AWSコスト配分タグ入門!部門別、プロジェクト別のコストを可視化しよう
AWSのコスト管理、悩んでいませんか?部門やプロジェクトごとに細かくコストを把握したいけど、膨大なリソースの中から必要な情報だけを抽出するのは大変です。そんな時に役立つのがコスト配分タグです。
この記事では、コスト配分タグを効果的に活用し、部門別・プロジェクト別のコストを可視化する方法を解説します。
コスト配分タグとは
AWSのコスト配分タグは、リソースごとに発生したコストを分類・整理するためのタグです。これを使うことで、どのプロジェクト、チーム、あるいはサービスがどれだけのコストを消費しているかを詳細に把握できます。
複数のプロジェクトや部署がAWSを利用している企業では、コスト配分タグを活用することで、正確な課金情報を基に予算の最適化や運用の改善を図ることが可能です。
コスト配分タグの料金
タグ付け機能を拡張したものであるため、AWSのコスト配分タグ自体には追加の料金は発生しません。
タグが設定されていないリソースに対しては、過去のコスト配分情報を取得することができないため、リソースの生成時から一貫してタグ付けを行うことが推奨されています。
実際の運用面では、タグ付けができていないリソースがあり、正しいコスト分析ができなかったというケースも多いです。コスト配分タグは、無料で利用できるため、忘れず活用していきましょう。
コスト配分タグの種類
コスト配分タグには大きく分けて2つの種類があります。1つは「AWS生成のタグ」、もう1つは「ユーザー定義タグ」です。それぞれのタグの違いを解説します。
AWS生成のタグ
AWSが自動的に作成するシステムタグが「AWS生成のタグ」です。これらのタグは、例えばリソースがどのアカウントによって作成されたかや、特定のサービスに関するメタデータを含むもので、ユーザーが手動で定義する必要はありません。
AWS生成のタグは、AWSマネジメントコンソールでのフィルタリングやコスト分析をサポートするもので、設定が不要でありながらも重要な情報を提供してくれます。自動で設定されるため、リソースが多くても一貫したデータ管理が可能です。
ユーザー定義タグ
一方で、ユーザー自身が自由に定義できるのが「ユーザー定義タグ」です。このタグは、各企業やチームのニーズに合わせて作成され、より詳細なコスト分析を実現します。
たとえば、プロジェクトごとにコストを分類したい場合は「Project」タグを、特定の部門に属するリソースを識別したい場合は「Department」タグを設定します。
ユーザー定義タグは最大50個まで各リソースに付与することができるため、柔軟な管理が可能です。
AWSコスト配分タグを利用するメリット
AWSコスト配分タグは、クラウド環境でのリソース管理を効率化し、コストの透明性を高める強力なツールです。以下では、AWSコスト配分タグを利用する具体的なメリットを、AWSの運用時の実例を交えて説明します。
コストの可視化が可能
AWSコスト配分タグを使う最大のメリットは、コストの可視化が可能になる点です。クラウド環境では、さまざまなプロジェクトやチームが多くのリソースを利用します。そのため、どのリソースがどの程度のコストを発生させているのかを把握するのは容易ではありません。
しかし、リソースにタグを付けておけば、チームやプロジェクト単位でコストを追跡でき、全体像を把握しやすくなります。
複数のプロジェクトが同時に進行しており、各プロジェクトがEC2インスタンスやS3ストレージなどを大量に利用しているケースがあるとします。コスト配分タグを「Project-A」「Project-B」と設定することで、プロジェクトごとのコストを簡単に可視化し、特定のプロジェクトが予算を超過しそうな場合、早期に対応することが可能です。
リソースごとのコスト分析が可能
AWSコスト配分タグを利用することで、リソースごとにコストを細分化して分析することができます。これにより、どのリソースが高額なコストを生み出しているか、あるいはどのリソースが非効率的に使われているかを明確に把握できます。分析結果に基づいて、不必要なリソースの削減や運用の最適化を行うことが可能です。
具体例として、特定のプロジェクトで利用されているリソースのコストを精査する際、「Department」「Production」などのタグを活用します。タグを活用することで、開発環境に使用されていたEC2インスタンスの一部が過剰にリソースを消費していたことなどがわかり、インスタンスのサイズを最適化してコストを削減する対応がとれます。
請求書管理の簡素化が可能
AWSを利用している企業では、毎月多くのリソースが利用され、それに伴う請求書も複雑化します。コスト配分タグを活用すれば、請求書を簡単に整理し、プロジェクトや部門ごとに明細を分けることができ、請求管理のプロセスを大幅に簡素化可能です。
具体的には、コスト配分タグを使用して「HR」「IT」「Marketing」などのタグをリソースに付与し、部門ごとにコストを区別して追跡します。これにより、経理チームは請求書を自動的に部門別に振り分けることができ、手動での調整や確認作業を大幅に減らせます。
リソース利用の最適化が可能
コスト配分タグを使用することで、リソースの利用状況を綿密に監視し、最適化が容易になります。また、タグを活用して特定のリソースの使用状況を詳細に追跡することで、利用状況に応じたスケーリングや運用の最適化を実施できます。
ある企業では、特定の時間帯に大量のリソースが消費されることが分かっていましたが、どのリソースが無駄に消費されているのかは明確ではありませんでした。そこで、リソースに「UsageTime」と「AutoScalingPolicy」タグを設定し、利用パターンを詳細に分析した結果、特定のリソースの自動スケーリング設定が最適化されていないことが判明しました。この問題を修正することで、夜間のリソース使用量が大幅に削減され、コストの最適化が実現しました。
コスト配分タグの有効化・削除方法
ここでは、コスト配分タグの有効化、削除方法を解説します。
タグの作成
EC2やVPCなどの各種リソースを作成する際は、上記画像のように「タグ」の項目が用意されています。
キーと値には任意の文字を入力し、リソースの作成ボタンを押すとタグ付けが完了します。
すでに作成済みリソースへのタグ付け
すでに作成しているリソースについては、「アクション」→「タグを管理」と選択することで同様にタグ付けが可能です。
コスト配分タグの有効化
マネージメントコンソールにある請求とコスト管理のページから「コスト配分タグ」を選択すると、これまで作成したタグの一覧が表示されます。
ステータスが非アクティブとなっている場合は、有効化したいタグを選択後、画像内の「有効化」を押すことで、Cost Explorer上でタグごとにフィルターをかけることが可能となります。
コストレポートの生成
タグ付けが完了したら、AWS Cost Explorerを使用してコストレポートを生成します。コストレポートでは、タグに基づいてコストを分析することができます。例えば、「プロジェクトA」の費用はいくらだったか、といったように、特定のタグで絞り込んでコストを分析することができます。
コスト配分タグの削除方法
不要になったタグは、削除することができます。タグを削除しても、過去のデータは残ります。
AWSマネジメントコンソール
各リソースの「タグ」タブから、削除したいタグを選択して削除します。
AWS CLI
aws ec2 delete-tags などのコマンドを使用して、プログラムからタグを削除することができます。
AWS SDK
各プログラミング言語用のSDKを使用して、プログラムからタグを削除することができます。
タグを削除する際は、誤って重要なタグを削除しないように注意しましょう。
その他有効なAWSサービス・機能
AWSコスト配分タグは、コスト管理とリソース管理において非常に強力なツールですが、タグを効果的に運用するためには、AWSが提供するさまざまなサービスや機能との連携が重要です。以下では、タグの管理と分析に役立つAWSの主要なサービスや機能について、それぞれの特徴と運用例を紹介します。
タグエディタ
タグエディタは、AWSマネジメントコンソール内で複数のリソースに対して一括でタグを管理・編集するためのツールです。広範なリソース環境で、手動で個別にタグを付け替えるのは非効率ですが、タグエディタを利用することで、さまざまなAWSサービスのリソースを横断的に検索し、タグを一括変更、追加、削除することが可能です。
タグポリシー
タグポリシーは、組織内で一貫したタグ付けを推進するための機能です。タグ付けの基準を設定し、それに従ってリソースに適切なタグを付与することで、リソースの整理がしやすくなり、コスト分析や運用管理が容易になります。タグポリシーはAWS Organizationsを利用して、組織全体で統一的なタグルールを設定し、逸脱したタグ付けを防ぐことができます。
AWS Config ルール
AWS Config ルールは、AWS環境内のリソースがタグポリシーを遵守しているかどうかを監視・評価するためのツールです。Configルールを設定することで、タグ付けルールに従っていないリソースを自動的に検出し、対応を促すことが可能です。これにより、適切なタグ付けを維持し、コスト配分タグを最大限に活用できます。
AWS Cost Explorer
AWS Cost Explorerは、AWS上で発生したコストを可視化し、分析するためのツールです。Cost Explorerでは、コスト配分タグを活用して、プロジェクト、チーム、アプリケーションなどに基づいたコスト分析が可能です。タグを使用してコストをフィルタリングすることで、どのリソースがどのくらいのコストを生じているのかを詳細に把握できます。
AWS Budgets
AWS Budgetsは、予算を設定し、予算を超えた場合に通知を受け取ることができるサービスです。コスト配分タグを活用して、特定のタグに基づくコストを監視し、その予算を設定することも可能です。これにより、リソースの使用状況をプロアクティブに監視し、コスト管理をより厳密に行えます。
コスト配分タグ有効化の注意点
AWSコスト配分タグは、運用やコスト管理に大いに役立ちますが、効果的に活用するためにはいくつかの注意点があります。運用者がよく陥りがちなミスを防ぐため、以下のポイントに気を付ける必要があります。
タグの過剰な利用を避ける
AWSでは、リソースあたり最大50個までコスト配分タグを設定できます。しかし、タグをあまりに多く付与すると、管理が煩雑になり、タグの意味が分かりづらくなります。また、不要なタグが多いと、どのタグを見ればいいかわからなくなり管理も煩雑になるでしょう。
実際に、運用者がリソースに対して必要以上のタグを設定し、プロジェクト、環境、部門など細かく分類しすぎた結果、実際にどのタグが重要なのか分からなくなってしまうケースがあります。このような場合、コスト分析や運用効率が低下し、タグの本来の目的を達成できません。
そこで必要最低限のタグに絞り、プロジェクトや部門、環境など、コスト管理に直結するものに限定することが重要です。また、タグポリシーを活用して、チーム全体で統一されたタグ付けルールを徹底しましょう。
マルチアカウントでコスト配分タグを有効化する際は注意が必要
AWSでは、マルチアカウント環境での利用が一般的ですが、アカウントごとにコスト配分タグを有効化する際には特に注意が必要です。各アカウントでタグ付けのルールが異なると、タグを用いたコスト管理や分析が困難になります。
実際、企業がマルチアカウント環境でAWSを運用している際に、あるアカウントでタグの有効化を忘れ、結果的にコストを適切に追跡できなくなることがあります。これにより、プロジェクト全体のコストを正確に把握できず、コストの最適化が妨げられるでしょう。
対策としては、AWS Organizationsを活用し、すべてのアカウントで一貫したタグ付けルールを設定することが大切です。また、タグポリシーやAWS Configルールを利用して、タグが正しく設定されているかどうかを監視する仕組みを整備しましょう。
コスト配分タグをサポートしていないサービスも有る
AWSのすべてのサービスがコスト配分タグをサポートしているわけではありません。特に、古いサービスや特定のリソースではタグが使えないことがあります。タグ付けできないサービスのコストを追跡するためには、別の方法を検討する必要があります。
コスト配分タグを利用する前に、どのサービスがタグをサポートしていないかを確認し、必要に応じて別のコスト管理方法を採用することが重要です。たとえば、AWS Cost Explorerや他の分析ツールを使って、タグが使えないリソースのコストを補足的に管理する方法があります。
定期的な見直しをする
一度タグを設定してしまうと、そのままにしてしまうケースがよく見受けられますが、定期的な見直しは非常に重要です。運用状況やプロジェクトの進行状況に応じて、タグの構成やルールを最適化することが必要です。古いタグが残っていると、管理が混乱し、無駄なリソースが放置されるリスクもあります。
プロジェクトが終了したにもかかわらず、そのプロジェクトに関連するリソースやタグがそのまま残されていることも多いです。これにより、不要なリソースがコストを発生させ続け、無駄な支出が生じることになります。また、古いタグが新しいリソースに混在し、分析が複雑化します。
対策として、定期的にタグの見直しを行い、不要なタグやリソースを整理することが重要です。特に、終了したプロジェクトや不要になった環境に関するタグは速やかに削除し、最新の運用に適したタグ体系を維持するようにしましょう。
まとめ
コスト配分タグを活用することで、AWSのコストを部門やプロジェクトごとに細かく分析し、コスト削減のヒントを発見することができます。
適切なタグ付けと、コストエクスプローラーなどのツールの活用により、より精度の高いコスト管理を実現しましょう。この記事が、皆様のAWSコスト管理の一助となれば幸いです。