
【速報】Google Cloud Next 2025:Opening Keynoteレポート(AIとクラウドの新時代が到来)
2025年4月9日(現地時間)、ラスベガスにてGoogle主催のイベント「Google Cloud Next 2025」が開催されました。
開会基調講演「Opening Keynote: The new way to cloud」ではGoogle Cloud CEOのトーマス・クリアン氏、GoogleおよびAlphabet CEOのサンダー・ピチャイ氏などが登壇し、テクノロジーの大変革期におけるGoogle Cloudのビジョンとイノベーションを力強く示します。
講演では、Googleが描く「AI主導の未来」が強調され、AI技術があらゆる業界のデジタルトランスフォーメーションを加速するというメッセージが伝えられました。
特に、AIとクラウドの統合により、企業はより効率的かつ柔軟にデータを活用できる時代が到来したと述べられました。このビジョンを実現するために、GoogleはAI技術を駆使し、企業の生産性と競争力を向上させるツールを提供しています。
主な新技術・新製品
講演は、「テクノロジーが地殻変動的なシフトを迎えている」という言葉で幕を開けます。
Googleは、AIとクラウドの融合によって業務変革を加速する、新時代のクラウド戦略を発表。特にGeminiを中心としたAI技術の進化と、それを支えるインフラの強化が大きなテーマでした。
以下は、多数紹介された新発表、新製品の中から主な発表を抜粋してご紹介します。
Gemini 2.5 Pro / Gemini 2.5 Flash
GoogleのAIモデル「Gemini」シリーズも大きな進化を遂げました。ピチャイ氏は、最新の「Gemini 2.5 Pro」を「世界で最もインテリジェントなAIモデル」と称し、Chatbot Arenaリーダーボードで1位を獲得したことを発表。高度な推論能力を備え、ルービックキューブのシミュレーションや物理学の可視化など、複雑なタスクを処理するデモが披露されました。
さらに、低遅延かつコスト効率に優れた「Gemini 2.5 Flash」も発表され、企業が予算とパフォーマンスを調整しながらAIを活用できる柔軟性が強調されました。これらのモデルは、Google WorkspaceやVert.ex AIを通じて、既に20億人以上のビジネスユーザーに利用されています。
Vertex AI エージェント・ビルダー
プロンプト設計からRAG(検索拡張生成)、対話型エージェントの構築までをノーコードで実現可能に。BigQueryやCloud Storage、さらには社内データとも連携でき、複雑な業務を自動化するエンタープライズ向けエージェントを迅速に構築できます。
第7世代TPU「Ironwood」
ピチャイ氏は、2025年に総額750億ドルの設備投資を計画し、サーバーやデータセンターの強化に注力すると発表。特に注目されたのは、効率性と電力性能の最適化がされており、Google独自のAIワークロード向けに最適化された第7世代TPU「Ironwood」です。
このチップは、初代TPUと比べて3600倍の性能向上を実現し、42.5エクサフロップスの計算能力を持つ、世界最強のAIチップとされています。これにより、次世代のAIモデル開発が加速します。
また、「AIハイパーコンピュータ」は、AIの展開を簡素化し、パフォーマンスを向上させるスーパーコンピューティングシステムとして紹介されました。
NVIDIAとの連携により、最新のBlackwell GPUや次世代Vera Rubin GPUも提供され、顧客の多様なニーズに対応します。さらに、Googleのグローバルなプライベートネットワーク「Cloud WAN」が企業向けに開放され、アプリケーション性能が40%向上しつつコストを削減するソリューションとして注目されました。
Google Agent Space
Google Cloudは、新たに「Google Agent Space」を発表し、AIエージェントの開発と活用を加速させました。これは、社員が企業データを検索し、AIエージェントと対話し、業務を自動化できるプラットフォームです。デモでは、銀行の関係マネージャーが顧客のキャッシュフロー問題を特定し、即座に対応策を提案する様子が披露され、コードを書かずにカスタムエージェントを作成する手軽さが強調されました。
さらに、「Agent Development Kit」や「エージェント間プロトコル」を導入し、マルチエージェントシステムの構築を支援。Salesforceのマーク・ベニオフCEOは、「Agent Force」とGeminiの統合で、人的増強と生産性向上を実現していると述べました。
Gemini Code Assist
旧「Duet AI for Developers」が進化しました。企業専用のコードベースやセキュリティポリシーに基づいてコード補完、エラーチェック、テストコードの生成などを実施。VS CodeなどのIDEに統合されており、セキュアなコーディングが可能です。
Gemini for Google Workspace
Gmail、Docs、SheetsなどにAIが深く統合され、要約、ドラフト作成、データ分析を支援します。音声通話や会議中の議事録生成も実現し、ワークフローを大幅に効率化しました。
Gemini in Security Operations
AIを使って脅威の調査やセキュリティログの分析を高速化。Google CloudのMandiantチームによる知見と連携し、リアルタイムの脅威検知・対応を実現します。
Google Unified Security
セキュリティでは「Google Unified Security」が発表され、脅威検出や対応をAIで強化。開発者とセキュリティアナリストの連携デモでは、データ漏洩や悪意あるトラフィックをリアルタイムで検出し、即座に対策を講じる様子が示されました。
新しいクラウドインフラ・サービス
Cloud TPUのスケーラビリティ向上、Google Distributed Cloud(GDC)の拡張、さらにCloud RunやBigQueryへのAI機能の統合も進展。オンプレミス環境との連携や規制対応が強化された点も注目です。
企業事例:AIの実践的活用
Google CloudのAI技術がすでに多くの企業で活用されている事例も紹介されました。
マクドナルド | 店舗でのエッジコンピューティングとGeminiを活用し、リアルタイムデータに基づく予測メンテナンスやAIアシスタントを導入。200万人の従業員の労働環境を改善。 |
Intuit | 税務申告ソフトTurboTaxでDocument AIを活用し、複雑なフォームのデータ入力を自動化。数百万人の時間を節約。 |
Deutsche Bank | GeminiとVert.ex AIを活用した「DB Luminina」で、400ページの市場レポートを数秒で3ページに要約し、トレーダーや顧客に迅速な分析を提供。 |
Mattel | 消費者フィードバックをリアルタイムで分析し、Barbie DreamhouseやFisher-Price製品の改良に成功。 |
特に注目されたのは、マクドナルドやHSBCなどの企業が、Google CloudのAIと機械学習ツールを活用して業務の効率化を図り、顧客サービスやデータ分析の質を向上させている事例です。
これにより、Google CloudがAIとデータ解析の分野で圧倒的なリーダーシップを発揮していることが明らかになりました。これらの事例は、AIが単なる技術を超え、業務効率や顧客体験の向上に直結する現実を示しています。
さいごに
クリアン氏は、Google Cloudが「AIに最適化されたプラットフォーム」「オープンなマルチクラウド」「相互運用性」を提供し、企業の成長を支えると締めくくりました。
2026年4月22日~24日に再びラスベガスで開催される次回イベントへの招待とともに、参加者への感謝が述べられ、盛大な拍手の中で講演は終了しました。
Gemini 2.5やTPU Ironwood、Agent Spaceなどの革新的な発表は、企業が直面する課題を解決し、新たな価値を創出する力を示しています。参加者にとっては、Google Cloudが提供する「新しいクラウドの形」を体感し、自社の変革にどう活かすかを考える貴重な機会となったでしょう。