
Learn about AWS in 大阪「モダナイゼーション基礎編~ その理由から方法まで」セッションレポート
2025年2月6日、グランフロント大阪にて「Learn about AWS in 大阪」が開催されました。本ブログでは、Learn about AWS in 大阪に実際に参加したOps Today編集部員から、イベントの様子や講演レポートをお届けします。
今回は、Modern Infra Trackにて15時から開催されたセッション「モダナイゼーション基礎編~ その理由から方法まで」をリポートします。

Learn about AWS in 大阪とは?
Learn about AWS in 大阪は、ソニービズネットワークス株式会社主催、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社講演協力のもと、「AWS」 「生成AI」 「モダンインフラ」をキーワードとしたイベントです。幅広い技術レベルの人を対象としたセミナーセッションや、AI・AWSに関する各種展示・相談コーナーが設けられました。
今回Ops Today編集部では、大阪でAWSのイベントが開催されるという噂を聞きつけ足を運びました。ソニービズネットワークス株式会社、講演協力のアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の取材協力のもと、イベントの内容について詳しくお届けします。
セッション概要
セッションタイトル | モダナイゼーション基礎編~ その理由から方法まで |
概要 | なぜモダナイゼーションが必要なのか?どのように進めればよいのか?抽象的な概念のため取り組みにくいといった声も上がっています。本セッションでは、その定義から、実践の道筋となるモダナイゼーション・パスウェイまでをご紹介します |
登壇者 | アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パートナーアライアンス事業統括本部 パートナー技術統括本部 第二技術開発部 シニアパートナーソリューションアーキテクト 田中 創一郎 |
モダナイゼーションとは何か

講演ではマイグレーションとモダナイゼーションが対比された形で紹介されました。
- マイグレーション:今あるアプリケーションを別の環境に移行する
- モダナイゼーション:今あるモダンなアプリケーションを新しい状態にする
企業はより「信頼性のある」「エンジニアリング効率の良い」「ビジネスアジリティを最大化できる」方法を探しています。その過程でマイグレーションかモダナイゼーションを選んでいくわけですが、本講演ではそれら二つを組み合わせることで相乗効果を発揮できると主張していました。
例えば、アプリケーションやプロセスに課題があり、アプリケーションを変える必要があるシーンを想定します。この時、基盤となるインフラが変化に強いかを考慮する必要があるので、たいていの場合クラウド化も視野に入ります。移行する時の手順として、3つのパターンが考えられます(下図参照)。
- 一旦クラウドに変えてから、アプリケーションを変える場合(青色右下)
- 一旦アプリケーションを変えてから、クラウドを変える場合(青色左上)
- 一気にクラウド化とアプリケーションを変える場合(ピンク色)

モダナイゼーションの必要性
モダナイゼーションが必要な場面について、以下の点が挙げられました。
- 経営者や顧客からのイノベーションの要求に応える必要がある
- パフォーマンスと信頼性を担保する必要がある
- 複雑化により変更しにくいという技術的負債から脱却する必要がある
- セキュリティとコンプライアンスを向上させる必要がある
- 嵩んでしまっているライセンスコストを是正する必要がある
モダナイゼーションで陥りがちな考え方
モダナイゼーションで陥りがちな考え方として「この際だから、全部作り替えよう!」があります。
モダナイゼーションとは個別の技術要素ではなく、企業や組織が社会の変化に合わせて素早く価値を提供し続けるために組織やシステムを常に新しくしていくことです。目まぐるしい変化に柔軟に対応できるような態勢を整えておく必要があります。

モダナイゼーションをする上での3つの柱
モダナイゼーションを進める上では3つの柱「People×Process×Technology」があります。ここではそれぞれの柱について紹介していきます。
People
モダナイゼーションを進めるうえで、「部署間で調整する期間が長い」「変化を避けたがる社員が多い」「新しい技術や手法に関するスキルやノウハウがない」という人的問題が挙げられます。そうした問題に対して、トライアンドエラーを許容できる組織構造の重要性が主張されました。
上の挙げた問題の対策の一つとして「クロスファンクショナルチーム」の設立が挙げられます。部署間で調整する手間を防ぐために、関連する部署の人員を選抜して一つのチームを結成する手法です。

しかし、ただ新チーム体制を作ってもメンバーが慎重な場合は効力を持ちません。インフラなど中期スパンでの開発において慎重になりがちですが、クラウド環境ではITリソースをすぐ調達し試すことができ、軌道修正も迅速に行うことができます。失敗してもやり直せるという考え方はAmazonで定着しており「2-way door」と呼ばれます。

少人数での「クロスファンクショナルチーム」が会社組織の中で適応されていくと、複数の小規模プロジェクトが独立して動かすことができます。これを「組織のマイクロサービス化」と言います。

逆に、部署ごとに区切られ硬直性のある組織の中だと、一度に動かすことのできるプロジェクト数は少なくなり、プロジェクト1つあたりの進行も遅くなります。
このことから、システムを設計するあらゆる組織は、組織構造をコピーしたシステム構造を生み出すと考えられ、これを「コンウェイの法則」と呼称します。
講演でAWSは、システムを変える以前に組織構造を見直す重要性を押し出しています。
Process
モダナイゼーションを進めるうえで、「開発標準が重たい」「承認プロセスが多い」「手作業が多い」というプロセスの問題が挙げられます。そうした問題に対して、開発プロセスの無駄を削減・自動化する重要性が主張されました。
開発プロセスの無駄を見つけるためにはボトルネックの特定が必要です。各工程において、プロセスが次ステップに移るまでに要した時間「リードタイム」と実際にそのプロセスを実行している時間「プロセスタイム」の差異を分析し、ボトルネックを見つけます。
ボトルネックを解消するうえで一番効果を発揮するのは自動化です。人手をなるべく排除し、無駄が生まれにくい仕組みを作る必要があります。
Technology
最後にモダナイゼーションを進めるうえで、「アーキテクチャの要素技術が古すぎる」「ITリソースの空きが多く無駄が生じている」「運用作業の負担が大きい」というテクノロジーの問題が挙げられます。そうした問題に対して、手間を削減する事や自社の競争力の源泉に注力する事がアプローチとして挙げられました。
インフラストラクチャのモダナイゼーションについて見ていきます。ここでは同じ作業工程においても、使うサービスによって担当者の作業量は変わることが重要な点です。自社の製品の強みとなる部分については慎重に作業を行う必要がある場合が多いですが、競合との差別化につながらない作業については自動で行ってくれるサービスに任せてしまうのが適切です。下図を参考にしてください。

一方でアプリケーションのモダナイゼーションでは、「少ないコード量で」「修正がしやすいように」組めるかが重要になってきます。その際に、最新のフレームワークやライブラリの採用や巨大なシステムを分割するといった手順が考えられます。
モダナイゼーションのパターン
実際のモダナイゼーションの手法は目的によって変わります。AWSでは過去の支援を通じて代表的な6つのパターンを見出しています。それぞれの概要とキーワード、関連するAWSサービスについて見ていきましょう。
クラウドネイティブへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
モノリシックアプリケーションをマイクロサービスによる疎結合な分散アーキテクチャに分解する | ドメイン駆動開発、マイクロサービス、イベント駆動アーキテクチャ、サーバーレス、コンテナ化、ストラングラーフィグパターン | AWS Lambda、AWS API Gateway、Amazon ECS、Amazon EKS、Amazon EventBridge、Amazon SQS、Amazon SNS、AWS Migration Hub Refactor Spaces |
コンテナへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
既存アプリケーションを構造はそのままにコンテナ化する | コンテナ化、運用効率、複数環境間の一貫性 | Amazon ECS、Amazon EKS、AWS Fargate、Amazon ECR、AWS App Runner |
オープンソースへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
商用製品からオープンソースに移行する | TCO削減 | AWS RDS、Amazon Aurora、Amazon MQ、.NET Core on Linux |
マネージドデータベースへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
フルマネージドサービスとして提供される目的別データベースへ移行する | RDB以外の選択肢を持つ、耐障害性と拡張性の向上、業務効率化 | Amazon Aurora、Amazon RDS、Amazon Redshift、Amazon DynamoDB、Amazon ElastiCache、Amazon MemoryDB for Redis、Amazon DocumentDB |
マネージドアナリティクスへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
モノリシックアプリケーションをマイクロサービスによる疎結合な分散アーキテクチャに分解する | ドメイン駆動開発、マイクロサービス、イベント駆動アーキテクチャ、サーバーレス、コンテナ化、ストラングラーフィグパターン | Amazon Athena、Amazon EMR、Amazon Redshift、Amazon Kinesis、Amazon OpenSearch Service、Amazon QuickSight、AWS Glue、AWS Lake Formation |
モダンDevOpsへの移動
概要 | キーワード | 関連するAWSサービス |
フルマネージドサービスとして提供されるデータレイクと分析サービスへ移行する | データレイク、データカタログ、データ共有、きめ細かなアクセスコントロール | AWS CodeBuild、AWS CodeDeploy、AWS CodePipeline、AWS CDK、AWS CloudFormation、AWS Proton、AWS CloudWatch、AWS X-Ray |
これら6つのモダナイゼーションのパターンは実際のケースを考えるときに、目的に合わせてアーキテクチャは段階的に変わることを抑えておく必要があります。複雑なモダナイゼーションを行うためには基礎部分を構築しておく必要があるということです。

まとめ
今回の記事では、「モダナイゼーション基礎編~ その理由から方法まで」というセッションの内容をレポートさせていただきました。
モダナイゼーションを進める上では、目的に応じて取り組む領域を選ぶこと、段階的に進めていくことが重要になります。技術やプロセスだけでなく組織構造にも目を向けて取り組みましょう。