AWSコストエクスプローラーの活用術:高度な分析とレポート作成
AWSのコスト最適化は、クラウド利用における重要な課題の一つです。膨大なAWSリソースの利用状況を把握し、不要なコストを削減するためには、高度な分析ツールが不可欠です。AWS Cost Explorerは、そんな課題解決を強力にサポートする、直感的で強力な分析ツールです。
本記事では、Cost Explorerを活用し、より詳細なコスト分析とレポート作成を行うための実践的な手法をご紹介します。AWSの運用担当者やコスト管理者の方必見です。
AWS Cost Explorer とは
AWS Cost Explorerは、AWSで利用しているサービスのコストと使用量を可視化し、分析するためのツールです。これにより、どこにお金がかかっているのかを詳細に把握し、コスト削減に繋げることができます。
Cost Explorerは、過去のデータの分析や将来のコストの予測を行うためのダッシュボードを提供しており、企業のAWS運用担当者やコスト管理者にとって、日々の運用に欠かせない存在となっています。
AWS Cost Explorerの利用料金
AWS Cost Explorerの利用料金は、基本的には無料でご利用いただけます。グラフによるコストと使用量の表示やユーザーインターフェースを使った分析は、追加料金なしで利用可能です。
API呼び出し、または詳細なレコードを生成する際には利用料金が発生します。
- Cost ExplorerのAPIを呼び出す際に、リクエスト1回につき0.01ドル
- 詳細な使用状況のレコードを1ヶ月間に1000個生成するごとに、0.01ドル
AWS Cost Explorerとコストと使用状況レポートの違い
AWS Cost Explorerとコストと使用状況レポート(Cost and Usage Report(以下CUR))は、どちらもAWSのコスト管理ツールですが、その目的と機能にはいくつか違いがあります。
AWS Cost Explorerは、簡単にアクセスでき、ダッシュボード上でリアルタイムにAWSの使用状況を可視化可能なツールです。主に短期的な使用量とコストの傾向分析や、特定の期間やサービスにフォーカスしたコストの内訳を確認する際に使用されます。また、Cost Explorerは予測機能を持ち、将来のコストを予測することも可能です。
一方、CURは、より詳細で包括的な機能を提供します。CURは、S3バケットに保存され、月次や日次のレベルでのコストデータをCSV形式で取得できるため、より深いデータ分析やカスタムレポートの作成に適しています。CURは特に大規模な企業や、詳細なコスト管理が必要な組織に適しており、Cost Explorerに比べてより高度なカスタマイズが可能です。
AWS Cost Explorerでできること
ここからは、AWS Cost Explorerを使ってできることを具体例も交えながら詳しく解説します。
現状のコストと使用状況の可視化
AWS Cost Explorerの基本機能は、AWSリソースの現状のコストと使用状況を視覚的にわかりやすく可視化することです。
- サービスごとの利用料の内訳
- アカウントごとの利用料の内訳
- リージョンごとの利用料の内訳
- 特定のリソースやタグに基づいたコスト内訳
などを確認できます。
これにより、どのサービスやリソースが最もコストをかけているのかを容易に把握でき、無駄な支出やリソースの非効率な利用をすぐに特定できます。
フィルターを用いたコスト分析
AWS Cost Explorerのフィルター機能を利用することで、より詳細でターゲットを絞ったコスト分析が可能です。フィルターを用いることで、特定のサービス、アカウント、リージョン、タグなどに基づいてデータを絞り込むことができ、関心のある部分のみを効率的に分析できます。
たとえば、複数のAWSアカウントを管理している企業では、フィルターを活用して特定のアカウントに関連するコストだけを抽出し、アカウント単位でのコスト最適化を進めることが可能です。
また、特定のプロジェクトやビジネスユニットごとのコストを管理したい場合は、タグ付けされたリソースに基づいてコストを分析することで、どのプロジェクトがどのくらいのリソースを消費しているかを正確に把握できます。
コスト予測
AWS Cost Explorerには、過去のデータに基づいたコスト予測機能が搭載されています。この機能を使うことで、今後の数ヶ月間の予想コストを確認し、リソース使用量の増減に応じて予算計画を立てることができます。Cost Explorerは、機械学習アルゴリズムを利用して、過去の使用状況をもとに将来のコストを予測します。
これにより、季節的なリソース需要の変動や、特定のキャンペーンやプロジェクトに伴うリソース増加を事前に見積もることが可能です。また、急激なリソース利用増加や新規プロジェクトの立ち上げが計画されている場合、その影響を事前に把握し、予算の過不足を未然に防ぐためのアクションを取ることができます。
カスタムレポートの作成
Cost Explorerでは、企業独自のニーズに合わせたカスタムレポートを作成することも可能です。カスタムレポートでは、特定のフィルターや表示項目を設定し、必要なデータを強調して表示できます。
レポートは自動的に定期的な更新が可能で、日次や月次で更新されるため、最新のコストデータを基にした運用の最適化が容易です。
異常なコストの検知
AWS Cost Explorerは、通常の使用パターンから逸脱したコストを検知する機能も提供しています。異常なコストが発生した場合、アラートを設定しておくことで、早期に問題を発見し対応することが可能です。
たとえば、突然の使用量の増加や予想外の高コストが発生した場合、Cost Explorerはその異常を強調して表示し、適切なアクションを促します。この異常検知機能は、セキュリティ侵害によるリソースの不正利用や、設定ミスによる意図しないリソースのスケールアップなど、運用リスクを最小限に抑えるためにも重要です。
Cost Explorerを活用するメリット
運用担当者がCost Explorerを適切に活用することで、コスト削減やリソース最適化、将来のコスト予測と計画、異常検知の精度向上など、多くのメリットを享受できます。ここでは、具体的なメリットを詳しく解説します。
AWSのコスト削減ができる
AWS Cost Explorerのメリット1つ目は、コスト削減できるリソースを見つけ、それに基づいて適切なアクションを取ることができる点です。Cost Explorerでは、リソースの使用状況をサービス別やアカウント別に詳細に分析でき、リソースが過剰にプロビジョニングされている部分や不要なリソースを明確に特定することが可能です。
たとえば、オンデマンドインスタンスを大量に使用している場合、Cost Explorerを通じてリザーブドインスタンスやSavings Plansを利用することによる潜在的なコスト削減額を推定することができます。また、低稼働のリソースや未使用のリソースを特定し、これらを停止・削除することで、無駄な支出を減らせます。
コスト計画がたてられる
Cost Explorerには、コストを予測する機能が備わっています。この機能を活用することで、AWS運用におけるコスト計画を立てることが容易になります。運用担当者は、Cost Explorerが提供する過去の使用状況とコストトレンドを参照し、今後数ヶ月間の予算を適切に策定できます。
例えば、年末や特定のプロジェクト開始時など、リソースの需要が増加する時期を事前に見越して、コストの急増に備えた予算配分を行うことが可能です。また、企業全体のITコスト計画を立てる際には、Cost Explorerのコスト予測機能を使用して、長期的な支出傾向を把握し、予算超過のリスクを減らすことができます。
さらに、Cost Explorerは、リザーブドインスタンスやSavings Plansの導入効果をシミュレーションし、今後のコスト削減額を推定することができるため、最適なリソース契約のタイミングや規模を計画する際の指標としても非常に有用です。
AWSリソースの最適化が図れる
AWS Cost Explorerのメリット3つ目は、AWSリソースの最適化が可能になることです。リソースの使用量とコストを細かく分析することで、どのリソースが最適に稼働しているか、逆に非効率なリソースがどこにあるかを特定できます。
特に、EC2インスタンスやRDSインスタンスの最適化において、Cost Explorerを用いて稼働状況をチェックし、適切なサイズやタイプに変更することで、パフォーマンスを維持しつつコスト削減が可能です。
たとえば、CPU使用率やメモリ使用率が低いインスタンスがあれば、それをスケールダウンするか、より安価なインスタンスタイプに変更することを検討できます。また、Cost Explorerを活用してAWSリソースの使用パターンを把握し、スポットインスタンスやオートスケーリングを活用する機会を見つけることもできます。
AWS Cost Explorerの使用方法
AWS Cost Explorerは、AWSリソースのコスト管理を効率化し、リソースの使用状況を可視化するための強力なツールです。これにより、AWSの運用担当者はリアルタイムでコストデータを分析し、最適化の機会を発見することができます。以下は、AWS Cost Explorerを使用するための基本的な手順です。
AWS Cost Explorer の権限設定を行う
AWS Cost Explorerを使用するには、適切なIAMの権限が必要です。まず、Cost Explorerを使用するユーザーに対して、適切な権限を付与しましょう。
AWSの各リソースにタグ付け
AWS Cost Explorerの効果的な使用には、リソースに適切なタグを付けることが重要です。AWSではリソースに対して任意のタグを付与できます。これによりコストの詳細な追跡が可能になります。
たとえば、プロジェクトや部門、使用目的ごとにタグを付けることで、Cost Explorer上でタグに基づいたコスト分析ができ、どのプロジェクトがどれだけのコストを消費しているかを明確に把握できます。タグは、リソースの最適化や無駄削減のために不可欠です。
AWSコスト配分タグについては、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
AWS Cost Explorer を開始する
AWS Cost Explorerを開始するには、まずAWS Management Consoleにログインし、Billing Dashboardの「Cost Explorer」を選択します。初回使用時にはCost Explorerの設定が必要ですが、数クリックで完了します。
その後、Cost Explorerのダッシュボードでコストデータが表示され、フィルタリングやカスタムレポートの作成が可能になります。また、グラフやレポートを用いて過去のコストトレンドを確認し、今後の予算策定やコスト最適化のためのデータを取得することができます。
AWS Cost Explorerを使用する際の注意点
AWS Cost Explorerは、AWSのコスト管理において非常に有用なツールですが、利用に際していくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、Cost Explorerを効果的に活用し、運用上の問題や期待外れの結果を避けることができます。
時間単位でデータを取得する場合はオプション料金が発生
Cost Explorerで基本的な月単位や日単位のデータは無料で利用できますが、より詳細な時間単位のデータを取得する場合、追加のオプション料金が発生する場合があります。
特に、突発的なコストの急増やリソース利用の異常を時間単位で精密に追跡したい場合、これを利用することで問題の特定が可能です。しかし、頻繁に詳細なデータを取得すると予期せぬ追加費用が発生する可能性があるため、事前に費用を確認し、必要に応じて利用頻度を調整することが推奨されます。
詳細なデータ取得には時間がかかる
AWS Cost Explorerのデータ更新はリアルタイムではありません。特に当月のデータは約24時間後に表示されます。
また、月の初めに発生したデータの反映には数日かかることもあります。大規模なAWS環境で詳細なレポートを必要とする場合、このタイムラグにより迅速な意思決定が難しくなることがあるため、余裕をもってデータ収集を行う必要があります。
複雑なレポートは作成しにくい
Cost Explorerは基本的なコストレポートやフィルタリング機能を提供しています。より複雑なカスタムレポートの作成には制限があります。
特に、複数の条件を組み合わせた高度なレポートを生成する場合や、データを複雑な形式でエクスポートして他のBIツールとの連携には限界があります。
コスト予測は必ずしも正確ではない
AWS Cost Explorerは、過去の使用状況に基づいてコスト予測機能を提供していますが、その予測が常に正確であるとは限りません。
特に、急激な使用量の変動や予期しない新規プロジェクト、キャンペーンなどが発生した場合、予測は大幅にずれる可能性があります。また、機械学習モデルに依存しているため、短期間の使用量の変動や季節性を正確に捉えきれないこともあります。
そのため、予算を立てる際にはCost Explorerの予測に完全に依存せず、過去のトレンドと運用上の変化を考慮に入れた予備的な計画も併用することが重要です。
まとめ
AWS Cost Explorerは、AWS利用コストを可視化し、詳細な分析を行うための強力なツールです。
本記事では、Cost Explorerの機能を最大限に活用し、コスト削減に繋がるレポート作成方法や、高度な分析手法について解説しました。Cost Explorerを日常業務に導入することで、より効率的なコスト管理が可能になります。
ぜひ、本記事を参考に、貴社のAWS環境の最適化を進めてください。