サーバー監視の必須項目とは?目的に合った監視項目設定のポイントを解説
サーバー監視は、システムの安定運用とビジネスの継続において欠かせない役割を果たします。異常の早期検出と迅速な対応を可能にし、サービス停止のリスクを最小限に抑えることが、監視の主な目的です。
サーバーの監視体制を構築する際は、自社の目的に合った監視項目を設定することが大切です。本記事では、サーバー監視の重要性やオンプレミス・クラウドそれぞれの監視項目の種類、監視ツールを選ぶ時のポイントなどについて詳しく解説します。
なぜサーバー監視が重要なのか
サーバー監視は、システムの安定稼働と安全なビジネスの継続にとって欠かせない業務です。監視を通じて、サーバーの状態をリアルタイムで把握し、異常が発生した際には速やかに対応して、サービスの停止を最小限に抑えられます。
また、リソースの使用状況を監視してパフォーマンスの最適化を図り、コスト削減につなげる効果も期待できます。サーバー監視は、不正アクセスやサイバー攻撃の兆候を早期に検知し、システム全体の信頼性を高める上で、重要な役割を果たします。
サーバー監視の種類
サーバー監視には、正常監視と異常監視の2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
正常監視
正常監視は、サーバーやネットワーク機器が適切に稼働していることを確認するための監視手法です。
正常監視では、通常の動作状況やパフォーマンス指標(CPU使用率、メモリ使用量、ディスク容量、ネットワーク帯域など)をリアルタイムにモニタリングし、システムが設定した基準の範囲内で動作しているかをチェックします。
リソースの効率的な利用を確認し、安定したサービス提供を維持するためには、正常監視が有効です。日常的な管理業務の一環として行うことで、異常が発生する前に予兆を察知できます。
異常監視
異常監視は、サーバーやネットワーク機器の動作に異常が発生した場合、兆候をいち早く検出することを目的とした監視手法です。
あらかじめ設定されたしきい値(CPU使用率の急上昇やディスク容量の限界到達など)を超えた場合に、アラートを発し、運用担当者に通知されます。異常監視により、障害の影響を最小限に抑え、管理者が迅速な対応を行うことが可能です。
サーバー監視に必要な項目一覧【オンプレミス】
サーバー監視に必要な項目は多岐にわたり、一つひとつの項目を注視する必要があります。ここでは、オンプレミスの主な監視項目を紹介します。
死活監視
死活監視は、サーバーが正常に稼働しているかを定期的に確認するための、サーバー監視の基本となる手法です。PingやHTTPリクエストをサーバーに送信し、応答が返ってくるかどうかでサーバーの稼働状態を判断します。
サーバーダウンを迅速に検知して管理者へ通知し、障害の影響を最小限に抑える役割を担います。死活監視は、サービスの可用性を維持するために不可欠であり、システムの安定性を確保する上で重要です。
起動時間監視
起動時間監視は、サーバーの稼働期間を記録し、予期しない再起動や稼働時間の異常な長さを検出するための監視です。定期的にサーバーの起動時間をチェックし、再起動の回数や間隔が適切かどうかを確認します。
起動時間監視を通じて、サーバーの安定性やリソースの管理状況を把握し、問題が発生する前に対策を講じることが可能になります。適切な起動時間の管理は、システムの長期的なパフォーマンスを維持するために重要です。
CPU使用率監視
CPU使用率監視は、サーバーリソースの使用状況をリアルタイムで監視し、異常な負荷を早期に検出するための監視項目です。
高いCPU使用率が長時間続くと、パフォーマンスの低下やシステムのフリーズ、その他の障害の原因となることがあります。CPU使用率を監視することで、過剰な負荷をかけているプロセスを迅速に特定し、必要に応じて対策を講じられます。
メモリ使用率監視
メモリ使用率監視は、サーバーのメモリリソースの消費状況を把握し、過剰なメモリ使用によるパフォーマンス低下を防ぐために行います。
メモリが不足すると、アプリケーションの動作が遅くなったり、システムの応答が悪化したりする原因になります。メモリリークや不必要なメモリ消費を早期に発見し、適切なメモリ管理を行うことで、安定したシステム運用を維持するのがメモリ使用率監視の役割です。
ディスク使用量監視
ディスク使用量監視は、サーバーのストレージ容量の使用状況を継続的に監視し、空き容量が限界に近づいた場合にアラートを発生させる監視項目です。
ディスクの空き容量が不足すると、ログの保存やアプリケーションの実行に支障が生じ、最悪の場合にはシステムのクラッシュやデータ損失を招くおそれがあります。
定常的な監視により、データの増減を把握し、容量の拡張や不要データの削除など、適切な対策を実施できます。
リソース監視
リソース監視は、CPU、メモリ、ディスクI/Oなどのサーバー全体のリソース使用状況をリアルタイムで把握し、複数のリソースが同時に高負荷状態になった場合に異常を検知するための監視です。
複数のリソースの同時監視により、パフォーマンス低下の原因を特定し、負荷分散やプロセスの最適化などの適切な対応を行えます。システム全体のリソース利用状況を把握することで、効率的な運用と安定したサービス提供を実現します。
ネットワークトラフィック監視
ネットワークトラフィック監視は、サーバーの送受信データ量を監視し、帯域幅の使用状況や異常なトラフィックの増加を検出するための監視項目です。ネットワークの負荷や混雑を早期に察知し、障害の予防や迅速な対応を可能にします。
また、不正アクセスやサイバー攻撃の兆候を早期に発見するためにも重要な役割を果たします。ネットワークトラフィックの監視は、セキュリティの強化と通信の安定性維持に不可欠です。
ログ監視
ログ監視は、サーバーやアプリケーションが生成するログファイルを解析し、エラーや不正アクセスなどの異常な活動を検出するための監視です。ログデータの収集と分析を通じて、障害発生時の原因特定やセキュリティインシデントの早期対応を可能にします。
ログ監視により、日常の運用状況を継続的に把握し、システムの安定性と信頼性を高められます。また、トラブルシューティングやコンプライアンス遵守のための証拠としても活用されます。
サーバー監視に必要な項目一覧【クラウド】
一般的にクラウドサービスは提供事業者側がサーバーをはじめとした機器の保守を行うため、オンプレミスと監視項目が異なります。ここでは、クラウドに必要な監視項目を解説します。
マネージドサービス
クラウド環境では、AWSやAzure、Google Cloudなどのマネージドサービスを活用して、インフラの管理や監視を自動化することが重要です。マネージドサービスを利用することで、手動での監視と管理の負担を軽減し、運用効率の向上を図れます。
マネージドサービスにはサーバーの状態を監視する機能やパフォーマンスメトリクスを収集する機能が組み込まれているため、スケーラビリティと高可用性を確保できます。
セキュリティ
クラウド環境では、セキュリティの監視が極めて重要です。アクセス制御、認証、暗号化、ネットワークの監視など、複数の観点から保護を行い、不正アクセスやサイバー攻撃の兆候を早期に検知する必要があります。
クラウド事業者が提供するセキュリティサービスを積極的に活用するとともに、常に最新のセキュリティポリシーを適用し、コンプライアンスを遵守することが求められます。
コスト
クラウドサーバーの運用コストの監視も重要な項目のひとつです。リソース使用量の増加や無駄なリソースの利用をリアルタイムに監視することで、コストの最適化を図れます。
例えば、使用していないリソースを自動で停止する設定や、料金の急増を警告するアラート機能を利用することで、予定外のコストの増加を防止できます。クラウド事業者が提供するコスト管理ツールを有効活用し、コストの把握・削減に努めることが重要です。
サービス事業者からの連絡
クラウドプロバイダーからの通知やアラートでは、サービスの変更、メンテナンス、セキュリティアップデートなど、重要な情報が提供されることがよくあります。
サービスの可用性やパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、定期的にクラウドサービスのダッシュボードを確認し、運用に影響を与える変更があれば、速やかに対応できる体制を整える必要があります。
最新の障害情報
クラウド環境において、最新の障害情報の把握は欠かせません。サービス提供事業者のWebサイト等を定期的にチェックし、障害が発生した際に迅速に対応できる準備を整えましょう。
公開されている影響範囲や復旧見込みなどの情報を元に、ユーザーへの通知や対応策を講じることで、サービスの信頼性を維持できます。監視を効率化するために、クラウドのステータスページを監視ツールで自動的にチェックする設定を行うのも有効です。
監視項目の優先順位を設定する方法
監視項目は多岐にわたるため、優先順位を設定して効率的に監視することが大切です。ここでは、重要度またはビジネス影響度に基づく優先順位の設定方法を解説します。
重要度に基づく優先度設定
重要度に基づく優先度設定は、サーバーやネットワーク機器、アプリケーションの重要度に応じて監視項目の優先順位を決定する方法です。
例えば、企業の基幹システムや顧客向けのサービスを提供するサーバーなど、業務運用に直接影響を及ぼす要素は、最も高い優先度を設定する必要があります。一方で、バックアップサーバーやテスト環境など、業務に即座に影響しない項目は優先度を下げやすい部分です。
システムの役割や稼働時間、障害発生時の影響範囲に基づいて優先度を設定することで、重要なシステムやサービスの健全性を確保しながら、効率的なリソース配分が可能になります。
ビジネス影響度に基づく優先度設定
ビジネス影響度に基づく優先度設定は、監視対象のシステムやアプリケーションがビジネスに与える影響度を評価し、その結果に基づいて優先順位を決定する方法です。
例えば、ECサイトの監視においては、注文処理や決済システムの監視が高い優先度に設定される一方で、レポート作成システムなど、事務処理に関わる部分の監視は優先度を低くしても影響範囲は限定的です。
ビジネスへの影響を評価する際には、ダウンタイムが顧客満足度や売上に与える影響や、法的なリスク、ブランドへのダメージなどを考慮します。この方法により、リソースを最も影響の大きい領域に集中させ、ブランドイメージを守り、ビジネスの成長を維持するための監視体制を構築できます。
企業規模別の推奨監視項目
より多くの監視項目をカバーできる体制が理想ではありますが、リソースの制約の都合などから、監視項目を絞り込まなければならない場面もあります。ここでは、企業規模別の推奨監視項目を紹介します。
大規模企業
大規模企業では、多くのサーバーやネットワーク機器が複雑に絡み合っているため、包括的な監視が必要です。主な監視項目としては、CPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/Oのほか、ネットワーク帯域幅やパケット損失率、遅延の監視などが挙げられます。
また、仮想化環境やクラウドインフラのリソース使用状況もリアルタイムで監視し、異常検知ができる仕組みが求められます。
さらに、セキュリティ監視も重要であり、侵入検知システム(IDS)やセキュリティ情報イベント管理(SIEM)ツールなどを使用して、不正アクセスや脆弱性を早期に発見できる体制を整えましょう。
取得した監視データを蓄積し、トレンド分析や予防的なメンテナンスに活用することも重要です。
中小企業
中小企業では、リソースの制約があるため、監視項目を必要最小限の重要な要素に絞り込むことをおすすめします。主な監視項目には、サーバーの死活監視、CPU使用率、メモリ使用量、ディスク容量の監視などが挙げられます。
また、ネットワークの基本的なトラフィック監視や、インターネット接続の可用性の監視も重要です。セキュリティ対策として、ファイアウォールの監視や、ログ監視を通じて不正なアクセスの兆候を早期に発見することも求められます。
コストを抑えつつ、効率的な監視体制を整えるためには、オープンソースの監視ツールやクラウドベースのサービスを利用するのがおすすめです。
特定の業界
金融業界や医療業界などの特定の業界では、法令遵守や高いセキュリティ基準を満たすために、業界固有の監視項目が求められます。
例えば金融業界では、トランザクション監視、ネットワークの暗号化状態、リアルタイムの不正検出機能などが不可欠です。医療業界では、患者データの保護や医療機器のネットワーク接続状況の監視が重要になります。
また、監査ログの詳細な管理と、規制に準拠したデータ保持も重要です。これらの監視項目により、業務の継続性と顧客情報の保護を実現しつつ、安定的な運用を維持できます。
サーバー監視ツールを選ぶ時の3つのポイント
サーバー監視ツールを選ぶ際は、OSSと有償ツールの違いを理解し、モジュールの要・不要も判断する必要があります。また、自社ツールとの連携可否の確認も重要です。ここでは、3つのポイントを詳しく解説します。
OSSと有償ツールの違いを理解する
サーバー監視ツールには、オープンソースソフトウェア(OSS)と有償ツールの2種類があります。
OSSのツールは、初期費用が不要で、カスタマイズ性が高い点がメリットですが、サポートやメンテナンスが自己責任となるため、一定の技術的スキルが必要です。
一方、有償ツールは、専用のサポート体制や最新の機能が提供されるため、導入・運用が簡単で信頼性が高い反面、ライセンス費用や保守費用がかかります。企業の予算や監視対象の複雑性、社内リソースなどを考慮しながら、自社のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。
モジュールの要・不要を判断する
サーバー監視ツールを選ぶ際は、ツールが提供するモジュールの要・不要を慎重に判断する必要があります。
モジュールとは、監視ツールの基本機能を拡張する追加機能のことを指し、ネットワーク監視、セキュリティ監視、ログ分析など、特定のニーズに応じた監視機能を提供します。エージェントと呼ばれることもあります。
自社の監視要件に対してどのモジュールが必要かを明確にし、不要なモジュールを避けることで、運用コストを抑えつつ、必要な機能を確保できます。また、モジュールの追加が容易であるか、既存の監視体制にどの程度の変更を加える必要があるかなども十分に考慮しましょう。
自社ツールとの連携可否を確認する
サーバー監視ツールの導入時には、既存の自社システムやツールとの連携が可能かを確認することも重要です。例えば、ビジネスチャットツールやインシデント管理システムとの連携ができれば、アラートの通知や対応状況のトラッキングが容易になります。
また、APIやWebhookのサポート、既存のITサービス管理(ITSM)ツールとの統合が可能かどうかなども重要なポイントです。自社ツールと連携可能なツールを選ぶことで、監視データの活用や運用フローの自動化が進み、監視体制の効率化と迅速な対応を実現できます。
まとめ
サーバー監視は、システムの安定稼働とビジネスの継続に不可欠です。必要な監視項目はオンプレミスとクラウド環境で異なるため、自社に必要な項目や監視目的を整理して、適切な体制を構築することが求められます。
監視項目を決める際は、重要度やビジネスへの影響度などによって優先順位を設定する事も大切です。また、企業規模や業界に応じて、項目を最適化する必要があります。
OSSと有償ツールの違い、必要なモジュール、自社ツールとの連携可否なども考慮し四ながら、自社に合った監視項目を選定しましょう。