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SQLクエリが原因?データベースのパフォーマンスを改善するテクニック

SQLクエリが原因?データベースのパフォーマンスを改善するテクニック

クラウドデータベースを運用する際、SQLクエリのパフォーマンス低下は避けて通れない課題です。しかし、SQLクエリは結合条件やインデックス、パーティションといったさまざまな要素が絡み合うため、最適化が不十分なまま運用されるケースも少なくありません。

本記事では、クラウドデータベースのパフォーマンスとSQLクエリの関係性、最適化するテクニック、インデックス・キャッシュの管理方法、データベース設計の見直しについて解説します。

継続的にパフォーマンスを維持する方法についても解説しているので、クラウドデータベースの管理にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

パフォーマンスとSQLクエリの関係

SQLクエリ

クラウドベースのデータベース運用において、パフォーマンスとSQLクエリは大きく関係します。最適化されたクエリがデータベースの取得速度を向上させる一方で、非効率なクエリは、リソースの過剰消費やコストの増加を招くためです。

たとえば、膨大なデータ量を持つシステムでは、インデックスやパーティショニングの設定が不可欠です。これらが適切に設計されていない場合、テーブル全体へのフルスキャンによって実行時間が長くなります。

また、間違った結合やサブクエリの多用も、ネステッドループやI/O負荷の増加を引き起こす原因の一つです。そのため、パフォーマンスが低下した際は、どのSQLクエリがパフォーマンスに影響するのか迅速に特定する必要があります。

パフォーマンス問題の典型例

SQLクエリが関わるパフォーマンスの問題には、いくつかのパターンがあります。具体的には、以下のような原因によって実行速度の低下を招きます。

インデックスの欠如

適切なインデックスが作成されていない場合、テーブルスキャン(全データの走査)によってデータ取得速度が低下します。大規模なデータセットであるほど影響が顕著に表れ、過剰なリソース消費を引き起こします。

非効率な結合

複数のテーブルを結合する際、非効率な結合は実行速度の低下を招きます。特に、データ量の多いテーブル同士の結合や不等号を用いたクエリでは、計算量の増加によって速度が低下します。

サブクエリの使用

サブクエリの多用は、結合が複雑になることで遅延が生じやすくなります。また、サブクエリ内で別のサブクエリの呼び出しや集計を行うと、インデックスが適切に機能しないケースがあります。

不適切なパーティショニング

パーティショニングが適切に行われていない場合、分散処理が機能しなくなることでパフォーマンスが低下します。たとえば、過剰なパーティションが作成されていると、クエリが多くのパーティションを参照することでオーバーヘッドが増大します。

テーブル構造の問題

冗長性のバランスもパフォーマンスに影響する要素の一つです。冗長性とは、データが複数の場所に重複して存在することを指し、クエリの実行内容や頻度によって冗長性を持たせるかどうかの判断が必要です。

SQLクエリの最適化に向けた4つのステップ

SQLクエリの最適化は、手順に従い段階的に進めることが重要です。以下、具体的な実施内容について解説します。

  • ボトルネックの特定
  • クエリプランの分析
  • 結合操作の最適化
  • サブクエリの代替

ボトルネックの特定方法

SQLクエリの問題が生じた際、はじめに行うのがボトルネックの特定です。これにはクエリの実行プランの解析が必要で、通常はクエリプロファイリングツールやスロークエリログなどが活用されます。

クエリプロファイリングツールを用いた分析

クエリプロファイリングツールは、ダッシュボードからリソース使用率や実行時間、I/O操作などを表示し、SQLクエリの実行計画を分析するためのツールです。分析によって得られた結果からボトルネックを特定でき、最適化に必要な情報を導き出せます。

たとえば、GoogleCloudが提供するQuery Insightsは、すべてのクエリにかかる負荷の視覚化が可能です。待機時間や平均実行時間、呼び出された回数、平均スキャン行数などをフィルタリングし、負荷の高いクエリをランキング表示できます。また、実行計画やCPU使用量、I/O操作、キャッシュヒット率などもトレースできるため、具体的な改善ポイントを見つけやすくなります。

スロークエリログの活用

スロークエリログは、実行時間が長いクエリを記録するためのログファイルです。指定した閾値より遅いクエリを抽出し、実行時間や実行頻度、ロック情報などを記録します。これにより、手作業で行うよりも素早くボトルネックが特定でき、パフォーマンス改善に向けた施策を講じられます。

スロークエリログは、ほとんどのデータベース管理システム(DBMS)や監視ツールに搭載されており、設定変更によって利用可能です。たとえば、AWSで利用したい場合は、AWSコンソールの画面からDBインスタンスを選択し、パラメータグループの設定を行うことで有効化できます。

クエリプランの理解と分析

SQLクエリのパフォーマンス改善において、実行計画の分析は重要です。実行計画は、データベースがクエリをどのように実行するのかを示し、遅延の原因を探る手助けとなります。

たとえば、テーブルスキャンやインデックススキャン、結合といった実行手順は、実行計画の分析によって確認可能です。どこのポイントでどれだけリソースが消費されるかが明らかになり、コストの高い箇所から改善を進められます。さらに、解析を進めることでインデックスの欠如や結合条件の問題も把握でき、適切な最適化を行うことが可能です。

結合条件の最適化

SQLクエリの実行速度は、データ量と結合条件によって影響を受けます。ここでは、結合の種類と影響範囲、最適化するための具体的手法を解説します。

結合の種類とその影響

結合は、大きく分けると論理結合と物理結合の2つに分類されます。論理結合とは、テーブル同士を結びつける手法のことで、データ取得に関わる重要な要素です。

一方、物理結合は、データベースエンジンがデータを結びつける際の処理方法で、使う種類によって実行手順が変わります。具体的には、以下のような種類があり、それぞれパフォーマンスに影響します。

論理結合の種類
種類パフォーマンスへの影響
内部結合(INNER JOIN)それぞれのテーブルに存在するキーを用いた結合。インデックスが適切な場合は高速だが、結合の複雑さやデータ量に影響を受ける。
外部結合(LEFT OUTER JOIN/RIGHT OUTER JOIN)片方のテーブルはすべての行を返却し、もう一方のテーブルは一致する行がなければNULLを返す。一致しない行も取得するため、内部結合よりも遅延する可能性がある。
完全外部結合(FULL OUTER JOIN)両方のテーブルのすべての行を返却し、一致しない行にはNULLを使用。大規模テーブルでは実行時間が長くなる可能性がある。
クロス結合(CROSS JOIN)すべての組み合わせ(両方のテーブルの積)を返却。計算負荷が高く、大規模なテーブルでは実行時間が長くなる可能性がある。
物理結合の種類
種類パフォーマンスへの影響
ネステッド ループ結合片方の各行を他方のテーブルと比較して結合する方法。小規模なデータセットに効果的だが、大規模なデータセットでは全行の比較によってパフォーマンスが低下する。
マージ結合ソートされたデータセット間で結合する方法。ソート済みデータを結合する場合は優れたパフォーマンスを発揮。
ハッシュ結合メモリ内にハッシュテーブルを構築してデータを照合する方法。大規模なデータセットで優れたパフォーマンスを発揮できるが、メモリの使用量に注意。

結合操作の最適化手法

結合操作を最適化するには、適切な結合操作を選択することが重要です。

たとえば、外部結合は、片方のデータが欠落していても全行が返却され、包括的なデータ取得が可能です。しかし、その柔軟性から無計画に多用すると、データの取得結果やパフォーマンスに悪影響を与えます。結果セットにNULL値を含める必要があるのかどうかを再確認し、場合によっては内部結合への置き換えやフィルタリングを追加するなどの検討が必要です。

また、ネステッドループジョインは小規模なデータセットに有効ですが、大規模なテーブル間の結合になると、パフォーマンスが低下する可能性があります。代わりに、ハッシュジョインを用いることで、メモリ内にテーブルを生成でき、データ参照の効率性を上げられます。さらに、マージジョインは、事前にソートされたテーブル間の結合に適しており、ソート処理が少ない場合に優れたパフォーマンスを発揮します。

サブクエリの代替手法

サブクエリは、SQLの可読性を向上させる一方で、使い方によってはパフォーマンスの低下を招きます。ここでは、サブクエリが遅延する理由と代替方法について解説します。

サブクエリのパフォーマンス影響

サブクエリは、外部クエリの内部で実行されるクエリのことで、絞り込みやフィルタリングを行うために使用されます。クエリの複雑さを解消しコードが読みやすくなるなどのメリットがありますが、使い方によってはリソースの過剰な消費を招きます。

たとえば、相関サブクエリは、外部クエリに対して動的に条件を適用できますが、すべての行で内部クエリが実行されます。何度も同じクエリを繰り返すことで計算コストが増えるため、大規模なデータセットには不向きです。

相関サブクエリ
SELECT e1.name, e1.overtime
FROM employees e1
WHERE e1.overtime > (    
   SELECT AVG(overtime)    
   FROM employees e2    
   WHERE e1.department_id = e2.department_id
)

また、NOT EXISTSを用いたサブクエリも同様に、全ての行に対して存在チェックが実行されます。これにより、大量のデータ処理が発生し、処理時間が増える可能性があります。

NOT EXISTSサブクエリ
SELECT e.name
FROM employees e
WHERE NOT EXISTS (    
         SELECT *    
         FROM manager m    
         WHERE e.employee_id = m.employee_id
)

結合を使った代替手法

サブクエリが原因でパフォーマンスの低下を招く場合は、一時テーブルや結合を用いることで代替が可能です。

方法1) 一時テーブルの使用

以下の例では、はじめに一時テーブル内に各部門ごとの平均残業時間を保存し、その後元のテーブルと結合して結果を算出します。

一時テーブルの使用
— 各部門ごとの平均給与を計算して一時テーブルに保存
CREATE TEMPORARY TABLE department_avg_overtime AS
SELECT department_id, AVG(overtime) as avg_overtime
FROM employees
GROUP BY department_id
— 一時テーブルと従業員テーブルを結合して結果を取得
SELECT e.name, e.overtime, d.avg_overtime
FROM employees e
JOIN department_avg_overtime d ON e.department_id = d.department_id
WHERE e.overtime > d.avg_overtime
— 一時テーブルを削除
DROP TEMPORARY TABLE department_avg_overtime

方法2)サブクエリをFROM句で使用

WHERE句で使っていたサブクエリをFROM句で使用し、それを用いて結合を行います。従業員テーブルに対して毎回平均値を計算する必要がなく、クエリの負荷を下げられます。

サブクエリをFROM句で使用
SELECT e.name, e.overtime, d.avg_overtime
FROM employees e
JOIN (    SELECT department_id, AVG(overtime) as avg_overtime    
    FROM employees    
    GROUP BY department_id
   ) d
    ON e.department_id = d.department_id
WHERE e.overtime >d.overtime

インデックスの管理と最適化

データベースの運用においてインデックスの構築は不可欠です。ここでは、インデックスの基本と効果が得られない場合の対処法を解説します。

インデックスの基本

インデックスとは、データベース内のデータがどこにあるかを示した索引のことです。特定の列や複数の列に対して作られるもので、データの値と物理的な位置情報を保持できます。これにより、データベースエンジンが一行ずつデータをチェックする必要がなくなり、効率的にデータ取得が行えます。

また、インデックスには、主キーインデックス、一意インデックス、クラスタ化インデックス、非クラスタ化インデックス、複合インデックスなどがあり、それぞれ目的と特徴が異なります。たとえば、複合インデックスでは、複数のカラムを同時にインデックス化し、特定の複数カラムに対する検索スピードを上げられます。

インデックスが効かないケースと対策

インデックスは、いちど構築して終わりというものではなく、継続的な管理が重要です。インデックスの効果はデータベースの状態によって変化するため、定期的に見直しや最適化を実施する必要があります。

たとえば、挿入や更新、削除が多いテーブルで注意したいのが、フラグメンテーション(断片化)です。断片化が進むと、データが連続して格納されなくなり、インデックスの効率性が下がります。また、大規模な更新は、インデックス内のページが分割されることもあるため、インデックスサイズの増加によって検索速度の低下を招きます。

これらの問題を解決するためには、インデックスの再構築を定期的に行うことが重要です。インデックスの再構築は、データの断片化を解消し、ページや空き容量を再編成することができます。また、再構築は、統計情報も更新されるため、最適なクエリプランが実行されるようになります。

キャッシュの利用と最適化

クエリのパフォーマンス改善において、キャッシュも有効な手段の一つです。キャッシュは、データベースの応答時間を短縮し、システム全体のパフォーマンスを最大化してくれます。

クラウド環境でキャッシュを利用する場合、主に利用されるのがデータキャッシュとクエリキャッシュの2つです。データキャッシュは、頻繁にアクセスされるデータをメモリに格納して高速にアクセスさせる方法で、クラウドプロバイダーのキャッシュサービスから利用できます。一方、クエリキャッシュは、SQLクエリの結果をキャッシュし、同じクエリが実行されると結果を再利用することができます。

キャッシュの利用で注意したいのが、頻繁に更新されるデータに適していないことです。特に、最新データを要求するSQLでは、キャッシュヒット率が下がり、レスポンスが長くなる可能性があります。また、キャッシュサイズが不適切な場合もメモリ不足が発生し、システム全体のパフォーマンスが低下します。

データベース設計の見直し

データベース設計の見直し

クエリの改善で効果が得られない場合は、データベース設計の見直しも必要です。

正規化と非正規化のバランス

データベースにおける正規化と非正規化のバランスは、パフォーマンスに大きく関わる要素です。正規化とは、データの一貫性を保つために冗長性を排除することで、更新や削除の際に不整合を防止することができます。しかし、正規化が進みすぎると、複雑なクエリ結合が必要となり、実行時間が大幅に長くなるケースがあります。そのため、必要に応じて冗長性を持たせた非正規化を加えることが重要です。

たとえば、読み取り操作の多いデータベースでは非正規化が有効です。非正規化を適用することで、SQLの複雑さが解消され、迅速なクエリ応答が得られます。ただし、非正規化は、データの重複や整合性が課題となるため、正規化と非正規化のバランスを適切に調整することが大切です。

パーティショニングの利点と実装方法

データベースのパフォーマンス改善において、パーティショニングも有効な手段の一つです。パーティショニングは、テーブルを複数のパーティションに分割し、参照範囲を特定のパーティションに限定することができます。不要なデータベースのスキャンを最小限に減らせるため、データアクセスの効率性を高められます。

実装方法にはいくつかありますが、主に使用されるのは以下の3つです。これらを、各テーブルの特性に合わせて使い分けることで、最大の効果を得られます。

種類内容
レンジパーティション日付やタイムスタンプに基づいて分割
リストパーティション特定のカテゴリごとに分割
ハッシュパーティションハッシュ値を用いて均等に分割

パフォーマンスを維持するための注意点

パフォーマンスは、一度改善して終わりになるものではなく、継続的に維持することが重要です。ここでは、最適なパフォーマンスを維持するための注意点を解説します。

クエリパフォーマンスのモニタリング

クエリパフォーマンスの低下を防ぐためには、日々のモニタリングは必須です。クラウド環境では、リソース状況や負荷が常に変化するため、ボトルネックに対して迅速な対処が求められます。

たとえば、クラウドプロバイダーが提供するモニタリングツールでは、CPU使用率やメモリ消費、ディスクI/Oなどの監視が可能です。実行時間が長いクエリやリソースを過度に消費するクエリを特定でき、問題が発生する前に対策を講じられます。また、ダッシュボードを活用することで、実行計画の分析・解析が可能となり、結合やインデックスなどの具体的な改善手法が見つかります。

自動化ツールの活用

最適なパフォーマンスを維持するためには、自動化ツールの活用も有効です。手動のチューニングは手間と時間がかかりますが、自動化の仕組みを導入することで、リアルタイムな監視と最適化を実施できます。

たとえば、AWSやAzure、Google Cloudの自動チューニング機能は、クエリの実行プランを解析し、自動でインデックスの追加やクエリのリファクタリングが可能です。リソース使用状況のモニタリングやスロークエリの特定もでき、迅速にパフォーマンスのボトルネックを検出できます。また、機械学習アルゴリズムを用いることで、パフォーマンスの未来予測もでき、問題の発生を未然に防げるようになります。

まとめ

クラウドデータベースの運用において、パフォーマンスの低下は避けて通れない課題です。とくに、SQLクエリはパフォーマンスと深い関係性にあるため、定期的なモニタリングとパフォーマンスの改善が求められます。

その際、ボトルネックの特定に役立つのが、クエリプロファイリングツールです。SQLクエリの実行計画を素早く分析し、最適化に必要なヒントを導き出せます。

さらに、自動チューニング機能を組み合わせることで、インデックスの追加やクエリのリファクタリングが自動化され、継続的にパフォーマンスの安定化を図れます。この記事がお役に立てれば幸いです。

現役データベースエンジニア。好きなものは夏と野球。

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