サーバー保守の費用は?相場感やコスト削減のためのポイントを紹介
サーバーの保守を行うためには、どうしてもコストがかかります。サーバー保守にはどの程度のコストがかかるのでしょうか?また、サーバー保守コストを削減するためにはどのような検討が有効なのでしょうか?この記事では、サーバー保守の相場観や具体的な費用項目、コスト削減のためのポイントなどを網羅的にご紹介します。
サーバー保守とは
まず、そもそもサーバー保守とはどのようなものであるか、簡単にご紹介します。
サーバー保守とは、サーバーが継続的に安定して動作するように継続的にメンテナンスを行ったり、サーバーにトラブルが発生した際に迅速に復旧させたりする業務のことです。
デジタル化が進む現代のビジネスにおいて、システムを利用しないケースは稀です。システムの安定稼働は、ビジネスの安定的な継続に直結します。システムを安定稼働させることは、ビジネスを成功させるためにも必須の取り組みといえるでしょう。
システムを安定稼働させるための取り組みの一つがサーバー保守です。サーバー保守によりシステムの障害リスクやセキュリティリスクを減らし、またシステムダウン時には迅速な復旧を実現します。このような作業を通して、ビジネスの安定的な継続に貢献するのがサーバー保守の役割です。
サーバー保守について詳しくは以下の記事で解説しております。より詳しくサーバー保守について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
※関連記事:サーバー保守とは?業務内容や重要性、運用との違いについて詳しく解説
サーバー保守費用の相場
サーバ保守費用の相場は、実施する作業内容や保守を行うエンジニアのランク、業務の実施頻度などにより費用は大きく変わってきます。よって、実際の費用を確認するためには見積もりを取得する必要があります。これから構築するサーバーの保守費用について確認したい場合であれば、サーバー構築を依頼しているベンダーに保守費用の概算を確認しておくとよいでしょう。サーバーを構築したベンダーにそのままサーバーの保守作業をお願いするケースは多いです。後になって高額の保守費用を請求されないように、事前の確認をおすすめします。
サーバー保守費用を見落とさないように注意
サーバー保守費用はサーバー構築後に必ず発生するコストです。よくあるのが、サーバーの構築費用は予算として計上していたものの、保守費用を計上していなかったというものです。初期コストとしてサーバー構築費用が発生することは多くの方が認識されている一方で、サーバー保守費用については見落とされるケースがよくあります。
サーバーを構築する場合、その時点で継続的なランニングコストが発生することを認識しておきましょう。
サーバー保守費用の構成要素
具体的に、サーバー保守費用としてどのようなコストが発生するのでしょうか。以下では、サーバー保守の費用細目をご紹介します。
メンテナンス・部品交換費用
サーバー保守作業の一つであるメンテナンス作業や機器故障時の交換作業などに対して、作業コストが発生します。作業頻度は契約にもよりますが、たとえば月次で作業を行う場合、毎月メンテナンス等のコストが発生することとなります。
人件費が主なコストであり、その他部品交換などが発生する場合は部品の購入費が実費として発生することとなります。
ライセンス費用
サーバー上で有償のソフトウェアを利用する場合、そのライセンス費用を支払う必要があります。ライセンス費用は「ライセンス保守料」といった名目で請求されることが多く、ソフトウェアを安定的に利用するための対価として支払うものです。ライセンス保守料を支払っていれば、新たに発見されたバグやセキュリティ上の問題などに対してソフトウェアベンダーが修正を行ってくれます。ビジネス目的でソフトウェアを利用する場合は、ライセンス保守料は必須で支払うべき費用といえます。
パッチあて作業費用
ソフトウェアにバグやセキュリティ上の問題が発見された場合、一般的にソフトウェアベンダーはそれらを修正するための「パッチ」を配布することとなります。このパッチをサーバーに適用するための作業がパッチあて作業です。
パッチあてにおいては、まず「パッチあてを行うか否か」を検討します。配布されたパッチは全てサーバーに適用するわけではありません。セキュリティパッチであれば基本的には適用するべきですが、機能追加などの内容であれば、システムの安定性を重視したり、UIを変更しないようにしたりするために、パッチの適用を行わないこともあります。このような検討費用や実際のパッチあて作業費用などがサーバー保守費用として発生することとなります。
バックアップ作業費用
バックアップ作業についてはサーバー運用費用として計上されることも多いですが、保守作業の一環としてバックアップ作業を行う場合は保守コストとなります。
現代的なシステムではバックアップが自動化されているケースも多いですが、レガシーシステムにおいては手動でバックアップを行う設計となっていることもあります。たとえばバックアップディスクの入れ替え作業やバックアップディスクの保管、過去のバックアップデータの削除といった作業のための人件費が発生します。
サーバー更改費用
サーバーの保守期限が切れた場合や、利用者が増加して既存のサーバーでは処理をしきれなくなった場合などは、サーバーの更改や増築を行います。サーバー更改・増築のためには、スペックの検討やサーバーの調達、移行方法の検討、移行作業の実施など、様々な作業が必要となります。
毎年発生する費用ではないため見落としがちですが、サーバー更改を行わなければならないタイミングでは、予算の計上忘れに注意しましょう。多くのサーバーは5年で保守期限が切れますので、5年ごとにサーバーの更改を行う必要があります。
サーバー利用費用
純粋な保守費用ではありませんが、レンタルサーバーやクラウドサービス、リースなど、サーバーを購入せず利用料などを支払う形で利用する場合、継続的にサーバー利用のためのランニングコストが発生します。
近年では、物理的なサーバーを購入せずサービスの形でサーバーを利用するケースも増えています。契約内容によっては、サーバーの利用頻度や利用ストレージ量などによりコストが変わってくることもあります。事前に料金が確定しない契約形態である場合、あらかじめどの程度のコストが発生しそうかシミュレーションしておくことをおすすめします。
データセンター利用料
こちらも純粋な保守費用ではありませんが、データセンターの利用料についてもサーバーの稼働に関して継続的に必要となるコストですので、押さえておくことをおすすめします。
多くの場合、安全性や安定性の観点から、サーバーはデータセンターに設置します。データセンターを利用するためには、もちろん利用料が必要です。
一般的にデータセンターの利用量は利用するラック数に応じて発生します。ラックとはサーバーやストレージなどを格納するための棚のことです。データセンターには多数のラックが並べられており、そちらを間借りする形で利用できます。利用するデータセンターにもよりますが、1ラックの半分や四分の一といった形で部分的にラックを利用できるケースもあります。小規模のシステムであれば、1ラックを占有しなくても十分サーバーを設置するスペースを確保できます。
その他、データセンター内のネットワークを利用するための費用や、セキュリティ対策を行うための費用などがオプションとしてかかる場合もあります。
サーバー保守の依頼方法による費用の違い
サーバー保守を実施する方法は、大きく「自社要員で実施する」「保守契約により外注する」「スポットで依頼する」という3つの方法があります。
ここでは、それぞれの方法によりどのように保守コストが変わってくるかご紹介します。
自社要員で実施する場合
自社要員で実施する場合、基本的に社内人件費のコストのみが発生することとなります。後述する「保守契約により外注する場合」「スポットで依頼する場合」と比較すると、コストを安く抑えやすい方法です。
一方で、社内要員で保守作業を実施するためには、サーバー保守に精通したエンジニア要員が必要です。このような人材を確保することが難しい場合は、外注も検討する必要があります。
保守契約により外注する場合
保守ベンダーと保守契約を締結し、様々な作業を包括的に実施してもらう方法です。保守契約を結ぶ場合、一定の作業内容が事前に定義され、それに沿って保守作業が行われます。トラブル対応なども契約に含まれますが、トラブルの発生有無にかかわらず一定のコストが必要です。後述するスポットでの依頼と比較するとコスト面では劣りますが、「トラブルが発生した際に迅速な対応が期待できる」「個別に作業を発注しなくても、各種メンテナンスやパッチあて作業などを実施してくれる」といった利便性の面から、メリットがある方法です。
スポットで依頼する場合
必要な作業が発生した場合に、スポットで作業を依頼する方法です。コスト面では優れた方法ではありますが、サーバー保守として実施すべき作業を定義したうえで、作業の実施をベンダーに発注しなければならないことから、手間がかかる方法でもあります。
スポットで保守作業を依頼する方法は、基本的には重要度が低いサーバーに対して検討すべきものです。サーバーの故障によりシステムが停止しても一定期間の猶予があるシステムなどについては、コスト面から優れた選択肢となります。
ここまでの内容を整理すると、以下のとおりです。
・社内にエンジニアがいる場合、コスト面から自社要員でサーバー保守を実施する方法がおすすめです。
・外注する場合、保守契約を締結することで包括的に保守作業を実施してもらえます。
・重要度が低いシステムについては、スポットで作業を依頼することで保守コストを抑えることも可能です。
サーバー保守費用の削減方法
サーバー保守を実施するためにはどうしてもコストがかかります。どうすればコストを削減することができるのでしょうか。以下では、主なサーバー保守コストの削減方法についてご紹介します。
作業内容と作業頻度の見直し
まずは、作業内容と作業頻度の見直しです。現在契約している保守契約において、過剰なサービスが提供されていることもあります。この場合、作業内容や作業頻度を見直すことで保守コストを抑えることができます。
作業内容・作業頻度の見直しと表裏一体となるのがSLAです。SLAとは「サービスレベルアグリーメント」の略称であり、どの程度の水準でシステムを利用者に提供するかを定義するものです。たとえばSLAで24時間365日システムを稼働させ続けることを定義している場合には高いコストがかかりますが、夜間はシステムを停止させて良いのであればコストを抑えることができます。
保守契約における作業内容や作業頻度のレベルを落とすためには、このSLAの水準を落とす必要があります。現在のSLAのレベルを確認したうえで、過剰なものとなっている場合はSLAを見直すことをおすすめします。
依頼方法の見直し
あまり利用されていないシステムや重要度が低いシステムについては、保守契約を締結して継続的な保守作業を実施するのではなく、スポットで作業を依頼する、もしくは自社で保守作業を実施することでコストを抑えることができます。
たとえば、社内のeラーニングシステムなど、利用者が社内に限定されており、また自社の収益や事業に直接的に影響しないものであれば、保守レベルを落とすことも検討できます。
仮想サーバーの利用
物理サーバーの保守にはどうしてもコストがかかります。仮想サーバーを利用することで、保守コストの削減を実現できます。
仮想サーバーとは、物理サーバーの中に仮想的に構築されたサーバーのことです。一つのハイスペックな物理サーバーを用意し、そのサーバーの中に多数の仮想サーバーを構築します。これにより、保守対象となる物理サーバーの数を減らすことができます。
仮想サーバーには、保守コストの削減の他にも各サーバーに割り当てるCPUやメモリ、ディスク容量などの柔軟な変更や、サーバー立ち上げ期間の短縮といったメリットもあります。
クラウドサービスの利用
もしくは、クラウドサービスを活用することで、そもそも保守作業を発生させないようにすることもできます。クラウドサービスとは、クラウドサービス提供事業者が保有する大量のサーバーを部分的に利用させてもらえるサービスです。利用するクラウドサービスによっては、サーバーの管理責任がクラウドサービス提供事業者側にあり、利用者側でサーバーのメンテナンスやパッチあてといった保守作業を行う必要がない場合もあります。
ただし、バックアップの取得等一部の作業についてはクラウドサービスを利用する場合も自社で考慮しなければなりません。一般的なクラウドサービスでは、バックアップサービスの提供も行っていますので、併せて検討しましょう。
まとめ
この記事では、サーバー保守の費用について、相場感や具体的な費用項目、費用の削減策などについてご紹介しました。
サーバーを導入する際、サーバーの購入費用や設定作業費用などの初期コストについては意識されやすいですが、継続的に発生するサーバー保守費用は見落とされがちです。まず、サーバー導入時にどの程度の保守コストが発生するか検討しておくことがポイントです。
また、既に運用しているサーバーの保守コストを削減するためには、SLAの見直しを含めた作業内容・作業頻度の再検討や、仮想サーバー・クラウドサービスへの移行などが有効となります。