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AWSコスト管理担当者必見!コストを管理する上で重要な考え方やサービスを解説

AWSコスト管理担当者必見!コストを管理する上で重要な考え方やサービスを解説

クラウドサービスの利用がますます広がる中、AWSの導入によってビジネスの可能性は大きく広がりました。しかし、その一方で、AWSのコスト管理は企業にとって大きな課題となっています。多種多様なサービス、従量課金制、そして利用状況の変動など、コスト構造は複雑で、不用意な利用は思わぬ出費につながる可能性があります。

本記事では、AWSのコストを効果的に管理し、最適化するための具体的な方法やツールについて解説します。AWSを利用している、またはこれから導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

AWSコスト管理とは?

AWSのコスト管理を行う男性

AWSを利用する上で、発生する費用の状況を把握し、最適化するための取り組みです。その利用状況によっては、想定外の費用が発生してしまう可能性があります。

AWSは使用した分だけ料金が発生する「従量課金制」を採用しています。さらに、非常に多くのサービスを提供しているため、適切に管理しなければ予期せぬ高額な請求が発生するリスクがあります。こうした想定外の費用が発生することで、企業の負担となったり、サービスが停止してしまうことを防ぐためにコスト管理が必要です。

運用担当者やコスト管理者にとって、AWSコスト管理は、クラウドの利用をビジネスの成長と効率性の向上に繋げるために欠かせない要素です。

なぜAWSコスト管理が重要なのか

なぜAWSコスト管理が重要なのか

ここからは、AWSの運用においてコスト管理が必要な理由を詳しく解説します。

コストを見える化するため

AWS環境では、多数のサービスやリソースが同時に稼働し、それぞれがコストに影響を与えます。コストの見える化を行うことで、どのサービスが最も多くのコストを消費しているかを明確にし、適切な管理が可能です。

AWSのCost Explorerや請求ダッシュボード、コスト配分タグを活用することで、リアルタイムでリソースの使用状況と費用を視覚的に把握し、運用担当者はリソースの無駄を削減できます。

コスト削減のため

AWSにおけるコスト削減の鍵は、リソースの最適化です。リザーブドインスタンスやSavings Plansの導入、Auto Scalingによる動的なリソース管理が効果的です。さらに、定期的に未使用リソースを監視し、不要なEC2インスタンスやEBSボリュームを削除することでコスト削減が可能です。

Trusted Advisorを用いることで、コスト最適化のための具体的な提案を行い、リソースの無駄を防ぐことができます。

リソースのパフォーマンス維持のため

AWSのコスト管理は、単に費用を抑えるだけでなく、リソースのパフォーマンス維持にも深く関わっています。この関係性について、より詳しく解説していきます。

AWSでは、インスタンスの種類やサイズを細かく選択できます。適切なサイズを選ばないと、必要以上のリソースを割り当ててしまい、無駄なコストが発生します。

リソースが不足すると、処理速度が遅くなったり、応答性が悪くなったりします。コスト管理を通じて利用状況を分析し、必要最低限のリソースサイズに調整することで、コスト削減とパフォーマンス維持の両立を図ることができます。

将来のコスト予測をするため

AWS Cost ExplorerやAWS Budgetsを活用することで、過去の使用履歴に基づいた将来のコスト予測が可能です。これにより、企業はリソース需要を計画的に管理し、予算超過のリスクを軽減できます。

特に、ビジネスの成長や需要の変動を考慮した予測は、リザーブドインスタンスの購入計画やリソース増強のタイミングを最適化し、クラウドコストの最適化に貢献します。

AWSが提供するコスト管理サービス

AWSは、企業がクラウドリソースを効率的に利用し、コストを最適化できるように、さまざまなコスト管理サービスを提供しています。

これらのサービスを適切に活用することで、運用担当者はAWSのコストを詳細に把握し、コスト削減や予算管理をより効果的に行うことができます。ここでは、AWSが提供する主要なコスト管理ツールとその機能について詳しく解説します。

Billing and Cost Management(請求とコスト管理ダッシュボード)

Billing and Cost Management

AWSの請求とコスト管理のダッシュボード機能は、AWSアカウントにおけるすべての請求情報を一元的に確認できるダッシュボードです。コスト管理担当者が、まず最初に確認するべき場所といえます。

このダッシュボードでは、請求額や利用料金の詳細、過去の利用履歴、支払い履歴など、あらゆるコスト関連の情報が提供されます。例えば、ダッシュボードでは月ごとの請求額を簡単に確認でき、どのサービスが最も多くのコストを発生させているのかを把握することができます。

また、AWSの請求情報は利用可能な場合 24 時間ごとに一度以上更新されるため、運用担当者は予期せぬコスト増加を素早く察知し、適切な対策を講じることが可能です。特に、複数のサービスを並行して利用している場合、各サービスの利用状況とコストを比較することで、運用の効率化を図ることができます。

Cost Explorer

「AWS Cost Explorer」は、AWSが提供する最も強力なコスト分析ツールの一つです。このツールを使用することで、AWSのコストと利用状況を詳細に分析し、過去の使用状況や将来のコスト予測ができます。

また、Cost Explorerは、グラフや表形式で視覚的にデータを確認できるため、運用担当者は複雑なデータを簡単に理解し、コスト削減の機会を見つけやすくなります。

  • 過去13か月間の利用データとコストを分析し、傾向を把握する
  • 日次、月次、年次のコストと使用状況を確認する
  • サービスやアカウント、リージョンごとにコストをフィルタリングし分析する
  • リザーブドインスタンスやSavings Plansの適用効果を評価し、最適な購入プランを提案する

これらにより、運用担当者はコストの変動要因を理解し、特定のサービスやリージョンでのコスト増加を防ぐための対策が可能です。また、Cost Explorerには「コスト予測」機能があり、将来の利用量に基づいてコストを予測できるため、計画的なリソース管理ができます。

コスト配分タグ

コスト配分タグ は、AWSリソース(EC2インスタンス、S3バケットなど)にラベル付けをすることで、そのリソースにかかるコストを詳細に追跡できる機能です。

AWSリソースにタグを付けることで、どのリソースがどのプロジェクトに関連しているか、どの部門が最もコストを消費しているかを簡単に追跡できます。タグ付けを行うことで、コストの透明性を向上させ、運用効率の向上に役立ちます。

例えば、開発チームと運用チームが同じAWSアカウントで複数のリソースを共有している場合、それぞれのチームに関連するリソースに「dev」や「ops」といったタグを付けることで、各チームのコストを正確に割り当てることができます。これにより、プロジェクトや部門ごとのコストを細かく分析し、どこにコスト削減の余地があるかを明確にすることが可能です。

また、コスト配分タグは「AWS Cost Explorer」と連携して動作し、タグごとにコストを分析することができます。これにより、プロジェクトベースのコスト管理や、部門別予算管理がより容易に行えるようになります。

AWS Budget

AWS Budget

「AWS Budget」は、AWSのコスト管理における予算設定ツールです。運用担当者は、事前に設定した予算に基づいて、AWSリソースの使用量やコストを監視し、予算の超過を防ぐことができます。

予算を超過しそうな場合や、設定した使用量に近づいた場合には、自動的にアラートが送信されるため、運用中にコストが意図せず増加することを防ぐことができます。

AWS Organizations:複数アカウントの請求管理

大規模な企業や多くのプロジェクトを運用している企業では、複数のAWSアカウントを管理するケースが一般的です。そうした場合、「AWS Organizations」を利用することで、複数アカウントの請求を一元管理することが可能です。Organizationsは、組織全体の請求を集約し、各アカウントの利用状況とコストを個別に追跡しながら、全体的なコスト管理を効率化します。

Organizationsを使用することで、以下のようなメリットがあります:

  • 単一の請求書で複数アカウントのコストをまとめて管理
  • 各アカウントごとに個別のコスト配分を確認
  • 特定のアカウントやサービスに対してリソース使用制限を設定し、コスト増加を防ぐ
  • Savings Plansやリザーブドインスタンスの割引を組織全体で共有し、コストを最適化

このように、AWS Organizationsは、複数のプロジェクトや部門が独立したアカウントを持ちながらも、統一されたコスト管理を行うために不可欠なサービスです。

AWS Trusted Advisor:コストの無駄を発見

「AWS Trusted Advisor」は、AWS環境のベストプラクティスに基づいたアドバイスを提供し、コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、信頼性の向上に役立つツールです。特に「コスト最適化」の項目では、運用担当者がコストの無駄を発見し、改善策を実行するための具体的な提案が提供されます。

Trusted Advisorが提供するコスト最適化に関するチェックの例として、次のような項目があります:

  • 使われていないEC2インスタンスやEBSボリュームの特定と削除
  • 過剰にプロビジョニングされているリソースの縮小提案
  • リザーブドインスタンスの購入提案
  • S3の不要なデータストレージの削減

これらの提案を活用することで、運用担当者は無駄なコストを抑え、クラウドインフラの効率を最大化できます。さらに、Trusted Advisorは自動的にAWSの環境をスキャンしてレポートを提供するため、常に最新の情報に基づいてアクションを取ることが可能です。

AWS Billing and Cost Management の機能

企業でAWSコスト管理を行う際、必須のサービスがBilling and Cost Managementです。ここでは、このサービスの主な機能を解説します。

請求と支払い

AWS Billing and Cost Managementは、AWSリソースの使用量に基づいて自動的に請求書を作成し、支払い状況を管理します。請求書には、使用したサービスの詳細が含まれ、運用担当者はこれを通じてコストの把握と支払いの管理が可能です。また、支払いはクレジットカードや銀行振込を利用でき、複数通貨での対応も可能です。複数アカウントを持つ企業は、AWS Organizationsを使って一元管理し、全体の請求をまとめて処理できます。

コスト分析

AWSのコスト分析機能では、Cost Explorerや請求ダッシュボードを活用して、サービスごとの利用状況とコストを詳細に分析できます。運用担当者は、どのリソースが最もコストを生んでいるかを特定し、使用トレンドを視覚的に把握することで、最適なリソース配分を実現できます。また、過去の利用データに基づいて将来のコストを予測し、コスト効率の改善に役立ちます。

コストの整理

AWSでは、コスト配分タグやリソースグループを使用して、リソースごとにコストを整理できます。これにより、プロジェクト、部門、チームごとに費用を追跡し、責任の所在を明確にできます。運用担当者は、タグを活用してリソースを分類し、タグベースでのコスト分析やレポートを作成できます。これにより、より効率的な予算管理や、無駄なリソースの削減が可能です。

予算編成と計画

AWS Budgetsは、運用担当者が特定の予算を設定し、それに基づいてAWSリソースの利用を追跡するための強力なツールです。予算のしきい値を超えた際にはアラートが発生し、予算超過を未然に防ぐことができます。さらに、予算管理は部門やプロジェクト単位で行うことが可能で、リソースの効率的な割り当てと計画的なコスト管理が促進されます。

コスト削減とコミットメント

WSのコスト削減には、リザーブドインスタンスやSavings Plansの活用が効果的です。これらのコミットメントベースのプランにより、長期的にリソースを使用する場合、大幅な割引を受けられます。また、AWS Trusted Advisorを利用することで、未使用のリソースを特定し、不要なコストを削減する提案を受けられます。運用担当者はこれらのツールを使い、コスト最適化を実現できます。

AWSでコスト管理を行う際のコツ

AWSでコスト管理を行う際のコツ

AWSはその柔軟性とスケーラビリティの高さから、企業が必要に応じてリソースを追加・削減できる利点がありますが、その一方で、適切な管理を怠るとコストが急激に増加するリスクもあります。AWSのコスト管理を効率的に行うための基本的なコツを以下に紹介します。

タグ付けを活用する

AWSでは、リソースにタグを付けることでプロジェクトや部門ごとにリソースを分類しやすくなります。タグを活用することで、コストを細分化して管理でき、どのプロジェクトや部門がどれだけコストを消費しているかを簡単に把握できます。

また、タグをベースにしたレポートを生成することで、リソース利用状況の把握も容易になり、不要なコストの洗い出しがしやすくなります。タグ付けのルールを予め定め、組織全体で徹底することが効果的です。

定期的なレビューと改善を行う

AWSコスト管理では、リソースの利用状況や請求明細の定期的な確認が重要です。特に月次や四半期ごとのレビューを行うことで、予算オーバーの早期発見や、不必要に高いプランに契約しているリソースを見つけ出すことができます。

また、不要になったリソースの削減や、利用頻度に応じたリザーブドインスタンスやスポットインスタンスへの切り替えも、コスト最適化のポイントです。これにより、AWSの利用をビジネスニーズに合わせて柔軟に最適化できます。

コスト管理を自動化する

AWSのコスト管理には、AWS Cost ExplorerやAWS Budgetsなどのツールを活用して自動化する方法も有効です。これにより、予算に対するリソース利用状況をリアルタイムでモニタリングし、事前に設定したしきい値を超えた場合にアラートを発生させることができます。

さらに、AWS Lambdaを活用して不要なリソースを自動的に停止するスクリプトを設定するなど、手作業の負担を減らしつつ、効率的にコストを管理するためのシステムを構築しましょう。

コストとパフォーマンスのバランスを重視する

AWSコスト管理の目標は単なるコスト削減だけでなく、必要なパフォーマンスを確保しながらコストを最適化することにあります。高性能なインスタンスが必ずしも必要でない場合は、低コストのインスタンスに切り替える、あるいは、使用頻度の低いリソースはサーバーレスやスポットインスタンスに変更するなど、パフォーマンスとコストのバランスを見直すことが効果的です。

適切なリソースを適切なタイミングで利用することで、コスト削減とパフォーマンス向上の両立が可能になります。

まとめ

AWSのコスト管理は、一朝一夕にできるものではありません。継続的な見直しと改善が不可欠です。本記事で紹介した方法を実践し、AWS Cost ExplorerやTrusted Advisorなどのツールを効果的に活用することで、コスト削減だけでなく、リソースの最適化も実現できます。

AWSのポテンシャルを最大限に引き出し、ビジネスの成長に貢献するためにも、コスト管理を徹底しましょう。AWSの提供する様々な機能やサービスを理解し、適切なコスト管理戦略を立てることで、より効率的で収益性の高いクラウド環境を構築することができます。

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