サーバーの保守期限とは?一般的なメーカーのサポート期間を紹介
サーバー製品には必ず保守期限というものが設定されています。保守期限を超えたサーバーは、そのままではメーカーからの保守サポートを受けることができなくなります。新しい環境への移行や延長サポートの検討などを行わなければなりません。
この記事では、サーバー保守やサーバーの管理をご担当されている方に向けて、サーバーの保守期限について、保守切れのリスクや保守期限の調べ方、一般的なメーカーの保守期限、保守切れ時の対応など、網羅的にご紹介します。
サーバー保守とは
はじめに、そもそもサーバー保守とはどのようなものか、簡単にご紹介します。
サーバー保守とは、サーバーが安定して動作するように日々のメンテナンスを行いつつ、サーバーにトラブルが発生した場合には復旧対応を行う業務のことです。定期的なメンテナンスやパッチあてによりシステムの障害リスクやセキュリティリスクを減したり、システムに障害が発生した際には迅速に復旧することでビジネスへのインパクトをできるだけ抑えたりと、サーバーを利用する上でサーバー保守作業は必須の取り組みとなります。
サーバー保守について詳しくは以下の記事で解説しております。より詳しくサーバー保守について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
※関連記事:サーバー保守とは?業務内容や重要性、運用との違いについて詳しく解説
サーバーの保守期限とは
サーバーは一度導入したら永続的に利用できるわけではありません。どのサーバーにも、保守期限が設定されています。
保守期限とは、サーバーの保守を実施してもらえる期間のことです。物理的なサーバー機器であれば、一般的に購入後5年程度に設定されています。また、サーバー上で動作するサーバーOSやデータベース、業務用ソフトなどは製品により異なる保守期限が設定されます。
保守期限が設定されている理由
なぜサーバーには保守期限が設定されているのでしょうか。その理由は様々ですが、一つにはメーカー側で長期間交換用の部品を確保しておくことが難しいという点が挙げられます。期限を設けずにサーバーの保守を行ってしまうと、過去のサーバー製品の交換用部品も継続的に確保しなければならなくなります。これはメーカーにとって大きな負担となります。
また、5年間という期間が設定されている理由は、会計・税務上サーバーの減価償却期間が5年と定められているという点が大きいと考えられます。購入したサーバーは会計・税務上資産として扱われ、5年間かけて減価償却され、費用化されていきます。購入後5年を経過したサーバーは減価償却が完了することから、簿価上の価値はなくなりますが、5年を経過する前にサーバーの入れ替えを行うとまだ価値のある資産を捨てるという扱いとなり、資産の減損処理が必要です。このような理由から、5年という区切りがサーバーの入れ替えのタイミングとして適しており、サーバー保守期限も合わせて5年と設定されていると考えられます。
その他にも、電子機器であるサーバーは、一定年数が経過するとどうしても劣化が発生し故障しやすくなることや、導入後一定期間経過したサーバーは性能面で不足が生じる時期であることなども理由として考えられます。
保守期限と保証期間の違い
サーバー製品によっては、保守期限とは別に「保証期間」が設定されていることもあります。保証期間とは、サーバーに不具合が発生した場合に、無償で修理に応じてくれる期間のことです。メーカーや製品にもよりますが、購入後1年~3年程度であれば、保証期間内として部品の故障やトラブル発生時に無償で対応してくれます。
保証期間が終了した後であっても、保守期限の到来までの間は、有償となりますがメーカーによるサポートを受けることができます。
保守期限が切れるとどうなるか
保守期限が切れたサーバーをそのまま利用し続けることにはリスクがあります。具体的には、以下のような問題が発生します。
〇トラブル時に解決できなくなるリスク
サーバーに不具合が発生した際に、メーカーによるサポートを受けられず解決が不可能となる可能性があります。
〇部品交換ができなくなるリスク
保守切れ状態のサーバーは交換用の部品が確保されないため、故障時に部品交換による対応ができなくなるリスクがあります。
〇データ消失のリスク
保守切れ状態のサーバーはハードディスクやSSDなどのディスク故障時に適切な交換を行えない可能性があり、注意しなければデータが消失してしまうリスクがあります。
〇サイバー攻撃を受けるリスク
保守期限以降に発見されたセキュリティ上の脆弱性には、メーカー側は対応しません。よって、保守切れ状態のサーバーはサイバー攻撃に対する防御を行えなくなり、セキュリティ上の重大なリスクとなります。
〇最新の製品や機能が利用できないリスク
製品の機能がアップデートされず、最新の機能を利用することができないこともあります。
保守切れ状態のサーバーを利用し続けるリスクについて、詳しくは以下の記事で解説しております。併せてご覧ください。
※関連記事:サーバー保守切れのリスクとは?具体例と対処方法を併せて紹介
このようなリスクが発生することを踏まえると、保守期限が切れた状態のサーバーを利用し続けることは極めて危険だと考えられます。後述するとおり、サーバーの更改や延長サポートの検討などを行う必要があります。
保守期限の調べ方
サーバーは物理的なハードウェアだけでなく、OSやソフトウェアなど様々な要素から構成されます。以下では、サーバーを構成する各要素について、保守期限をどのように調べるかについて解説します。
OS
サーバー上では、必ずOSと呼ばれる基本ソフトウェアが動作することとなります。OSのベンダーは各OSの保守期限を公表しています。たとえば、Microsoft社のサーバー向けOS「Windows Server 2016」であれば、2022年1月11日に標準の保守期限が到来を迎えており、2027年1月12日までの間は延長サポートを受けることができます。
自社のサーバーで利用している全てのOSについて、いつまでサポートを受けることができるのかについては、必ず確認するようにしましょう。
ソフトウェア
サーバー上では、データベースやWebサーバー、アプリケーションサーバーなど様々なソフトウェアが動作しています。これらのソフトウェアについても、製品により保守期限が定められています。
たとえばデータベース製品である「Oracle 19c」であれば、2026年4月30日まではサポートを受けることができます。各製品の保守期限はベンダーが公表していますので、OSと同様に自社のサーバーで動作している全てのソフトウェアについて保守期限を確認しておく必要があります。
ハードウェア
サーバー機器などのハードウェアについては、OSやソフトウェアとは異なり特定の日付までの保守期限は定められておらず、購入後5年間など購入時期に関わらず一定の期間サポートを受けられる契約となっているケースが多いです。
ただし、一部メーカーについては特定期日に保守期限を設定しているケースもあるため、正確な保守期間については各メーカーのWebサイトや購入時の契約書・規約等で確認する必要があります。
一般的なメーカーの保守期限
以下では、主要なメーカーの保守期限についてご紹介します。
富士通
富士通では、ハードウェア製品の標準的な保守期限を5年と定めています。ただし、製品の購入後5年を経過した製品だけでなく、最終出荷日から5年を経過した製品についても保守期限を迎えることとしているため、注意が必要です。
また、延長サポートサービスとして保守期限が過ぎた製品に対する延長保守を受けることも可能です。製品にもよりますが、最長で7年から10年までサポートを継続することもできます。
※参考:富士通の製品保守の期間の考え方
NEC
NECも富士通と同様に、ハードウェア製品についての標準的な保守期限は機器の引き渡し日から5年間に設定されています。5年以上の長期保守については、製品ごとの個別検討となります。
なお、同社ではソフトウェア製品についても出荷停止後5年間の標準サポートを提供しています。その後、延長サポート3年、限定サポート2年を追加し、合計10年間のサポートを受けることも可能です。
IBM
IBMでは、一律何年という形で保守期限が設定されておらず、製品により保守の廃止が通知されることとなります。IBM社製品の保守期限を調べるためには、同社が提供する「Product Lifecycle」というサービスを利用するとよいでしょう。同サービスでは、製品番号やIDを入力するだけで、保守期限を確認することができます。
※参考:サポート終了日を確認する方法 – IBM ハードウェア製品
Supermicro
AI向け高性能GPUサーバーなどを提供するSupermicro社では、5年間の保守期限の他に一定の保証期間を設けています。一般的なサーバーについては3年間の動作保証と1年間の部品交換保証が設定されており、サーバーの故障が発生した場合であってもこの期間内であれば無償で対応してもらえます。
※参考:Supermicro 限定保証
サーバー保守期限が切れた時の対応
サーバーの保守期限が切れた場合には、具体的にどのような対応をとるべきなのでしょうか。以下でご紹介します。
サーバーの更改
最もシンプルな方法は、サーバーの更改を行うというものです。サーバーを更改するためには、大きく以下の3つの方法が考えられます。
〇既存環境と同様の物理サーバーを導入する
既存環境と同じように、物理サーバーを購入して移行を行う方法です。現在の構成を変更する必要が無いため、比較的労力がかかりにくく、移行に関するトラブルも発生しにくいという点がメリットです。
〇仮想化環境やHPCなどに一元化する
仮想化環境やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)など、大規模な物理サーバー上で複数の仮想マシンを動作させる環境へ移行を行う方法も考えられます。これらの環境を利用すれば、個別に物理サーバーを購入する必要がなくなるため、サーバーの保守作業にかかる負荷を軽減することができます。
その他にも、仮想化環境やHPCではサーバーに割り振るCPUやメモリ、ディスクなどを柔軟に変更することもできるため、利用者の拡大や減少にも対応しやすくなる点もメリットといえるでしょう。
〇クラウドへ移行する
近年では、クラウドサービス事業者が提供するサーバー環境を利用するケースも増えました。クラウドへ移行を行うことで、物理サーバーの運用保守作業から解放されるというメリットがあります。ただし、現在利用しているサーバーやアプリケーションの種類によっては、クラウドへの移行が難しい場合もあるため、注意が必要です。クラウド移行の可否については個別検討が必要となります。
延長サポートの検討
サーバー保守期限が切れた後も、メーカーや製品によっては延長サポートを受けることができるケースもあります。物理的なサーバー機器だけでなく、サーバーOSやデータベース製品などにおいても延長サポートが提供されているケースもあるため、確認してみるとよいでしょう。
延長サポートはどうしても割高となりがちですが、サーバー更改にかかる負荷やコストを抑えることができる方法でもあります。今後廃止することが見込まれているシステムや、利用者が少ないシステムなどにおいては検討する余地がある方法だといえます。
第三者にサポートを依頼
各サーバー製品に対して専門的な知見を持つ、メーカー以外の第三者にサポートを依頼することも可能です。第三者による保守は、メーカーによる保守期限が到来し、さらにメーカーによる延長サポートも提供されない製品のサーバー保守を延長する手段として有効な選択肢となります。
ただし、場合によっては部品が確保できない場合がある点には注意が必要です。また、メーカーによるオフィシャルなサポートを受けることはできませんので、対応できる範囲に限界があることもあります。
まとめ
この記事では、サーバーの保守期限に関して保守切れのリスクや対応方法、具体的な保守期限の調べ方などについてご紹介しました。サーバーを安定して利用し続けるためには、社内で利用しているサーバーの保守期限を正確に把握しておくことが重要となります。また、サーバー機器自体だけでなく、サーバー上で動作するOSやミドルウェア、ソフトウェアなどについても同様に保守期限を意識した対応が必要です。これらの保守切れを放置してしまうと、セキュリティ観点でリスクが発生することもあります。
保守期限の管理については、資産管理システムなどの仕組みを用いることも有効な選択肢です。資産管理システムを導入することで、自社のサーバーの保守期限やサーバー上で動作しているソフトウェアなどを一元的に管理することができます。管理すべきサーバーが多い企業においては、システム化についても検討してみることをおすすめします。