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Azureのコストを最適化するには?2つの方法をご紹介
はじめに
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Microsoft Azure(以下Azure)を利用されている方は多いかと思いますが、その誰しもが「できるだけ安く使いたい」と考えたことがあるのではないでしょうか。
他のクラウドサービスと同様、Azureの料金体系は従量課金(Pay as you go)型です。使用した分だけ支払うことになるため、利用コストが一定額に収まらず月々の料金の見立てが難しい場合もあるかと思います。
そこで本記事では、Azureのコスト削減方法とその選び方について解説しました。Azureのコスト削減を目指す中で、どういった方法を取るべきかお悩みの方はぜひご覧ください。
Azureのコスト削減に取り組むべき理由
クラウドサービスの活用は、これまでオンプレミス環境よりもコストパフォーマンスに優れることから広く推進されてきた背景があります。そのため、Azureを導入するだけで十分な費用対効果が得られていると考えられているかもしれませんが、一度環境を見直すことで、さらなるコスト削減ができる可能性にも注目すべきでしょう。
というのも、ユーザー増加やクラウド需要の高まりに伴い、各種クラウドサービスは徐々に値上げを進めているからです。Azureも2023年に15%の値上げを実施しており、以前よりも運用コストは高くなっています。今後もコストは上がり続けることが考えられ、少しでも余計な支出は減らせる体制にシフトしておくべきというのがポイントです。
Azureのコスト最適化の際に実施すべき施策
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Azureのコスト最適化を進めていく上では、以下の5つの方法が主なアプローチとなります。それぞれの方法でどんな効果が期待できるのか、確認しておきましょう。
コストの可視化
Azureのコスト削減を考えている場合、まずはどれくらいの負担が現状発生しているのか、見える化しましょう。Azureではリソース管理のためのタグ付け機能を利用できます。タグごとの課金状況を把握し、不要なものは削除するような管理体制を構築することが大切です。
Azure Cost Managementは、フィルタリングによる特定リソースにおけるコストの可視化が行えるサービスです。無駄なものとそうでないものの整理を行い、パフォーマンスを維持しながらコストだけを減らせる取り組みが求められます。
リソースタイプの検討
リソースタイプを見直すことも、コスト削減においては重要です。稼働している仮想マシンのパフォーマンスを確認し、オーバースペックとなっていないかを確認してみましょう。
今は稼働させていないが、将来的に必要になる可能性が高いという場合には、一時的にシャットダウンしておくこともおすすめします。自動での停止・稼働切り替えも可能なため、適宜設定しておくことが重要です。
割引オプションの活用
Azureには、運用環境に応じた割引オプションの制度が設けられています。適用対象や割引率は場合によって異なるものの、適用しない場合と比べると大幅な割引率が得られることもあるため、積極的な活用をおすすめします。
割引オプションについては、後ほど詳しく解説します。
アーキテクチャの変更
現在の利用状況に応じて、アーキテクチャから運用体制を見直すことも検討してみましょう。IaaSからPaaSへの変更適用によって、従来よりもコストパフォーマンスが改善する場合があります。
また、サーバーレスアーキテクチャを採用することにより、サーバー管理負担なしでアーキテクチャを利用することもできます。継続的なコストの発生を抑制し、持続可能性の高いAzure運用に貢献できる方法です。
割引オプション1:予約(Reservations)
予約(Reservations) は、コスト削減/最適化の手段として有名だと思います。
端的に表すと、「Azureのリソースに対して1年もしくは3年分の利用を確約することで、その期間のコストの割引を受けることができる機能」となります。
Azure仮想マシンだけでなく、Azureマネージドディスク、Blobストレージ、各種データベースサービスなど 様々なリソースに予約割引が適用可能です。
製品やコミット期間によって異なりますが、従量課金の価格から最大72%削減することができるため、 より少ない費用でクラウドを活用することができます。
どのように適用されるのか
購入した予約は、対象となる製品、予約のスコープやリージョンなど、購入時に指定した属性と一致するリソースに自動的に適用されます。
逆に言えば、購入時に指定した属性の組み合わせが違うと予約割引は適用されないので注意が必要です。例えば、指定したリージョン、指定したサイズが違う仮想マシンには適用されません。
一致するリソースに自動的に適用されるので、購入した予約の属性に一致するリソースがない場合、購入した予約は使われずに失われてしまいます。
予約の返品・交換
購入した予約は、返品・交換を行うことができます。返品や交換にはいくつかの注意事項がありますので、それぞれご紹介いたします。
「購入していた予約が不要になった」等の理由でキャンセルするのが「返品」となります。本稿執筆時点(2024年6月)時点では、中途解約料はかかりません。
しかし、公式ドキュメントには「現在、中途解約料は課金していませんが、将来的には12%の解約料が発生する可能性があります」と記載されておりますので、予約を行う前には解約料についても確認が必要です。また、返品には金額の上限があります。
返金額が12か月間のローリングウインドウ(返品を行った日からの12か月間)において50,000米ドルを超えることはできません。
交換は「既存予約の返品+新規予約の購入」という形になります。
返品時の注意事項にてご紹介した通り、返品には50,000米ドルという金額の上限がありますが、交換に伴う既存予約の返品に関してはこの上限は適用されません。ただし、新規予約の購入金額が、既存予約の返品金額を上回っている必要があります。
2024年からの新しい交換ポリシー
予約の交換について、2023年7月にMicrosoftから「ポリシーの変更により、2024年1月1日以降に購入されるすべてのコンピューティングの予約の交換ができなくなる」旨の重大なお知らせがありました。
これには、後述するAzure 節約プラン(Azure Savings Plan for compute)が関係しています。2023年7月時点での公式ドキュメントには以下のような案内が記載されていました。
Microsoft はコンピューティング用に Azure 節約プランを開始しており、それは予測可能なコンピューティング使用量を大幅に節約できるように設計されています。 節約プランでは、仮想マシン シリーズやリージョンなどの変更に対応するために必要ないっそう高い柔軟性が提供されます。 自動的に柔軟性を提供する節約プランにより、予約交換ポリシーを調整しています。
なお、この新しい交換ポリシーについては今年5月にアップデートが発表されています。Azure Virtual Machine、Azure Dedicated Host、Azure App Service の Azure コンピューティング予約交換の利用期間が追って通知があるまで延長されることとなりました。
再度通知を受け取るまで (少なくとも 6 か月前まで) 、従来と同様の交換が可能とのことです。
参考:The availability of Azure compute reservations will continue until further notice(Microsoft社 公式サイト)
Initially planned to end on January 1, 2024, the availability of Azure compute reservation exchanges for Azure Virtual Machine, Azure Dedicated Host and Azure App Service has been extended until further notice.
You may continue exchanging your compute reservations for different instance series and regions until we notify you again, which will be at least 6 months in advance. In addition, any compute reservations purchased during this extended grace period will retain the right to one more exchange after the grace period ends. The extended grace period allows you to better assess your cost savings commitment needs and plan effectively. For more information about the exchange policy change, see Changes to the Azure reservation exchange policy.
(日本語訳) 当初は 2024 年 1 月 1 日に終了する予定でしたが、Azure Virtual Machine、Azure Dedicated Host、Azure App Service の Azure コンピューティング予約交換の利用期間は、追って通知があるまで延長されました。
再度通知があるまで (少なくとも 6 か月前に通知されます)、コンピューティング予約を別のインスタンス シリーズおよびリージョンに引き続き交換できます。さらに、この延長された猶予期間中に購入されたコンピューティング予約は、猶予期間終了後もさらに 1 回交換する権利を保持します。
延長された猶予期間により、コスト削減コミットメントのニーズをより適切に評価し、効果的に計画することができます。交換ポリシーの変更の詳細については、「 Azure 予約交換ポリシーの変更」を参照してください。
割引オプション2:Azure 節約プラン(Azure Savings Plan for compute)
では、Azure 節約プラン(Azure Savings Plan for compute)についてもご紹介していきます。
端的に表すと、「1 年または 3 年間、Azureのコンピューティングサービスに対して時間単位の固定金額を支払うことで、その期間のコストの割引を受けることができる機能」となります。
こちらも従量課金制価格から最大65%の割引が適用されるため、コスト削減/最適化には有効な手段と言えます。
前項でもご紹介したように、予約(Reservations)では購入時にリージョンやサイズを指定する必要があり、 その属性に一致するリソースに対して自動的に適用されるようになっています。
しかし、それでは「リソースの属性が固定されない」等、予約ではコストの削減が難しいケースが出てきます。
そのニーズに応えるため、2022年10月に開始された割引オプションが Azure 節約プラン(Azure Savings Plan for compute)です。
節約プランの返品・交換
Azure 節約プランは、一度購入すると返品できないため、注意が必要です。この割引オプション自体が流動的な消費に対して適用するものであるため、事前に正確な見積をすること自体難しいかと存じますが、購入の際は慎重に検討する必要があります。
参考サイト
コンピューティング用の Azure 節約プラン | Microsoft Azure
Azure 節約プランを購入する
どちらを選ぶ?ポイントについて比較してみた
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では、割引オプションを利用する際に「予約」と「Azure 節約プラン」というふたつの割引オプションのうち、どちらを選択するべきなのか。まず、ふたつの違いについて大きく5つの項目でまとめてみました。
項目 | 予約 | Azure節約プラン |
コミットメント | 指定SKU/リージョン/数量 | 時間単位の利用料 |
割引率 | 最大72% | 最大65% |
割引対象 | 特定の仮想マシンタイプやリージョンに限定される | コンピュートサービス全体に適用される |
柔軟性 | 仮想マシンタイプやリージョンを変更すると割引が適用されない | 仮想マシンタイプやリージョンを変更しても割引が適用される |
適用範囲 | 課金スコープ内の複数サブスクリプション(共有スコープ)またはサブスクリプション、リソースグループ、管理グループを選択し適用が可能 | 課金スコープ内の複数サブスクリプション(共有スコープ)またはサブスクリプション、リソースグループ、管理グループを選択し適用が可能 |
比較から考えると、大まかな使い分けは以下のようになるのではないでしょうか。
予約
- 仮想マシンタイプやリージョンに変更がなく、継続的に安定したワークロードが実行される場合
- 決まったサイズのVMが24時間365日で稼働している等、稼働が予測できる場合
Azure 節約プラン
- ワークロードが動的で、リージョンや異なるサイズの仮想マシン等を頻繁に変更する場合
- サイズや稼働時間等、リソースがどれだけ稼働するかの事前予測が難しい場合
おわりに
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今回は、Azureの代表的な割引オプションについてご紹介しました。
一見、どちらも運用が難しいように感じてしまいますが、うまく使えばコストの削減が見込める画期的な割引オプションです。本記事をみて、気になった方はぜひ導入を考えてみてはいかがでしょうか。