
Google Cloud(GCP)コスト削減のための6つのベストプラクティス
Google Cloud(GCP)とは何か

Google Cloudは、Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスのセットです。
企業や開発者がアプリケーションのホスティング、データストレージ、AI、機械学習、ビッグデータ解析などを行うために利用します。
Google Cloudのサービスは、仮想マシン(Compute Engine)、データベース(Cloud SQL)、ストレージ(Cloud Storage)、ネットワーク(Cloud VPC)など多岐にわたります。
スケーラブルなインフラを提供し、柔軟でコスト効率の高いシステム運用を可能にします。
コミットメント割引を活用する

クラウドサービスを利用する際、コストを抑えるための有効な手段として「コミットメント割引」があります。この割引は、特定のリソースを一定期間使用することを約束することで、通常料金よりも安くサービスを利用できる仕組みです。
主要なコミットメント割引を紹介します。
継続使用割引(SUD)
継続使用割引は、Google Cloud の Compute Engine で提供される自動的に適用される割引です。
この割引は、1ヶ月のうちに特定のリソースを25%以上使用した場合に適用され、使用時間に応じて割引率が増加します。
例えば、1ヶ月間連続して稼働している仮想マシン(VM)インスタンスに対しては、最大30%の割引が適用されることがあります。SUDは特別な手続きなしに自動的に適用されるため、ユーザーは手間をかけずにコストを削減できるのが大きな利点です。
コミットメント使用割引(CUD)
コミットメント使用割引は、特定のリソースを一定期間(通常は1年または3年)使用することを約束することで適用される割引です。
CUDには、費用ベースのコミットメントとリソースベースのコミットメントの2種類があります。
費用ベースのコミットメントでは、毎月一定額を支払うことを約束し、その対価として割引を受けることができます。
一方、リソースベースのコミットメントでは、特定のリソース(例えば、vCPUやメモリ)を一定数使用することが条件です。
割引の適用方法と効果
コミットメント割引を適用するには、まずGoogle Cloudの管理コンソールから割引プランを選択し、必要なリソースや期間を指定して契約を結ぶ必要があります。
CUDは契約後すぐに適用されますが、過去の使用分には遡って適用されないため、契約のタイミングには注意が必要です。
これに対し、SUDは自動的に適用されるため、特別な手続きは不要です。これらの割引を活用することで、クラウドサービスの利用コストを大幅に削減できるだけでなく、予算管理の精度も向上します。
クラウドモニタリングの活用

クラウドモニタリングは、企業のITインフラを効率的に管理するための重要な手段です。
特にリソース使用状況のリアルタイム監視、アラート設定によるコスト管理、ダッシュボードの作成と活用は、運用の最適化に貢献します。
企業はパフォーマンスの向上とコスト削減を同時に実現することが可能です。
リソース使用状況のリアルタイム監視
クラウドモニタリングは、システムやアプリケーションのリソース使用状況をリアルタイムで監視する機能を提供します。
CPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/Oなどの重要なメトリクスを常に把握できます。
リアルタイムのデータ分析により、リソースの過負荷や不足を早期に検出し、適切な対策を講じることが可能です。
例えば、リソースの使用状況を把握することで、不要なリソースの浪費を防ぎ、コスト削減につながります。
アラート設定によるコスト管理
クラウドモニタリングでは、アラート設定機能を活用することで、コスト管理を効果的に行えます。
特定のリソース使用量やパフォーマンス指標に基づいてアラートを設定することで、異常な動作やリソースの過剰使用を早期に検知できます。
予期しないコストの発生を防ぎ、予算内での運用を実現することが可能です。
例えば、特定の閾値を超えた場合に通知を受け取ることで、迅速に対応策を講じることができ、コストの最適化につながります。
ダッシュボードの作成と活用
ダッシュボードは、クラウドモニタリングの重要な機能の1つであり、企業が蓄積したデータを視覚的に表示するためのツールです。
ダッシュボードを活用することで、リアルタイムのデータを一目で把握でき、迅速な意思決定を支援します。
具体的には、リソースの使用状況やパフォーマンスデータをグラフやチャートで表示し、異常が発生した際には即座に通知を受け取ることができます。
これにより、問題の早期発見が可能となり、トラブルシューティングが効率化されます。
プリエンプティブルVMの利用

プリエンプティブルVMは、Google Cloudで提供される低コストの仮想マシンで、特に一時的なリソースが必要な場合に有効です。
プリエンプティブルVMの特徴
プリエンプティブルVMはコスト効率の高い仮想マシンであり、通常のVMに比べて最大で80%の割引が適用されることが特徴です。
インスタンスは、Google Cloudのリソースが余っている際に提供され、最大24時間の稼働が保証されていますが、Google Cloud側の都合でいつでも強制終了される可能性があります。
そのためプリエンプティブルVMは、開発やテスト環境、バッチ処理など、一時的な用途に適しています。
適用可能なワークロード
プリエンプティブルVMは、特にコスト効率を重視するワークロードに適しています。
これには、バッチ処理やデータ分析、機械学習のトレーニング、フォールトトレラントなアプリケーションが含まれます。
これらのワークロードは、インスタンスが強制終了されても問題ないため、プリエンプティブルVMの低価格を活用できます。
また、リアルタイム性が求められないタスクや、スケールアウトが容易な処理にも適しており、特に大規模なデータセットを扱う際に有効です。
コスト削減の具体例
例えばバッチ処理やデータ分析のワークロードにおいて、通常のインスタンスと比較して最大80%のコスト削減が可能です。
これにより、開発やテスト環境でのリソース使用を最適化し、必要なときにのみインスタンスを稼働させることができます。
また、フォールトトレラントなアプリケーションにおいても、プリエンプティブルVMを活用することで、処理が中断されても全体のジョブが完全に停止することなく、コストを抑えつつ効率的に運用できます。
予算アラートの設定

予算アラートは、企業や個人が予期しない費用の発生を防ぐために非常に重要な機能です。予算を設定することで、事前に上限を設け、その範囲内での利用を促進し、無駄な支出を抑えることができます。
予算設定の重要性
予算設定は、企業の財務管理において不可欠なプロセスです。
適切な予算を策定することで、資源の配分を最適化し、経営目標の達成に向けた進捗をモニタリングすることが可能になります。
特にクラウドサービスの利用が増加する中で、予算を設定することは、コストの透明性を高め、無駄な支出を防ぐための重要な手段です。
予算アラートを利用することで、設定した金額の50%、90%、100%に達した際に通知を受け取ることができ、リアルタイムでのコスト管理が実現します。
アラートの設定方法
予算アラートの設定は、Google Cloudのコンソールを通じて簡単に行うことができます。
まず、Google Cloudにログインし、請求先アカウントを選択します。
次に、予算とアラートのセクションに移動し、「予算を作成」をクリックします。ここで、予算の範囲や金額を設定し、アラートのしきい値を指定します。しきい値は、予算の50%、90%、100%など、任意の割合で設定可能です。
設定が完了したら、通知先のメールアドレスやSlackチャンネルを指定し、アラートが発動した際にどのように通知を受け取るかを決定します。
予算管理ツールの活用
予算管理ツールは、企業が予算を効果的に策定し、進捗を追跡するための強力なサポートを提供します。
ツールを活用することで、データの自動集計や分析が可能になり、専門知識がなくても一定の品質で予算管理を行うことができます。
特にクラウドサービスを利用する企業にとっては、リアルタイムでのコスト監視が重要です。
予算管理ツールを使用することで、予算の設定から実績のモニタリング、分析までを一元管理でき、経営者や管理職が迅速に意思決定を行える環境が整います。
自動スケーリングの導入

自動スケーリングは、クラウドコンピューティング環境において、システムの需要に応じてリソースを自動的に調整する機能です。
自動スケーリングの仕組み
自動スケーリングはは、CPU使用率やメモリ使用量、リクエスト数などのパフォーマンスメトリックを監視し、設定されたしきい値を超えた場合にスケールアウト(リソースの追加)を行い、逆にしきい値を下回った場合にはスケールイン(リソースの削減)を実施します。
この仕組みにより、システムは常に最適なパフォーマンスを維持しつつ、無駄なコストを抑えることが可能です。
また自動スケーリングは、特定の時間帯に予測されるトラフィックの増加に備えて、事前にリソースを調整することもできます。
リソースの最適化
リソースの最適化は、自動スケーリングの重要な側面であり、システムの効率を最大化するために不可欠です。
自動スケーリングを導入することで、リソースの使用状況をリアルタイムで把握し、必要なリソースを適切に割り当てることができます。
これにより、過剰なリソースを保持することなく、必要なときに必要なだけのリソースを確保することが可能になります。
さらに、リソースの最適化は、コスト削減だけでなく、システムのパフォーマンス向上にも寄与します。
例えば、トラフィックが急増する時間帯に合わせてリソースを増やすことで、ユーザーに対してスムーズなサービスを提供し、逆にトラフィックが減少した際にはリソースを削減することで、無駄なコストを抑えることができます。
自動スケーリングの設定方法
自動スケーリングの設定は、クラウドサービスプロバイダーによって異なりますが、一般的な手順としては、まず監視するメトリックを選定し、しきい値を設定します。
次に、スケールアウトおよびスケールインのルールを定義し、これらのルールに基づいてリソースの増減を自動的に行うように構成します。
例えば、AzureではAzure Monitorを使用してリソースの監視とスケーリング設定を行います。
AWSでは、Auto Scalingグループを作成し、必要なインスタンス数やスケーリングポリシーを設定します。
これにより、システムはリアルタイムで負荷を監視し、設定された条件に基づいて自動的にリソースを調整します。
設定が完了すると、システムは自動的にリソースを管理し、ユーザーの要求に応じて最適なパフォーマンスを提供します。
リソースの適正化(Right-Sizing)

リソースの適正化は、クラウド環境においてコストを削減し、効率的な運用を実現するための重要なプロセスです。
特にGoogle Cloudを利用する企業にとって、リソースの無駄を省くことは、経済的な負担を軽減し、ビジネスの成長を支えるために不可欠です。
適正化の必要性
Google Cloudを利用する企業は、従量課金制の特性から、リソースの使用状況を常に把握し、適切に管理する必要があります。
リソースの過剰使用やアイドル状態のインスタンスは、無駄なコストを生む要因です。
特に円安の影響を受ける日本市場では、米ドル建ての料金が企業にとって実質的なコスト増加をもたらすため、戦略的なコスト管理が求められています。
適正化を行うことで、リソースの使用効率を高め、コストを削減できるため、企業は持続可能な成長を実現するための基盤を築けます。
Google Cloud(GCP)のリソース適正化ツール
Google Cloudにはリソースの適正化を支援するためのさまざまなツールが用意されています。
例えばGoogle Cloudの「Recommender」機能は、使用状況に基づいて適切なインスタンスサイズやタイプを提案し、無駄なリソースを特定するのに役立ちます。
また、Compute EngineのプリエンプティブルVMやSpot VMを利用することで、コストを大幅に削減することが可能です。
適正化の実施手順
リソースの適正化を実施するためには、まず全体のコストを把握し、どのプロジェクトやサービスが高コストであるかを確認することが重要です。
次に、アイドル状態のVMを特定し、使用されていない時間帯に自動的に停止する設定を行います。
さらに、リソースのサイズを見直し、過剰な容量を削減することで、コストを最適化します。
まとめ
Google Cloudは、Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスのセットです。
本記事ではGoogle Cloudを使う際のコスト削減のためのベストプラクティスを6つ紹介しました。
「コミットメント割引」には、継続使用割引(SUD)とコミットメント使用割引(CUD)があり、特定のリソースを一定期間使用することで割引が適用されます。
また、クラウドモニタリングを活用することで、リソース使用状況のリアルタイム監視やコスト管理が可能となり、効率的な運用が実現します。
本記事で紹介した方法を使ってコスト削減に取り組んではいかがでしょうか。