレベル、アクセス頻度によって異なります。一般的に、データの保存量に基づいて料金が発生しますが、使用するストレージのタイプによってもコストが変わります。

例えば、頻繁にアクセスされるデータには「Premiumストレージ」が向いていますが、Azureが用意しているストレージプランの中ではコストが高めです。

一方、頻繁に使用しないデータに対しては、コストを抑えるために「コールド」や「アーカイブ」ストレージを選択すると、コスト効率が高まります。

データの取り出しや転送には別途料金が発生することもあるため、さまざまな要素を考慮して、トータルコストの見積もりを算出する必要があります。

ネットワーク

Azureのネットワーク料金は、データ転送量やネットワークの構成によって課金されます。Azure内の同一リージョン内でのデータ転送は無料ですが、異なるリージョン間やAzure外への転送にはコストが発生します。

データ転送の料金は、転送されるデータの量と転送の方向(インバウンドかアウトバウンドか)に依存します。

また、仮想ネットワークやVPNゲートウェイの使用にも追加料金がかかることがあります。ネットワークコストを抑えるためには、データ転送を最適化したり、無駄な転送を減らしたりする工夫が重要です。

Azureでコストが膨らむ原因とは?

Azureでコストが膨らむ原因として、リソースの過剰利用や未使用リソースの放置、インスタンスの選択ミス、サービスごとの料金構成に関する知識不足などが挙げられます。ここでは、Azureでコストが膨らむ3つの原因について解説します。

リソースの過剰利用と未使用リソースの放置

必要以上にリソースを使用したり、未使用のリソースを放置したりすると、コスト増加の原因になります。

仮想マシンやストレージを確保したものの、実際には利用していない場合でも、リソースは確保した分に対して課金され続けます。特に、テスト環境や開発環境で作成したリソースが放置されていると、無駄なコストが膨らみやすくなります。

また、稼働時間を効率的に管理せずにリソースを常時オンにしていると、稼働していない時間帯にも料金が発生します。定期的なリソースの確認と整理、オートスケーリングやスケジュール機能の活用が、コスト最適化のポイントです。

インスタンスの選択ミス

インスタンスの選択ミスも、Azureにおけるコスト増加の大きな要因です。

仮想マシンを利用する際に、必要以上に高性能なインスタンスを選択してしまうと、過剰なリソースが無駄に使われることになります。処理能力やメモリが少なくても十分な作業に対して高性能なVMを選んでしまうと、差分のコストが不必要にかかります。

一方で、必要なスペックに対して性能が低すぎるインスタンスを選んでしまうと、業務効率が悪化して処理の完了に時間がかかり、かえってコストが増加するおそれがあります。

コスト最適化においては、使用する目的に合わせた適切なインスタンスの選定が重要です。

サービスごとの料金構成に関する知識不足

Azureのコストが膨らむもうひとつの要因として、各サービスの料金構成に対する知識不足が挙げられます。

Azureのサービスは多岐にわたり、各サービスごとに異なる料金体系が存在します。例えば、前述のストレージサービスでは、保存するデータ量だけでなく、データへのアクセス頻度やデータ転送量にも料金が発生します。

ネットワークにおいては、データ転送の方向やリージョン間の転送がコストを左右します。このような料金構成を十分に理解せずにサービスを利用すると、想定していなかったコストが発生し、トータルコストが膨れ上がる原因になります。

各サービスの料金モデルを熟知し、最適な利用方法を見極めることが、正しくコストを算出するためのポイントです。

コスト削減に向けたAzureリソース最適化のポイント

コスト削減に向けたAzureリソース最適化のポイント

コスト削減を達成するためのAzureリソース最適化のポイントとして、リソースの適切なスケーリングや自動化の活用、適切な割引プランの活用などが挙げられます。また、Azureハイブリッド特典の活用によるライセンスコストの削減も、有効に働く場合があります。

ここでは、3つの観点からAzureリソース最適化のポイントを解説します。

リソースの適切なスケーリングと自動化の活用

Azureリソースの適切なスケーリングと自動化は、無駄なコストを削減する手段として有効です。リソースの利用量に応じて、必要な分だけリソースを増減させることで、ピーク時に十分な性能を確保しつつ、利用が少ない時にはコストを抑えられます。

Azureの自動スケーリング機能を利用すれば、トラフィックや負荷の増減に応じて仮想マシンやリソースを自動で調整できるため、管理に要する人的コストも削減できます。

また、定期的にリソースの使用状況を監視し、過剰に使用されているリソースや不要なリソースを停止または削減することで、無駄な課金を避けられます。

適切な割引プランの利用

Azureのコスト削減には、適切な割引プランを活用することも重要です。前述の予約インスタンスを選択すると、オンデマンド料金と比較して最大72%の割引が適用されます。

長期利用が前提となるため、短期間のプロジェクトや試験的な利用には不向きですが、安定した運用が見込まれる場合は、計画的に利用することで大幅なコスト削減が期待できます。

また、企業全体でAzureを広く利用している場合は、エンタープライズ契約を通じて追加の割引を受けられる可能性があります。

Azureハイブリッド特典の活用によるライセンスコストの削減

Azureハイブリッド特典を活用することで、ライセンスコストの削減が可能です。

Azureハイブリッド特典は、既に保有しているオンプレミスのWindows ServerやSQL ServerのライセンスをAzureに持ち込むことで、クラウド上の仮想マシンのライセンス費用を削減できる仕組みです。

オンプレミスで購入済みのライセンスを有効活用できるため、追加でAzureのライセンスを購入する必要がなくなり、最大で85%のコスト削減が期待できます。

Azureハイブリッド特典を受けるためには、ソフトウェアアシュアランス契約またはサブスクリプションライセンス契約が必要ですが、クラウド移行において大きなコストメリットを享受できます。

Azureコスト削減に役立つツール

Azureのコスト削減に役立つツールとして、Azure Cost ManagementやAzure料金計算ツール、Azure Advisorなどがあります。ここでは、Azureに標準搭載されている3つのツールを紹介します。

Azure Cost Managementの活用方法

Azure Cost Managementは、Azure上でのリソース利用状況を可視化し、コストを管理・最適化するためのツールです。Azure上での支出を追跡し、予算設定やアラート機能を活用することで、予算超過を未然に防止できます。

リソースの使用パターンを分析して、無駄な支出がどこに発生しているかを確認できるだけでなく、コストの内訳をサービスごとやリソースごとに細かく表示できるため、特定の部門やプロジェクトごとのコストを把握可能です。

さらに、コスト削減に関するアドバイスを受けられる機能もあるため、コスト最適化を効率的に進められるのもメリットです。

Azure料金計算ツールの使い方

Azure料金計算ツールは、Azureを導入した場合のコストを事前にシミュレーションできるツールです。利用予定のリソースやサービスを選択し、VMのインスタンスやリージョン、使用量などの条件に応じて、詳細な料金を確認できます。

Azure料金計算ツールを使えば、インスタンスサイズやストレージ容量、ネットワーク帯域などの各項目の設定に基づいて、正確な見積もりを作成することが可能です。

プロジェクトの計画段階で、運用時に発生するコストを具体的に予測し、事前にコスト管理の対策を立てられます。また、複数のシナリオを比較して最もコスト効率の良い構成を見つけられるため、無駄のないリソース配置が可能になります。

Azure Advisorを用いたリソース最適化

Azure Advisorは、リソース最適化のための推奨事項を通知するツールであり、コスト削減、セキュリティ強化、パフォーマンス向上に役立つ情報を提供してくれます。

例えば、未使用の仮想マシンやスケーリングの不適切なリソースに対して、具体的な削減や調整のアドバイスを受けられます。

また、リソースの冗長性を低減し、より効率的な構成を実現するためのアイディアを得られるため、コスト効率を高められます。Azure Advisorを定期的に確認し、提供される推奨事項を実行することで、コストを最小限に抑えながらリソースのパフォーマンスを最大化できます。

Azureコスト見直しにおける重要な4つのポイント

Azureコスト見直しにおける重要な4つのポイント

Azureのコスト見直しにあたって需要なポイントとして、次の4点が挙げられます。

  • コストの予測と正確なリソース利用計画
  • サービスの利用頻度に基づいたこまめなプラン変更
  • 隠れたコスト要因の分析と予防策の徹底
  • コストアラートを設定し、予算を超えないよう管理

上記のポイントについて、それぞれ解説します。

コストの予測と正確なリソース利用計画

Azureのコスト最適化には、事前の予測とリソース利用計画が不可欠です。プロジェクトの進行に合わせて、どのリソースがどれだけ必要になるかを正確に見積もることで、予想外のコスト増加を防止できます。

まずは、前述のAzure料金計算ツールを使って、使用する仮想マシン、ストレージ、ネットワークのコストをシミュレーションし、適切なリソースの割り当てを行うことが大切です。

さらに、長期的な利用を見込んでいる場合は、予約インスタンスなどの割引プランも忘れずに活用し、計画に沿った効率的なリソース管理を実現しましょう。事前のコスト計画がしっかりしていれば、運用開始後のコスト管理もスムーズに進められます。

サービスの利用頻度に基づいたこまめなプラン変更

Azureのコストを見直す際には、サービスの利用頻度に応じてプランをこまめに変更することが重要です。

例えば、仮想マシンやストレージの使用頻度が低下している場合、予約インスタンスで運用し続けると、無駄なコストがかかる可能性があります。利用状況を定期的に見直し、使用頻度に応じた最適なプランに切り替えるのが効果的です。

使用頻度が低いデータには低コストなストレージを、頻繁にアクセスされるデータには高速なストレージを利用することで、必要な性能を保ちながらコスト削減を実現できます。このように、柔軟にプランを見直すことで、コスト管理を最適化できます。

隠れたコスト要因の分析と予防策の徹底

Azureで発生する隠れたコスト要因の特定は、コスト削減を達成する上で重要です。例えば、データ転送やバックアップの設定によって発生するコストや、無駄なリソースの起動時間などは、知らず知らずのうちにコストを増やす要因になります。

日常的に意識しにくい「隠れコスト」を正確に分析するためには、Azure Cost Managementなどのツールを使い、詳細なコスト内訳を確認する習慣を身につけましょう。

細かい部分まで徹底した管理を行うことで、無駄な出費を抑え、最適な運用を維持しやすくなります。

コストアラートを設定し、予算を超えないよう管理

Azureのコスト管理を徹底するためには、コストアラートの設定が効果的です。事前に予算を設定し、使用状況に応じて自動的にアラートが通知されるように準備しておくことで、予想外のコスト増加に迅速に対応できます。

例えば、予算の80%に達した時点でアラートを受け取るように設定しておくと、予算を超過する前に追加の対策を講じる余裕が生まれます。

前述のAzure Cost Managementにはアラート設定機能が備わっており、リアルタイムでコストのモニタリングが可能です。予算を慎重に管理しながら運用を行うことで、無駄なコストを発生させずに効率的なリソース利用が可能になります。

まとめ

Azureのコスト最適化には、定期的な見直しと戦略的なリソース管理が欠かせません。正確なトータルコストの予測とリソースの利用計画を立て、不要なリソースの削除や適切なプランへの変更を行いながら、効率的な運用を行える体制を整えることが大切です。

Azure Cost Managementなどの管理ツールを利用し、事前にコストアラートを設定することで、予算を超えないようにリアルタイムでコストを管理できます。本記事で紹介したさまざまな対策を通じて、Azureのコストを抑え、効果的なクラウド運用を実現しましょう。

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